2008年12月30日火曜日

営業力の科学:第二章 営業力を強化するための3つの対象 (2)

 前回のプロセスに続き、組織としての営業力を強化するための「スキル」について、考えてみよう。

2.スキル

 営業活動プロセスで、どのような手順を踏んで仕事を進めればいいのか分かりました。次に必要なのは、その手順を確実にこなしてゆくための「スキル」です。

 スキルとは、仕事を行うための技能です。例えば、コミュニケーション・スキル、プレゼンテーション・スキル、ドキュメンテーション・スキルなどがこれに当たります。

 「意志決定者に提案内容を説明する」というプロセスをこなすためには、単に説明しておわりではなく、結果として意志決定していだかなくてはなりません。そのためには、お客様にわかりやすい説明資料を作る「ドキュメンテーション・スキル」が求められます。また、その内容にお客様が共感し、心を動かしてくれるように説明するための「プレゼンテーション・スキル」も必要です。

 ITソリューション営業に必要とされるスキルは、次の5つに分類されます。
  1. 営業活動プロセスを管理し遂行するスキル
  2. お客様の課題を把握し、提案をまとめるスキル
  3. コミュニケーションを効果的に行うためのスキル
  4. 部下を育成するスキル
  5. 組織を運営するスキル
(1)営業活動プロセスを管理し遂行するスキル
 自分の担当する案件について、現状や課題を客観的に把握し、それを関係者に報告できる能力です。営業は、お客様という人間を相手にする仕事です。そのため、現状への対処が優先され、なかなか計画どおりにことが進まないこともしばしばです。しかし、組織の一員として、営業目標を達成するためには、そのような現状に甘んじているわけには行きません。そこで、役に立つのが「営業活動プロセス」です。
 自分のおかれている状況を客観的に評価し、今どのステップにいるのか、次に行動すべきことはなにか、どこに課題やリスクがあるのかを評価し、次の行動を決めなければなりません。研修では、そのための道具として、「オポチュニティ分析」、「プロジェクト分析」、「危険度分析」のためのツールを提供させて頂きましたが、このような道具を使いこなし、自分の行動を自分の意志や計画の管理下に置くスキルが必要です。

(2)お客様の課題を把握するスキル
 営業活動は、お客様の課題を把握することが全ての起点です。お客様に「これが我が社の課題です。是非、その解決策を提供してください。」と言っていただくためにも、お客様の課題を整理し、お客様とその課題について合意する必要があります。この点については、「第一章 営業力を定義する3要素」で詳しく書きましたので、そちらをご覧ください。
 お客様の課題を把握する手段は、以下のふたつに大別できます。

■ 客観的アプローチ
SWOT分析、環境分析なとの公開されている情報やお客様への質問を通じて、お客様の 置かれている状況や課題を整理する方法です。
■積極的アプローチ
 お客様自分の抱えている課題に気付いていない場合もあれば、それを説明できるレベルに整理できていない場合もあります。それを「課題発掘のアプローチ」を駆使して、お客様に気付かせ整理する方法です。

(3)コミュニケーションを効果的に行うためのスキル
 営業活動におけるコミュニケーションとは、「共感-理解-納得」のサイクルを回すことです。
 「共感」とは、お客様が営業であるあなたに信頼感や安心感をいだき、心を開いて話を聞こう、あるいは、相談しようと言う気持ちを持っていただくようにすることです。
 「理解」とは、お客様にとって、重要なことはなにか、必要なことはなにかなど、知っておくべきこと、知りたいことをわかりやすく、確実に伝えることです。お客様の分からない、理解できないは、伝える側に責任があります。
 「納得」とは、知識として理解したことに基づき、それを自分の判断として受け入れ、行動の意志決定をしてもらうことです。

 コミュニケーションは、話し方のテクニックだけでは、不十分です。前述の「お客様の課題を把握するスキル」で、お客様自身やお客様の課題を理解していればこそ、コミュニケーションは円滑にすすみます。また、伝えたいことをわかりやすい図表や文書にするドキュメントーション能力も求められます。これらを組み合わせた総合力が、コミュニケーションのスキルです。

(4)部下を育成するスキル
 営業マネージャー、リーダーに求められるスキルです。具体的には、「セールス・コーチング」と「権限委譲」の2つの柱が部下の育成を促します。
 「セールス・コーチング」とは、部下に気付きを与えやる気にさせるための取り組みです。一般に言われるコーチングと異なるのは、営業活動プロセスを管理し、目標を達成させるという目的を持っていることです。
権限委譲」とは、うまく行けば部下の成果とし、失敗すれば自分が責任を取ることを明確にした上で、自分の業務の一部を部下に任せることです。

(5)組織を運営するスキル
 一般的な組織運営や経営論ではなく、営業活動に絞って考えるならば、「評価報酬制度」、「フォーキャスティング」、「会議体」の3本柱を運営するスキルです。

 ソリューション営業活動における「評価報酬制度」は、数字だけではなくプロセスの進捗と評価を連動させることがポイントです。これは、極めて重要なことで、営業活動プロセスを有効に機能させるためにも、それが成績評価や報酬に連動していることが、営業にとっては、モチベーションとなります。
 SFA(Sales Force Automation)を導入したが、単なる報告のためにしか使われることが無く、案件管理のツールとしてうまく機能していないという御相談を受けることがありますが、「評価報酬制度」と連携していないことが、一因として考えられるケースも少なくありません。

 「フォーキャスティング」は、目標管理にとって不可欠ですが、いつも問題になるのは、その精度です。精度を高めるためには、「歩留まりを意識した評価」、「営業活動プロセスとの一致」が必要です。こちらも、「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座[管理者コース]」で詳しく紹介していますので、ここでは、省略させて頂きます。

 「会議体」は、組織の機能を維持するための基本の仕組みです。「会議体」がうまく機能していない営業組織は、営業パフォーマンスを上げることもできなければ、営業個々人のスキル底上げも困難です。ソリューション営業活動で必要とされる会議は、「アカウント・プランニング・セッション」、「週次営業会議」、「プロジェクト・アシュアランス・レビュー」の3つが柱となります。それを支えるものとして、新規案件開拓を計画的に行うための「オポチュニティ開発セッション」や営業個々人の目標管理やコーチングを支援する「ワン・ツー・ワン ミーティング」などがあります。
 ここでは、ひとつひとつを詳しくご紹介は致しませんが、これらが有機的に連携することが大切です。

 以上の5つのスキルを育成することで、組織としてのITソリューション営業力を強化することができます。

 次回は、「マネージメント」について、解説します。 

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