2009年9月27日日曜日

メインフレームを知れば、クラウドが見えてくる

 クラウド・コンピューティングは、何を目指しているのだろうか。その答えは、メインフレームにある。

 「クラウド・コンピューティングとは、オープン・システムのメインフレーム化」といってもいいだろう。

 クラウドが、以下のような技術要素の集大成であることを考えれば、小職の暴言も、多少はご納得いただけるのではないだろうか。
  • コンピューティング資源の仮想化
  • ストレージの仮想化
  • 運用の自動化
  • プロビジョニング
  • 高可用性
  • 負荷の最適化(負荷管理機能)
  • マルチ・テナント
  • ・・・
 1964年にIBMが、システム360という汎用コンピューターを世に出した。ここから、メインフレームの歴史が始まった。その後、1970年にシステム370が出現し、仮想化の進化が始まった。

 当時のコンピューターは、大変高価なものであり、一台の機械を大勢が共有することが前提となっていた。そのため、少ないシステム資源を公平かつ便利に使ってもらうために仮想化は、不可欠な機能となっていた。

 利用者の個別のニーズに対応して、必要なシステム資源を最適配分するための技術として用いられたのである。

 また、処理特性の異なるバッチ系とオンライン・リアルタイム系に対して、一定のサービス品質を維持しながら負荷の最適化を図るロード・バランシング機能も進化した。

 また、リソースの必要量に応じたプロビジョニング、基幹業務を支えるためのノンストップ・システムの追求、そして、自動運用機能の追及による運用負担の軽減を目指してきたのが、メインフレームである。

 しかし、メインフレームは、その高額さ故に敬遠され、UNIXやPCをベースのサーバーへと、その地位を譲り渡すことになった。

 しかし、ここにきて、今大きな変化が訪れている。

 PCサーバーの取得コストは、毎年劇的に下がっている。そのため、アプリケーションあるいは、機能単位にサーバーを導入した。その結果、多くの企業が、必要とする処理能力をはるかに超えるPCサーバーやその周辺機器を所有する事態となっている。

 また、基幹業務への適用も増えているため、可用性の確保も重要な課題だ。そのため、冗長化により、ますますシステム資源が、肥大化し、TCOの拡大に拍車をかけている。

 また、CO2削減が、CSR(企業の社会的貢献)という意味合いから、CSD(企業の社会的義務)となりつつある中、システム資源の2割程度しか使われていない実態を何とかしなければという機運も生まれつつある。

 その解決策が、仮想化であり、運用の自動化であり、マルチテナントであるといった、クラウドを実現する要素技術の活用であるといえるだろう。

 つまり、その行き着く先が、クラウド・システムということになる。

 しかし、以前のブログでも紹介したが、オープン・システムを前提としたクラウドは、いくつかの課題を抱えている。
  • 単体で信頼性の低いPCサーバーを冗長化により可用性を高めた結果、システムが複雑化して、運用負担が増大すると共に、システム全体の信頼性の低下も招いている。
  • 仮想化や運用の自動化を実現するために異なった企業やオープンソースのミドルウェアを導入。単体での完成度は上がっても、全体の組み合わせに対する信頼性や責任の所在は、逆にあいまいになってしまっている。
 その観点から見ると、メインフレームは、この上記、ふたつの課題を解決している。その40年を超える歴史の中で、信頼性を追求し、ノンストップを当然とした設計思想を貫いてきた。また、仮想化や運用の自動化も一社が、一貫して開発し、保証してくれる。

 つまり、メインフレームは、それ自体、「クラウド・マシン」として進化してきたといえるだろう。

 IBMは、2000年にz/Linuxのサポートを正式に表明し、EBCDIC以外のコードでも利用できるオープン・プラットフォームとなっている。意外と知らない人も多いが、Linuxコミュニティの相当数は、IBMのエンジニアであるといわれている。

 メインフレームの大きな魅力のひとつが、負荷の最適化を管理する機能だ。

 オンライン系のプログラムが単独で稼動している場合に良好なパフォーマンスを発揮していても、裏でバッチ系プログラムを走らせたとたんに、オンライン系プログラムのレスポンスタイムが極端に悪化する。これは、プロセッサやI/O帯域などのハードウェア資源の不足のためであったり、複数アプリケーション間の資源のバランスを適切に調整できないためである。

 これに対処しようと、オンライン系プログラムの優先順位を単純に上げても、バッチ系プログラムが、いつまで経っても完了しないという現象が生じることがある。これをスターベーションという。

 メインフレームでは、このような事態が発生しないように、各プログラムのパフォーマンス目標(レスポンスタイムやバッチの完了時間)を設定し、そのパフォーマンス目標を可能な限り満たせるように、優先順位を動的に調節するといった「ワークロード管理機能」が、OSレベルで実装されている。

 そのため、一台のメインフレーム上に数百や数千といった仮想マシンを同時に動かしてもQOSを保証することができる。これをPCサーバーで実現することは、不可能だ。

 確かにPCサーバーを単体でみるとTCA(取得コスト)は、安い。しかし、クラウドを構築するとなるとTCO(所有コスト)は、むしろ高くなる。ましてや信頼性や可用性についての不安は、払拭できない。

 私は、決して「メインフレーム」を無条件に推奨するものでない。しかし、「メインフレームは、レガシー(過去の遺物)」という先入観は、捨て去るべきであろう。メインフレームは、明らかに時代に対応して進化し続けている。クラウドの時代と叫ばれている現在、あらためて、メインフレームを冷静に見直してみては、どうだろうか。

 かつて、ベストセラーとなった徳大寺有恒氏の著「間違いだらけのクルマ選び」に、「車を買うならまずベンツを見ろ」と書いてあった。車のあるべき姿がそこにあるから、それを基準に車を選べば、間違えはないという話である。

