2011年12月30日金曜日

変化を拒み続ける人たち 私は彼らに抵抗勢力となり得たのか


「今、世の中が大きく変わり始めている。」

この言葉をキッパリと否定できる人はなかなかいない。「そうだよなぁ」と誰もが思ってしまう。しかし、この言い古された言葉は、世の中を表現する万能のレトリックであり、実はなにも世の中を説明していない。

かつて変わらない世の中などあったのだろうか。私達の日常は、日々変化の連続であり、その変化に対処する営みが生活であり、仕事ではないのか。つまり、生きるとは変化への適応なのだ。その日常の変化の積み重ねが、大きなうねりとなって時代の流れを創り出している。

「よく生きる」とは、この変化を冷静に受け入れ、自らの不適応を悟り、新たな変化への適応を模索する営みではないのか。

世界を見渡せば、様々な事情から「よく生きる」などままならず、生命維持のための「生きる」だけが精一杯の人たちもたくさんいる。ならば、「よく生きる」環境が与えられている私達が彼らの「よく生きる」に責任を持つことは当然であろう。変化を受け入れるとは、そこまでも含めて受け入れることではないのか。

3.11もそんな変化のひとつなのだろう。多くの人が亡くなり、生活の基盤を失った。その圧倒的な破壊と喪失感を「変化」というありふれた言葉に置き換えることにためらいも感じるが、悠久の自然の営みに照らせれば、それはひとつの変化に過ぎない。

目先を転ずれば、スマート・フォン、Webアプリケーション、HTML5、ソーシャル・メディア、オフショア、クラウド、ビッグデータ、OpenFlow・・・これまでの常識を非常識に変えてしまう様々な変化が生まれている。この変化はビジネスの有り様を変えるだけではなく、社会や文化、人々の価値観にも様々な変化をもたらすだろう。

このような変化に目をつむり、変化への適応を放棄する人たちがいる。かつての成功、これまでの平和、これまでの技術・・・たしかに、これまではそれでもうまくいった。しかし、それは全て、そして確実に変化している。過去の栄光は、もはや何光年も離れた別の銀河の恒星の輝きであり、それを美しい感じることはあっても、太陽のように私達の生活を豊かにしてくれる存在にはなり得ない。

「むつかしくて理解できない」、「私は古い人間だから」、「最近の若者の考えていることはよくわからない」・・・様々な言訳で自らの思考停止を正当化しようとする人たちがいる。そして、年齢や社会的地位という絶対的な尺度を権威として振りかざし、変化への対応を模索する人たちに圧政を強いる。今の世を見渡せば、企業も政治もそんな構図に支配されていると感じるのは私だけだろうか。

これを普遍化するつもりはない。そうではないという人たちや企業も数多くあることを私も目にしている。しかし、あえて自らへの戒めとして、「よく生きる」を放棄した人の圧政に抵抗する気持ちを失わないために、この目線を持ち続けたい。

年の瀬に当り、今年の一年を振り返れば、まさにこういう人たちとの係わりであり、抵抗であり、挫折であったかもしれない。

これは自分の独善なのかもしれないと思うことがある。時には、自分の思い込みで迷惑を掛けたことも痛い思い出としてよみがえる。そして、痛烈な反省を強いられた一年でもあった。私にとって、今年は、そんな自分の未熟を思い知らさる一年であった。

新たな年を迎えようとしている。そして、また来年の年の瀬も同様に自分の未熟を思い知らされているだろう。いや、そうありたいと思う。



■ 開催決定 * ITソリューション塾 第9期 ■

過去8期に渡り、多くの皆さんにご参加いただきました「ITソリューション塾」、その第9期を下記の日程で行うことが決定いたしました。

-----------------------
毎週水曜日の 18:30-20:30
全10回開催
初回 2月8日/最終 4月11日
場所 東京・市ヶ谷
参加費 9万円(+消費税)
------------------------------------


ITの最新トレンドとビジネス戦略、ソリューション・ビジネスに関わる人が是非身につけたい顧客満足度の管理方法やドキュメンテーションなどの顧客応対スキルなどを体系的に整理します。


ITの最新トレンドとビジネス戦略については、社内やお客様の説明にそのまま使っていただけるように、パワーポイントのソフトコピーで差し上げます。ちなみに第8期では500ページほどになりました。








詳細のカリキュラムはこれからですが、例えば・・・
・クラウドとITトレンド
・ソーシャル・メディア
・クラウド・クライアント/モバイル端末とHTML5
・ITプラットフォーム・ソリューション
などの最新トレンドとこれらに関わる業界の動向、そしてビジネス戦略などをできるだけわかりやすいビジュアルを駆使して体系的に解説します。


毎回、すぐに一杯になりますので、もし参加をご検討の場合には、私のメールアドレスまたはFacebookにメッセージをお送りください。


■ コレ一枚シリーズ いろいろ 

Facebookから、皆様のご意見を頂戴したり、情報を発信しています。

詳しくはこちらへ。

2011年12月23日金曜日

「理解・納得できなければやらせない」企業は潰れる


「計画に緻密さが足りない。収益の裏付けも根拠が不十分。これでは、承認なんかできるわけないじゃないか」

事業計画を役員会に諮ると必ずこういう意見が出てきます。

リーン・スタートアップという言葉をご存知でしょうか。リーン= Leanとは、「やせた、貧弱な」スタートアップ=起業という意味です。

スティーブン・ブランクの「アントレプレナーの教科書」という起業家のバイブルみたいな本がありますが、この本に影響を受けた起業家のエリック・リーズが考え出した事業を始めるための手法です。

この手法の肝は、「すぐに始めてみる」です。

厳密な要件定義や事業計画を行うことなく、とにかく「これはいけそうだ」と思いついたら、とにかく作ってみる。たとえ未熟なサービスであってもそれをリリースし、課金もしてしまいます。

バグもあれば、機能も不十分。それでも始めてしまいます。そして、サービスを提供しながらバグを修正し、機能を高めて行きます。それをきわめて短いサイクルで繰り返し行って行くこで、顧客の反応確かめながら、さらに完成度を高めて行く。そうやっと早期に顧客を集め、少しでも売上を得て存在感をアピールし資金を呼び込もうという考えです。

知名度のない企業やサービス、根拠も不十分なままに鉛筆をなめて創作した事業計画。資金を提供する側も、そのような見えないビジネスに資金を出すには大きなリスクが伴います。しかし、たとえ未熟ではあっても、またクレームがあっても、とにかくサービスを提供し実績をアピールする。そうするほうが、遥かに可能性やリスクを捉えやすくなりますから、資金を提供しやすいというわけです。

わたしは、このような手法を既存のSIerも採用してみてはどうかと思っています。

大小様々な企業の事業計画策定に係りながら常々思うことは、テクノロジーの革新やトレンドの変化に敏感な若手社員とそのようなこと関心を持たない経営者との意識のギャップです。

時代の変化に対応すべくチャレンジし、どんどん攻めるべきだと考える若手社員、片やリスクを冒すことに慎重な姿勢を崩さない経営者。共に会社をもっとよくしたいという思いは同じなのに、その手法の違いで対立してお互いに疑心暗鬼を生み出している。そんな構図をよく目にします。

両者の言い分にはそれぞれに理由があります。一概にどちらが正しい、どちらが間違っているといえるものではありません。ただ、ひとつはっきりしていることは、力関係の不均衡です。経営者が圧倒的に有利な立場にいる。たから、結局は経営者の意見に従わざるを得ません。残念ながらこのような環境では、イノベーションが生まれることはありません。

敗北した若者たちはどうするか。面従腹背を貫き会社に留まるか、会社を辞めるかです。ともに彼らの持つ可能性や能力を引き出すことはできません。

立場上、若手にも経営者にも接することができる訳ですが、若手をもっと信じ任せてあげてはどうかと思うことがしばしばです。ITのトレンド、ビジネス環境を彼らはよく知っています。かれらはお客様と身近に接し、お客様の必要としているもの、どうすればもっとうまくできるだろうかを真剣に考え勉強しています。もちろん全ての若者がそうだと言うつもりはありません。ただ、そういう人は必ずいるのです。

先日、普段はライバル関係にあるふたつの大手SIerで、事業開発・研究の責任をもつ二人と共に会食の機会がありました。彼らは共に、「これまでのSI事業に手を抜くつもりはないが、今後の大きな成長は期待できない。新たな事業の開発を急がなければ、会社としての成長はない。SI事業を補う形での事業をどのように創り出してゆくがが大きな課題だ。」

これは、大手に限らず受託や請負を生業にしてきた企業にとっては、共通の課題でしょう。

ではどうすればいいのでしょうか。

SIerはこれまで、お客様の業務分析から始まり、課題整理、要件定義とすすめ仕様を作りそれを開発する。言うなれば、「既知の仕様」を起点としたシステム開発を得意としてきました。これがウォーターフォール型の開発です。

しかし、今、何が新たな事業として成り立つかわからない状況、つまり「既知の仕様」がありません。「未知の仕様」からスタートしなければならないのです。このような状況にあっては、「リーン・スタートアップ」がいいのではないかと思っています。

とにかく、現場の感性を信じ始めてみることです。そこで試行錯誤を繰り返し、走りながら考え、完成度を高めてゆく。「計画が不十分、収益の裏付けがない」を理由にゼロ・イチの判断をするのではなく、必要最低限のチャンスを提供し、サービスを初めて見るということです。

こんなことを言うと、「バグがあったらどうする」、「クレームがあったらどうする」と、どうしても足かせをはめたがるものですが、そのリスクを引き受けるのも経営者の役割だろうと思うのです。

「理解・納得できなければやらせない」ではなく、「理解・納得できないから、わかるようなものを作ってくれ」の発想に変えることです。

会社をよくしたいという思いを信じること。失敗のタネを積むのではなく、小さな失敗のタネをたくさん撒いて、大きな成功のチャンスを増やすこと。「リーン・スタートアップ」はスタートアップの企業ばかりではなく、既存企業にも十分使えるのではないかと考えています。

■ 開催決定 * ITソリューション塾 第9期 ■

過去8期に渡り、多くの皆さんにご参加いただきました「ITソリューション塾」、その第9期を下記の日程で行うことが決定いたしました。

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毎週水曜日の 18:30-20:30
全10回開催
初回 2月8日/最終 4月11日
場所 東京・市ヶ谷
参加費 9万円(+消費税)
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ITの最新トレンドとビジネス戦略、ソリューション・ビジネスに関わる人が是非身につけたい顧客満足度の管理方法やドキュメンテーションなどの顧客応対スキルなどを体系的に整理します。


ITの最新トレンドとビジネス戦略については、社内やお客様の説明にそのまま使っていただけるように、パワーポイントのソフトコピーで差し上げます。ちなみに第8期では500ページほどになりました。








詳細のカリキュラムはこれからですが、例えば・・・
・クラウドとITトレンド
・ソーシャル・メディア
・クラウド・クライアント/モバイル端末とHTML5
・ITプラットフォーム・ソリューション
などの最新トレンドとこれらに関わる業界の動向、そしてビジネス戦略などをできるだけわかりやすいビジュアルを駆使して体系的に解説します。


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2011年12月17日土曜日

「簡単なことじゃありません」という思考停止


「斎藤さん、そう簡単なもんじゃないですよ。」

いくつかのSI事業者の事業戦略策定をお手伝いしています。数千人の大会社から数百人の中堅会社と規模も様々です。ただ、共通するのは、どこの会社でも、経営幹部の何人かから、かならずこんな言葉を伺います。

当然のことだと思います。これまで育ててきた人材、多くのシステム資産、膨大な顧客資産・・・その膨大なアセットと歴史を抱えているわけです。簡単にできるなどというほうがおかしな話しです。

しかし、だったら何もしないでいいのでしょうか。事業改革の動きを止めてしまったいいのでしょうか。止めるとまでは行かなくても、ソフトランディングと称して、世間を見ながらゆっくり、徐々に・・・それでいいのでしょうか。

先週も書きましたが、JUASのレポートを見ると、情報システム予算の対売上高比率は、ここ10年で56%も激減しています。運用管理にかかるコストは情報システム予算の7割りを越えるほどに肥大化しています。もはやお客様は、これまでのやり方で情報システムを維持することが難しいと考え始めています。



年末も近づき、「2012年の展望」がガートナーやIDCから発表されています。これらを見ると、クラウド利用の壁が大きく崩されつつあるという実感です。

セキュリティ、コンプライアンス、標準化されたシステムへの移行・・・ミッションクリティカルな基幹業務システムをクラウドに移行するなど簡単なことじゃないと二の足を踏んでいた企業も少なくないはずです。しかし、もはやそんなことを言っていられる状況ではないようです。

パッケージ・ソフトウェアをそのまま使うなんて、あり得ないと豪語していた企業が、事業のグローバル展開を加速するためにカスタマイズすることなしに導入することはもはや常識となりつつあります。そこに収益を求めていたSI事業者にとっては、厳しい現実が待ち受けています。

開発-保守・運用-開発-保守・運用・・・このサイクルを前提に事業収益を拡大・維持してきたSI事業者にとっては、きっかけとなる開発という人工仕事がサービスやオフショアに置き換わり、運用はクラウドに任せれば必要ない時代になろうとしています。

モバイル・クライアントに関連した開発需要が急激に伸びています。しかし、未だにAjaxやobjectiv Cのスキル育成のための研修プログラムを体系化していない企業も少なくありません。

情報システムは、大きく舵を切り始めたこと、そしてそのスピードが加速していると、昨今の動きを見ていて強く感じています。

米企業のCIOと話す機会がありました。かれらは実に情報システムのトレンドや技術の細部を熟知していました。そんな話しを外資系企業の日本法人社長に話すと、米国では当たり前であり日本のCIOと称する人たちとは大きく違っているとのことでした(もちろん、みんながそうだと言うつもりはありません)。

SI事業者に丸投げし自らは思考停止状態になっているユーザー企業の情報システム部門。それをいいことに利益相反になる事業転換に進もうとしないSI事業者。そんな利害の一致が、時代の変革を遅らせていると考えるのは、間違っているでしょうか。

円高や国内市場の低迷を受けて、情報システムの国内需要は伸び悩んでいます。経営からは時代の変革に対応できない情報システム部門への不満が拡大しているようにも聞いています。そんな時代の流れの中で、変革をアピールできないSI事業者は、変革に躊躇する情報システム部門とともに一蓮托生で干されてしまう・・・そんな可能性も否定できないように思います。

「そう簡単じゃない」はその通りだと思います。じゃあ、どうするんですか?簡単じゃない、現状が把握できていない、とりあえずなんとか仕事は回っている。その通りかもしれませんが、それで思考停止になっては必ず時代の流れからはじき飛ばされてしまいます。

変化のスピードが速くなった訳ではありません。変化のパラダイムが変わったとみるべきでしょう。今までの延長線とは交差しない位相に新しい流れが生まれたと考えるべきでしょう。改善を加速しついて行こうとしても、もはや時代の流れは、今までの延長線上にはないのです。思い切って新しい流れに飛び移る決断が必要なのではないでしょうか。その決断は、経営者にしかできないことです。


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2011年12月11日日曜日

イノベーションなき営業に未来は訪れない


 「メインフレームにお金がかかりすぎていると言われ続けているんです。かといって、これまでメインフレームで構築したシステム資産をそう簡単にオープンシステムへ移行できませんよ。移行コストだけでも数億ではすまないでしょう。無事に移行ができたからといって、メインフレームの信頼性や安定性はありません。経営者からは、移行できて当たり前で、当然メインフレーム同様の安定した運用品質が求められます。つまり、何の付加価値も生みださない仕事に多大な時間を割き、新たリスクも背負い込むことになる。そして、評価されることもないでしょう。本当に困った話しです。」

 あるシステム企画の責任者から、こんな話を伺いました。

 あなたなら、どんな提案をされるでしょうか。たとえば・・・

 「もはやオープンシステムの時代です。メインフレームを使っていること自体、もはや時代に取り残されているんです。お金がかかるのは仕方ないことです。経営者もきっと納得してくれますから、オープン・システムへ移行されるべきです。」

 残念ながら、このような提案では何の解決にもならないでしょう。彼の最大の関心は、「何の付加価値も生みださい仕事に時間とお金を掛け、リスクも拡大し、評価もされない」こと。解決したいのは、この点なのだと言うことに何も応えてはいません。確かにそれでもそれが彼の役割だということにもなるのでしょうが、現場に責任を持つ人として、仕事へのやりがいを見いだすことは難しいのではないでしょうか。ITはそんなに冷たいモノなのでしょうか。

 私は、こんなアイデアを申し上げてみました。

 「新しいメインフレームではWindowsも動きます。もちろん、ストレージなどのデバイス類もメインフレーム用の高価なものは必要ありません。だから、今社内で動いている全てのPCサーバーをメインフレームに集約してはどうでしょう。また、WindowsXPをWindows7に移行する受け皿としても、メインフレームが使えます。新しいメインフレームの持っているPCサーバーの機能を使ってデスクトップの仮想化を行ってはどうですか。未だ廃却できないWindowsXP資産も残しながら、償却時期に合わせて順次シンクライアントに移行して行くこともできます。このようにすれば最新のデスクトップ環境にいち早く対応し、しかもセキュリティやBCPへの対応もいっきに高まるはずです。もちろん今一番コストのかかっている運用管理のコストは削減されるはずです。メインフレームのプログラム資産はそのままに、運用管理コストを下げ、セキュリティも強化し、BCPにも対応する。メインフレームの持つ高い信頼性と連続可用性も手に入れ、トータルとしての費用圧縮を実現する。検討する余地は大いにあるのではないでしょうか。」

