2011年12月30日金曜日

変化を拒み続ける人たち 私は彼らに抵抗勢力となり得たのか


「今、世の中が大きく変わり始めている。」

この言葉をキッパリと否定できる人はなかなかいない。「そうだよなぁ」と誰もが思ってしまう。しかし、この言い古された言葉は、世の中を表現する万能のレトリックであり、実はなにも世の中を説明していない。

かつて変わらない世の中などあったのだろうか。私達の日常は、日々変化の連続であり、その変化に対処する営みが生活であり、仕事ではないのか。つまり、生きるとは変化への適応なのだ。その日常の変化の積み重ねが、大きなうねりとなって時代の流れを創り出している。

「よく生きる」とは、この変化を冷静に受け入れ、自らの不適応を悟り、新たな変化への適応を模索する営みではないのか。

世界を見渡せば、様々な事情から「よく生きる」などままならず、生命維持のための「生きる」だけが精一杯の人たちもたくさんいる。ならば、「よく生きる」環境が与えられている私達が彼らの「よく生きる」に責任を持つことは当然であろう。変化を受け入れるとは、そこまでも含めて受け入れることではないのか。

3.11もそんな変化のひとつなのだろう。多くの人が亡くなり、生活の基盤を失った。その圧倒的な破壊と喪失感を「変化」というありふれた言葉に置き換えることにためらいも感じるが、悠久の自然の営みに照らせれば、それはひとつの変化に過ぎない。

目先を転ずれば、スマート・フォン、Webアプリケーション、HTML5、ソーシャル・メディア、オフショア、クラウド、ビッグデータ、OpenFlow・・・これまでの常識を非常識に変えてしまう様々な変化が生まれている。この変化はビジネスの有り様を変えるだけではなく、社会や文化、人々の価値観にも様々な変化をもたらすだろう。

このような変化に目をつむり、変化への適応を放棄する人たちがいる。かつての成功、これまでの平和、これまでの技術・・・たしかに、これまではそれでもうまくいった。しかし、それは全て、そして確実に変化している。過去の栄光は、もはや何光年も離れた別の銀河の恒星の輝きであり、それを美しい感じることはあっても、太陽のように私達の生活を豊かにしてくれる存在にはなり得ない。

「むつかしくて理解できない」、「私は古い人間だから」、「最近の若者の考えていることはよくわからない」・・・様々な言訳で自らの思考停止を正当化しようとする人たちがいる。そして、年齢や社会的地位という絶対的な尺度を権威として振りかざし、変化への対応を模索する人たちに圧政を強いる。今の世を見渡せば、企業も政治もそんな構図に支配されていると感じるのは私だけだろうか。

これを普遍化するつもりはない。そうではないという人たちや企業も数多くあることを私も目にしている。しかし、あえて自らへの戒めとして、「よく生きる」を放棄した人の圧政に抵抗する気持ちを失わないために、この目線を持ち続けたい。

年の瀬に当り、今年の一年を振り返れば、まさにこういう人たちとの係わりであり、抵抗であり、挫折であったかもしれない。

これは自分の独善なのかもしれないと思うことがある。時には、自分の思い込みで迷惑を掛けたことも痛い思い出としてよみがえる。そして、痛烈な反省を強いられた一年でもあった。私にとって、今年は、そんな自分の未熟を思い知らさる一年であった。

新たな年を迎えようとしている。そして、また来年の年の瀬も同様に自分の未熟を思い知らされているだろう。いや、そうありたいと思う。



■ 開催決定 * ITソリューション塾 第9期 ■

過去8期に渡り、多くの皆さんにご参加いただきました「ITソリューション塾」、その第9期を下記の日程で行うことが決定いたしました。

-----------------------
毎週水曜日の 18:30-20:30
全10回開催
初回 2月8日/最終 4月11日
場所 東京・市ヶ谷
参加費 9万円(+消費税)
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ITの最新トレンドとビジネス戦略、ソリューション・ビジネスに関わる人が是非身につけたい顧客満足度の管理方法やドキュメンテーションなどの顧客応対スキルなどを体系的に整理します。