 メインフレームが、コンピューター・システムのあるべき姿かどうかは別としても、今、クラウド・コンピューティングが目指している理想は、それに近いことは、間違えない。

 クラウドのビジネスを考えるとき、メインフレームの目指してきたものを見ると、その本質が見えてくる。また、お客様が、プライベート・クラウドを求めているとすれば、メインフレームによるクラウド(?)も選択肢として考えてもいいのではないか。そちらのほうが、可用性と信頼性は保証され、TCOは、大幅に削減できるだろう。

 クラウドとメインフレームは、形こそ違うが、その狙いや思想は、共通している。改めて、歴史的進化のスパイラルを見せ付けられているようだ。

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2009年9月23日水曜日

これからの営業に求められる2つの力

 機能や性能だけで商品を選択するのなら、営業は必要ない。ECサイトで購入するか、コールセンターに電話をすればすむ話しだ。

 サーバーやノートPC、ネットワーク機器なら、複数社の金額を比較しながら、もっとも安いものを選ぶことができる。

 今の世の中、インターネットで検索すれば、大概の情報は手に入る。営業にたずねるまでもない。なまじ、営業などに声をかけると、自社製品の自慢話を聞かされ、公平で客観的な商品比較ができなくなってしまう。

 また、今なら特別割引があるからと急かされ、こちらの都合でことをすすめることができない。

 ならば、すべてを決めた上で、価格や納期を確認するためにだけ、営業に声をかけるのが、もっとも効率的な営業の使い方だ・・・

 あなたのお客様は、こんなふうに考えてはいないだろうか。

 私たち営業は、どこに存在価値を見出せばいいのだろう。見積りや注文書の運び屋、トラブル処理係、それとも、代金の督促をすることなのだろうか。
 
 クラウドの時代になれば、アプリケーションは、Webサイトで、必要な機能を選択し、買い物カゴに入れればそれで済む。サーバー環境を手に入れたければ、CPU能力、ストレージ容量、OSの種類を選択し、発注ボタンを押せば、数分後に使えるようになる。

 こうなると、営業は何をすればいいのだろうか。

 私は、営業という仕事は、カウンセラーの仕事に似ているのではないかと思っている。カウンセラーとは、「何らかの問題を抱えている人から相談を受け、それに適切な援助を与える職種(Wikipedia)」ということらしい。

 皆さんのお客様が、指示された仕事をこなす限りにおいては、営業の仕事は、単なる事務処理だけである。交渉といっても、決められた範囲での値引きや納期の調整程度であり、なんら付加価値を生み出すものではない。

 しかし、お客様がそんな仕事ばかりをしているわけではない。

 IT部門であれば、経営者から、一層のコスト削減を求められ、さてどうしようかと、頭を痛めている場合もあるだろう。また、サーバー台数が増え、運用の負担がますます重くなるが、予算は削減しろといわれている。どこにボトル・ネックがあり、どう対処すればいいのかを、整理できずに困っているかも知れにない。

 経営者であれば、新たな事業に進出するために、ITを効果的に使って、競合優位を図りたいと考えているかもしれない。しかし、その具体的な方策を見出せないでいるかもしれない。

 こんなとき、営業であるあなたは、お客様のよき相談相手となって、課題を整理し、その解決策を見出すお手伝いができるだろうか。

 それは、こちらの一方的な押し付けであってはいけない。お客様が、課題や現状を整理し、目的や目標、途中のマイルストーンを設定するお手伝いをすることが第一だろう。

 そんな、お客様の整理整頓を援助するのが、カウンセラーの仕事である。

 お客様が、自分で整理整頓し、自分で課題を認識し、自分で解決しようという意思を持たなければ、たとえこちらがどんなにすばらしい(と勝手に思っている)解決策を提示しても、受け入れてはもらえない。

 お客様の自発的な行動を促し、自ら解決したいという気持ちにならなければ、ビジネスにはならない。

 また、クラウドが普及すれば、その選択肢はますます多様化し、その組み合わせもますます複雑になる。

 そんなお客様に、お客様の価値を最大化するための選択肢を提示することも、カウンセラーの役割である。

 お客様の課題を整理整頓し、お客様に自発的な取り組みを促す力。急速に変化するITトレンドの要点と課題を理解し、その時点で最適な選択肢を提示できる力。

 このふたつの力がなければ、営業はいずれ、ECサイトに置き換えられてしまうだろう。

 あなたは、大丈夫ですか?

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常識のない営業。お客様には、そうは思われたくありませんよね。

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2009年9月17日木曜日

「わかりやすさ」の3要件

 「わかりやすさ」とは、なんだろうか?自分なりに心がけていることをご紹介しよう。

 まずは、「3」。これには、結構こだわっている。3つにまとめると、わかりやすい。

 例えば、セミナーやブログのタイトルの場合は、「クラウドの3つの要件」、「顧客満足の3段階」、「売上拡大のための3つの原則」・・・

 お客様との打ち合わせの出だしは、「本日、ご相談したいことは、次の3点です。まず一つ目は、・・・」・・・

 何か相談をされたときの最初のひと言は、「それは、3つの理由があると思いますよ。例えば、・・・(3つの理由がそのとき思い浮かばなくても、まずそう切り出して、話しながら考えます(笑))」・・・

 「2」では、どうも足りない感じ。「4」では、多すぎる。どうしても、「3」に収まらなければ、「5」にすることで、何とか落ち着かせている。「5」は、次善の策としては、ありですね。

 なぜなのか、理由はわからないのだが、「3」は、とても落ち着き、すっきりと記憶に定着する。

 話しを聞いて、物事を理解しようとするとき、人はまず、この人は何を言おうとしているのだろうかと、自分なりに目次を作る。つまり、話しを受け入れる引き出しを用意するということ。

 そして、その目次に従って、話が進むと、その都度、その引き出しを開けて、話しをそこに収めててゆく。そうすると、非常に安心感があり、難しい話でも、記憶に残りやすい。

 その記憶の引き出しの数が、「3」なのではないかと、私は、考えている。

 次は、「結論は、最初」。理由や背景は、「結論」の後に追加する形。

 例えば、提案を説明するとき、「これは、御社の運用コストを1/2に削減するための提案です。具体的には、・・・」・・・ 

 トラブルに際して、「なんとしてでも、30分以内に復旧したい。どうすればいいだろうか?」・・・

 見積りを依頼するときは、「50万円の予算しかありません。その範囲で、できることをご提示いただけませんか?」・・・

 結論に魅力があれば、理由を聞きたくなる。しかし、結論に魅力を感じなければ、話しを聞いても時間の無駄。そう思いませんか。

 あなたがユーザーで、営業が、商品の説明に来たと思ってください。理由や背景を、ぐだぐだと最初に語られると(自己紹介が長いのもうんざりですが・・・・)、「・・・で、結論は、何なんですか?」と言いたくなりませんか?