 彼が目を輝かせたのは言うまでもありません。

ITはコスト削減や効率化に大きく寄与してきました。しかし、それ以上にこれまでできなかったことができるようになり、経営や業務の改革や革新、すなわちイノベーションをもたらしてきたのもITです。そういう仕事はひとにやりがいと幸せをもたらします。

スティーブ・ジョブスのような世界を変えるイノベーションはそう簡単にできなくても、企業の様々な取り組みに小さいながらもイノベーションをもたらすことは誰にでもできるはずです。ジョブスの言葉に、「あるべき姿を明確にし、それを実現することだ」とありました。わたしは、これこそがイノベーションの源泉ではないかと思っています。

今できること、手持ちの商品、抱えている要員や体制・・・そういう制約条件をあらかじめ課した上で解決策を考えていてはイノベーションは生まれません。これらを一旦棚上げにし、お客様の「あるべき姿」を徹底的に追求するべきなのです。

これには、もうひとつ大切な前提があります。自分たちのことだけではなく、世の中を広く知ることです。たとえあるべき姿が明確になったとしても、それを実現する手段に何の見通しもなかったとすれば、荒唐無稽な議論に終始するだけです。それでは、実効性のある戦略は生まれません。

イノベーションは決して突飛なものではありません。世の中の流れの必然であり、それをだけよりも早く見つけて実現することなのです。メインフレームの新しい製品や機能について知識がなければ、上記のようなアイデアは出てこなかったでしょう。決して深い知識があるわけではなく、自分の関心に引っかけておく程度でいいのです。




上述の話しは、お客様にとってささやかなイノベーションの可能性を提供することになったようです。

IT営業とは、ITを使ってお客様のイノベーションを実現するプロデューサーです。その責任を果たすためにやるべきことは、たくさんあります。

もし、あなたがそんなことには関心が持てない・・・というのであれば、IT営業ではない道も探るべきでしょう。

もはや、モノの機能や性能で差別化できない時代です。だからこそ、どうすればお客様にイノベーションを提供できるかを考え、それで勝負しなければ、生き残る道はありません。

お客様の反応は明確です・・・「びっくり」です。あなたは、そんなお客様のびっくりを引き出しているでしょうか。これからの競争は、そこにかかっているように思います。


■ コレ一枚シリーズ いろいろ

イノベーションの源泉は、豊富な知識の引き出しを持つことです。そんなお役に立てるようにとコレ一枚シリーズを作っています。詳しくはこちらへ。

2011年12月3日土曜日

カラオケ講師にはなりたくない


研修で講師をしていると、受講者の様子は手に取るようにわかります。つまらなそうな人もいれば、熱心に聞き入りメモを取る人もいる。なかには気持ちよさそうに夢の世界で遊ぶ人もいます。

しかし、それは全て講師の力量。彼らの様子を見ながら、如何に彼らの関心を維持し、講義に集中させるかは、ひとえに講師の技量なのです。受講者の質が低い、学習意欲がないという言訳は、決してしてはならないと思っています。

講師という仕事は、知っていることを語るだけではできません。がんばって作った資料を説明するだけで、役目を果たすことはできません。何を知らせるかも大切ですが、どう知らせるかもしっかりと考えておくべきです。

講義は、受講者との対話です。彼らの様子を見ながら質問を投げかけ、彼らの反応を見ながら伝えるべき言葉を選別しなくてはきなりません。そんなコミュニケーションでなくてはなりません。自分の語りに陶酔し、受講者の顔が見えなくなってしまうようでは、それはカラオケと大差はありません。自己満足には浸れても、受講者の満足を引き出すことはできません。

同じテーマで話すときも、相手が若手であればそのように、ベテランであればこのようにと、話題を膨らましたり縮めたりは当然です。大手顧客を担当する人もいれば、中堅中小が担当の人もいる。それぞれに関心を持ってもらえる話題も提供しなくてはなりません。

企業個別の研修ならば、その会社のことをしっかりと調べておくことは、基本です。何を扱っているか、業績はどうか、経営者はどんな人かは当然として、そのライバル会社はどこなのか、取引先にどんな会社があるのか、この会社や業界に関わるニュースや話題も探しておくべきでしょう。そして何よりも、この会社の、あるいは経営者の、そして受講者の関心はどこにあるのかを想像し、仮説を立てておくことです。

説明する資料は、美しくなくてはなりません。汚い資料を誰が喜ぶでしょうか。自分の伝えたいことを殴り書きにして、体裁をつくろいスペースを埋めるために出来合いのクリップアートを貼り付ける。何の美意識もなく、相手を心地よくさせようという気配りもない。そんなものが、お金をいただく仕事なのでしょうか。

受講者から貴重な時間をお預かりしているという自覚も必要です。その感謝に応えることが、講師の責任です。

講師は、思想を伝えなくてはなりません。解釈を述べるべきです。正確な情報を伝えることは当然として、なぜこうなのか、自分がどう思うかもしっかりと語るべきです。そして、受講者にもそれを考えさせなくてはなりません。

残念ながら、いつもこのようにはゆきません。失敗することはしょっちゅうです。もちろん、よしやったと軽く握り拳・・・たまにはそんなこともあります。そんな自分を素直に観察する目も必要ですね。

だから楽しいのかもしれません。同じテーマの講義であっても、条件が同じことなど絶対にありません。いつまでたっても完璧にはなれない。だからこそ、よぉ~し次はどうしようかと考える。

そして、資料を手直しし、新しい資料をまたつくってしまいます。小ネタを探しに時間が取られ、本来の資料がなかなかできないなんてこともしばしばです。なんとも非効率きわまりない。だから楽しいんですね。

■ コレ一枚シリーズ 「OpenFlow」

今週は、OpenFlowについて、まとめてみました。詳しくはこちらへ。



■ 日経コンピューター主催[ソリューションビジネス道場]が開講します ■

12月9日と15日の2日間、講師を務めさせていだきます。ITのトレンドやビジネス環境を整理し、これからどのような取り組みが必要かを考えてみようと思います。

これからのIT営業に期待される役割や機能は大きく変わってきます。どのようにして、このような時代の変化に対応して行けばいいのかを、その実践ノウハウを交えながら解説させていだきます。

対象者は、これからのソリューション・ビジネスに関わる皆さんです。経営者、技術者、マーケティング、営業などの皆さんにお役に立つように考えています。

なお、コレ一枚シリーズのようなトレンドに関するチャート(百数十枚)もパワーポイントのソフトコピーで差し上げます。是非皆さんの営業活動にご活用ください。

さて、今日のブログのようにうまくゆきますかどうか。自分でハードルを上げてしまいました(笑)

詳しくはこちらをご覧ください。

2011年11月26日土曜日

これからのクラウド・ビジネスを考える3つのビジネス・モデル


「うちもそろそろクラウドビジネスに真剣に取り組まないとなぁ。どうすればいいだうろう・・・」

ある中堅SI事業者の社長からこんな相談をいただきました。この会社の現場では、未だ「クラウド=Force.comでの受託開発」という刷り込み(?)があるようです。まあ、クラウドという言葉に関わる仕事はこれしかしていないわけで、それも無理からぬことかとも思います。

この会社は、受託開発や派遣などの仕事が多く、請負開発もありますが実態はお客様の予算に合わせるための形式的なもので、技術の独自性や専門性を求められるものは必ずしも多くはないという状況です。

定められた仕様に忠実であり、バクもなくダウンしない品質を求められ、その工数に対して対価をもらう。いわば製造業型のビジネスです。このビジネス・モデルにおいては、彼らの仕事は高く評価されるものです。

しかし、クラウド・ビジネスはこの常識を大きく変えてしまうことになります。クラウド・ビジネスの本質は、サービス業です。開発と運用は一体であり納期はなく、この組み合わせ作業が継続されることになります。また「納品物」に対する一時的な収益は期待できません。単価が安く、大量の顧客を前提とした長期継続的な収益を前提にしなければなりません。工数をかけたからといって、その対価は期待できません。魅力的な機能や使いやすさが対価をきめることになります。

この両者の違いについては、先週のブログに詳細を書きましたので、よろしければご参照ください。

さて、受託請負を主体とした事業形態からこのようなクラウド型のビジネスへ一気に移行することは容易なことではありません。しかし、先週のブログでも記載の通り、お客様のデマンドは明らかにクラウド型を志向しています。この流れはもはや戻すことはできません。ならば、この流れにうまく乗って行かなければ生き残れないことになります。

ではどうすればいいのでしょうか。その選択肢を3つのタイプに分けて考えてみました。



まずひとつは、クラウド・プロバイダーです。GoogleやSalesforce.comなどがこれに当たります。自分たちが所有するシステム資源や独自のサービスをネットワークを介して低廉に提供するビジネス・モデルです。このタイプは、お客様に優れた機能や性能を低価格で提供しなければなりません。そのため大きな初期投資によりサービスを充実させスケールメリットで広範なお客様を獲得することが必要となります。

次は、クラウド・アダプターです。アプレッソのdataspiderやISRのcloud Gateなどはこの一例といえます。クラウド・プロバイダーのサービスはコストパフォーマンスにおいて大きな魅力ですが、その見返りとして独自の標準化に対応することが求められます。また、インターネットの介在、マルチテナントなどが前提となりセキュリティへの不安も払拭できません。このようなプロバイダーの提供するサービスの課題を補完し、これに共生する形でビジネスを展開するというものです。従って、このような機能を持つ製品やサービスを開発しなければなりませんから、ある程度の初期投資は覚悟する必要があるでしょう。

最後は、クラウド・インテグレーターです。これは様々なクラウド・サービス(プロバイダーやアダプター)をお客様の個別のニーズに対応して組み合わせ、お客様個別専用のサービスとして提供するものです。従来のSI事業者が行っているオンプレミスの商材を組み合わせたシステム・インテグレーションをクラウド・サービスの商材に置き換えたものと考えてもいいでしょう。このようなビジネスでは大きな初期投資は不要です。しかし、WebアプリケーションやWebサービスを前提とすることになりますので、そのような技術に対応できる能力と様々なサービスの目利き能力や最適な組み合わせを作り上げるプロデューサーとしての能力が必要となります。

もうひとつ、この3類型に共通するものとして、24時間365日の運用基盤は強力な武器になるでしょう。すでに申し上げたとおり、クラウド=サービス型のビジネスは開発と運用が継続時にかつ一体で進行します。開発と運用が一体で行われるとなれば、その両者に対応できる事業者は優位です。また、スマートフォンの普及は24・365の常時接続ユーザーが当たり前になりますから、それに対応できることはさらに強みとなるはずです。

どのビジネス・モデルがいいかと言うことについては、それぞれのSI事業者が置かれている状況によって異なります。ただ、クラウド・ビジネスを漠然と眺めてみても、なかなか答えを見いだせないのも事実でしょう。

これからの事業戦略を考える上で、ひとつの整理の仕方として参考としていだければ幸いです。

■ 日経コンピューター主催[ソリューションビジネス道場]が開講します ■

12月9日と15日の2日間、講師を務めさせていだきます。上記のような話題も含め、ITのトレンドやビジネス環境を整理し、これからどのような取り組みが必要かを考えてみようと思います。

また、先週のブログでも紹介させていだきましたが、これからのIT営業に期待される役割や機能は大きく変わってきます。どのようにして、このような時代の変化に対応して行けばいいのかを、その実践ノウハウを交えながら解説させていだきます。

対象者は、これからのソリューション・ビジネスに関わる皆さんです。経営者、技術者、マーケティング、営業などの皆さんにお役に立つように考えています。

なお、このブログに掲載させていただいたようなトレンドに関するチャート(百数十枚)もパワーポイントのソフトコピーで差し上げます。是非皆さんの営業活動にご活用ください。

11月30日(水)までのお申し込みには割引もあるようです。詳しくはこちらをご覧ください。



Facebookで、コミュニティ・ページを開設しています。このブログに掲載したチャート以外にもいろいろと掲載しています。

よろしければ、あわせてご覧ください。

2011年11月19日土曜日

営業はリストラの最優先対象者


営業であるあなたたちは、リストラの最優先対象者です。

先日のSI営業に向けた研修でこんな話しをさせていただきました。これはなにも脅しでもはったりでもありません。もはや営業という仕事のあり方が変わろうとしているのです。それに対応できないようでは営業として役にたたなくなるという至極当たり前の話しをさせていだいただけのことです。

下の図をご覧ください。これは、SIビジネス=製造業型ビジネスとクラウド=サービス型ビジネスの違いを整理したものです。



SIビジネスでは初期段階での大きな収益を見込みます。人的負荷は初期段階に集中し、あとは負荷の比較的少ない保守・運用フェーズへと移行します。そのため安定して雇用を維持することにはリスクが伴いますから、企画・設計、開発、運用は協業を前提とした垂直分業型のスキームで成り立っています。俗に言われるゼネコン型のスキームです。また、初期段階でのかっちりとした要件定義を行い、徹底した作り込みによりバグを排除し、高い品質を実現しなくてはなりません。これは、ウォーターフォール型の開発に適しているといえるでしょう。

これに対してクラウド型のサービス・ビジネスでは、短期的な収益は期待できません。中長期的な収益を前提としたビジネス・モデルを考える必要があります。また、開発と運用は同時一体で進行し、常に機能や性能の改善が求められます。またバグがあればすぐに直す、システム障害があれば直ちに復旧できる体制を持つことが重要となります。言うなれば、いつまでも完成しない状態が続くことになります。このような継続的な開発と運用は、企画・設計、開発、運用をサービス提供者が一貫して行う垂直統合型のスキームが前提となり、人材の安定的確保が必要となります。これはアジャイル型の開発に適しているといえるでしょう。

このようなクラウド・サービスのニーズは高まりつつあります。その背景には、TCO負担が情報システム部門の全予算の7割を絞めるまでに肥大化してしまったことに加え、IT予算の緊縮傾向が続いていることが上げられます。日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査2011」によると、売上高に占めるIT予算比率は2000年度の2.66%から2010年度の1.18%へと、この10年間で56%低下しています。

つまり、初期投資を減らし資産を圧縮するとともに、TCOの削減をすることは企業にとっては喫緊の課題となっており、この解決策としてクラウド・サービスへの期待が高まっているのです。

それはとりもなおさず、これまでのSIビジネスを前提とした収益モデルからの転換を求められることになります。これは単に営業戦略の転換で済まされる問題ではありません。事業構造そのものの転換であり、経営の問題でもあります。

さて、このような新しいビジネス・モデルで、どのようにお客様との関係を築き、収益を確保してゆけばいいのでしょうか。

まず考えられることは、これまでのように「個客」を相手にした営業だけでは、今後のビジネス形態に対応することは難しくなると言うことです。

一時的な案件単価は大幅に減少し、長期的な視点での収益確保を前提とする必要があります。そうなると、これまで同様に多大な時間と労力を掛けてひとつの案件を獲得するというのでは、成り立たなくなるでしょう。

従来型のSIビジネスでは、営業の人件費は埋没して見えなくなっています。しかし、クラウド・サービスでは案件単価が下がりますからその費用は顕在化してくるでしょう。また、仕事のやり方も営業個人に依存した営業活動ではなく、従来とは比べものにならない数の顧客ベースを獲得するために仕組みで売る体制を整え、生産性を高めて行かなければなりません。

また、インフラやプラットフォームが隠蔽化されます。そのため、これまでのように製品の機能や性能、技術力、人材調達能力などが武器としては使えなくなります。

SaaSをお客様に売り込むことを考えてください。「IT基盤」は隠蔽化され空気のような存在になりますから、「IT基盤」が一定の水準を満たしていることは前提となり、それを差別化の要因として持ち出すことは難しくなるでしょう。より上流の「業務」に直接関わる力が必要になります。

例えば、販売情報管理サービスの場合、お客様は自分達の販売業務にこのサービスがどれほどうまく適合するかを評価の指標とされるでしょう。あなたは、営業として「販売業務」を熟知し、自分たちの提供するサービスとお客様の業務との適合性を説明することや、お客様に業務流れを変えてもらう提案をしなくてはなりません。

会計サービスなら、もはやIT基盤を云々する必要は無いわけですから、会計の実務に長けた会計士や税理士のほうが営業としてふさわしいかもしれません。このような営業チャネルの組み替えも考えなくてはならないでしょう。

また、サービスはネットワーク越しに提供されるわけですから、その変更も容易です。そのため機能改善や向上、お客様との信頼関係の維持は、これまで以上に長期継続的に行うことが必要となります。

このような営業環境の変化に対応して、求められる営業としての知識やスキルも変化するのは当然のことです。

このような変化はテクノロジーの革新がもたらすものです。しかし、お客様は、そのテクノロジーを購入したいのではありません。テクノロジーの革新によってもたらされるビジネスの革新を手に入れたいのです。

テクノロジーの進化は、テクノロジーそのものをコモディティ化/隠蔽化する方向に向かっています。当然、お客様はその上で動く、ビジネス・ロジックや仕組みの評価に重点を移すことになるでしょう。そこに応えることができる力が、これからの営業には求められているのです。