ITの最新トレンドとビジネス戦略については、社内やお客様の説明にそのまま使っていただけるように、パワーポイントのソフトコピーで差し上げます。ちなみに第8期では500ページほどになりました。








詳細のカリキュラムはこれからですが、例えば・・・
・クラウドとITトレンド
・ソーシャル・メディア
・クラウド・クライアント/モバイル端末とHTML5
・ITプラットフォーム・ソリューション
などの最新トレンドとこれらに関わる業界の動向、そしてビジネス戦略などをできるだけわかりやすいビジュアルを駆使して体系的に解説します。


毎回、すぐに一杯になりますので、もし参加をご検討の場合には、私のメールアドレスまたはFacebookにメッセージをお送りください。


■ コレ一枚シリーズ いろいろ 

Facebookから、皆様のご意見を頂戴したり、情報を発信しています。

詳しくはこちらへ。

2011年12月23日金曜日

「理解・納得できなければやらせない」企業は潰れる


「計画に緻密さが足りない。収益の裏付けも根拠が不十分。これでは、承認なんかできるわけないじゃないか」

事業計画を役員会に諮ると必ずこういう意見が出てきます。

リーン・スタートアップという言葉をご存知でしょうか。リーン= Leanとは、「やせた、貧弱な」スタートアップ=起業という意味です。

スティーブン・ブランクの「アントレプレナーの教科書」という起業家のバイブルみたいな本がありますが、この本に影響を受けた起業家のエリック・リーズが考え出した事業を始めるための手法です。

この手法の肝は、「すぐに始めてみる」です。

厳密な要件定義や事業計画を行うことなく、とにかく「これはいけそうだ」と思いついたら、とにかく作ってみる。たとえ未熟なサービスであってもそれをリリースし、課金もしてしまいます。

バグもあれば、機能も不十分。それでも始めてしまいます。そして、サービスを提供しながらバグを修正し、機能を高めて行きます。それをきわめて短いサイクルで繰り返し行って行くこで、顧客の反応確かめながら、さらに完成度を高めて行く。そうやっと早期に顧客を集め、少しでも売上を得て存在感をアピールし資金を呼び込もうという考えです。

知名度のない企業やサービス、根拠も不十分なままに鉛筆をなめて創作した事業計画。資金を提供する側も、そのような見えないビジネスに資金を出すには大きなリスクが伴います。しかし、たとえ未熟ではあっても、またクレームがあっても、とにかくサービスを提供し実績をアピールする。そうするほうが、遥かに可能性やリスクを捉えやすくなりますから、資金を提供しやすいというわけです。

わたしは、このような手法を既存のSIerも採用してみてはどうかと思っています。

大小様々な企業の事業計画策定に係りながら常々思うことは、テクノロジーの革新やトレンドの変化に敏感な若手社員とそのようなこと関心を持たない経営者との意識のギャップです。

時代の変化に対応すべくチャレンジし、どんどん攻めるべきだと考える若手社員、片やリスクを冒すことに慎重な姿勢を崩さない経営者。共に会社をもっとよくしたいという思いは同じなのに、その手法の違いで対立してお互いに疑心暗鬼を生み出している。そんな構図をよく目にします。

両者の言い分にはそれぞれに理由があります。一概にどちらが正しい、どちらが間違っているといえるものではありません。ただ、ひとつはっきりしていることは、力関係の不均衡です。経営者が圧倒的に有利な立場にいる。たから、結局は経営者の意見に従わざるを得ません。残念ながらこのような環境では、イノベーションが生まれることはありません。

敗北した若者たちはどうするか。面従腹背を貫き会社に留まるか、会社を辞めるかです。ともに彼らの持つ可能性や能力を引き出すことはできません。

立場上、若手にも経営者にも接することができる訳ですが、若手をもっと信じ任せてあげてはどうかと思うことがしばしばです。ITのトレンド、ビジネス環境を彼らはよく知っています。かれらはお客様と身近に接し、お客様の必要としているもの、どうすればもっとうまくできるだろうかを真剣に考え勉強しています。もちろん全ての若者がそうだと言うつもりはありません。ただ、そういう人は必ずいるのです。

