2008年12月25日木曜日

マーケティングとは、お客様へのコーチング

日本PGP株式会社の社長をしている北原さんから、マーケティングのためのプレゼンテーションとホワイトペーパー作成のご依頼を頂いた。

 北原さんも私と同様、日本IBMで営業としての修羅場を経験した戦友(?)であり、その後、外資系セキュリティ関連企業のトップを歴任した後、今年から今の会社の社長に就任した。

 彼は、「現実に起きている情報漏えいに関わる事件や事故、法律的な要請などの観点から、暗号化の大切さを訴求したい」という。「暗号について、製品や技術についての説明ではなく、利用者や個人情報を預かり管理を任されている企業の経営者や業務を任されているご担当の方を対象に、その必要性をわかっていただけるような内容にしてほしい」との依頼である。

 私は、改めてマーケティングの仕事とは、こういうことを言うのだろうと思った。

 彼もまた経営者であり、売り上げに責任を持っている。外資系でもあり、数字についてのプレッシャーは、日本企業の比ではないだろう。そのような状況にありながらも、先を見据えて、製品ではなく暗号化そのものの大切さを理解してもらおうという考え方には、大いに共感する。しかも、お客様の目線を意識し、その視点から資料を作ってほしいとの彼の要請は、私としても大いに興味をそそられるものだった。

 この資料を作りながら、私も多くのことを学ばせていただいている。


 お客様の情報をお預かりする企業としての責任、新会社法法で求められる内部統制とIT統制、COSOやCOBITに代表されるIT統制とIT資源との関係。IT資源の根幹をなすデータという資源の意味。これらを保護し、組織としての対応を規定した法律の条文やガイドライン。それらが、企業の暗号化対策とどのように結びついているのか。

 こんな視点から、暗号化の必要性や役割を訴えてゆこうと考えている。
 
この依頼を受けて、いろいろな資料や法律文書などに当たり、技術的視点とは異なる暗号化の大切を知る機会となった。
 
 また、公表される事件や事故の多さを見ていると、改めて情報漏えいに対する日本企業の意識の低さにも気付かされる。「またか?」を通り越して「日本はこれで本当に大丈夫なのだろうか?」と思わずにはいられない。そして、それら事件は、どれもどこでもありそうな話であり、決して他人事では、済まされないことに気付かされる。にもかかわらず、対策が遅々として進んでいない現実。危機感を持たざるを得ない。

 「マーケティングとは、ニーズを創造すること」である。セールスと対立する概念であり、「セールスをいらなくすること」と言い換えることができる。セールス(売り込み)をしなくても、お客様から「ぜひ売ってください」と言わしめるための取り組みと言ってもいいだろう。

 このような仕事は、すぐに数字には結びつかないことでもあり、なかなか予算をつけにくいものである。しかし、新たな市場でリーダーシップを取ろうとするのならば、率先して行うべきことだろう。
 IBMは、かつてこのような取り組みに時間とお金をかけてきた。だからこそ、お客様は、商品についても真剣に話を聞いてくれたのである。

 マーケティングとは、売れない商品を売れるようにするこではない。お客様が「現実を認識し、その対策の必要性に自ら気付く」、それを手助けすることがマーケティングの役割である。お客様へのコーチングと言い換えてもいいだろう。

 このような機会や情報の提供は、お客様にとっても大変ありがたいことに違いない。お客様が、あなたの会社を自分たちにとって役に立つ相手であると分かれば、お客様はあなたの話に真剣に耳を傾けてくれるだろう。

 今回の仕事で、あらためてその原点を省みることができた。

 PGPについてのプレゼンテーションは、いずれ詳しく紹介させていただこうと思う。

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