2009年9月5日土曜日

常識が、非常識となるとき(1)

 中小SIerが、土砂降りのようだ。

 先日、ノークリサーチの伊嶋さんと話しをする機会があった。倒産、廃業、統合が、進んでいるという。

 世間では、景気回復の兆しありとは言うが、この業界は、まだまだそうではないらしい。実際にお付き合いさせていただいているSIerの方からも同じような話を聞く。

 ある営業に話を聞くと、システム部門も、ずっと殻に閉じこもっていたこともあり、そろそろ何かしなければと、話しや相談は増えてきているという。しかし、商談に結びつく話しには、なかなかならないようで、いっしょになって、どうしようかと語り合っているに過ぎないようだ。

 伊嶋さんとの話の中で、需要に対して、SIerやソリューション・ベンダーの数が多すぎるという話しがあった。

 確かに、サーバーの稼働率は、せいぜい2割程度に過ぎない。この不況である。冷静に考えれば、システムの統廃合、仮想化を進めれば、理屈の上では、サーバー台数を1/5にできることになる。もちろん、技術的な限界もあり、理屈道理に行かないにしても、過剰であることに違いは無い。

 TCA(システムの購入コスト)が、どんどんと下落し、既存のサーバーを機能拡張して、稼働率を高めるより、アプリケーション単位、あるいは、機能単位でサーバーを導入したほうが安いということで、サーバー台数がどんどんと増えていった。しかし、その結果として、TCOは、増加していった。

 結局は、ITシステムに関わる費用は、何も変わらない。むしろ、適用業務の範囲が広がり、可用性を高めるための冗長化も、結局はTCOを引き上げている。TCAが安いからと、どんどん増やしてきたサーバーは、今度は、TCOの増大で、導入意欲の低下を招いているといっても過言ではないだろう。

 この矛盾を断ち切らなければならないと、ユーザー企業は、考え始めている。つまり、今までの常識は非常識となり、いままでのユーザーとSIerの「これでよかった関係」は、もはやそうではなくなることを意味している。

 今は、不況である。こういう時期は、今までの常識が否定され、それを誰もが、当然と考える。経営者は、さらに厳しく、「他の選択肢を考えなさい」とシステム部門に求めている。この言葉の裏には、「もっと安いところと付き合ったらどうですか!」という、暗黙の指示が隠れている。

 伊嶋さんからいただいたレポートの中に、「IT投資の効果がはっきりと見えるモノ以外は、投資しない」との言葉があった。つまり、「収益に直結する投資」か、「コスト削減につながる投資」かのいずれかである。

 収益に直結する投資は、ITの場合、なかなか見えにくいし、時間もかかるので、この時期、なかなかプロジェクトを起こすことは難しい。となると、コスト削減につながる投資ということになる。

 もっとも簡単な話しは、サーバーやストレージなどの機器類の統廃合による削減であり、システムを自ら所有し運用する方法から、SaaSなどを利用した従量課金型サービスへの移行ということになる。

 このような取り組みは、ユーザー企業にとっては、必ずしもいいことばかりではない。手間もかかるし、リスクも伴う。しかし、こういう時期だからこそ、背に腹は変えられないわけで、コスト削減に向けた施策がどんどんと進められることになるだろう。

 先日、あるSIerの社長に話を聞いたところ、「いままで運用を受託していたが、サーバーを半減して、今までの2箇所のセンターを一箇所に統合かるから、運用の要員も減らしたいという話が来ている。最近、そんな話ばかりが増えてきた。」と嘆いていた。

 不況は、この動きをますます加速するだろう。

 このブログでも、度々申し上げているが、身体を丸めて、不況をやり過ごせば、またもとの状態にもどるだろうという期待は、早々に捨てたほうがいい。

 ならば、SIerやITソリューション・ベンダーは、何をすべきか。

 次回は、その点について、掘り下げてみようと思う。

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