先日、普段はライバル関係にあるふたつの大手SIerで、事業開発・研究の責任をもつ二人と共に会食の機会がありました。彼らは共に、「これまでのSI事業に手を抜くつもりはないが、今後の大きな成長は期待できない。新たな事業の開発を急がなければ、会社としての成長はない。SI事業を補う形での事業をどのように創り出してゆくがが大きな課題だ。」

これは、大手に限らず受託や請負を生業にしてきた企業にとっては、共通の課題でしょう。

ではどうすればいいのでしょうか。

SIerはこれまで、お客様の業務分析から始まり、課題整理、要件定義とすすめ仕様を作りそれを開発する。言うなれば、「既知の仕様」を起点としたシステム開発を得意としてきました。これがウォーターフォール型の開発です。

しかし、今、何が新たな事業として成り立つかわからない状況、つまり「既知の仕様」がありません。「未知の仕様」からスタートしなければならないのです。このような状況にあっては、「リーン・スタートアップ」がいいのではないかと思っています。

とにかく、現場の感性を信じ始めてみることです。そこで試行錯誤を繰り返し、走りながら考え、完成度を高めてゆく。「計画が不十分、収益の裏付けがない」を理由にゼロ・イチの判断をするのではなく、必要最低限のチャンスを提供し、サービスを初めて見るということです。

こんなことを言うと、「バグがあったらどうする」、「クレームがあったらどうする」と、どうしても足かせをはめたがるものですが、そのリスクを引き受けるのも経営者の役割だろうと思うのです。

「理解・納得できなければやらせない」ではなく、「理解・納得できないから、わかるようなものを作ってくれ」の発想に変えることです。

会社をよくしたいという思いを信じること。失敗のタネを積むのではなく、小さな失敗のタネをたくさん撒いて、大きな成功のチャンスを増やすこと。「リーン・スタートアップ」はスタートアップの企業ばかりではなく、既存企業にも十分使えるのではないかと考えています。

■ 開催決定 * ITソリューション塾 第9期 ■

過去8期に渡り、多くの皆さんにご参加いただきました「ITソリューション塾」、その第9期を下記の日程で行うことが決定いたしました。

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詳細のカリキュラムはこれからですが、例えば・・・
・クラウドとITトレンド
・ソーシャル・メディア
・クラウド・クライアント/モバイル端末とHTML5
・ITプラットフォーム・ソリューション
などの最新トレンドとこれらに関わる業界の動向、そしてビジネス戦略などをできるだけわかりやすいビジュアルを駆使して体系的に解説します。


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2011年12月17日土曜日

「簡単なことじゃありません」という思考停止


「斎藤さん、そう簡単なもんじゃないですよ。」

いくつかのSI事業者の事業戦略策定をお手伝いしています。数千人の大会社から数百人の中堅会社と規模も様々です。ただ、共通するのは、どこの会社でも、経営幹部の何人かから、かならずこんな言葉を伺います。

当然のことだと思います。これまで育ててきた人材、多くのシステム資産、膨大な顧客資産・・・その膨大なアセットと歴史を抱えているわけです。簡単にできるなどというほうがおかしな話しです。

しかし、だったら何もしないでいいのでしょうか。事業改革の動きを止めてしまったいいのでしょうか。止めるとまでは行かなくても、ソフトランディングと称して、世間を見ながらゆっくり、徐々に・・・それでいいのでしょうか。

先週も書きましたが、JUASのレポートを見ると、情報システム予算の対売上高比率は、ここ10年で56%も激減しています。運用管理にかかるコストは情報システム予算の7割りを越えるほどに肥大化しています。もはやお客様は、これまでのやり方で情報システムを維持することが難しいと考え始めています。



年末も近づき、「2012年の展望」がガートナーやIDCから発表されています。これらを見ると、クラウド利用の壁が大きく崩されつつあるという実感です。

セキュリティ、コンプライアンス、標準化されたシステムへの移行・・・ミッションクリティカルな基幹業務システムをクラウドに移行するなど簡単なことじゃないと二の足を踏んでいた企業も少なくないはずです。しかし、もはやそんなことを言っていられる状況ではないようです。