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2011年11月12日土曜日

相談される営業になるための条件: 3年後の常識に触れる好奇心


「スマホを持っていない方、いらっしゃいますか?」

IT営業を対象とする研修で、こんな質問をしてみました。なんと30人中10人ほどの人が手を上げました。私は、こんな話しをさせていただきました。

「IT営業でありながらスマホも持っていないなんて、とてもはずかしいことだと思いませんか。そうですね、この状態をわかりやすく申し上げれば、銀座の目抜き通をスッポンポンで歩いている・・・そんな状態を想像してください。それほど恥ずかしいことなんですよ(笑)」

今年、PCの世界での出荷台数は3億5千万台程度と予想されていますが、スマートフォンは4億台を越え、タブレットとともにその伸び率はPCを遥かにしのぐ勢いです。

「タブレット販売台数の増加に伴い、タブレットを使用するユーザーの数も当然増加することが予測される。・・・中略・・・2015年までに米国内だけで8210万人がタブレットを使用するとForresterは予測している。」 

PCがスマホやタブレットに全て置き換わるとは思いません。しかし、これだけスマホやタブレットが当たり前になるとすれば、企業システムも無視できなくなるでしょう。それは、その使い勝手の良さにあります。企業に勤める人はひとりの消費者でもあります。かれらは当然のこととしてこのように思うでしょう。

「なぜ、うちの社内システムはこんなに使いにくいんだろう」。

その世論はこれまで以上に高まることは間違えありません。となると、情報システム部門もその声を無視することはできなくなるはずです。

IT営業の仕事は、お客様の3年後に責任を持たなければなりません。私達はお客様のこれからの投資に責任を持ち、3年後のシステムのあるべき姿を提案しなくてはなりません。その責任を担う営業が、3年後の常識に触れること無く、この感性を持ち合わせていないとすればどうでしょう。これは怠慢としかいいようがありません。営業としてのプライドの欠如と言い換えてもいいくらいです。自動車免許も持たず運転もできない自動車会社の営業から車を買おうなんて思わないのと同じ話です。

SNSについては、社員が実名で発信することに未だ懸念を示す声も少なくありません。しかし、米国でインターネットを利用できる人の96%がFacebookのアカウントを持ち利用しています。世界で8億人の会員がいて1日に5億人が利用しているという現実。確かにリスクはありますが、それ以上に大きな可能性があると感じるのは当然のことでしょう。そんなFacebookを多くの企業が重要な顧客接点として、その活用を模索しています。「リスクがあるからビジネスに使うにはちょっと・・・」という気持ちもわかりますが、リスクのないところにイノベーションが生まれるとも思いません。

日本の会員数は未だ500万人程度です。しかし、確実に、そして急速に人口を増やしています。それが直ちにビジネスに結びつくかどうかは別としても、その可能性は無視できないでしょう。実際に使ってみればわかることですが、Facebookはコミュニケーション・ツールとして本当によくできていることがわかります。メールアドレスを探す必要もなくすぐに連絡できますし、関係者に一斉配信することも簡単です。グループを作って情報を共有し、自分の考えを整理することや思わぬ人のつながりからアイデアやビジネスのきっかけをつかむこともできます。ほんとうに便利なんです。

「TwiterやFacebookに発信しても、集客にはつながりませんよ。そこから仕事の話しがくることなんて期待できません。そんなことに時間やお金をかける暇があれば、今つながりのあるお客様に、ひとつひとつ、地道に説明する方が効果的ですよ。」

確かにサービスや商品、やっていることの告知などの情報発信を繰り返すだけでは、集客やビジネス・リレーションの開拓に役立つとは思えません。ただ、それに時間や手間がかかるという感覚にも違和感があります。移動中に、ちょっと息抜きに、そうですね、例えばたばこやコーヒーの感覚で発信する、それに時間や手間がかかるとも思えず、ましてやお金もかかりません。

自分の思ったことや気づいたことをメモに取る感覚で発信する。そこには自分の驚きや悲しみ、なるほどそういうことだったのかという気付き・・・様々な感情の動きや価値観に彩られています。そんな発言を見た人が、自分の感情や価値観と共鳴する・・・そこに人のつながりが生まれます。

そして、その共鳴が水面に水滴を垂らしたように揺らぎながら広がり、また誰かがそれに共鳴してその揺らぎに自分の感情や価値観を織り交ぜてさらにつながりを広げて行きます。しっかりと自分の意見を述べたいときは、時間を掛けて考えます。そして文書を作ります。それをブログにアップしTwitterやFacebookに発信することもあります。

決して集客や売上のために発信しているのではありません。自分の発信に様々な反射があることを期待しているだけなのです。それが気付きになり、思考の整理につながる。また、共感できる人たちの知恵や知識と巡り会うきっかけにもなります。それは、私のように個人で仕事をするものにとっても、また企業に属するものにとっても、何の違いもありません。少なくとも、私にとってはもはや貴重な情報源であり、人のつながりを生み出し、思考を整理するかけがえのない道具になっています。

このような自分のために行う行為が、結果としてビジネスや集客につながることもしばしばです。しかし、それは期待するものではなく、もたらされるものだという感覚が必要だろうと思います。

「すぐには役に立ちません」という言葉には、ITが業務処理の効率化や既存の仕組みの延長であり使い勝手を向上するための仕組みであるという常識が前提になっているのかもしれません。しかし、ITがこれまでも既存の常識を変えてしまうイノベーションの手段であったことにも思いをはせるべきでしょう。そこに思わぬ発見があるかもしれません。思わぬつながりが生まれるかもしれません。そんなわくわく感を私は感じています。

このつながりの可能性をチャートにまとめてみました。いかがでしょう?



この感覚は、使ってみなければわかりません。試行錯誤し、失敗もし、恥をかいたこともあります。集客のために使おうと考えたこともあります。そういう行為は大概が失敗でした(笑)。

そんな試行錯誤がないままに、なるほどそういうことかと感じることができなければ、SNSを活用した集客やビジネスのアイデアもきっかけも生まれてくるはずもありません。当然、ビジネスにつながるかどうかを結論づけることはできないように思います。

営業が持つべき感性は、こんな経験に裏打ちされてこそ迫力があるものです。理論や製品知識も大切です。今を正しく理解することも必要なことでしょう。しかし、お客様の期待はその先にあります。明確な答えを持ち合わせていないにしても、お客様とそのことについて会話もできないようでは、ビジネスのチャンスも生まれません。

ITの未来についてささやかな好奇心を持つことが必要です。そして、ともかく試してみることです。そんな日常の振る舞いもまた、お客様に相談されるひとつの条件であることに、私達は気づくべきかもしれません。



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2011年11月5日土曜日

相談される営業になるための条件: ネガティブトーク


あなた「我が社のパッケージはA社のものに比べて、3倍の処理能力があります。しかも、業界ではもっとも機能が豊富で、御社の必要は十分に満たしています。」
お客様「ところで、いくらなんですか?A社に比べてどの程度差があるのでしょう。そんなに機能豊富だと高いんでしょう?」
あなた「そうですね・・・3割ほどライセンス費用は高くなりますが、それに見合うだけの機能はあると断言できます。」

「余計なお世話」という言葉があります。我が社の商品やサービスがすばらしい機能や性能を持っていたとしても、このお客様にとって、そこまでの機能や性能が必要ないとすれば、それを進められるというのは、「余計なお世話」です。

自動車を単なる移動の手段と考えている人に、BMWやポルシェは売れません。値段が安く、燃費が良くて、丈夫で安全であればいいわけです。ツイン・パワー・ターボも水平対向型のエンジンも必要ありません。

お客様が知りたいのは、自分の期待を満たしくれることです。お客様の満足はそこにあります。「過ぎたるは及ばざるが如し」であり、「大は小を兼ねる」は少なくともビジネスの世界では成り立ちません。ですから、お客様の期待が何かを正しく理解しない限り、期待に応えることなどできるはずはありません。

ところで、お客様の期待とは何かを少し掘り下げてみましょう。お客様は、ホンダのフィットが欲しいという話しをされました。それは、「ホンダのフィット」そのものを気に入っていて、それ以外は欲しくないと言うことでしょうか。それとも、「値段が安く、燃費が良くて、丈夫で安全」な車が欲しいということを、自分の知っている車の名前で表現されたのでしょうか?

この違いを理解しなければ、お客様の期待を満たすことはできません。もし「ホンダのフィット」しかいやだというのなら、それを提案すること以外にお客様の満足を得ることはできません。しかし、もしお客様の期待が後者ならば、他にも様々な選択肢を提示することができるはずです。

営業がお客様の良き相談相手であるためには、この違いをしっかりと見極めることが必要です。そして後者であれば、専門家として、お客様の期待を満たすためにもっとも最も優れた選択肢は何かを示す必要があります。そのための知識は、自社製品に詳しいだけでは不十分でしょう。世の中の常識、ITのトレンドを体系的に理解しておくことも必要です。

しかし、そうなると選択肢の数は限りなく増えて行きます。組み合わせも複雑になるでしょう。ならばそれを整理整頓し、わかりやすく伝えることが大切です。そうやって、お客様の価値が最大化できる選択肢を具体的に示しながら、お客様と一緒になって最適解を創り出して行くことです。

主客一体という言葉があります。おもてなしの席で、主人も客人も一緒になって、その場を作り上げてゆくという茶道の精神を表現した言葉です。営業という仕事に置き換えて考えるならば、こちらの一方的な話しではなく、お客様の期待に応えるためにはどうすればいいのかを考え、そのお膳立てをし、お客様と一緒に最適解を創りあげて行くアプローチといえるかもしれません。

お客様の期待に応えるためには、このような場作りが必要なのです。

さて、もう一つ、「ネガティブ・トーク」ができるかどうかも、お客様の期待に応えるためには重要です。お客様は完全な商品やサービスなど世の中に存在しないことくらい十分にご存知です。ですから、私達の商品やサービスがどれほど優れているかという以前に、それらが世の中の常識に照らし合わせて、どこが良くて、どこに弱点があるかを知りたいはずです。

しかし、この期待に応えることはなかなか大変です。私もそうですが、自分のこと、自分たちの商品のことをよく見せたいという気持ちが先行し、自分たちについてのいいことばかりを話してしまいます。ただ、そのような態度をとれば、お客様はあなたを相談相手とは考えず、交渉相手として受止めることになるでしょう。

お客様と会話するときに、次の3つを自問自答してみてはいかがでしょう。

  • 良い点ばかりではなく、自分たちの限界、他社との違いや弱点を客観的に説明できるだろうか。
  • お客様はどのようなメリットを享受するかは語れるが、どんな課題やリスクがあるかも同時に語れるだろうか。
  • お客様が得をすることは語れるが、自分たちがどれだけ儲かり、得をするかも同時に語れるだろうか。

簡単なことではありません。しかし、そういう自分への冷静な目を持つこと、そしてその謙虚さが、相談される営業になるための一つの条件であることは、間違えないと思います。


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2011年10月28日金曜日

相談される営業になるための条件: 組織や臓器の知識


「仮想化について、どうしようかと思っているんだけど、相談に乗ってくれないだろうか?」

お客様である情報システム部長から、このようなご相談を頂いたとしましょう。あなたなら、どのように対応されますか?

まず、「仮想化」と言うキーワードから思い浮かぶことは、「何の仮想化だろうか?」という疑問です。仮想化には、6つの仮想化があります。サーバーの仮想化、ストレージの仮想化、デスクトップの仮想化、クライアントの仮想化、アプリケーションの仮想化、ネットワークの仮想化です。

お客様にそのことを確認しますと、「デスクトップの仮想化」であることがわかりました。では、このお客様にとって、最適な方式はなんでしょうか。画面転送方式でしょうか、ネットブート方式でしょうか。

お客様がデスクトップの仮想化に関心を持たれた理由を伺ってみると、「既存のWindows XPをそろそろWindows 7にしたい。しかし、運用コストを考えるとデスクトップの仮想化もひとつの選択しかもしれない」と考えたからだそうです。

モバイルでの使用も想定しているとのこと。また、既存のXPマシンのリース満了のタイミングもまちまちです。そう考えると、シンクライアントを前提としたネットブート方式にすることは現実的ではないかもしれません。画面転送方式がいいかもしれません。となると、どのような製品を選択すべきでしょうか。

CitrixのXen DesktopとMicrosoftのHyper-vの組み合わせでしょうか。それともVMwareのvSphereとVMware Viewの組み合わせがいいでしょうか。それとも・・・

「情報システムのBCPについて、社長から計画を立てるように指示が出たんだけど、何から手をつけてゆけばいいだろうか?」

「情報システム+BCP」というキーワードから思い浮かぶ言葉は、「災害強度を高めるための取り組み」と「リモート・オフィースの実現」。

前者については次世代データセンター、拠点分散、クラウド、マネージド・サービスなどのキーワードが思い浮かびます。後者については、デスクトップの仮想化、認証基盤、安否確認、BYODなどとなるでしょう。では、次世代データーセンターについては・・・

案件獲得のきっかけは、こんなお客様との会話から始まることも少なくありません。しかし、「仮想化」といわれて、それを体系立てて頭に浮かべることができなければ、お客様に適切な質問をすることはできません。それ以前に、何を言っているかわからなければ、お客様との会話はこれで途切れてしまいます。

また、デスクトップの仮想化にいくつかの方式があり、各社様々な製品があり、金額も違えば、機能や性能も一長一短があります。詳細はわからなくても、要点がわかっていなければ、選択肢を絞り込むことができません。

仕事が早い、誠実に仕事をしてくれる、お願いしたことは確実にこなしてくれる。いい営業ですよね。でも、それだけでは、大切なことを相談できる相手にはなれません。

また、自社の製品には詳しくても、世の中の常識やその中での自社製品の位置づけを説明できなければ、お客様もがっかりでしょう。そういう相手は交渉相手にはなり得ても、相談相手にはなりません。

ならば、「私は詳しいことがわかりませんので技術に詳しいエンジニアを連れてきます。」と開き直ることもできるでしょう。しかし、どういうスキルのエンジニアをお客様に紹介すればいいのでしょうか。お客様の期待や要件を絞り込むこともできず、とんちんかんな説明でエンジニアを引きづり出したのはいいが、その人の専門とは全く関係のない話だったとすれば、お客様にとってもエンジニアにとっても、いい迷惑です。

キーワードとは「細胞」です。「細胞」はけっして単独では機能しません。役割の異なる様々な細胞が組み合わさり「組織」になり「臓器」になって初めて、その細胞の機能や役割、位置づけが明らかになります。

エンジニアは、この細胞を作り、それを組み立て組織や臓器にしあげなくてはなりません。そのためにプログラム言語やパラメーター駆使します。

営業は、どんな組織や臓器を作るかを描かなくてはなりません。お客様が知りたいのは細胞の細かな仕組みや機能、性能ではないのです。まずは、組織や臓器の仕組みや機能が知りたいのです。その中でひとつひとつの細胞=あなたの商品がどう機能するかを知りたいのではないでしょうか。

プログラム言語やパラメーターを知らなくても、それぞれの細胞がどうつながっているかの関係や構造がわからなければ、お客様の期待を整理することはできません。お客様の相談相手にもなれません。もちろん、提案の戦略を立てることもできません。

クラウドという言葉を知っていても、仮想化とどう違うかを説明できなくてはクラウドを知っているとはいえないでしょう。クラウドとHTML5の関係を説明できなければ、たとえそれぞれの「音」や「綴り」を知っていても、お客様に知っているといえるでしょうか。SOAとBPMはこれからの情報システムにとって重要なキーワードですが、それがなぜかを説明できなければ、お客様はそのことで、あなたに相談などしないはずです。

以前、このブログで「アウトプット思考」という話を書いたことがあります。「お客様にわかりやすいアウトプットとはどういうものかをイメージしながら考える」。そんな思考方法が、営業には必要だという話しでした。

下の図はそんなアウトプット思考の一例です。HTML5とは何だろう? CSSとJavaScriptとはどんな関係にあるのだろうか?これをどのように表現すれば自分は納得できるだろうか。お客様にすんなりと理解していだけるだろうか。そんな思考の結果が下の一枚です。




私は、営業にとって必要な知識とは、このような知識なのだろうと思います。つまり、「組織の知識」、「臓器の知識」です。言語でもなければパラメーターでもありません。そして、知っているとは、「わかりやすく説明できる」ことどたと思います。

細胞の知識ではなく、組織や臓器の知識を持つこと。それをわかりやすく説明できること。それがお客様に相談される営業になるための大切な要件ではないかと思います。



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2011年10月22日土曜日

営業という仕事の価値


先日、ある製造業の情報システム本部長と話しをしました。

「私達は、3つの圧力に苦しんでいます。ひとつは、TCOの圧力です。運用や保守に関わるコストが予算の8割近くですよ。何か新しいことをやろうにも限界があるんです。

もうひとつは、予算削減の圧力です。震災への対応や円高に伴うコスト削減要請と海外へのシフト、本業に関わるお金が増えている中で情報システムの予算は、これまで以上に絞られています。今でもぎりぎりのやりくりをしている中で、これ以上切り詰めろと言われてもどうしようもありませんよ。

三つ目はクラウドの圧力です。経営者には、クラウドはコスト削減の特効薬のように見えるようです。しかし、膨大な既存のシステム資産をクラウド化することはそんな簡単なことではありません。しかも、クラウド化は自分たちのこれまでの役割を根本的に変えてしまいます。いわば我々の雇用を脅かす存在でもあります。経営者から見れば、私達の意欲や能力を問われるわけですが、そんな簡単にできる話ではありませんよ。」

申し訳ないが、私にはできないことの言訳に聞こえてしまいました。確かにこれまでの歴史を背負った当事者にとっては、この現実に対処しなければならない責任があり、ご苦労もわかります。しかし、企業はビジネス合理性を追求する組織です。この現実に対処することが、この方の責任でもあるはずです。簡単ではないということと、できない、やらないは別の話です。そのあたりが、はっきりと切り分けられないままの話になってしまっていたのも、そんな印象を持った理由かもしれません。

営業であるあなたは、このようなお客様にどのような提案をしますか?今まで以上に低コストで運用できるマネージド・サービスやオフショアでの開発・保守を提案するというのはどうでしょう。「安い」という話しならば、まずは耳を傾けていただけるかもしれません。
クラウドはどうでしょう。業務システムの根本的な構造改革に手をつけず、できる範囲でサーバーを仮想化・集約し、経費削減の要請に対応するという提案であれば、きっと検討の俎上に載せてくれるはずです。

しかし、それで本当にいいのですか?確かに一時できにはお客様の事態を改善できるかもしれません。しかし、それが真の解決につながるのでしょうか。営業の仕事って、そんなものなんですか?

