2011年12月11日日曜日

イノベーションなき営業に未来は訪れない


 「メインフレームにお金がかかりすぎていると言われ続けているんです。かといって、これまでメインフレームで構築したシステム資産をそう簡単にオープンシステムへ移行できませんよ。移行コストだけでも数億ではすまないでしょう。無事に移行ができたからといって、メインフレームの信頼性や安定性はありません。経営者からは、移行できて当たり前で、当然メインフレーム同様の安定した運用品質が求められます。つまり、何の付加価値も生みださない仕事に多大な時間を割き、新たリスクも背負い込むことになる。そして、評価されることもないでしょう。本当に困った話しです。」

 あるシステム企画の責任者から、こんな話を伺いました。

 あなたなら、どんな提案をされるでしょうか。たとえば・・・

 「もはやオープンシステムの時代です。メインフレームを使っていること自体、もはや時代に取り残されているんです。お金がかかるのは仕方ないことです。経営者もきっと納得してくれますから、オープン・システムへ移行されるべきです。」

 残念ながら、このような提案では何の解決にもならないでしょう。彼の最大の関心は、「何の付加価値も生みださい仕事に時間とお金を掛け、リスクも拡大し、評価もされない」こと。解決したいのは、この点なのだと言うことに何も応えてはいません。確かにそれでもそれが彼の役割だということにもなるのでしょうが、現場に責任を持つ人として、仕事へのやりがいを見いだすことは難しいのではないでしょうか。ITはそんなに冷たいモノなのでしょうか。

 私は、こんなアイデアを申し上げてみました。

 「新しいメインフレームではWindowsも動きます。もちろん、ストレージなどのデバイス類もメインフレーム用の高価なものは必要ありません。だから、今社内で動いている全てのPCサーバーをメインフレームに集約してはどうでしょう。また、WindowsXPをWindows7に移行する受け皿としても、メインフレームが使えます。新しいメインフレームの持っているPCサーバーの機能を使ってデスクトップの仮想化を行ってはどうですか。未だ廃却できないWindowsXP資産も残しながら、償却時期に合わせて順次シンクライアントに移行して行くこともできます。このようにすれば最新のデスクトップ環境にいち早く対応し、しかもセキュリティやBCPへの対応もいっきに高まるはずです。もちろん今一番コストのかかっている運用管理のコストは削減されるはずです。メインフレームのプログラム資産はそのままに、運用管理コストを下げ、セキュリティも強化し、BCPにも対応する。メインフレームの持つ高い信頼性と連続可用性も手に入れ、トータルとしての費用圧縮を実現する。検討する余地は大いにあるのではないでしょうか。」

 彼が目を輝かせたのは言うまでもありません。

ITはコスト削減や効率化に大きく寄与してきました。しかし、それ以上にこれまでできなかったことができるようになり、経営や業務の改革や革新、すなわちイノベーションをもたらしてきたのもITです。そういう仕事はひとにやりがいと幸せをもたらします。

スティーブ・ジョブスのような世界を変えるイノベーションはそう簡単にできなくても、企業の様々な取り組みに小さいながらもイノベーションをもたらすことは誰にでもできるはずです。ジョブスの言葉に、「あるべき姿を明確にし、それを実現することだ」とありました。わたしは、これこそがイノベーションの源泉ではないかと思っています。

今できること、手持ちの商品、抱えている要員や体制・・・そういう制約条件をあらかじめ課した上で解決策を考えていてはイノベーションは生まれません。これらを一旦棚上げにし、お客様の「あるべき姿」を徹底的に追求するべきなのです。

これには、もうひとつ大切な前提があります。自分たちのことだけではなく、世の中を広く知ることです。たとえあるべき姿が明確になったとしても、それを実現する手段に何の見通しもなかったとすれば、荒唐無稽な議論に終始するだけです。それでは、実効性のある戦略は生まれません。

イノベーションは決して突飛なものではありません。世の中の流れの必然であり、それをだけよりも早く見つけて実現することなのです。メインフレームの新しい製品や機能について知識がなければ、上記のようなアイデアは出てこなかったでしょう。決して深い知識があるわけではなく、自分の関心に引っかけておく程度でいいのです。




上述の話しは、お客様にとってささやかなイノベーションの可能性を提供することになったようです。

IT営業とは、ITを使ってお客様のイノベーションを実現するプロデューサーです。その責任を果たすためにやるべきことは、たくさんあります。

もし、あなたがそんなことには関心が持てない・・・というのであれば、IT営業ではない道も探るべきでしょう。

もはや、モノの機能や性能で差別化できない時代です。だからこそ、どうすればお客様にイノベーションを提供できるかを考え、それで勝負しなければ、生き残る道はありません。

お客様の反応は明確です・・・「びっくり」です。あなたは、そんなお客様のびっくりを引き出しているでしょうか。これからの競争は、そこにかかっているように思います。


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