パッケージ・ソフトウェアをそのまま使うなんて、あり得ないと豪語していた企業が、事業のグローバル展開を加速するためにカスタマイズすることなしに導入することはもはや常識となりつつあります。そこに収益を求めていたSI事業者にとっては、厳しい現実が待ち受けています。

開発-保守・運用-開発-保守・運用・・・このサイクルを前提に事業収益を拡大・維持してきたSI事業者にとっては、きっかけとなる開発という人工仕事がサービスやオフショアに置き換わり、運用はクラウドに任せれば必要ない時代になろうとしています。

モバイル・クライアントに関連した開発需要が急激に伸びています。しかし、未だにAjaxやobjectiv Cのスキル育成のための研修プログラムを体系化していない企業も少なくありません。

情報システムは、大きく舵を切り始めたこと、そしてそのスピードが加速していると、昨今の動きを見ていて強く感じています。

米企業のCIOと話す機会がありました。かれらは実に情報システムのトレンドや技術の細部を熟知していました。そんな話しを外資系企業の日本法人社長に話すと、米国では当たり前であり日本のCIOと称する人たちとは大きく違っているとのことでした(もちろん、みんながそうだと言うつもりはありません)。

SI事業者に丸投げし自らは思考停止状態になっているユーザー企業の情報システム部門。それをいいことに利益相反になる事業転換に進もうとしないSI事業者。そんな利害の一致が、時代の変革を遅らせていると考えるのは、間違っているでしょうか。

円高や国内市場の低迷を受けて、情報システムの国内需要は伸び悩んでいます。経営からは時代の変革に対応できない情報システム部門への不満が拡大しているようにも聞いています。そんな時代の流れの中で、変革をアピールできないSI事業者は、変革に躊躇する情報システム部門とともに一蓮托生で干されてしまう・・・そんな可能性も否定できないように思います。

「そう簡単じゃない」はその通りだと思います。じゃあ、どうするんですか?簡単じゃない、現状が把握できていない、とりあえずなんとか仕事は回っている。その通りかもしれませんが、それで思考停止になっては必ず時代の流れからはじき飛ばされてしまいます。

変化のスピードが速くなった訳ではありません。変化のパラダイムが変わったとみるべきでしょう。今までの延長線とは交差しない位相に新しい流れが生まれたと考えるべきでしょう。改善を加速しついて行こうとしても、もはや時代の流れは、今までの延長線上にはないのです。思い切って新しい流れに飛び移る決断が必要なのではないでしょうか。その決断は、経営者にしかできないことです。


■ コレ一枚シリーズ いろいろ

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2011年12月11日日曜日

イノベーションなき営業に未来は訪れない


 「メインフレームにお金がかかりすぎていると言われ続けているんです。かといって、これまでメインフレームで構築したシステム資産をそう簡単にオープンシステムへ移行できませんよ。移行コストだけでも数億ではすまないでしょう。無事に移行ができたからといって、メインフレームの信頼性や安定性はありません。経営者からは、移行できて当たり前で、当然メインフレーム同様の安定した運用品質が求められます。つまり、何の付加価値も生みださない仕事に多大な時間を割き、新たリスクも背負い込むことになる。そして、評価されることもないでしょう。本当に困った話しです。」

 あるシステム企画の責任者から、こんな話を伺いました。

 あなたなら、どんな提案をされるでしょうか。たとえば・・・

 「もはやオープンシステムの時代です。メインフレームを使っていること自体、もはや時代に取り残されているんです。お金がかかるのは仕方ないことです。経営者もきっと納得してくれますから、オープン・システムへ移行されるべきです。」