お客様の状況や立場を斟酌し、なんとか彼の力になりたいと思うかもしれません。しかし、それでこの会社は成功するでしょうか、この情報システム本部長は、自分の職責を果たせるでしょうか。
それよりも何よりも、そんな仕事で自分の成長や生き甲斐をあなたは感じることができますか?それが営業という仕事の価値なのでしょうか?

確に、お客様がして欲しいことに応えることができれば商売にはなるでしょう。売上と利益という数字を背負っている営業にとって、とても魅力的な選択です。「営業の人格は数字だ!」と私もかつては上司によく言われたものです。数字をあげられなければ、企業の経営は成り立ちません。営業は、数字という大きな責任を負っているのも事実です。

どうすれば、この両者を両立することができるのでしょうか。残念ながら、絶対的な解決策など無いように思います。ただ、私達は、このような現実、このようなお客様を相手に仕事をしているという自覚を持つべきであるとは、言い切れます。

もう一つ大切なことは、この会社の経営者と話しをすることでしょう。業務やシステムの当事者は、与えられた職責をこなすことに精一杯です。たとえあるべき論はわかっていても、日常の降ってくる様々な業務への対応で、大所高所をしっかりと考え対処することは容易なことではありません。その優先順位を切り替えさせることができるのは経営者しかいないのです。

営業は、情報システム部門の方に対しては、ITの専門家として、その良き相談相手にならなくてはなりません。そして、経営者に対しては、情報システム部門の良き理解者として、そして経営という視点から情報システムのあるべき姿を客観的に語れるアドバイザーであるべきです。

営業のプロフェッショナリティとはそういうことなのだろうと思います。私達は、意思決定者でもなければ実務の当事者でもありません。その判断と行動に責任を負うことはできません。ただ、彼らが成功するためにはどうすればいいかを一緒に考える役割は果たせるでしょう。

自社の製品について詳しく語り、他社との違いもはっきりと伝えることができる・・・それもまた営業力の大切な要素です。しかし、そのことだけで、お客様はあなたに仕事を任せてくれるでしょうか。競合他社もきっと精鋭を繰り出してくるでしょう。我が社の商品が如何にすばらしいかをあなた以上にうまく話しているかもしれません。あなたは、そんな低次元の戦いに満足していいのでしょうか。

営業の仕事に「これしかない」はありません。それぞれにスタイルがあり、理想があると思います。ただ、ひとつはっきりと言えることがあります。「営業の仕事とは、モノやサービスを売ることではなく、お客様の価値を高めて対価を頂く仕事です。モノやサービスは手段である」ということです。

数字に追われる日々ですが、ここだけは忘れないようにしたいですね。




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自分としては、なかなかうまくまとめられたんじゃないかと、軽く握り拳しています(笑)
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2011年10月15日土曜日

雑用係を育てるOJT


新入営業も現場に配属されて数ヶ月たちました。先日、そんな彼らと話しをする機会がありました。「大変です」、「よくわからないことばかりで・・・」、「忙しくて余裕がありません」などなど、自分たちの未熟を訴えながらも、なんだか楽しそうに見えました。

入社したすぐの頃は、社会人としてのマナー、ワープロや社内システムの使い方がわからない、何とか早く一人前の社会人として行動したいという悩みを抱えていた彼らも、お客様との関係、自分たちの商品やサービスの良さをどのようにお客様に伝えればいいのか、優先順位の管理や効率のいい仕事の進め方へと関心が移り始めているようです。

彼らを見ていて思うことですが、しっかりと自分の未熟を自覚しています。だからこれではだめだ、何とかしなければとあせっています。

啐琢同時(そつたくどうじ)という言葉があります。雛が卵から産まれ出ようとするとき、殻の中から卵の殻をつついて音をたてます。これを「啐」と言います。その機を逃さず親鳥が外から殻をつつきます。これを「啄」と言います。そしてこの「啐」と「啄」が同時に行われて、初めて殻が破れて雛が産まれるわけです。つまり、求めるものと与えるものが、タイミングを逸することなく同時に行動するとき、人は大きく成長できることのたとえです。

育成を効果的にと考えるならば、このタイミングを逃さず、最大限に利用しなければなりません。

誰でもそうだと思いますが、教えられたら学ばない、やれと言われればやりたくないのが人情です。しかし、彼らは違います。彼らは今、大いに渇望している、何とかしたいと心から願っているのです。だから育成の役割を担うあなたは、渇望している彼らに、その渇望を満たす手段を提供すればいいのです。

「渇望を満たす手段を与える」とは、「渇望を満たすこと」とは違います。どうすれば、自分の力で渇望を満たすことができるか、その方法を身につけさせることです。答えを与えてしまっては、人は成長のチャンスを逸してしまいます。そうではなく、答えを手に入れる方法を与えることで、自ら成長したいという意欲を後押しするのです。

育成とは、「渇望」と「手段」を提供し続ける取り組みといえるかもしれません。手段と言っても細かな作業を指示するのではなく、状況の解釈、戦略の建て方、直面する課題を解決するための対処の仕方などの仕事のフレームワークというべきものです。このような手段を教えても、未熟故に失敗もするでしょう。しかし、未熟を自覚している彼らならば、それまもた貴重な経験となり、能力の定着に大いに貢献してくれるはずです。

話は変わりますが、先日、宮城県南三陸町へお邪魔したとき地元のボランティア・リーダーと話しをしました。彼は、こんな話しをしてくれました。

「モノやお金を与える支援だけではこの町を復興させることはできません。どうすれば、モノやお金を手に入れることができるのか、その方法を提供しなくてはいけない時期にきています。」

このボランティア・リーダーのような志の高い人を手厚く支援すれば、すばらしい町を創りあげてくれるだろうと確信しました。しかし、行政はまだまだ誰でも一律にお金やモノを与える施策を採り続けているように見えます。

渇望し、志があり、何とかしなければと思っている人に、それを解決する道筋と方法を提供する。育成のあり方も、支援のあり方も根っこは同じだと思います。

「切り捨てられる人がいる。全員を平等に底上げするべきだ。」という声も聞こえてきそうです。しかし、それでは世の中もビジネスの世界もよくはなりません。

話しが横道にそれてしまいました。OJTの話題に戻りましょう。

私が、ここでお伝えしたかったことは、求める人がいるのに、「OJTというほったらかし」で、せっかくのチャンスを逃してはいけないと言うことです。

「明日から、OJTリーダーとして新人の面倒を見なさい。やり方はおまえに任せるから・・・」では、任された人は何をすればいいのか迷ってしまいます。なかには、OJT=仕事体験と思い込み、自分のやりたくない雑事や自分でも大変な仕事を押しつけてOJTをやっていることにしてしまう。しばらくはこれもまた新人諸氏には新鮮で、大変ながらもそんなものだと思って仕事をこなすでしょう。しかし、このような仕事に達成感を見いだすことはなかなかありません。次第に意欲がなくなって行く。つまり、学びたいという意欲を失って行く。これでは、OJTの本来の役割を果たしません。

人は、自分のやることに納得できる目的があり、それが自分の成長に結びつくものであり、自主的に行える裁量を与えられれば、たとえそれが大変で忙しくても喜んで立ち向かいます。OJTリーダーのミッションは、そういう仕事をアレンジし、環境を整え、彼らに与え続けることです。

もう一つ大切なことは、仕事の楽しさを伝えることでしょう。ただし、その方法は言葉とはかぎりません。そういう気持ちで仕事をしている姿を見せることが大切です。
大変だけど、楽しい・・・そんな姿を見せることもまた、OJTリーダーの大切な仕事だと思います。

「このままではだめだ!」と心底思える時期は、人生にそう何度も訪れません。そんな人生の貴重な時期に関わる仕事がOJTリーダーという仕事です。その自覚を持つことが、OJTリーダーの最初の仕事かもしれませんね。



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2011年10月8日土曜日

感動を与えるプレゼンテーションの本質


50人ほどの聴取を前に、前を見ることもなく、ただうつむき加減にマイクに向かっている20代と思われるマーケティング担当の女性。まるで今日初めて手にした教科書を、突然教師に当てられ朗読するように促された小学生のように中身もわからないままに平板に、そして朗々と読み上げていました。

彼女の後ろでは、パワーポイントのデフォルト書式に整理された文字が繰り出されます。ページごとに文字量にばらつきがあり、小さな文字や大きな文字がページが替わるたびにランダムに映し出されていました。クリップ・アートも様々なデザインが使われ、統一性がありません。なんとも「とっちらかった」という印象でした。

話しの内容も機能・性能の解説に終始し、如何にこの製品がすばらしいかを語っているようなのですが、いったいどこが凄いがよくわかりませんでした。それよりも何よりも、いったいこちらの何を解決してくれるのかの課題設定が最後まで曖昧なままで、いったいこの製品の魅力は何だろうかと、こちらで一生懸命考えさせられました。そしてついに「これだ!」と自分なりに答えを見つけたときには、ちょっと興奮し軽く握り拳・・・しかし、彼女の話の中には、その説明は一切なし。おいおい、そうじゃないでしょ、僕が説明してあげますよ・・・そう言いたい気持ちを抑えながら、20分の話しが終わったときには、なんだか拷問から解放されたような開放感を味わうことができました。

久々に凄い?プレゼンテーションを聞きました。

プレゼンテーションとは、相手の心を動かすことが目的です。そういう意味では、私の心は「いらいら」と大いに揺れ動いたわけなので大成功だったかもしれませんが、この製品の魅力に感動し、心を動かされることはありませんでした。

先日、あるSI事業者の研究所長をされている方のプレゼンテーションを拝聴しました。正直申し上げてドキュメンテーションはそれほど美しいとはいえませんでした(このブログをご覧になっていたらすみませんm(_ _)m)。しかし、ほんとうに感動し、彼の見識の深さと洞察力、そして何よりも、この人はこういうことが大好きなんだなぁと、彼の人となりがはっきりとわかるすばらしいスピーチでした。そして、それがお客様にどのような価値をもたらし、私達のビジネスがどう変わるかもしっかりと伝わってきました。

この二人の最大の違いは、間違えなく「愛情」の深さです。

自分の語る対象への深い愛情。そして、大好きだからこそ徹底的にその本質に迫ろうとしているパッション。本質を知っているが故に、最終的に何を伝えればいいかのゴールを明確にしっているので、ストーリーが簡潔です。修飾語をいっぱいつけて着飾らなくても、その本質が明快で美しいから人の心にしっかりと突き刺さるんですね。

確かにきれいな資料やわかりやすい話し方ができたほうが伝わりやすいでしょう。しかし、何よりも自分が語ろうとするものへの深い愛情と理解がなければ、相手の心を動かすことはできません。

Jobsが亡くなりました。彼のプレゼンテーションを見ると、彼の製品への愛情の深さを感じざるを得ません。その愛情は決して独りよがりのものではなく、美しさが人を豊にすること、この新しいライフスタイルがもっとすばらしい人生をもたらしてくれることを彼はいつも語っているのです。そんな他人への愛情もまた、彼のスピーチの魅力でした。

もちろんスピーチのテクニックもすばらしいものです。しかし、それだけでは、あれだけ多くの人の心を動かし、時代の流れを作り出すことはできなかったように思います。

私の研修で、プレゼンテーションの技巧で悩んでいるという話をよく聞きます。しかし、技巧よりも何よりも、自分たちの商品についての徹底した理解と愛情、そしてそれがもたらすお客様の幸せをあなたは理解していますかと申し上げることがあります。そのパッションがあれば、技巧は多少稚拙でも十分に相手の心を動かすことができるはずです。

プレゼンテーションの本質は愛情だと言うこと。これもまたJobsの残してくれたもののひとつだと思っています[合掌]。




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先日、これ一枚シリーズの最新版をアップしました。テーマは、「これ一枚でわかる クラウドのこれからとITビジネスのこれから」です。さて、うまく私のメッセージが伝わりましたでしょうか?

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2011年10月1日土曜日

営業は棋士、社長は駒


「“営業” を英語でどう書きますか?」

営業研修の冒頭、こんな質問をします。するとほとんどの方からは、“Sales”という答えが返ってきます。もちろんそれも間違えではありませんが、私は“Sales Representative”という言い方があるという話しをします。

英語での慣例を考えれば、単にお客様を担当する営業という意味で使われている場合もあります。ただ、Representative=代表者、代理人という意味からもわかるように、本来は、新規の顧客開拓や大切なお客様との取引を任される人という使われ方をしているようです。つまり、「会社の代表として取引に責任を持つ人」です。

ですから、“Representative”として働くためには、マーケットの分析に始まり、どの企業がお客様になりうるポテンシャルを持っているのか、そしてその会社といかにしてよい関係を作り、お客様との関係を発展させて行くのかを考える能力、つまり、情報収集能力、分析力、計画策定能力が求められます。また、何よりも新規顧客との関係を構築するための行動力と積極性、コミュニケーション能力が必要となります。

士農工商営業と言われるこの業界の中で、「会社の代表として取引に責任を持つ人」というのは、どうもぴんときませんよ・・・そんな声も聞こえてきそうですが、だからこそ、まずは自分自身が、その自覚を持つことが大切なのだろうと思います。

「自分は、会社の代表として取引に責任を持つ人としての能力を磨いているだろうか?そんな動きをしているだろうか?」と問い返してみてください。

「そんなことを言われますけど、うちの会社では、だれもそんな風には思っていませんよ。むしろ、余計なことをするなと言われてしまいます。」

残念ながら、そんな現実も少なくありません。だからこそ現場の自覚から、その風潮を変えてゆくべきなのだと私は信じています。

先日、あるSIerの社長から、「新規顧客開拓が今うちには是非とも必要なことなんです。でもうちの営業は新規開拓が全然できなくて・・・」という話を聞きました。

「じゃあ、新規開拓に邁進できる環境を彼らに与えていますか?」と質問すると、結局はその他多くの仕事の一部であり、営業本人の自助努力として「新規顧客開拓もおまえの仕事だからな」と言い含めているだけのようでした。この会社の営業は、“Representative”としての責任は与えられていないようでした。これではうまくゆくはずはありません。

新規開拓という仕事は、簡単なことではありません。選択肢が多様化している時代にあっては、なおさらです。「他社の1/3の金額でできます」なら、まだやりようはあります。しかし、それができないのであれば、「新規顧客を開拓する専門職」としての責任を明確にして、それを支援する仕組みと共に取り組むことが大切なのだろうと思います。

一方で、営業もその自覚が必要です。「会社の代表として取引に責任を持つ人」として自分を鍛え、追い込むしかありません。また、会社を代表し、お客様に、あるいはプロジェクトに責任を持つならば、会社同士の関係を築くという発想も必要でしょう。

お客様の担当者と担当営業だけではなく、お客様の管理者や経営者と会社の責任者である社長や役員との信頼関係を築くことはとても大切なことです。お客様は、大金を払って仕事を任せる以上、それはあなた個人ではなく、会社への責任を求めるわけです。その責任者である社長が信頼されているとなれば、あなたの仕事は、ほんとうにはかどります。

営業=Sales Representativeの仕事は、お客様との取引一切について全体を見渡し、その責任者として、全体の動きを指揮することです。つまり、あなたは将棋の棋士であり、社長はそのゲームをうまく進めてゆくための駒であるという自覚を持つべきなのです。適材を適所に最適な駒を配置する。少なくとも自分が担当するお客様との関係においては、自分が責任者であるという自覚を持つべきです。

新規開拓に限ったことではありませんが、今ITの国内マーケットは、かつてのように「しっかり仕事をしていれば必ずリピートがもらえる」時代ではなくなりました。他社との棲み分けなどと言う甘い期待ももはや夢の話しです。競合に打ち勝つための取り組みが必要なのです。

Sales Representative”の本来の意味に立ち返ってみてはどうでしょう。営業はその自覚を持ち、経営者は言葉だけで叱咤激励するのではなく制度や組織の仕組みとして、その役割を与えてみてはいかがでしょう。

そんなお互いの自覚と取り組みが、結果として組織としての営業力を底上げし、「新規顧客を開拓する力」を育ててゆくように思います。



自社製品の性能や機能については話せとも、世の中の常識と自社製品との関係は話せません。

そんな営業をお客様は、信頼するでしょうか?