 結論を後回しにしているときは、自信がないか、相手を騙そうとしている、そう思っても、いいかもしれませんね。

 結論が最初に見えない話しは、不安なんですよ。その不安が、相手の思考に雑音を与える。雑音が多いから、相手の話の要点が、すんなり理解できない。つまり、わかりにくいということになる。

 最後は、「美しさ」。たとえ同じ内容でも、美しくなければ、見たくないし、聞きたくない。

 先日、ある自治体の新庁舎建設に当たり、LAN工事の提案コンペがあった。その審査を任された。いくつかの評価基準を作り、それに対応して評価した。予算や要件は、詳細にRFPとして事前に提示されている。最終的に3社に絞り込まれたのだが、見事に機器構成や作業内容は、同じである。当然といえば当然なのだが、実によくそろっている。

 しかし、決定的な違いがあった。あるベンダーの提案資料だけが、実に「美しく」作られていた。

 表紙のデザイン、各ページのレイアウトやフォントの統一、美しくわかりやすい図表、要約(結論)、概要、詳細へと展開される目次構成・・・メリハリが利いていて、とてもわかりやすいドキュメンテーションだった。この営業さんは、きっと私の研修に参加したに違いない(笑)と思うくらい

 こうなると、気持ちは、この提案に傾いてしまう。「内容で判断する」の原則は、意識していた。しかし、他社の「内容」の些細なアラが、どういうわけだか、気になってしまう。それが心情というものだ。

 評価項目に「ドキュメンテーションのわかりやすさ/美しさ」という項目はなかったが、結局は、美しい提案書を提出したところが、最高点となった。

 しかし、これには、明確に理由がある。見た目が美しいということは、相手にできるだけ負担をかけず、訴求点や仕事の内容を間違えることなく、確実に伝えようという態度の現われと見る。つまり、相手の立場を慮っての行為であり、こちらが仕事をお願いするに当たり、双方のコミュニケーションがうまく行くであろう事が期待できる。

 これは、一緒に仕事をする相手の条件として、ととも大切なことなのです。


 「わかりやすさ」とは、相手への思いやり。自分が伝えたいことではなく、相手が知りたいことを伝えること。相手がどう思うか、どう感じるかを想像し、それに対処することなのです。

 伝えたという自分の満足ではなく、伝わったという相手の真実が大切です。つまり、相手への思いやりの気持ちが、「わかりやすさ」の心なのだと思います。

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2009年9月15日火曜日

信頼をかち得る条件

 組閣が進んでいるようだ。誰が、どこの大臣になるかは、われわれ庶民のはかり知ることではないが、政権交代に寄せる期待に、是非とも応えていただきたいと願うばかりである。

 山本七平氏の著「論語の読み方」に「『由(よ)らしむべし、知らしむべからず』の曲解を正す」という一節があった。

 「由らしむべし、知らしむべからず」とは、「民には、なにも知らせてはならない、信頼させて、だまってついてこさせるべきだ」と解釈され、戦時中の日本になぞらえ、批判されてきたと語っている。

 しかし、正しくは、「民衆からは、その政治に対する信頼をかち得ることはできるが、政治の内容を知らせることは難しい。」ということであるという。

 山本は、多くの人がこれを誤って解釈しているのではないかと指摘している。

 なるほど、そういわれると、自分もまた前者の通俗的解釈で理解していた。恥ずかしい限りである。

 この正しい解釈で、改めて考えてみると、まったくその通りだなぁと思うのは、私だけではないだろう。

 確かに、どのようなプロセスで政治が進められているのかを説明されても、その当事者でもなければ、専門家でもないわれわれにとっては、全体を正確に理解することは難しい。しかし、政治に信頼があれば、たとえその内容を十分には理解し得なくても、私たちは、それに従い、彼らを支えることができるだろう。

 こんなことを、今から2500年も前の人が言っていたわけである。孔子の偉大さもさることながら、人間とは、かくも変わらぬものかと苦笑いしてしまう。

 では、信頼はどのように「かち得る」かである。やはり、成果を確実に上げ、民意に応えることが第一である。全戦全勝は、無理でもプラス・マイナス・プラスにはしてほしい。

 次に大切なことは、「わかりやすい説明」であろう。詳細な内容やプロセスを事細かに説明すのではなく、「目的やあるべき姿」「得られる価値」「課題やリスク」を完結明瞭に、聞く側の言葉で伝えてもらいたい。

 当然、全員賛成にはならないだろうが、信頼の基盤となることは、間違えない。

 これは、政治だけのことではない。私たちが、お客様から、信頼を勝ちうるための条件ともいえる。

 ITが進化し、多くのお客様にとって、そのテクノロジーの詳細を理解することは、難しくなっている。特に、SMBのお客様にとっては、人材も限られており、なおさら容易なことではない。

 クラウドの時代となり、その技術的な基盤が、遠くネットの向こう側に置かれ、お客様は、利用するだけの立場となれば、ますますその内容を、詳細にご理解いただくことは難しくなる。