 残念ながら、このような提案では何の解決にもならないでしょう。彼の最大の関心は、「何の付加価値も生みださい仕事に時間とお金を掛け、リスクも拡大し、評価もされない」こと。解決したいのは、この点なのだと言うことに何も応えてはいません。確かにそれでもそれが彼の役割だということにもなるのでしょうが、現場に責任を持つ人として、仕事へのやりがいを見いだすことは難しいのではないでしょうか。ITはそんなに冷たいモノなのでしょうか。

 私は、こんなアイデアを申し上げてみました。

 「新しいメインフレームではWindowsも動きます。もちろん、ストレージなどのデバイス類もメインフレーム用の高価なものは必要ありません。だから、今社内で動いている全てのPCサーバーをメインフレームに集約してはどうでしょう。また、WindowsXPをWindows7に移行する受け皿としても、メインフレームが使えます。新しいメインフレームの持っているPCサーバーの機能を使ってデスクトップの仮想化を行ってはどうですか。未だ廃却できないWindowsXP資産も残しながら、償却時期に合わせて順次シンクライアントに移行して行くこともできます。このようにすれば最新のデスクトップ環境にいち早く対応し、しかもセキュリティやBCPへの対応もいっきに高まるはずです。もちろん今一番コストのかかっている運用管理のコストは削減されるはずです。メインフレームのプログラム資産はそのままに、運用管理コストを下げ、セキュリティも強化し、BCPにも対応する。メインフレームの持つ高い信頼性と連続可用性も手に入れ、トータルとしての費用圧縮を実現する。検討する余地は大いにあるのではないでしょうか。」

 彼が目を輝かせたのは言うまでもありません。

ITはコスト削減や効率化に大きく寄与してきました。しかし、それ以上にこれまでできなかったことができるようになり、経営や業務の改革や革新、すなわちイノベーションをもたらしてきたのもITです。そういう仕事はひとにやりがいと幸せをもたらします。

スティーブ・ジョブスのような世界を変えるイノベーションはそう簡単にできなくても、企業の様々な取り組みに小さいながらもイノベーションをもたらすことは誰にでもできるはずです。ジョブスの言葉に、「あるべき姿を明確にし、それを実現することだ」とありました。わたしは、これこそがイノベーションの源泉ではないかと思っています。

今できること、手持ちの商品、抱えている要員や体制・・・そういう制約条件をあらかじめ課した上で解決策を考えていてはイノベーションは生まれません。これらを一旦棚上げにし、お客様の「あるべき姿」を徹底的に追求するべきなのです。

これには、もうひとつ大切な前提があります。自分たちのことだけではなく、世の中を広く知ることです。たとえあるべき姿が明確になったとしても、それを実現する手段に何の見通しもなかったとすれば、荒唐無稽な議論に終始するだけです。それでは、実効性のある戦略は生まれません。

イノベーションは決して突飛なものではありません。世の中の流れの必然であり、それをだけよりも早く見つけて実現することなのです。メインフレームの新しい製品や機能について知識がなければ、上記のようなアイデアは出てこなかったでしょう。決して深い知識があるわけではなく、自分の関心に引っかけておく程度でいいのです。




上述の話しは、お客様にとってささやかなイノベーションの可能性を提供することになったようです。

IT営業とは、ITを使ってお客様のイノベーションを実現するプロデューサーです。その責任を果たすためにやるべきことは、たくさんあります。

もし、あなたがそんなことには関心が持てない・・・というのであれば、IT営業ではない道も探るべきでしょう。

もはや、モノの機能や性能で差別化できない時代です。だからこそ、どうすればお客様にイノベーションを提供できるかを考え、それで勝負しなければ、生き残る道はありません。

お客様の反応は明確です・・・「びっくり」です。あなたは、そんなお客様のびっくりを引き出しているでしょうか。これからの競争は、そこにかかっているように思います。


■ コレ一枚シリーズ いろいろ

イノベーションの源泉は、豊富な知識の引き出しを持つことです。そんなお役に立てるようにとコレ一枚シリーズを作っています。詳しくはこちらへ。

2011年12月3日土曜日

カラオケ講師にはなりたくない


研修で講師をしていると、受講者の様子は手に取るようにわかります。つまらなそうな人もいれば、熱心に聞き入りメモを取る人もいる。なかには気持ちよさそうに夢の世界で遊ぶ人もいます。