では、どうすればいいのでしょうか。よろしければ、こちらをご覧ください。

場所:東京・市ヶ谷
期間:10月5日から12月7日 
毎週水曜日 18:30~20:00
全10回
費用:9万4千5百円/一括

内容はこちらをご覧ください。


Facebookで、コミュニティ・ページを開設しています。よろしければ、ご参加ください。

2011年9月23日金曜日

若い人が辞める会社の運命


「若手や中堅の優秀なエンジニアが、この一年で3人辞めてしまいました。来月もまた一人やめる予定です。いったい、どこに問題があるのでしょうか。」

あるSIerの経営者から聞いた話です。私はこう答えました。

「楽しくないからじゃないですか?」

先週のブログでも書きましたが、コンピューターが、まだまだこれからという時代は、コンピューターを導入することが、業務のイノベーションをもたらしていました。SIerがシステム・ハウスと言われていた時代です。まだまだこれからの時代ですから、新規の導入や開発が仕事を支えていました。また、運用・保守も時代を先取りした仕事であった様に思います。当然、新しい技術を走りながら取り込んでゆくことが当たり前の時代でした。

その後、情報システムが企業内で一巡し、業務で広く使われるようになるころには、ユーザー企業は膨大なシステム資産を抱えることになりました。そうなると、新規開発は少なくなり、業務の変更や拡大に合わせて既存システムを手直ししながら使うことが当たり前となってゆきました。IT部門予算の7割から8割が既存システムの運用や保守に関わる費用となってしまったのには、このような背景があります。

当然、運用・保守の仕事量が増えてゆきます。SIerも潤沢、継続的にある既存システムの保守、運用の仕事をするほうが、新しい請負開発でリスクを冒すより、安定した収益を得られることになります。そんな時代背景の中で、この会社も大手の下請けとして、リスクの少ない派遣や準委任の仕事を増やしてゆきました。

景気が良かったときは、仕事はありましたから業績を伸ばすこともできました。しかし、国内需要の減退、技術のコモディティ化とオフショア利用の拡大により、[人]X[単金]では利益を出せず、厳しい状況に追い込まれています。

新しい技術にもっと挑戦すべきだと申し上げても、今の人間を食べさせなければならないから簡単には無理だといいます。

若いエンジニアが新しいことをやりたいといっても、品質が保証できないからだめだとチャンスを与えません。そして、そういう志のある若いエンジニアも若い=安い労働力として、既存システムの保守対応の仕事をさせているのです。

新しいこと、イノベーションに関わることは、楽しいことです。それができる会社でなければ、良い人材も育たないし、魅力ある商品やサービスは生まれません。SIerにとっては、良い人材こそ、魅力的な商品です。高い技術力だけではなく高いモチベーションも併せ持った人材こそ、SIerにとっての最良の商品ではないかと思っています。

「優れた人材の育成=優れた商品の開発」への投資を渋るSIerとは、新製品開発のための研究開発に投資をしない製造業と同じ話です。いずれお客様から見放されてしまいます。

この会社の若い皆さんと話してみると、トレンドや新しい方法論については、ほんとうによく知っています。やりたいといっているのだから、やらしてあげればいいのです。しかし、それをやらしてくれない上司への不満が、特に優秀な人たちのモチベーションを下げています。

年配の管理者や経営者が、あれはだめ、これはだめ、、ああしろ、こうしろと言う姿を見ると、再就職が難しいのでなんとか会社にしがみつきたく自分の存在感を示したいが故に、そんなことを言っているのではないかとさえ思えてしまいます。その一方で、チャンスのある優秀な若者たちは、「やってられないよ」と去ってゆく。会社が楽しくないのです。こんな現実に、今まさに直面しているのではないかと感じています。

改めて言うまでもないことですが、管理者や経営者は、自分の組織を、あるいは、自分の会社をどうしたいのか、そしてどんな価値をお客様や世の中に提供したいのかというビジョンをしっかり示してほしいと思います。そして、方法論は若い人に任せてみればいいのではないでしょうか。

若いからと言って、かれらは決して自分のことしか考えない人たちではありません。もっと会社をよくしたいと熱く語ってくれます。そういう若い人たちを信頼し任せてみるべきなのです。

「優秀な若い人が辞める」のは会社が楽しくないからです。裏返して考えるなら、優秀な若い人たちは、お客様があるいは世の中が、今何を求めているかそしてこれからどうなるかを知っている人たちです。そういうことに取り組めないことは、自分の成長にとって価値がないし、この会社も長くはもたないと本能的に感じているのでしょう。だから楽しくないのです。

若者たちが会社に感じる楽しさ=会社の成長性の尺度 と考えてみてはどうでしょう。

忙しくてもチャレンジできる会社は楽しい会社です。一方で「優秀な若い人が辞める」会社は、楽しくないのです。そんな会社は、いずれ時代の流れに取り残され、衰退の道を歩みはじめるのではないでしょうか。



自社製品の性能や機能については話せとも、世の中の常識と自社製品との関係は話せません。

そんな営業をお客様は、信頼するでしょうか?

では、どうすればいいのでしょうか。よろしければ、こちらをご覧ください。

場所:東京・市ヶ谷
期間:10月5日から12月7日 
毎週水曜日 18:30~20:00
全10回
費用:9万4千5百円/一括

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2011年9月17日土曜日

こんなマネージメントは、とっとと辞めてしまいなさい


「お客様に信頼される。そんな営業になりたいと思っています。」

先日の営業研修の折、「自分の描く理想の営業とは」という質問に、40代半ばの営業課長から、このような答えが返ってきました。

「ではどうすれば、信頼される営業になれるでしょうか?」とさらに質問すると・・・

「お客様のご要望にすぐに応えること。お客様の相談に親身になってお応えすること。そういう日々の誠実な態度が、お客様からの信頼につながるのだと思います。」。

この気持ち・・・とてもよくわかります。・・・感覚的には(笑)。私は、この方はとても誠実でいい人だと思いました。気負いもなく、とてもまじめな方だと思いました。でも・・・残念。いい人なんです。それだけなんです。

どうも、この方は人間としての信頼と営業としての信頼を同じものだと考えていらっしゃるようです。もちろん、人間として信頼できないような相手を営業として受け入れることはできません。だからといって、それが頼りになる営業かというと必ずしもそうではありません。

かつて景気のいい時代は、需要が供給を上回っていました。ですから、こちららの要望するものをすぐに手配してくれたり、問題かあれば誠実に対処してくれる営業は、頼りになりました。供給が足りない以上、お客様にとってこういう営業はありがたい存在です。当然、優れた営業成績を残すことができました。

しかし、もはや競合が常識の時代です。お客様の要望に応えられるだけの営業では、優秀になれない時代になったのです。供給は需要を上回り、課題解決の選択肢は、昔ほど単純なものではありません。同じような課題に対して様々な選択肢があり、しかもその組み合わせは複雑です。ですから、お客様も「要望」を明確に伝えることができません。何が最適解なのかをお客様も私達もわからないままに、お客様の課題解決に取り組まなくてはならないのです。しかも、「棲み分け」などていう天国は期待できない時代です。

優秀な営業の定義が変わったのです。「要望に応えられる営業」から「解決策をお客様と一緒に考えられる営業」へと、お客様の期待が変わったのです。

こんな見方もできます。

かつてITはイノベーションでした。ITがまだまだ企業に浸透していなかった時代、ITの活用は企業に目に見える形でのイノベーションをもたらしていたのです。しかし、いつしかITは企業のインフラとして当たり前になり、ITがないことが考えられない時代となりました。もはやITはコモディティとなってしまいました。

IT企業もその多くが、このコモディティ化したITの保守や運営を任され、それで稼ぐことが本業になってゆきました。それ自体は、何も悪いことではありませんが、それは労働力であり、イノベーションを生み出す存在ではなくなってしまいました。つまり、ITベンダーは、「イノベーションを生み出す会社」から「労働力を提供する会社」へと変わってしまったのです。

幸いにも、景気のいい時代は、保守や運用に関わる労働力としての需要が右肩上がりで伸び、それにつられて多くのIT企業が業績を伸ばしていったのです。しかし、そんな時代は終わりました。景気の減速と共に、ITが成長産業であった時代は終わり成熟産業へと軸足を移し始めたのです。また、クラウド、オフショア、スマートデバイス、SNS、Webアプリケーションなど、労働力だけではない様々な解決策の選択肢が存在する時代になりました。もはや「労働力X単金」の延長線上だけでは、最適解を示すことはできないのです。

こういう時代だからこそ、お客様は、今改めてITにイノベーションを求めるようになったのではないでしょうか。

では、今イノベーションを求められているITベンダーはどうなっているのでしょうか。かつての成功体験を抱えた人たちが営業管理者となっています。残念なことに、そんな彼らの中には、担当営業が業績を上げられないのは、お客様の要望をしっかりと聞き取る誠実さが足りないためてあり、その結果、個人的な信頼関係が築けないことに問題があると思い込んでいる人がいるようです。

こういう人には、コモディティへ対応する時代の成功体験と、イノベーションを求める時代の成功法則は違うものであるという自覚がありません。だから、未だ旧泰然としたやり方を押しつける。現場の営業はいい迷惑です。それがわかっていないというのは、本当に困ったものです。

「うちにできない話しを持ってきてどうするんだ。それよりもうちにできることやスキルのある仕事を取ってくるのが営業の仕事だろう。」と言ってはばからない人がいるとすれば、まさにそういう人なのだろうと思います。 

  •  これまで売れたものが今でも売れるという勘違い。
  •  仕事がとれないのは単金が高いからと言う単純思考。
  •  ありものにしがみつく頑なさ。 

この言葉には、コモディティ時代の成功体験が今でも通用するという時代錯誤を感じてしまいます。確かに、日銭を稼ぐためには、既存のビジネス資産を活かさなければならないことはよくわかります。しかし、その先を示さないままに、今までのやり方を押し通そうとしてもいずれは尻すぼみになってしまいます。

お客様がITにコモディティを求めている時は需要は安定し、人は時間を掛けて丁寧に育てることができました。しかし、イノベーションは走りながら考え、走りながらスキルを身につけなれば、競合に蹴落とされ、お客様に見向きもされなくなってしまうのです。この違いを理解すべきです。

今、マネージメントに求められることは、解決策を示すことでありません。ビジョンを示し、現場の意欲を高め、それを管理することです。「このままではいけない」は、現場もよく理解しています。だからこそ、彼らに任せ、考えさせ、答えを見つけさせることです。

「何でできないんだ。とにかく俺が言うとおりやりなさい。」、「そのやり方じゃあだめだ、このやり方でやりなさい。」、「ええい、もういい、俺がやる。」・・・

自分の成功体験=過去の成功体験は通用しないという事実を受け入れるべきです。彼らと同じ目線で「今」を考えるべきです。彼らの考えを尊重すべきです。彼らを信頼し同時に責任を負わせる。そんな謙虚さと厳しさこそ、彼らの意欲を高めてくれます。そして、イノベーションにふさわしい行動を実行してくれるのではないでしょうか。



自社製品の性能や機能については話せとも、世の中の常識と自社製品の関係は話せません。

そんな営業をお客様は、信頼するでしょうか?

では、どうすればいいのでしょうか。よろしければ、こちらをご覧ください。

場所:東京・市ヶ谷
期間:10月5日から12月7日 
毎週水曜日 18:30~20:00
全10回
費用:9万4千5百円/一括

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2011年9月9日金曜日

あなたはお客様を愛していますか?

 「私達は、お客様にご満足いただける仕事をしっかりこなしています。だから、ビジネス領域の拡大だとか、案件拡大だとかは当面必要ありませんよ。」
 
 いくつかのSI事業者でアカウント・プラン作りのコーチングをしています。個別の打ち合わせでは、「このままじゃじり貧です。何とかしなければならないと思っています。」と大人の発言するチーム・リーダーも、本音のところでは冒頭のように考えている人もいるのではないでしょうか。
 
 相手があなたを必要としている時、その必要にしっかりと応えていれば、仕事の心配をする必要はないでしょう。しかし、相手がいつまでも、あなたを必要としているでしょうか。事実、このSI事業者で、こんなことがありました。
 
 「RFPが出たので、いつものように、いつもの単金で、お客様が信頼しているエンジニアをつけることで提案したのですが、失注してしまいました。」
 
 その原因を担当の営業さんに尋ねてみると、「どうもうちより相当安い単金を出した会社があったらしく、そちらがとっていったようです。」とのこと。この話を聞いて、なんとのんきな営業だろうかとあきれてしまいました。
 
 この営業さんは、RFPが出て初めて案件の存在を知ったのです。決して最近つきあい始めたばかりのお客様ではありません。担当者や責任者とは懇意だと自慢もしていました。しかし、あらたな仕事についての検討が行なわれていることすら気づいていなかったのです。
 
 RFPが出ると言うことは、もはや仕事の内容が決まっています。当然、お客様は競合を前提に、声を掛けてくるはずです。この会社を本当に必要としているのなら、RFPなんか作らずに、その営業さんにまずは相談したはずです。それがないと言うことは、この会社はお客様から見れば、単なるone of themだと言うことを自覚するべきです。
 
 one of themの会社となった以上、もはや競合が前提です。当然競合他社も必死のはず。そんな状況の中で、今までうまくいっていたから今度も同じようにゆくはずだと思っていたとしたら、それはもうなんと非常識な・・・と言わざるを得ません。
 
 相手があなたを必要としている時は、それにしっかりと応えてさえいれば、仕事は確実に回ってきます。しかし、変化が常の世の中です。お客様の事業環境が変わり、ビジネス戦略が変わるのは必然です。当然、お客様の発注や意思決定の基準も変わるはずです。それに気づかなかったとすれば、それは「お客様を愛していなかった」ことの証明だと自覚すべきです。
 
 お客様の「困った」をなんとかしたい、お客様の「して欲しい」をかなえてあげたい。お客様の成功をなんとしてでも支えたい。そういうお客様への愛情があれば、お客様のことを徹底的に理解しようと思うのではないでしょうか。お客様のやっている仕事、お客様の競合の動き、お客様の置かれている経営環境、お客様の担当者や経営者の悩み、彼らの事業戦略・・・などを知りたいと思いませんか。
 
 大好きな彼女のことを何でも知っておきたい。そう思うのと一緒です。彼女が幸せになり、喜ぶところをみたいと思いませんが。そのためには、何でもしたいと思いますよね。少々押しつけがましくても、それが愛していると言うことなのでしょう。
 
 件の営業氏は、私に言わせれば、お客様を愛していたのではなく、案件を愛していたのでしょう。だから案件をなんとしてでも取ろうと必死になっていたのだと思います。それが間違えだと言うつもりはありません。しかし、お客様にはきっと、その「程度の愛情」が見えていたのかもしれません。
 
 お客様を愛していれば、お客様もその営業さんに早い段階から相談し、案件を作ることからお手伝いできていたかもしれません。RFPを作ることを任されたかもしれません。だからといって100%確実にとれるという保証はないにしても確度は確実に高まったでしょう。なによりも常に相談される相手になってさえいれば、仕事の領域は確実に拡大してゆくはずです。
 
 あなたは本当にお客様を愛していますか?それとも案件を愛していますか?
 