 どのような仕組みで実現しているかではなく、自分達にどのような価値をもたらし、どのようなリスクがあるのかを、お客様は知りたいと願っている。

 仕組みを理解していただくことが、ますます難しくなるこれからの時代、私たちは、お客様の信頼をかち得るためにはどうすればいいかを、今まで以上に真剣に考える必要があるだろう。
  • 成果を確実に上げること。
  • 「目的やあるべき姿」「得られる価値」「課題やリスク」を説明すること。
  • 完結明瞭に、お客様の言葉でわかり易く伝えること。 
 この3つを忘れないことを、改めて肝に銘じておきたいと思う。

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2009年9月14日月曜日

イチローにみる「第二の天性」 

 イチローが、9年連続200本安打を達成した。彼の才能を称える声もある。それは間違えないだろうが、私はそれ以上に、彼が目標達成に執着し、練習を積み重ねてきたからこそ、できたことだと思っている。私は、そんなイチローの不屈の精神にこそ、心からエールを送りたい。

 以前、撃墜王・坂井三郎が著した「大空のサムライ」について紹介した。彼は、この著の中で「第二の天性」の大切さを述べている。坂井は、生まれ持った「第一の天性」だけではなく、人には、自らの理想を実現するために、努力して手に入れる「第二の天性」があるのだと語っている。

 イチローにしろ、坂井にしろ、自分はどうありたいかという「あるべき姿」をしっかりとイメージし、それを実現するために日々の努力を惜しまなかった。生まれ持った才能やセンスだけに頼ったわけではない。努力の人であることにこそ、彼らの偉大さがあるように思う。

 先週の木、金と「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」を開催した。そこでも「営業力は、生まれ持ったセンスや才能だけで決まるものではない」という話をした。

 センスや才能は、その人の個性を表現するもの。営業力は、スキルと知識とプロセスで決まると。つまり、第二の天性で獲得しうるものであるという話しである。

 この研修には、SE、プログラマー、はたまた、この間までスーパーでおばちゃん相手に野菜を売っていましたという方も参加している。売るものも違えば、そのスタイルもまちまちだ。理屈っぽい人、能天気に明るい人・・・夫々に、その人なりの経験の積み重ねがあり、個性がある。

 こういう人たちが、この研修に参加される目的は何かといえば、営業として、あるいは、SEやコンサルとして、お客様に信頼され、お客様に喜んでいただけるビジネスをしたいという思いである。言葉の上での表現は夫々に違うが、心は完全に一致している。

 第二の天性とは、このような理想を思い描くことが、出発点であろう。そう考えれば、この研修に参加された方は、まずは、スタート・ラインを超えられていることだけは間違えない。

 イチローは、他の選手の何倍も練習していることは、多くの人が知っている。もちろん量をこなしているだけではないだろう。どうすればバットに当てられるか、飛距離を伸ばせるか、考え工夫しながら、第二の天性を磨いてきたのだろう。

 改めて、凡人である自分を振り返れば、果たして、努力して「第二の天性」を育ててきたのだろうかと思うと、はなはだ恥ずかしい限りだ。しかし、イチローにしろ、坂井にしろ、よき実例があるではないかと思うと、恥じてばかりもいられない。

 イチローとまではいかないが、「もうちょっとがんばってみようか・・・」と、彼の快挙をみて、そう思う。

 でも、そんなひとが私以外に大勢いるだろう。そう考えると、改めて彼の偉大さを感じざるを得ない。

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2009年9月11日金曜日

常識が、非常識となるとき(5) 最終回

 クラウドの普及は、システム選定におけるお客様の意思決定基準を変化させることになります。

 前々回のブログで解説いたしましたが、インフラに関わるシステム技術的な判断基準の比重が下がるだろう考えられます。その一方で、より上流の業務要件やビジネス・プロセスが、意思決定を行う上で、今まで以上に重要となります。

 クラウド、特にSaaSにおいては、業務サービス機能の利用です。となると、自社の業務目的、ビジネス・プロセスを整理分析し、個々のプロセスに重複や機能的な過不足が無いように、分解整理する必要があります。これは、BPMのアプローチです。ここで分解された個別のプロセスに対応するサービス機能を利用する必要があります。これは、SOAのアプローチです。

 つまり、理想論を申し上げれば、BPMでビジネス・プロセスを分解、整理し、それをSOAに基づきサービスを部品化する。それに対応するサービスをクラウド上に載せる、あるいは、相当するサービスを利用するという流れが出来上がります。

 ビジネス・プロセスの分解、整理は、単に既存の業務の再定義ではなく、より効率的なプロセスを実現するための業務プロセスの最適化、再構築を目指す動きへとつながることも考えられます。

 これは、特に大手企業にとっては、2015年からの国際会計基準(IFRS)の強制適用に連動する流れが、生まれるかも知れません。あるいは、このような企業の動きを捉えて、クラウド・ビジネスの拡大を図るという戦略もありうるでしょう。

 IFRSは、決して会計財務の問題ではなく、企業行動やその意思決定に大きな影響を与えるものであり、ビジネス・プロセスの見直しは不可分です。その影響範囲は広範に及ぶわけですから、当然ビジネス・チャンスも広がることが期待できます。

 このような一連の動きを想定すると、SIerやソリューション・ベンダーは、次のような取り組みが求められます。

◎ 業務分析スキルの強化と課題発掘、提案能力の強化
◎ 経営層、業務部門へのアプローチ拡大、浸透
◎ サービス・ビジネスの企画、充実

 いずれにしても、製品力や技術力、あるいは、開発や運用に必要な人材提供に競争優位を求める企業にとっては、なかなか厳しいものになる可能性があります。

 再三申し上げていることでもありますが、クラウドが直ちにITの実態を変えてしまうことありません。これから時間をかけて、クラウドの適用領域が拡大してゆくもの考えられます。

 しかし、これからシステム選定を考えるユーザー企業の当事者にとっては、決して将来の問題ではありません。既にクラウドは、重要な選択肢のひとつとなっています。

 仮に、現時点では、オンプレミス(自社で所有、運用するシステム利用形態)を選択するにしても、そのシステムがクラウドにどのような橋渡しが用意されているかは、知りたいと考えるでしょう。このようなお客様の期待に応えられるようになることは、SIerやソリューション・ベンダーにとって喫緊の課題です。