しかし、それは全て講師の力量。彼らの様子を見ながら、如何に彼らの関心を維持し、講義に集中させるかは、ひとえに講師の技量なのです。受講者の質が低い、学習意欲がないという言訳は、決してしてはならないと思っています。

講師という仕事は、知っていることを語るだけではできません。がんばって作った資料を説明するだけで、役目を果たすことはできません。何を知らせるかも大切ですが、どう知らせるかもしっかりと考えておくべきです。

講義は、受講者との対話です。彼らの様子を見ながら質問を投げかけ、彼らの反応を見ながら伝えるべき言葉を選別しなくてはきなりません。そんなコミュニケーションでなくてはなりません。自分の語りに陶酔し、受講者の顔が見えなくなってしまうようでは、それはカラオケと大差はありません。自己満足には浸れても、受講者の満足を引き出すことはできません。

同じテーマで話すときも、相手が若手であればそのように、ベテランであればこのようにと、話題を膨らましたり縮めたりは当然です。大手顧客を担当する人もいれば、中堅中小が担当の人もいる。それぞれに関心を持ってもらえる話題も提供しなくてはなりません。

企業個別の研修ならば、その会社のことをしっかりと調べておくことは、基本です。何を扱っているか、業績はどうか、経営者はどんな人かは当然として、そのライバル会社はどこなのか、取引先にどんな会社があるのか、この会社や業界に関わるニュースや話題も探しておくべきでしょう。そして何よりも、この会社の、あるいは経営者の、そして受講者の関心はどこにあるのかを想像し、仮説を立てておくことです。

説明する資料は、美しくなくてはなりません。汚い資料を誰が喜ぶでしょうか。自分の伝えたいことを殴り書きにして、体裁をつくろいスペースを埋めるために出来合いのクリップアートを貼り付ける。何の美意識もなく、相手を心地よくさせようという気配りもない。そんなものが、お金をいただく仕事なのでしょうか。

受講者から貴重な時間をお預かりしているという自覚も必要です。その感謝に応えることが、講師の責任です。

講師は、思想を伝えなくてはなりません。解釈を述べるべきです。正確な情報を伝えることは当然として、なぜこうなのか、自分がどう思うかもしっかりと語るべきです。そして、受講者にもそれを考えさせなくてはなりません。

残念ながら、いつもこのようにはゆきません。失敗することはしょっちゅうです。もちろん、よしやったと軽く握り拳・・・たまにはそんなこともあります。そんな自分を素直に観察する目も必要ですね。

だから楽しいのかもしれません。同じテーマの講義であっても、条件が同じことなど絶対にありません。いつまでたっても完璧にはなれない。だからこそ、よぉ~し次はどうしようかと考える。

そして、資料を手直しし、新しい資料をまたつくってしまいます。小ネタを探しに時間が取られ、本来の資料がなかなかできないなんてこともしばしばです。なんとも非効率きわまりない。だから楽しいんですね。

■ コレ一枚シリーズ 「OpenFlow」

今週は、OpenFlowについて、まとめてみました。詳しくはこちらへ。



■ 日経コンピューター主催[ソリューションビジネス道場]が開講します ■

12月9日と15日の2日間、講師を務めさせていだきます。ITのトレンドやビジネス環境を整理し、これからどのような取り組みが必要かを考えてみようと思います。

これからのIT営業に期待される役割や機能は大きく変わってきます。どのようにして、このような時代の変化に対応して行けばいいのかを、その実践ノウハウを交えながら解説させていだきます。

対象者は、これからのソリューション・ビジネスに関わる皆さんです。経営者、技術者、マーケティング、営業などの皆さんにお役に立つように考えています。

なお、コレ一枚シリーズのようなトレンドに関するチャート(百数十枚)もパワーポイントのソフトコピーで差し上げます。是非皆さんの営業活動にご活用ください。

さて、今日のブログのようにうまくゆきますかどうか。自分でハードルを上げてしまいました(笑)

詳しくはこちらをご覧ください。