 もし、いつも案件が決定してから相談されるような状況であるとすれば、あなたの愛情は、きっと案件への愛情止まりです。お客様もその程度しか、あなたを必要としていないはずですよ。

■ ITソリューション塾[第8期] そろそろ・・・■

 すでに多くの皆様から参加のご意向を承っております。ありがとうございます。まだ、ご意向表明のない方は、是非ご一報だけでもいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

 詳しくは、こちらをご覧ください。
 
 なお、会場の都合で定員20名とさせていだきます。

場所:東京・市ヶ谷
期間:10月5日から12月7日 
   毎週水曜日 18:30~20:00
   全10回
費用:9万4千5百円/一括

内容はこちらをご覧ください。


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2011年9月3日土曜日

「世の中が変わったから」という言訳

 「ビジネスの環境が大きく変わってしまいました。どうもこれまでのようにはゆきません。」。

 「世の中が変わった」誰もが口にする言葉です。だからどうしたというのでしょうか。
 
 「最近の新入社員はこれまでとは違う」という話しもよく聞きます。じゃあ、昔はそうではなかったのでしょうか。
 
 これまでの歴史を振り返れば、変わらない時代などありません。変わるのが当たり前なのです。

 あたかも今が特別な時代かのように、「世の中が変わってしまった」からうまくいかない、理解できないと言うのは、なんともおかしな話しです。確かに、そう言訳をすれば、その場を取り繕うことはできます。また自分の精神の安定には役立つかもしれません。しかし、いったいそれが何の解決をもたらすというのでしょう。
 
 そんな言訳をする暇があれば、何が変わったかを冷静に理解することに時間を割くべきではないかと思います。いままでは当たり前と考えていたことが、もはや当たり前でないとすれば、何をどうすればいいかを考えるべきです。
 
 ITビジネスについてゆえば、明らかにこれまでのゼネコン型産業構造が変わろうとしています。日本国内の経済成長が開発や運用の需要を支えていた時代は終わりました。クラウド、オフショアなどのリソース調達の多様化は、大手システム・ベンダーの下請け仕事を支えていた企業にとっては、大きな試練になっています。

 また、これまでの「強み」が、必ずしも訴求力を発揮できなくなりました。例えば円高や新興国の台頭は、調達手段のグローバル化を促進し、グローバルな視点での「同一スキル=同一賃金」という基準をお客様に植え付けるようになるでしょう。また、クラウドに代表されるシステム・リソース調達手段のサービス化や仮想化、自動化などによるテクノロジーのコモディティ化は、「技術力」という武器の威力を弱めつつあります。
 
 当然、営業力への期待も変わりはじめています。
 
 かつては、お客様が欲しいというモノやヒトを確実、迅速、適正価格でお届けすることこそ、売上に貢献できる営業力でした。この時代は、お客様もお売る側も、何を調達すべきかをお互いに理解し合えていたのです。
 すこし古い話ですが、私の現役時代は、メインフレームだけが商品でした。ミドルウェアもデバイスもメインフレーム・メーカーが一括して提供していました。ですからお客様も売る側もその組み合わせで苦労することはなかったのです。インターネットもない時代です。ビジネスも今ほどグローバルではありません。ビジネス・プロセスも比較的単純であり、営業の売るものは、今に比べれはかなりシンプルだったのです。
 
 しかし、今はどうでしょうか。インターネットの普及は、情報流通の手段を多様化しています。ビジネスはグローバルに広がりビジネス・プロセスを複雑なものにしています。また、システム・リソース調達の手段は機器を購入することだけではありません。クラウドやアウトソーシングを利用すれば、グローバルにしかも安く調達が可能です。
 また、様々なメーカーがサーバーやデバイス、ミドルウェアを提供しています。確かにひとつひとつの完成度は高いかもしれませんが、それらの組み合わせを一貫して保証してくれる仕組みはありません。複雑に組み合わされる機器やソフトウェアの組み合わせに誰も責任を持てずにいます。
 
 ビジネス・プロセスの多様化は課題の定義を難しくしています。また、解決手段の多様化とその組み合わせの複雑化は、お客様もベンダーもこれしかないという最適解を作れなくなってしまいました。お客様は、この最適解を一緒に考え、その組み合わせを実現してくれるプロデュース力を営業に期待しているのです。
 
 「世の中の変わった」をこれだけで語り尽くすことなどできません。ただ、「何なが変わったのだろう」、「なぜ変わったのだろう」、「じゃあどうすればいいのだろう」という問題意識を持ち続けることで、私達は「変化」という歴史の常識にうまく適応できるようになります。
 
 変化のない時代は、これまでに一度もありませんでした。「世の中が変わった」といってため息をついたところで、この歴史の必然を変えることなどできません。ましてや、それを言訳に自分の責任を放棄するなど、何とも情けない話しです。それよりも、その変化に関心を持ち「ならばこうしよう」と考え続けること。そんな考え方を持つ方が、ずっと楽しいように思います。

■ ITソリューション塾[第8期]を開講します ■

 この塾を始めたきっかけは、営業活動に関わる皆さんに自信を持って欲しかったからです。

 お客様と話していてもその話が理解できない、整理できない、中には、話のネタがないので出かけてゆくのも気が重い・・・という人もいました。

 もちろんそんな人ばかりではありません。知識はあるがうまく整理して説明できない、提案に結びつけて考えることができないという声もありました。

 私達は、ITビジネスのプロフェッショナルです。お客様もそうあってほしいと期待しています。だから自分たちの商品のことだけではなく、世の中のことを整理し、その上で自分たちに最適な解決策を提示して欲しいと願っています。

 自社の製品は語れても、世の中を語れない・・・これでは、お客様から信頼していだくことなどできません。そんな課題を解決したいとこの塾を始めました。もう、3年続いています。200人もの人たちと過ごしてきました。

 詳しくは、こちらをご覧ください。
 
 なお、会場の都合で定員20名とさせていだきます。

場所:東京・市ヶ谷
期間:10月5日から12月7日 
   毎週水曜日 18:30~20:00
   全10回
費用:9万4千5百円/一括

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2011年8月26日金曜日

営業力の正体

 「営業力を強化したい。相談に乗ってもらえないでしょうか。」
 
 このようなご相談を頂く機会が最近増えてきたような気がします。しかし、そのご相談のほとんどが営業職の能力についてのご相談なのです。
  • 営業にもっと危機感を持たせたい
  • 新規顧客を獲得できる営業を育てたい
  • 戦略的な思考でお客様にもっと食い込める人材を育てたい
  • ・・・
 だから、是非そんな研修をお願いできないだろうかという相談がほとんどです。
 
 僭越ながら、営業プロセスやスキルについての研修については、それなりに準備はしています。仕事ですから喜んでお引き受けいたします・・・と申し上げたいところなのですが、「本当にそれでいいのでしょうか?」とついつい本音を申し上げてしまい、ご期待に反することもしばしばです(笑)
 
 研修にご参加頂ければ、なるほどこうすればいいんだと大いにモチベーションも上がります。そして、よーし明日からがんばって実践しようとなるのですが、上司や経営者が、同じ思いを共有できていないわけですから、思い通りに進みません。
 また何かを売ろうにも、あるいはサービスを提案するにも魅力的なものが提案できない、あるいはエンジニアが動いてくれないなど、こちらの思うようにならないこともあります。

 真実の眼が開かれてしまった以上、今まで通りでは納得できません。満足できません。そうなると、「だからうちはだめなんだ」とストレスを募らせ、「仕方がない、郷に入れば郷に従へ」となって意気消沈。効果どころか逆効果になりかねません。
 
 営業力とは、決して営業職の能力ではありません。営業力とは、会社の能力であり組織の能力ではないでしょうか。営業という仕事は、営業職だけではなく、経営者もエンジニアも一緒になって行なうべき仕事です。当たり前のようですが、意外とこの当たり前に気づいていないひともいらっしゃいます。
 
 経営者や管理者にしてみれば、業績が上がらないことを営業の能力の問題にした方が、自分の気持ちも楽になるでしょう。責任も転嫁でき言訳もできるでしょう。しかし、それでは本当の営業力強化にはなりません。
 
 営業の仕事の目的は、「お客様の価値を高め、お客様の感謝を手に入れること」です。モノやサービスはその手段であり、突き詰めればお金を頂く手段と考えることもできます。これを実現するための経営者の役割とはなんでしょうか。管理者にもエンジニアにも、そして営業にも当然に役割があります。それを議論しないままに営業の役割だけが先行し、プレゼンテーションやコミュニケーション、交渉術などのうわべのスキルを身につけてもいったい何を売ればいいのでしょうか。
 
 ITが今よりもっとシンプルで、景気に支えられた需要が供給を大きく上回っていた時代であれば、お客様も営業も必要としているものがすぐにわかりました。あとは、それを確実にそして適正な金額で提供できればお客様も満足してくださいました。営業も自分のやることを理解していました。忙しくもありましたが、営業の個人力が業績に直結していた時代です。

 しかし、ITビジネスが複雑になり解決策の選択肢が多様化しています。また成長を支えるシステムから低コストで変更や変化に柔軟なシステムへとお客様の期待の重み付けが変わりつつある中、お客様も営業もこれだといえる正解を見いだせません。もはや営業職個人の能力に頼っていては、お客様に満足頂ける解決策を提供できないのです。
 
 会社としての営業力、組織としての営業力。真剣に考えて見るべきかもしれません。自分たちに何ができるか?という先入観を捨て、お客様は何を必要としているのか?そんな視点で議論してみてはいかがでしょうか。その上で、できることを考えてみる。それで足りないものがあれば、どうやってこれを埋めればいいのか。もはや、自分たちだけですべてをまかなうことなどできない時代です。そんな柔軟性もまた、答えを導く助けになるはずです。
 
■ ITソリューション塾[第8期]を開講します ■

 あなたは、次の質問に自信を持って答えることができますか?
  • クラウド・コンピューティングと仮想化は、どう違うんですか?
  • スマートホンとHTML5とWebアプリケーション。クラウドとの関係は?
  • サーバーの仮想化は知っています。では他の5つの仮想化とは何ですか?
 自社製品は知っているけど、世の中の常識は知りません。そんな営業をお客さまは、頼りにするでしょうか。

詳しくは、こちらをご覧ください。
 
なお、今回も会場の都合で定員20名とさせていだきます。もし、「参加したいがすぐには決められない」というかたがいらっしゃいましたら、まずはお知らせいだけないでしょうか。いつもすぐにいっぱいになってしまい、ご迷惑をおかけすることになってしまいます。なにとぞご協力頂ければと存じます。

場所:東京・市ヶ谷
期間:10月5日から12月7日 
   毎週水曜日 18:30~20:00
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2011年8月20日土曜日

抵抗勢力との正しいつきあい方

 「おっしゃることはわかりますよ。でも、それはうちには無理ですね。」
 
 なにか新しいことを始めようとすると、こういうことを言う人が必ずでてきます。「抵抗勢力」と言われる人たちです。「いっていることばは理解できるが、自分は受け入れたくありません」と言うことなのでしょう。
 これまで自分なりのやり方で実績を積み重ね築いてきた自分の評価。正しいと信じ貫いてきた信念や価値観。言うなれば積み上げてきた過去の栄光という土台の上にある自分存在意義を失うかもしれないという恐怖。たぶんそんな思いが彼を抵抗勢力にするのでしょう。
 
 「ああ・・・なるほど、それとてもよくわかります。私もね・・・」とこちらの話題を横取りし、自分の成功体験の自慢話を始める人もいます。
 
 「あなたの言うことはわかってますよ。余計なこと言わなくても、こちらでできますから・・・」と言うことなのでしょうか。こんな抵抗勢力にお会いすることもあります。
 

 「確かに取り組まなければならないことですね。でも、現状をなんとかすることを優先しなければなりません。新しいことを始める余裕はないんです。」という方もいます。
 
 現状が何ともならないので、新しいことでチャンスを作ろうと申し上げているのに・・・という思いがこみ上げてきます。今までのやり方の延長線上ではもはやどうしようもないことは本人も気づいているのです。しかし、それ以外の方法となると経験もなければ勘も働かない。つまり、自分の出番がなくなってしまう。そんな寂しさと不安から、こんな発言をされているのかもしれません。
 
 そんな抵抗勢力に「あのひとのやりかたはもう古いんですよ。もはや通用しませんよ。」と愚痴をこぼす若手。これもまた、いかがなものかと思います。抵抗勢力とは、過去の成功者であり功労者も少なくありません。彼が今この地位にあるのは、その功績があったればこそであり、それをも無視するなど失礼な話です。ましてや人格にまで踏み込んで批判するというのは、どうも大人げないように思います。
 
 すばらし過去の栄光に心からの敬意を表すべきは、人の道理ではないかと私は思っています。しかし、どんなにすばらしく輝いていた巨大な恒星も、時間という流れの中で遠い彼方での輝きになれば、その恒星自体が何も変わらなくても、夜空の小さな一点になってしまう。これもまた事実です。
 
 「どうやるかではなく、どうあるべきか」
 
 そんなときは、こんな議論を徹底的に行なうしかないかもしれません。「あるべき姿」について合意すること。つまり最終的にどうなっていたいかを具体的なイメージで共有する、つまりまずゴールを決めるということです。その上で、このゴールに行き着くための方法を合理的に考えることを促してみてはいかがでしょう。
 
 注意すべきは、自分たちにできることを前提にしないことです。できるできないにかかわらず理想的な方法論を議論することから始めるべきです。「できること」という思考の枠を外してみる。そうやって、自分という枠組みにこだわらない発想の場を作ってみてはいかがでしよう。その次に、ならば自分たちはどうすればいいかを議論するという順番です。
 
 俺の気持、あいつの面子などの情が出てくることにも注意が必要です。そんなときは、「あるべき姿」を再び確認します。「あるべき姿」に立ち帰り、これを実現する上でもっとも合理的な選択肢を考える。そんな冷静な議論の積み重ねが大切かもしれません。
 
 「言っても無駄」と思われがちな対抗勢力も、本心は何とかしなければと思っているものです。そんな人と議論するためには、「どうやるか」という方法論ではなく、「あるべき姿」の確認と共有を起点に議論をは初めてはいかがでしょう。
 
 この合意がないままに「方法論」に終始して、結局は「あいつは何もわかっていない」、「考えが古い」といらいらしてみても、血圧が上がるだけで、業績は上がりません。
 
 残念ながら、こういう議論さえも拒絶する抵抗勢力は存在します。そういうときは、仕方がありません。自分が同じ立場に立ったら絶対にこんなことはしないと決心し、その思いを神棚に上げて毎日拝み、忘れないようにすることです。そんなことに腐ってみても、不健康になるだけですから。そういう割り切りもまた抵抗勢力との健全なつきあい方かもしれません。


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2011年8月13日土曜日

クラウドの本質:無人コンピューティングのもたらすもの

 クラウドの市場動向については様々な統計が発表されていますが、どの調査結果を見ても対前年比何十パーセントの増加であり、数年後には何倍という威勢のいいものばかりです。
 
 それでは、クラウド・ビジネスに積極的に参入することで、事業の拡大のチャンスが手に入ると考えていいのでしょうか。ことは、それほど単純なものではないように思います。
 
 情報サービス産業協会(JISA)の統計をみると、我が国の情報サービス産業の売上高合計は、2009年度には21兆5千億円となっています。これに対してクラウドの市場規模は、調査会社によりその定義の範囲が異なるので厳密な比較はできませんが、2012年度には1千億円から2千億円と推計しています。
 両者の統計の根拠が異なるためこれを同列に比較することは難しいにしても、それでも「クラウド」といわれる市場が、情報サービス産業全体から見て、決して大きなものでないことは想像できます。
 
 また、クラウドの定義についても、厳密な学術的定義があるわけではありません。先日、調査や出版に関わる人から聞いた話では、基本的には企業の自己申告が根拠になっているとのことでした。もちろん、調査する方も裏付けをとって最終的には判断されている訳ですが、膨大な調査対象を精査することは容易なことではありません。
 
 事実、私も多くの「クラウド」をビジネスにされている方々と接する機会も多いのですが、クラウドについての解釈が実に様々あることに驚かされます。
 
 例えば、単なるデータセンターでのホスティングやコロケーションを「クラウド」と呼んでいるところもあれば、自社のデータセンターにお客様個別に専用システムを立ち上げて、それをネットワーク越しに提供しているだけのものもありました。中には、仮想化とクラウドを区別せず話をされている方も少なくありません。
 
 以上のようなサービスをクラウドと言ってはいけない決まりはありません。しかし、このような曖昧な理解がまだまだ多い中、クラウドという市場を見かけの数字だけで理解しようとすることに疑問を持たざるを得ません。
 
 クラウドについては、米国のNISTの定義があります。これは、大変よく考えられており、クラウドの本質を理解する手がかりを与えてくれます。この定義につての解説は多くの方が語られていますので、ここでは申し上げませんが、私なりの理解を少しだけお話ししたいと思います。
 
 以前にもこのブログで紹介したことではありますが、クラウドとは、「無人コンピューティング環境の実現です。これにより徹底して人件費を削減し、システム資源の調達と運用コストを極限まで低減することを目的としている」ということです。
 
 この意味を理解するためには、人件費について日米の理解の違いについて知っておく必要があります。つまり、日本において人件費は固定費です。しかし、米国では変動費であると言うことです。
 
 ITのテクノロジーは日々進歩を続けています。そのためコストパフォーマンスもどんどんと改善され、ついこの前までは数台のサーバーを必要とした処理も、今では一台でも余裕でこなせるなど、当たり前のこととなっています。しかし、人件費はどうでしょうか。過去数年、あるいは十数年上がることはあっても下がることはありません。つまり、人件費を何とかしない限り、システムを所有し利用するコスト=TCOを下げることはできないのです。
 
 クラウドは、仮想化+運用の自動化+サービス化の技術や仕組みを駆使し、この人件費をなくしてしまおうという取り組みなのです。先ほども申し上げましたように、米国の人件費は変動費ですから、人を削減してこれを利用料金に反映させることで低価格のサービスを提供しようとしているのです。日本では、人件費は固定費です。ですから、技術的に追従できても利用料金に反映することは容易ではありません。
 
 クラウドの特徴を「所有から使用へ」と言われることも多いのですが、確かに結果としてそうなるのですが、これは決してクラウドの本質を説明しているものではないように思います。
 
 つまり、これは明らかに開発、保守、運用にたずさわる情報システム部門やSI事業者、あるいはサーバーを販売するベンダーの仕事を置き換えるものなのです。
 
 ユーザー企業の経営者の視点から見れば、これは大変魅力的なものに見えるでしょう。その一方で、情報システム部門の人たちからみれば、仕事を奪う対象と見えるかもしれません。SI事業者にすれば、もはや存亡の危機となりかねません。
 
 先ほどの統計の話に戻りますが、情報サービス産業全体の市場はそれほど大きく拡大するとは思えません。その一方で、クラウドの市場は急激に伸びています。しかも現状ではクラウドの理解が必ずしも厳密ではありません。いうなれば、今までの仕事をクラウドという言葉に置き換えて、数字を書き換えただけなのかもしれないということです。
 
 クラウドの本質、つまり、「無人コンピーティング環境の実現によるシステム資源の調達と運用のコストを極限にまで削減する」という取り組みは、経営上のニーズと一致しますから、間違えなく今後ともますます進んでゆくと思います。その一方で、情報システムの戦略的な活用や、ITを使った業務プロセスや環境のイノベーションへのニーズもなくなることはないでしょう。見方を変えれば、クラウドはこのような取り組みを行ないやすい条件を整えてくれることになるはずです。
 
 ITサービス産業に関わる私達は、ここにもっと関心を持つべきであり、そのための取り組みを進めてゆくべきだと思います。もはやシステム基盤はクラウドに置き換わり、コモディティ化した技術を基盤とした開発や保守は、オフショアに席を譲ることになるでしょう。そうなると、お客様の経営や業務ニーズに直接関わる業務の課題を解決することに答えを用意することしか生き残るすべはないと考えるべきです。
 