 「クラウドなんて、まだまだこれからですよ。」という言い訳は、「お客様の将来に関心を持っていません。」とお客様に宣言するに等しい行為と考えるべきでしょう。

2009年9月9日水曜日

常識が、非常識となるとき(4)

 昨日[9/8(火)]、「クラウド時代に勝つ・・・ソリューション営業力強化セミナー」を開催させていただました。大勢のご参加を頂きました。ありがとうございました。

 さて、セミナーの内容は、以下のようなものです。

・誰もが言葉では知っている「クラウド」を体系的に整理。
・いい事ばかりじゃない、クラウドの抱える課題の洗い出し。
・クラウドの普及がSierやITソリューション・ビジネスにどのような影響を及ぼすか。
・ビジネス環境の変化にどのような施策をとるべきか。
・求められる営業スキルの変化とそれへの対処方法。

 アンケートを拝見したところ、
「クラウドやSaaS、SOAなどの言葉は知っていたが、それらが体系的に結びついていなかった。それが整理できた。」
「世間では、クラウドのプラス面ばかりが紹介されているが、多くの課題が残されていること、また、それがビジネス・チャンスになりうることが良くわかった」
「自分達のおかれている状況を客観視できた。危機感を認識できた。」

 などのコメントを頂きました。少しはお役に立てたようです。

 10月8日(木)にも、以下の無料セミナーを開催します。


 このセミナーでも、クラウドについて、売る側の視点で話しをします。また、それ以外に、仮想化、オープン・システムとメインフレーム、グリーンIT、国際会計基準をコンパクトにまとめ、その要点やビジネス可能性などについても紹介させていただきます。

 自社の強みをどう生かすか、どの分野にリソースを投入するか、ビジネス戦略を考える上でのご参考になればと考えています。

 さて、前回の続き、今回のセミナーでも紹介したことですが、「クラウドがもたらすビジネス環境の変化にどう対応するか」について、話を続けたいと思います。

 下記の図をご覧ください。

 クラウドの普及は、「ビジネス規模の縮小」と「お客様の意思決定基準の変化」という影響を与えることは、前回申し上げたとおりです。

 「ビジネス規模の縮小」への対応ですが、以下の3つの方策が考えられます。

1.組み合わせによるビジネス規模の拡大
2.クラウドに内在する課題を補完するソリューションの提供
3.パブリック・クラウドを利用した独自サービスの提供

 ビジネス規模の縮小は、特にインフラおよ機器・パッケージ・ライセンス関連の販売が縮小することに起因します。この部分の比重が大きいSIビジネスは、大きな影響を受けることになります。従って、垂直統合型のSIから脱却し、アプリケーションやサービス機能の組み合わせ、つまり水平への広がりを拡大させる組み合わせビジネスを模索する必要があるでしょう。

 また、クラウドの抱える課題は少なくありません。例えば、可用性の低さ、セキュリティへの不安、バックアップ・リカバリーの保証、対監査性のあいまいさなどなど、いろいろとあります。そのような課題を克服するための補完的手段を提供することで、ビジネスの拡大を図ることです。

 最後は、積極的にパブリック・クラウドを活用し、アプリケーション・サービスを拡充するアプローチです。自前でクラウドのプラットフォームを持つことは容易なことではありません。ですから、他人のふんどしを利用して、サービス・ビジネスにシフトする戦略です。

 いずれにしても、今までのビジネスの基盤を変えなければならない選択が求められるかもしれません。

 ノークリサーチさんのレポートによると、クラウドの市場は、2009年の249億円から、2012年の2065億円へと急激に拡大すると予想されています。

 しかし、これは既存のIT予算の範疇であり、新たな予算がどこからか生まれてくるわけではありません。つまり、いままでのIT予算の一部が、クラウドにシフトすることを意味しています。

 この現実を考えるならば、現状の延長線へのこだわりを捨て、売る側も大きくなパラダイムの転換を覚悟すべきでしょう。

 次回は、「お客様の意思決定基準の変化」にどう対応するかについて、考えてみようと思います。

2009年9月7日月曜日

常識が、非常識となるとき(3) SIerビジネスへの影響

クラウドの普及は、SIerやソリューション・ベンダーのビジネス規模を縮小させる可能性がある。

1.ハードウェア機器、パッケージ販売ビジネスの縮小
2.インフラ・プラットフォーム構築ビジネスの縮小
3.運用業務に関わる受託、派遣業務の縮小

1については、言うまでもないだろう。いままで、オンプレミス型が当たり前であったシステムの利用形態に、SaaSやPaaSといった選択肢が加わる。このようなクラウド型のシステムは、使用量や使用する機能に対応した従量課金制であり、モノを販売するビジネスにとっては、大きな脅威となる。

 特に、スキル・レベルの高い人材を確保することが難しいSMBや開発、テスト目的でのシステム導入。非基幹系で、あまりクリティカルではないアプリケーション(たとえば、オフィース系)などは、クラウドへのシフトが、先行するものと考えられる。

 2については、インフラ・プラットフォームを自社で持つ必要がなくなるわけで、この部分のビジネスは、減少するだろう。これは、クラウドだけの問題ではなく、仮想化やそれに付帯したシステムの統廃合も並行して進むだろうから、ますますビジネス規模は、縮小する。

 3については、サーバーや一部クライアント系のアプリケーションも、ネットの向こう側で運用されることになるので、ユーザー・サイトでの運用業務は、少なくなるだろう。

 このように、モノ売りやヒト売りを生業にしてきた企業にとっては、マーケット・サイズの縮小が懸念される。

 また、お客様の意思決定基準の変化もビジネスに大きな影響を与えることになるだろう。

1.IT部門のユーザー化による上流プロセスでの判断重視
2.ユーザー部門主導によるシステム選定の増加
3.購入単位の変化(数量から利用量へのシフト)