 私はNISTの定義にある厳密な意味での「クラウド」の普及を否定するものではありません。むしろ、ますます加速してゆくと思います。その一方で、市場全体が伸びていない以上、置き換えられる業務がかなりの規模で出てくることも避けられないと考えています。その事実に率直に目を向けることが大切だと思います。
 
 クラウドの本質である「無人コンピューティング環境の実現」が意味するところ、そして、それが今の自分たちのビジネスにどのように置き換えてゆくのかという現実を考えなくてはいけないときが、きているのではないでしょうか。


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2011年8月6日土曜日

「腐れ縁」という強み

 「うちの強みって、なんでしょうかねぇ・・・」

 ある中堅SI事業者の営業課長の口から、こんな言葉が出てきた。
 
 私は、強みのない会社などないと思っている。当然のことだろう、何も強みを持たないところにお客様は仕事など頼むだろうか。
 
 私は、この営業課長に、「しかし、もう20年近くA社(お客様)で仕事をされてきてるじゃないですか。」と切り返すと・・・「腐れ縁ですから(笑)」という言葉が返ってきた。
 
 「そこが強みじゃないですか!」と申し上げると、彼はきょとんとした顔をしていた。
 
 私達は、自分たちにできる技術や取り扱っている商品を引き合いに出し、それを他社と比べることで自分たちの強みを考える。しかし、このような見方をすれば、中堅・中小のSI事業者は大手SI事業者やソリューション・ベンダーに太刀打ちできるはずがない。その意味で強みがないといえば、全くその通りだろう。
 
 しかし、20年にわたるお客様との信頼関係は、どうやって築かれたのだろうか。誠実な仕事ぶり、無理を聞き、お客様のかゆいところに手が届く仕事をしてきたこと。何よりも、お客様の担当者以上に特定の業務やシステムに精通していることが、強みではないのだろうか。たとえ大手企業であろうとも、この「強み」をそう簡単に手に入れることはできないはずだ。
 
 以前、このブログで「お客様の困ったをメニュー化する」という話を書いたことがある。そこでも申し上げたが、自分のできることを資産と考えるのではなく、お客様自身を資産と考えるなら、自分たちの「強み」を違う目線でとらえることができるのではないかと思う。
 
 だからといって、現状にあぐらをかいていていいはずはない。お客様の現場を知っているが故に見えてくる「お客様の困った」や、お客様の気づいていない様々な課題をお伝えすること。そして、その解決策を提案すること。
 
 「これができるのはあなたの会社だけですよ。ほかの会社には、そう簡単にまねのできないことですよ。それが、あなたの会社の強みではないでしょうか。」
 
 もちろん、時代の潮流を読み、新しいことに果敢にチャレンジして競合優位を築く取り組みを、怠るべきではない。ただ、これを「強み」に育てることは、そう簡単なことではないことも事実である。特に体力のある大手とガチンコで勝負するとなると、これはなかなか大変なことだ。
 
 お客様の現場にいるからこそ見えるものがある。それを整理してみてはどうだろう。また、それを他のお客様を担当するチームと共有してみて欲しい。「なんだ、一緒じゃないか」ということになる。
 
 そして、これに対応すべく、それぞれのチームがお客様個別に同じようなやり方で対応していることに気づくだろう。ならば、それを会社全体で、組織的に対応できる仕組みを作ったらどうだろう。それは他の会社にも使っていただける可能性は高い。このような取り組みが、お客様の立場に立った魅力的な製品やサービスを生み出すのではないだろうか。
 
 「強み」を世の中の常識的視点(?)だけでみるのはやめにしてはどうだろう。自分たちにしかできない「強み」は間違えなくある。青い鳥の話ではないが、それはきっと自分たちの身近なところにあるのではないだろうか。


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2011年7月30日土曜日

SIという商品の「かたち」:あなたは汚いものを買いたいと思いますか?

 「こりゃあだめだ・・・」

 ある企業の情報システム部長のスタッフとして、いくつかのSI事業者の提案書を拝見したことがあります。次期システムの構築がテーマだったのですが、中にはそんなため息を漏らさずにはいられない提案を目にすることがありました。
 
 決して、内容がひどいわけではありません。RFPも出しているし、正直なところ構成する機器や開発の中身にそれほど大きな違いはありませんでした。

 では何が違うかといえば、それは資料の美しさです。

 確かに、表紙もあり、目次もあり、内容については実にきめ細かく丁寧に書かれています。しかし、その書き方が、物語調であったり箇条書きであったりと全体に統一感がありません。

 表はエクセル画面をコピーしてきているのですが、ディスプレイ画面をそのままコピーしてきているので枠の外に余計な罫線が表示されています。

 図は色や形に統一性がなく、グレーの箱の上に黒の明朝体で「DBサーバ」と書かれていたり、背景を白で塗りつぶしグレーの箱に「アプリケーションサーバ」と描かれていました。

 タイトルの書き方にも統一感はありません。「1.ハードウェア構成」という書き方もあれば、四角で囲んで「ソフトウェアの機能」と書かれています。内容のレベルが違うのは確かですが、突然書き方が変わると、「なぜ?」と違和感を感じてしまいます。

 フォントの大きさもパワーポイントのデフォルトの箇条書き設定をそのまま使っているのでしょう、ひとつの枠中の文字量の違いによりページによって大小様々で統一されていません。

 まだまだ突っ込みどころは満載なのですが、この辺でやめにしておきます。
 
 内容が悪いわけではありません。見た目が悪いのです。残念ながら、この提案書を出した会社は最終選考の対象から外させて頂きました。
 
 「中身がよければいいではないですか。」そんなご意見もあるかもしれませんが、私はそんなことはないと思っています。
 
 わかりやすく美しい資料とは、相手にわかりやすく伝えようという思いの結果だと思います。そんな気配りも思いやりもないところに仕事をお任せしても、打ち合わせや相談に手間がかかり、余計な時間がかかるだけです。プロジェクト進捗の状況説明を求めてもうまく説明できず、重要なリスクを見落としてしまうかもしれません。

 コミュニケーション能力の欠如。この提案書は、この会社のそんな弱点を露呈していると判断しました。
 
 担当営業の問題ではないか・・・といわれるかもしれません。しかし、それをチェックもできず平気で提出させる会社の文化も疑うべきでしょう。
 
 確かに内容は緻密で正確かもしれません。しかし、こういうところにお任せすると、こちらが言ったことは丁寧にこなしてはくれても、変更や変化への柔軟性は乏しいと思われます。なぜなら、状況説明や対策をわかりやすく説明できるとは思えず、そのため状況判断に手間もかかり、結果として柔軟性に欠ける可能性があります。
 
 プロジェクトにトラブルはつきものです。それも状況把握と意思疎通がうまくできれば迅速に対処できます。この会社に、それが円滑に行えるとは思えないのです。
 
 提案書を見て、その企業の仕事の姿勢は、はっきりと見て取ることができます。
 
 美しいといってもイラストを駆使し色を多用することではありません。「どうすれば混乱なく、確実に大切なことを伝えられるだろうか」を追求すれば、体裁は整い、余計は省き、結果として美しくなるのです。
 
 「SIのという商品には”かたち”がないので売るのは難しい」という人がいます。それは、とんでもない言いがかりであり、ごまかしです。「SIの商品は提案書」ではありませんか。お客様はその「かたち」をみて、買うかどうかを判断しているのではないでしょうか。
 
 まともな提案書も作れないSI事業者とは、まともな商品を作れない会社と言うことになります。だれが汚い商品を買いたいと思うでしょうか。
 
 営業は、そんなお客様の感性にもっと敏感であるべきでしょう。これまでは、書式に従い丁寧に仕様や積算、見積もりを書き上げれば採用していただけたかもしれません。しかし、競合がますます厳しさを増す中、そのような事務書類の提出だけでは生き残ることはできません。その現実に目を向けるならば、今一度、自分たちの商品の「かたち」に真剣に取り組むべきかもしれません。


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2011年7月23日土曜日

新人の営業に何を教えたらいいでしょうか?

 最近、このような質問をしばしば受けるようになりました。どうも、それには次のような理由がありそうです。 
  • これまで営業職を置いていなかったが、ここのところの業績低迷で、営業力強化に乗り出さなければならないということで、営業部門を新設することになったから。
  • これまでの営業は、請求書やクレーム処理などのどちらかというと売った後の後処理中心であり、売り込みはエンジニアという役割分担ができていた。しかしそれでは、必要な受注を確保できなくなってきたから。
  • いままでは、技術者として採用・教育し、何年かの経験の後に営業職にしていたが、営業力を早期に育成しなければということから、営業職としての採用を始めるようになったから。 
 思うように増やせない案件数、競合も厳しさを増し、成約率も利益率も下がり始めています。かつてのように「棲み分け」に甘んじ、丁寧・誠実な仕事と良好な人間関係を維持していれば、次の仕事が確実に回ってくる時代は終わりました。もはや新規顧客を開拓するしか活路はありません。そのような危機感を抱く企業が営業力を強化しようと営業部門を新設・強化し、新人時代から営業職を育てようという取り組みを始めている・・・そんな理由があるのではないでしょうか。
 
 しかし、実際に営業職として新入社員を採用しても、エンジニアと同じ研修カリキュラムをこなし、最後に社内の営業事務プロセスについて説明する程度で営業職の研修を済ましている場合も多いようです。研修期間が終わればOJTということになるのですが、そもそも営業環境が大きく変わってしまった今、手探りでこれからの営業を模索している現場に営業の「あるべき姿」を示す力はありません。新人営業たちは、何を模範に仕事を学べばいいのかわからなくなっています。
 
 新規顧客を開拓することが営業の役割。それを自覚しつつも、なかなか成果を上げられず悩みを抱えている営業の現場。成功の模範がない中で、新人営業たちは何を体験としてOJTで学ぶのでしょうか。今までの経験が通用しなくなった先輩たちは、何を新人たちに教えればいいのでしょうか。そんなジレンマに立たされているのが、今の新人営業の現場ではないかと思っています。
 
 「新人の営業に何を教えたらいいでしょうか?」という質問に、私は「営業という仕事の楽しさを伝え、お客様に相対する自信を持たせることです」と答えています。
 
 新人の研修で、実務実践的な営業スキル、例えば、プレゼンテーションやドキュメンテーションを習得させようとしても、現場の実践に基づく切実さがないなかで身につくものではありません。現場に出て「どうしてうまくいかないんだろうか?」を身をもって体験して、初めて実践的なノウハウの大切さやその意味に気づくものです。
 
 それよりも、営業という仕事が企業の経営を支えていること、知力を尽くし社内外のリソースを最大限に活用してお客様の成功をお手伝いするプロデューサーであること、お客様の経営に大きな影響を与えることができる仕事であること・・・とても大変な仕事だけれども、大きな成長のチャンスを与えてくれる仕事であることを伝えること、そのやりがいの大きさを伝えることが大切ではないかと思っています。
 
 また、自信を与えるためには、営業という仕事のプロセス、つまり、大変な仕事であるということを感覚的、概念的ではなく、具体的な作業の手順に分解して教えておくことも大切でしょう。もちろん、それを直ちに実践できるわけがありません。しかし、知識として知っているのと知らないのとでは、仕事へのストレスが全く違います。例えば、何のガイドブックも地図も持たずに初めての土地を旅行することを考えてみてください。とても不安で、心細くなるはずです。場合によっては、ホテルにこもってしまうかもしれません。怖いんです。不安なんです。そんな気持ちを解消してあげることが必要です。
 
 また、お客様が何を言っているかを理解できる程度に、ITの知識を身につけさせることも大切です。Javaのコーディング技術を身につけても、営業にとっては役に立ちません。コンピューターの原理や歴史を伝えることは大切なことではありますが、それがクラウドや仮想化、Webアプリケーションにどうつながっているかを教えなければ、お客様の話を理解できないのです。
 
 提案できなくてもいい、しかし、お客様の話していることがどういうことなのかを整理して理解できる。その程度の知識もなければ、不安になりあせるだけであり、お客様を怖いと感じるかもしれません。
 
 現場に配属される前は、何をすればいいのかわかりません。ワードやパワポの使い方、事務処理の手順、ビジネス・マナーなどのオペレーショナルなスキル不足への不安を持つようです。配属されて数ヶ月もたつと、そのようなオペレーショナルな不安は解消します。しかし、アカウント・マネージメントや顧客応対について苦労し失敗し、何とかしなければと思うようになります。提案書の書き方、会話や交渉の仕方、営業プロセスの管理など実践的な顧客応対スキルに関心が移ってゆくようです。
 
 このような関心や不安の変化にあわせ、自信を持たせる研修を実施してゆくべきではないかと思っています。
 
 このブログでもたびたび申し上げていますが、成功の方程式は、3年前と大きく変わっています。そのことを真摯に受け入れなくてはなりません。過去の成功体験を押しつけないでください。もしそれに従えば、彼らは失敗しますから、先輩や上司への不信を募らせることになります。
 
 それよりも営業という仕事の大切さとその楽しさを伝えてあげてください。方法は変わっても、営業という仕事の価値は時代を超えて何も変わってはいないのです。方法がわからないことを悲観する必要はありません。なぜなら、あなたも新しい時代の初心者であり、新人たちと同じだからです。それを正直に、伝えるべきでしょう。営業の楽しさとすばらしさを伝える、方法は一緒に考える。そんな謙虚さも必要かもしれません。

 かっこつけて、過去の栄光と精神論を押しつけることはやめましょう。話している方は気持ちはいいかもしれませんが、かれらは「うざったい」と思っています。
 
 ここ数年のITビジネスにおけるパラダイムの変化は、劇的なものです。過去の延長線上に未来はありません。位相が変わってしまったというべきでしょう。この変化を彼らは敏感に読み取っています・・・というか、この変化をむしろ常識と受け取っているのです。そんな彼らを信じ、方法は任せてみてはどうでしょうか。そう、足を引っ張ることだけはやめにしませんか。それができる先輩上司は、きっと部下にも敬意を払われるはずであり、結果として、新しい時代を乗り切ることができる会社になるのではないかと思います。


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2011年7月16日土曜日

自分にできること、そしてITのできること:南三陸町を訪ねて



 「唖然」。被災地を訪れた方は、同様の印象を持たれる方も多いのではないでしょうか。

 何もかもかもが破壊し尽くされ、木っ端微塵に砕け散っている。ビルの鉄骨や線路も飴のように曲がり、自動車はまるで粘土でもこねるかのようにぐちゃぐちゃになっていました。

 テレビではどんどんと水が押し寄せてくる光景が映し出されていました。しかし、その下で水は大きくうねり、渦を巻いていたのだそうです。その渦に巻き込まれ、いろいろなものにぶつかりあいながら、まさに粉々に様々なものを砕いていったそうです。

 がれきをみるとよくわかりますが、どれも形をとどめていません。まさに粉々です。映し出された映像からはみることのできない大きな力が、街をこんなにまで破壊し尽くしてしまいました。
 
 この写真は、南三陸町の商店街があったところだそうです。何も残っていません。改めてこの場所に立ち、テレビはみることのできない津波の恐ろしさをからだ全体で感じてくることができました。
 
 7月10日(日)、私たち10人は、震災直後から被災地でボランティア活動をされているトライポッドワークスの佐々木さんにつれられて、南三陸町の避難所を回り、生活用品やパソコンを届けるお手伝いをしてきました。
 
 佐々木さんの会社は、仙台に本社を構えるIT企業で、セキュリティ機器の製造販売で業績を伸ばされています。5月9日に開催した「緊急営業会議:3.11後のITビジネスと営業の役割」というイベントがきっかけで知り合うこととなり、今回の南三陸町訪問となりました。
 
 彼は、「ITで日本を元気に」という団体を立ち上げています。この団体は情報の入手も発信もままならない被災地にパソコンを配り、情報の断絶を解消し、地元からの声を直接届けられるようにしようと取り組んでいます。全国の企業や団体、個人から新品や中古のパソコンをもらい受け、それを現地に届けつつ、避難所に現地が求める生活物資を届ける活動をされています。
 
 「私に何ができるのだろうか」。そんなことを漠然と考えていました。そんなとき、彼と出会う機会がありました。彼は、東北の企業が、この震災でますますビジネスのチャンスを減らしていること、この事態を脱するためには、東北という限られた市場に留まることなく全国に、あるいは、世界に市場を広げてゆかなくてはならないこと。東北には優秀でまじめな人材がたくさんいること・・・などを話されていました。
 
 彼が仙台に会社を興したのもこの優れた人材を期待したためとのこと。そして、はじめから市場を東北ではなく東京や全国に定めて事業を始められ、大変なご苦労もされたようですが、今は大きく業績を伸ばされています。
 
 「地元の大企業の下請けに甘んじているだけではますますじり貧になる。全国に発信できるマーケティング力や営業力を持たせなければ、この震災でますます元気をなくしてしまう」。佐々木さんのそんな話を聞いて、「これだ!」と思いました。
 
 「佐々木さん、マーケティングと営業の実践ノウハウについて研修会を開けないでしょうか。」そんなことがきっかけで、「緊急研修会:ビジネス開発力養成講座@仙台」を7月11日(月)に開催することとなりました。私にできるささやかなボランティア活動となりました。
 