 1については、IT部門は、開発に際してOSやインフラを意識する必要は無くなり、サービスとして、アプリケーションやシステム・リソースを利用することになる。これは、IT部門のユーザー化である。いままでのようなテクニカルな提案やジャスティフィケーションは、重要視されなくなるだろう。上流での判断、すなわち、アプリケシーュンや業務プロセス、業務要件検討に関与することが、今まで以上にもとめられるだろう。

 2は、IT部門の対応にもよるが、IT部門がオンプレミスにこだわり続ければ、当然痺れを切らししてユーザーは、IT部門を跳び越してSaaSの導入を推進するかもしれない。事実、Salesfoce.comは、そんなかたちで入っているところも少なくないようだ。かつての部門コンピューター、部門オフコンと似たような展開が考えられる。

 3は、先にも触れたが、購入+リース+運用・保守 と 使用+使用料金 との対決である。システムのクリティカル度、要求される立ち上げスピードなどにも関係するが、意思決定がユーザー部門にシフトすれば、システム所有へのこだわりは、著しく減退するだろう。この結果、既存のモノ売り、ヒト売りビジネスが、食われる事は必至の情勢にある。

 ビジネス規模を縮小とお客様の意思決定基準の変化という、ふたつの大きな変化。SIerやソリューション・ベンダーは、これに対処しなければならない。

 では、どのように対処すればいいのだろうか。次回は、この点を解説する。

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2009年9月6日日曜日

常識が、非常識となるとき(2)

 機構系CAD関連のビジネスが、大きく落ち込んでいる。ある大手機構系CADベンダーは、前年対比30%の売上減。また、ある大手自動車メーカーに機構系CADを販売している企業は、前年10億円近い売り上げがあったにもかかわらず、今年の第一四半期の売り上げは、一千万円そこそこという。

 機構系CADビジネスの低迷は、自動車をはじめとした製造業の業績低迷だけが原因ではない。共通化や流用といった設計業務そのものを減少させようという取り組みとも重なった動きといえるのではないだろうか。

 たとえば、自動車の場合、車台(プラットフォーム)のメーカーを越えた統合化が、設計需要の低迷を加速させている。車台の統合は、車台そのものだけではなく、その周辺の部品や製造ラインの共通化にも大きく貢献することから、コスト削減や開発期間の短縮の効果は高い。

 また、今後、電気自動車が普及するようになれば、駆動系は簡素化され、ますます機構系の設計需要が減少するだろうと言われている。

 かつて稼ぎ頭であった機構系CAD需要の低迷は、これを生業にしてきたCADベンダーやソリューション・ベンダーにとって、致命的な課題を突きつけている。だが、既存顧客との関係や自社で抱えるエンジニアやオペレーターをどうするかという問題、また、確かに将来的な需要動向の変化はあるとはいえ、今は不況による一時的な需要の低迷であって、不況がとおりすぎれば、まだ一息つけるチャンスはあるたろうという楽観視が、危機感の頭を抑えている感がある。

 しかし、この状態にある程度ならされてしまったユーザーとしては、たとえ景気が回復したとしても、すぐには、かつてと同様にシステムを増設はしないだろう。また、これを機会に、開発方式や設計方法を大きく変えようという動きが加速することも考えられる。

 そうなると、景気が回復しても需要が大きく回復することは、難しいかもしれない。

 インフラ・ビジネスについても、同様なことが考えられる。SaaSやPaaSの普及により、システムを所有することが、絶対的な要件とはいえなくなった。

 確かに、信頼性や可用性に課題があるとはいえ、開発やテスト目的ならば、十分に使える。また、クリティカルではない業務、たとえば、電子メールやグループ・ウェア、ワークフローといった業務では、十分に利用できる。

 また、SMBは、ITスキルを持つ人材を確保することが容易ではない。そう考えると彼らにしてみれば、クラウドは、救世主に見えるかもしれない。

 クラウドの普及は、所有から使用への移行といわれる。これは、システム部門のユーザー化を意味している。また、システム部門を介さずにエンド・ユーザー部門が、システムの選定に大きく影響を持つようになることも考えられる。

 つまり、今まで以上に、システムの選定は、上流で判断されることになる。インフラ、すなわち、サーバー、OS、ミドルウェアなどが、システムの選定に影響しないようになるだろう。

 これは、インフラが不要になるということではなく、システム選定に当たって、ユーザーは、インフラを意識しないようになることを意味している。また、システム・ユーザーの人数の増減、キャパシティを意識する必要もなくなるだろう。

 このように、ユーザーの意思決定基準が、大きく変わると共に、意思決定者そのものが、業務部門などのエンド・ユーザー側へ大きくシフトする。

 そうなると、システムに強いだけでは、お客様に価値を提供できないことになる。SMB系は、エンタープライズ系よりもこの動きが先行するはずだ。

 このような、ユーザー・ニーズの変化に対応できないSIerやソリューション・ベンダーは、淘汰されてゆくだろう。

 機構系CAD需要の変化は、カタストロフィカルな、出来事といえるかもしれない。しかし、インフラ・ビジネスやSIビジネスに同様の劇的変化がおきない保証は無い。

 では、このような変化にどう備えればいいのだろうか。次回は、この点について考えてみようと思う。

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2009年9月5日土曜日

常識が、非常識となるとき(1)

 中小SIerが、土砂降りのようだ。

 先日、ノークリサーチの伊嶋さんと話しをする機会があった。倒産、廃業、統合が、進んでいるという。

 世間では、景気回復の兆しありとは言うが、この業界は、まだまだそうではないらしい。実際にお付き合いさせていただいているSIerの方からも同じような話を聞く。

 ある営業に話を聞くと、システム部門も、ずっと殻に閉じこもっていたこともあり、そろそろ何かしなければと、話しや相談は増えてきているという。しかし、商談に結びつく話しには、なかなかならないようで、いっしょになって、どうしようかと語り合っているに過ぎないようだ。

 伊嶋さんとの話の中で、需要に対して、SIerやソリューション・ベンダーの数が多すぎるという話しがあった。

 確かに、サーバーの稼働率は、せいぜい2割程度に過ぎない。この不況である。冷静に考えれば、システムの統廃合、仮想化を進めれば、理屈の上では、サーバー台数を1/5にできることになる。もちろん、技術的な限界もあり、理屈道理に行かないにしても、過剰であることに違いは無い。

 TCA(システムの購入コスト)が、どんどんと下落し、既存のサーバーを機能拡張して、稼働率を高めるより、アプリケーション単位、あるいは、機能単位でサーバーを導入したほうが安いということで、サーバー台数がどんどんと増えていった。しかし、その結果として、TCOは、増加していった。

 結局は、ITシステムに関わる費用は、何も変わらない。むしろ、適用業務の範囲が広がり、可用性を高めるための冗長化も、結局はTCOを引き上げている。TCAが安いからと、どんどん増やしてきたサーバーは、今度は、TCOの増大で、導入意欲の低下を招いているといっても過言ではないだろう。

 この矛盾を断ち切らなければならないと、ユーザー企業は、考え始めている。つまり、今までの常識は非常識となり、いままでのユーザーとSIerの「これでよかった関係」は、もはやそうではなくなることを意味している。

 今は、不況である。こういう時期は、今までの常識が否定され、それを誰もが、当然と考える。経営者は、さらに厳しく、「他の選択肢を考えなさい」とシステム部門に求めている。この言葉の裏には、「もっと安いところと付き合ったらどうですか!」という、暗黙の指示が隠れている。

 伊嶋さんからいただいたレポートの中に、「IT投資の効果がはっきりと見えるモノ以外は、投資しない」との言葉があった。つまり、「収益に直結する投資」か、「コスト削減につながる投資」かのいずれかである。

 収益に直結する投資は、ITの場合、なかなか見えにくいし、時間もかかるので、この時期、なかなかプロジェクトを起こすことは難しい。となると、コスト削減につながる投資ということになる。

 もっとも簡単な話しは、サーバーやストレージなどの機器類の統廃合による削減であり、システムを自ら所有し運用する方法から、SaaSなどを利用した従量課金型サービスへの移行ということになる。

 このような取り組みは、ユーザー企業にとっては、必ずしもいいことばかりではない。手間もかかるし、リスクも伴う。しかし、こういう時期だからこそ、背に腹は変えられないわけで、コスト削減に向けた施策がどんどんと進められることになるだろう。

 先日、あるSIerの社長に話を聞いたところ、「いままで運用を受託していたが、サーバーを半減して、今までの2箇所のセンターを一箇所に統合かるから、運用の要員も減らしたいという話が来ている。最近、そんな話ばかりが増えてきた。」と嘆いていた。

 不況は、この動きをますます加速するだろう。

 このブログでも、度々申し上げているが、身体を丸めて、不況をやり過ごせば、またもとの状態にもどるだろうという期待は、早々に捨てたほうがいい。

 ならば、SIerやITソリューション・ベンダーは、何をすべきか。

 次回は、その点について、掘り下げてみようと思う。

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2009年9月3日木曜日

だれのためのソリューションですか?

  ソリューション提案という言葉があります。語義に従うなら、「何かを解決する手立てを提案する」ということになるのでしょう。

 では何を解決するのでしょうか?こんな話しを研修の席で皆さんに質問すると、決まって「お客様の課題」と返ってきます。そんな皆さんに、「本当にそう思っていますか?もしかしたら、自分の課題ではありませんか?」と問い返します。

 営業にしても、コンサルにしても、予算を抱えています。その予算を達成することが、彼らの仕事です。当然、数字をあげなければなりません。それには、いろいろな課題を克服しなければならない。その課題解決をソリューションとは、言っていませんか?こんな意地悪な質問をすると、何人かの方は、ほほを緩ませます。

 お客様の課題を解決するといいながら、その実、予算を達成するための自らの課題を解決しようと、ソリューションと称して、お客様に押し売りしている。それを自覚しているなら、確信犯です。しかし、その自覚が無い人も少なくないように思います。

 たとえば、お客様への売込みを行うとき、自分達の商品やできることを前提に考えている。何とか、それに押し込めようとしてみたり、その範囲を超えるものについては、自分達にはできないことと決めてかかり、まともに話を聞いたり、考えたりしない。こういう状態こそ、自分の課題を解決しようとしている姿です。

 自分達に何ができるかの前に、お客様の課題を理解することが、最初です。その上で、その解決策を提案するというのが、ソリューション提案の基本です。

 当然、自分達にできないことがあります。いや、自分達だけで、できないことが当たり前。むしろ、お客様の課題解決を自分達だけでできるなどと考えることのほうが、不遜といわざるを得ません。

 天下のIBMや富士通、NECだってそうでしょう。自分達で抱える商品だけで、商売をしているわけではなく、他者の協力を得なければ、何もできません。

 ソリューションを提案するということは、お客様の課題を解決する手立てを提案することだと申し上げました。そのためには、自社だけではなく他社も含めて、全体を取りまとめる必要があります。お客様から見たときにひとつの解決策として提供されなければなりません。

 つまり、お客様の課題を解決するためのいろいろな要素を取りまとめ、それをひとつのパッケージとしてまとめ上げたものが、ソリューションなのだと考えてはいかがでしょうか?

 こんな話しをすると、「それは、SIですよね?」と質問されることがあります。確かにその通りです。しかし、その組み合わせはまちまちで、ハードウェア機器と据付、調整、その後のサポートをお客様の課題に合わせて最適に組み合わせたものでもいいわけです。この程度のものは、一般に言われるSIとはいいませんが、広義に解釈するならSIといってもいいかもしれません。

 大切なことは、お客様の課題を解決することです。お客様の課題は、夫々に異なります。夫々に異なる個別の課題に対処したオーダーメイドの商品。それが、ソリューションです。たとえ自社ですべてに対応できなくても、その調整やコーディネーションをする。それ自体、立派な商品です。それこそ、お客様の一番求めているソリューションではないでしょうか。

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2009年9月2日水曜日

「知ったかぶり」と「知ってるつもり」


 「知ったかぶり」は、確信犯だ。知らないことへの自覚がある。一方の「知ってるつもり」は、本人に自覚が無い。知っていると思っているから、始末に悪い。

 私は、営業に「知ったかぶり」は、ある程度許されると思っている。いうなれば、ごまかしが利く。

 たとえば、お客様から、「今度、うちでもグリーンIT対策をすることになったんだが、そのためにサーバーの仮想化に真剣に取り組もうと思っていてねぇ。斎藤さん、どうすればいいかなぁ?」などと聞かれたとしよう。

 それに対して、「わかりました、部長。私どもも全面的にお手伝いさせていただきます。ただ、安易な意見は、方向を誤ります。御社の状況をしっかり調べさせていただいて、あらためて、私の考えも申し上げさせていただきますよ。」と言い逃れができる。

 お客様にしてみれば、なんだか、しっかりしているなぁ、頼りになりそうだと、ありがたい誤解となる。

 しかし、本人には、「グリーンIT」や「仮想化」について、よくわかっていないという自覚がある。だから、これで時間稼ぎをして、「これはやばいぞ・・・勉強しなきゃ。」と必死で勉強して、後知恵でなんとかつじつまをあわせることもできる。なんとか面目を保つことができるだろう。

 しかし、「知ってるつもり」は、そんな自覚が無いから困る。自分の浅知恵で、適当なことを言いかねない。インターネットが普及し、マルチベンダーが当たり前の世の中で、お客様もそれなりに勉強されているはず。そんなお客様には、簡単に見抜かれてしまう。営業の信用は、ガタ落ちだ。

 営業だから、すべてに詳しい専門知識など必要ない。広く浅く、知っていれば十分。ただ、以下の3点は、しっかりと抑えておく必要がある

 まず、その技術や製品が生まれてきた背景や歴史、そして、その思想や目的だ。そもそも、製品や技術は、何らかの課題を解決するために生み出されてきたものだ。その課題がお客様にあればこそ、その製品や技術は、価値を提供する。それがわからなければ、お客様に提案することさえできないはず。

 次は、その製品や技術の原理である。細かな実装方法やプログラムの中身を理解する必要は無い。どのような原理で、機能しているかである。それがブラックボックスのままで説明できなければ、お客様は安心できないはずだ。

 最後は、その製品や技術がもたらお客様の価値であり、ベネフィットである。コストの削減、運用負担の軽減、売り上げの増大、あるいは、法律や規制への対応といった社会的強制への対応などもそれに当たる。

 これらを整理整頓して、理解しておくことが必要だ。

 お客様が何を話しているのか、何を求めているのかは、ただ漫然と聞いているだけはつかめない。話しを実際の技術や製品に当てはめつつ、お客様の話を整理整頓してゆくことができる程度の知識がなくては、まともな提案などできるはずはありません。

 「知ってるつもり」のままでは、この整理整頓が、正しくできないのです。

 「知ってるつもり」にはなっていませんか?謙虚に一歩下がって、「知ったかぶり」になりましょう。そして、知らないという自覚に立って、少しでも、知識の不足を埋めてゆけばいいではないですか。

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SIer、ITベンダーの立場で話しをします。メーカーの商品説明ではありません。
9月8日(火) 開催 ・ 東京・九段下
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「知ったかぶり」の皆さん!この際ですから、足りない知識を埋め合わせしてみませんか?広く浅く、でも3つの要点は、押さえます。

詳しくは、こちらをご覧ください。

2009年9月1日火曜日

クラウドから逃げられない営業

 先日もご案内させていただきましたが、9月8日(火)に開催予定の無料セミナーでは、次のような話をしようと思っています。まだ、若干の余裕はありそうです。

 よろしければ、どうぞご参加ください。

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1.クラウド・コンピューティングとは
 クラウド・コンピューティングについて整理し、簡潔に解説します。クラウド・コンピューティングという言葉は、まだまだ発展途上にあり明確な定義はありません。

 「言葉は知っているが、整理できていない」という話しを良く聞きます。

 そこで、トレンド・メーカーである各社の動きを整理しつつ、「猿でもわかる」、「いまさら聞けない」、クラウド・コンピューティングとして、わかりやすく解説するつもりです。

2.クラウドがもたらすITビジネスの変化
 クラウドにより、ITビジネスの様相が大きく変化すると考えられます。どのようにそれが変化し、SIerやITソリューション・ベンダーはどんな影響を受けるのかを考えてみようと思います。

 また、この変化に対して、どのようにビジネスの方向を見定めてゆくべきかを考えてゆくつもりです。

3.どのような営業力が求められるのか
 クラウド時代にあって、SIerやITソリューション・ベンダーは、どのような対応を迫られるのか。そして、これに対応するためには、どのような営業力を持たなければならないかを考えます。

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 このブログでも度々紹介していますが、クラウドでシステムの実態がガラッと変わってしまうこともないでしょう。でも、営業活動の世界では、明らかに大きなパラダイム・シフトが既に起きています。

 つまり、お客様の選択肢の中に、今までになかった新しいキーワードが入ってきた。それも含めて、お客様は、意思決定しようとしているのです。こちらは、既に大きな変化がおき始めているのです。

 また、もうひとつ大きなポイントは、システム部門のユーザー化です。クラウドになると、インフラやプラットフォームの構築は、彼らにとっては不要なものとなります。とすると、システム部門は、より上流での意思決定に関与することになります。

 また、システム部門の関与なしに、ユーザー部門が意思決定することも多くなることが予想されます。かつての「部門コンピューター問題」と同じような事態が予想されます。

 このように、システムの選定が、エンドユーザーにシフトすると、当然今までどおりのシステム部門相手の営業活動というわけにはゆきません。

 このあたりを整理してみようというのが、このセミナーの目的です。

 皆さんのご意見も、聞かせていただければありがたいですね。

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