 佐々木さんから、「その前に地元の実情をみておいてほしい」とのお誘いを受け、今回の南三陸訪問となったわけです。
 


 今回の訪問の最大の成果は、「若い人たちのがんばり」そして「力強さ」を実感したことです。
 
 「千年に一度の出来事なのに何もしないではいられません。」と東京の会社を辞めてボランティアのリーダーとして活躍している人、自らも被災し自宅もお店も流されてしまいながらも大きな避難所の炊事班長として、腕をふるっているレストランのオーナー、家族を亡くしながらパソコンの配布に汗を流す女性、様々な方と話をさせていただき彼らのたくましさに元気をもらいました。
 
 「この震災で地域のコミュニティが崩壊してしまいました。また、避難所も抽選でどこに入れるかわかりません。ますます孤立感を深めている人たちも少なくありません。」自らも被災者である20代の青年はパソコンで最新の情報を届け、ウエブ上でコミュニティを再生し安心感を広げたいと、佐々木さんの取り組みに協力していました。彼は、連絡もままならない地域に分散する11の避難所の連絡会を立ち上げ、情報の共有や意見のとりまとめ、行政との交渉などに奔走しています。
 
 「最近の若いやつら」が、生き生きと活動している姿に、「こりゃあ、おじさんも負けてはいられない」と思わずにはいられませんでした。
 
 南三陸町の訪問で、スイッチが入りました。この震災は、大きな被害をもたらしましたが、これからを担う若い世代が力を発揮し、元気にしてくれています。どこかの国の政治家が未だ内輪もめに明け暮れ、これからの道筋をはっきりと示さないなか、彼らは文句も言わず自分たちの力で道を切り開いている。ささやかながら、これからも彼らを信じ、彼らに任せ、彼らを助けることができればと考えるようになりました。
 
 翌日の「緊急研修会:ビジネス開発力養成講座@仙台」も定員を超える参加となり、地元のみなさんの熱意を受け止めて参りました。そのあたりは、こちらをご覧ください
 
 たった数日の経験ではありますが、いろいろなことを感じ、学ぶことができました。
 
 震災直後に比べれば、生活はだいぶ改善されたそうです。しかし、震災直後のように支援物資が届くことは少なくなりました。また、季節も変わり、必要なものも変わってきています。それを買うにも店もなければ、お金もない人がまだまだいっぱいいます。まだ終わっていないのだということを、実感することができました。
 
 改めて、自分にできること、そしてITのできることを考えてみたいと思っています。

2011年7月9日土曜日

本物のおじさんになろう。そうすれば若者もついてくる。

 新入社員研修の講師をしていると「今年の新人はどうですか?」とよく聞かれます。しかし、本当のところ何が違うのかよく分からないのです。
 研修にもまじめに取り組んでいるし向上心も高い。自分のこと、会社のことをまじめに考えているようです。多分、宇宙人達とどうつきあえばいいのでしょうかという質問なのでしょう。新人を迎える上司や先輩としては、不安であるのも分かりますが、ことの本質はもっと別のところにあるのではないかと思っています。
 
 そう言いながらも、強いて自分の頃との違いを挙げれば、学生と社会人とのギャップの大きさを、とても強く意識しいることかもしれません。
 
 例えば、ビジネス・マナーへの過剰な気遣いです。服装や髪型、礼儀作法や言葉遣い、中には、自分のにおいが気になるので香水をつけた方がいいのかと質問した男性もいました。見た目については、私たちの時代は、お金もなかったしおしゃれの選択肢も少なかったので、そんなことを考えるセンスも余裕もありませんでした。豊かな学生時代を送ってきたからこその意識なのかもしれません。また、言葉遣いも「ファミレス言葉」などと言われ、自分の言葉使いに疑心暗鬼になっている人もいるようです。
 
 また、「OJT期間にやるべきこと」を書かせると、「先輩達と積極的に飲みに行く」とか「職場での人間関係を大切にする」と書く人がとても多いことに驚きます。裏返して考えれば、「そういうことが苦手なので、意識して頑張ります」ということなのでしょう。学生時代の友達や先輩後輩とは違い、会社という未体験の上司部下の人間関係をとても不安に感じているのではないでしょうか。
 
 中には、「同期との絆を大切にする」というものもありました。会社の中で本音で気楽に話し合えるのは同期の人間だけであり、小さなコミュニティから会社や社会という大きなコミュニティへ出て行くことへの不安の表れなのかもしれません。

 いずれにしても、どちらも人間関係をうまくやろうということを、とても強く意識しているように感じます。そういうことが苦手なのか、うがった見方をすれば、よく見られたい、ストレス無く過ごしたいという思いの強さの表れなのかもしれません。
 
 改めて、「人間関係」についての意識の違いを考えてみると、今の若者達には、私たち大人達の時代のような形式的上下関係や礼儀作法の尊重、男尊女卑の思想がまったくありません。先輩としての敬意は払うものの、仕事は仕事、プライベートはプライベートと割り切っている。男でも女でも、性の違いによる能力の差という思い込みはありません。おじさん世代よりも、ずっとドライでオープンなのです。
 
 一方、私たちおじさん世代は、あの辞任したどこかの国の大臣のように、席順や挨拶、座り方など、様々な形式について厳しい躾を受けてきました。また、男が上で女が下という暗黙の了解もありました。それができない若者達をしつけるのは当然と言わんばかりに、厳しく形式を求める。若者達は、よく見られたい、人間関係を大切にしなければと、形の上では従順ですが、その本音は自分の価値観とは大きく異なっているわけですから、それはもう大変なストレスでしょう。
 
 また営業の現場をみると、おじさん世代の上司は、高度成長期の成功により今のポジションを得た人がたくさんいます。彼らの時代は、お客さまに足繁く通えば、なにか仕事がもらえたのです。しかし、バブルの崩壊、リーマンショックと、ITが成長産業ではなくなった今、靴底を減らすだけの営業では仕事を増やすことができなくなりました。もっと戦略的に、もっと知的に頭を使わなくては競合との戦いに勝てない時代になったのです。
 しかし、その方法を知らない上司は、自分の存在証明のため、あるいは威厳を保つために旧泰然とした自分の成功体験を振りかざし、そのやり方を押しつけてくる。そして、うまくできなければ、「なんで俺の言うとおりにやらないんだ!だからうまく行かないんだ!」と部下の責任にする。部下にしてみれば、「あなたの言うとおりにやっていたら、もっと仕事になりませんよ」と思っているのです。
 
 お互いの疑心暗鬼、これもまた、若者にもおやじ世代の上司にも、大きなストレスになっています。そんな人間関係から生まれるストレスの積み重ねが、心の病の原因のひとつになっているのかもしれません。
 
 どうすれば、この問題を解決できるでしょうか。私は、おじさん達は若者達の気質や扱い方で気をもむのではなく、自分たちの置かれているビジネス環境や新しい時代の成長戦略を真剣に考え、それにふさわしい方法について、自分なりの思想をしっかりと持つことだろうと思うのです。自信を持って自分の考えを若者達に伝えること。それが、事態解決の最良の手段だと考えています。
 
 方法論や形式論を強要するのではなく、また、「俺の若い頃はなぁ・・・」と過去の栄光を振りかざし精神論やありがたい訓話を語るのではなく、今のビジネスやお客さまや競合他社への戦略について、自分なりに考えて、それを真摯に伝え、一緒に考えることです。その考えを押しつけるべきではありません。
 
 頭のいい若者達は、ちゃんとそれを理解できます。そして、今の時代にふさわしいやりかたを考えるでしょう。失敗もするでしょう、困難にぶつかることもあるはずです。そんなとき、いつでも聞いてもらえるという安心感を与えること。そして、答えを言う前に彼らの話を真摯に聞き、そして、自分の考えを自信を持って伝える。そんなセーフティ・ネットを作ることが、問題の解決には有効なのだろうと思います。
 
 「若者の気質や意識が変わったから、どうしようという」ではなく「時代が変わったから、だからどうしよう」という発想を持つべきです。それを考えることこそ、おじさん世代の役割です。若者とのつきあい方のテクニックより、本物のおじさんとしての価値を高めること。そうすれば、若者達もついてくるし、人間関係もうまくできるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。


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2011年7月2日土曜日

IT業界は、「衰退産業」という言い訳

 「もはや、IT業界は、衰退産業ですよ。市場の伸びは止まり、利益もかつてのように上げることは出来なくなりました。」
 
 ある、SI事業者の営業役員から、こんな話を伺いました。確かに、ここ数年の情報サービス産業の統計を見ると、衰退とは言わないまでも、市場全体の成長の伸びは鈍化し、事業所の利益率や労働生産性は低下しているようにも見えます。リーマンショックをキッカケとした大幅な減収減益のあと、最近、仕事の量は増えているようです。しかし、以前のような利益率を確保することは、難しくなりました。
 
 この営業担当の役員が指摘するように、この市場をマクロに眺めてみると、確かに、成長産業から成熟産業へと大きく舵を切ったことは間違えないように思います。
 
 しかし、だからといって、自分たちの業績をこの市場の変化を理由にするというのは、いかがなものでしょうか。
 
 ITに限らず、どのような産業も市場の変化は避けて通ることは出来ません。その変化を先読みし、先手を打って対応するのが、経営であり、その先兵が、営業なのではないかと思うのです。
 
 SI事業者は、確かに、今厳しい価格競争に晒されています。そのような中にあっても、自らそれに対処し、確実に利益を上げているところもあります。
 
 例えば、ある中堅のSI事業者は、自らアジアに開発拠点を構え、上流やUI周りは日本で、コモディティ化し価格競争の厳しい開発や保守は、海外でという仕組を作り、お客様の厳しい単金要求にも応えられる体制を作っています。
 まだ、既存需要に支えられているのが現実です。しかし、お客様の要求に応えられる体制は整いつつあり、厳しい要求が出てきたときに、競合に負けず、しかし、確実に利益を確保できる体制は、営業の自信ににもつながっているようです。
 
 また、あるところは、数年前から中国に開発拠点を構え、現地で採用したエンジニアを3年間、日本に転勤させ、日本のお客様に貼り付けて、日本的な仕事の流儀を徹底的に学ばせています。そのあと、中国へ戻し、現地で開発に当たらせる仕組を作っています。これを繰り返すことで、中国であっても、日本的な仕事感覚で、仕事がてきる体制を整えつつあります。
 日本で仕事をさせる訳ですから、その間は、安くは出来ないのですが、彼らが帰国すれば、日本との意思疎通も容易にでき、安心して仕事をまかせることができ、しかも単金が安くできるようになりました。
 
 相当数の開発要員を運用要員、それも、運用設計や高度な運用技術に対応できる要員として再教育し、体制を大幅に転換する取り組みをされているところもあります。これは、仮想化やプライベート・クラウド化に伴う、高度な運用技術に対応できる新たな需要に対応しようというものです。また、マネージド・サービスを強化し、お客様のITアウトソーシングの需要にも応えるべく、体制を整えつつあります。
 日本の企業、特に大手は、運用のコストは下げたいが、海外に運用をまかせたくはないという意識は根強いようで、仕事を増やされているようです。
 
 ある企業は、Webアプリケーションの開発要員を大幅に増員すると共に、対応するフレームワークを整えて、これからの需要に先取りする体制を構えています。この分野については、まだまた人手不足であり、単金も高く、結果として利益率も高いようです。技術のコモディティ化が進み、価格競争の厳しい既存システムにかかわる保守需要を切り捨て、新しい分野にでることは、勇気のいることだとは思います。しかし、時代がそれを求めていることは確かであり、その手応えを感じ始めているようです。
 
 このような時代の変化をうまく捉え、「衰退産業」と言われるこの業界の中でも、確実に業績を上げている会社がある一方で、コモディティ化した技術にしがみつき、自らを厳しい価格競争に晒している企業もあります。
 
 もちろん、今を食べてゆかなければなりません。そんなリスクは犯せないという考え方も、多くの社員を抱える経営者の気持ちとしては、当然のことです。しかし、もはや過去の成功体験が通用しない時代です。新しい、成功体験を自ら作り上げてゆく気概が必要なのではないでしょうか。
 
 時代の流れを先取りし、積極的な取り組みをしている企業に共通している点は、「経営が営業を信頼している」ように見えます。
 
 お客様の第一線に接する営業が司令塔になって、社内のリソースをうまくとりまとめています。それを経営者が支援しています。
 
 残念ながら、過去の成功体験から抜け出せず、未だその法則をかたくなに守り通そうとする経営者もいます。彼らの言訳は、決まって、「そんなことに優秀な人材を割いてしまったら、どうやって今を乗り越えればいいんだ。それより、今のスキルで、新しい仕事を取ってくることに営業は優先してもらいたい」というものです。
 
 営業の現場は、「だからダメなんだよ」と意欲をなくしてしまいます。魅力的な商品がないままに、お客様の需要がそこにないままに、売ってこいと言われても、それはもう、大変なことなのです。
 
 そんなお互いの疑心暗鬼がある企業は、「もはや、IT業界は、衰退産業ですよ。」という言訳しかできないのでしょう。
 
 時代の流れは、待ったなしで、速度を速めています。ITは、その変化の最前線にいるのです。
 
 私は、IT産業は、「衰退産業」であるとは考えていません。「成長の方向が変わった」と考えています。ですから、今までの方向に進む限り、需要は確実に減り続けるでしょう。だから、新たな方向を模索すべきなのです。
 
 新たな方向に目を向けられる営業力、それを支える経営の信頼。新しい営業のあり方が求められているように思います。


 Facebookで、コミュニティ・ページを開設しています。よろしければ、ご参加ください。先週の「問題」と「課題」についても、これ一枚シリーズのチャートにまとめてみました。どうぞご覧ください。 

2011年6月25日土曜日

「問題」で満足し「課題」を追求しない残念な営業たち

 「なにか、お困りのことはありませんか?」
 もし、あなたが、こんな質問をされたら、相手に、どう応えるでしょうか。
 
 「突然、そんなことを言われても・・・」、「いゃあ、特にないですね。」、「そんなこと言われても困るよ。」・・・
 
 そんな回答をするのが、精一杯ではないでしょうか。では、次のような質問は、どうでしょう。
 
 「御社の問題は、こういうところにあると考えています。ですから、このような取り組みをされるべきだと思います。」
 
 もし、私なら次のように回答するでしょう。
 
 「有難うございます。なるほど、よく分かりました。社内で十分に検討の上、後日、改めて連絡させていただきます。」と申し上げて、きっと何もしないでしょう(笑)。

 私にすれば、「御社の問題」と言われても、「なるほどなぁ」と思うかもしれませんが、それを解決しなければならないほどに、差し迫っているとは思えないのです。大人ですから、礼儀はわきまえています。しかし、こちらには、それを積極的に解決しようという意欲はありません。
 
 お客さまの課題を見つけ、その解決策を提案に結びつけるのが、営業の仕事です。ソリューションとは、お客さまの課題を解決することです。しかし、これでは、解決すべき課題を見つけることが出来ません。つまり、仕事になりません。
 
 では、どうすればいいのでしょうか。その答えは、普段私たちが、漠然と捉えている「問題」や「課題」という言葉の本当の意味を正確に理解することで解決します。
 
 「営業活動とは、「問題」を見つけることから始めます。そして、これをお客さまの「課題」に変えてゆく取り組みです。
 
 ますます分からなくなったかもしれませんね(笑)。では、この違いを考えてみましょう。きっと、この違いが理解できれば、前述のふたつの会話が、どれほど、お客さまの「課題」を見いだすには、ほど遠い質問であるかが、分かると思いますよ。
 
 まず、「問題」についてです。「問題」とは事実のことです。お客さまの情報を整理することで、お客さまの現状が明らかになります。その現状が、お客さまにとって将来のリスクであり、不利益をもたらすものであるとすれば、それが、お客さまの「問題」です。

 ただし、お客さまは、その「問題」に気付いているとは限りません。あるいは、気付いていても、問題の重要性やこれに対処する必要性を感じていないかもしれません。そこで私たちは、お客さまに代わり、お客様の事実を整理し、分析することで、そこにある「問題」を明らかにすることから始めます。

 アカウント・プラン作りをされている営業の方も、多いのではないでしょうか。アカウント・プランとは、このようなお客さまの事実をわかりやすく整理し、そこにある「問題」を探す活動です。しかし、それは、私たちが、勝手に「大変だ!」と思っているに過ぎないのです。お客さまも同じように「大変だ!」と思っていただかなければ、お客さまは、行動を起こすことはありません。

 もうおわかりですよね。そう、お客さまの「課題」とは、「お客様自身が『なんとかしなくては大変なことになる』と認識した事実=問題」なのです。
 
 「課題」とは、お客さまの『現状』と『こうありたいと望んでいること』との間にあるギャップです。つまり、お客さまが、そのギャップを埋めたいという意志がそこにある場合、「問題」は、「課題」となります。

 提案活動を始めるに当たり、事実としての「問題」を私たちが、知っているだけでは不十分です。また、お客さまに、その事実を伝えるだけでも意味がありません。それを解決したいというお客さまの意欲を引き出す必要があります。もし、お客さまに解決したいという意欲がなければ、貴方の提案がどんなにすばらしいものであっても、お客さまは、決して受け入れません。

 お客さまの課題を明確にする取り組みとは、お客様に、「将来のリスクや不利益を抱えているという事実」=「問題」を認識させ、それを、「この問題を解決したいという意欲」=「課題」に変えてゆく取り組みなのです。
 
 私たちは、この「問題」と「課題」の違いを、正しく理解しておくべきです。独りよがりの「問題」をお客さまに押しつけても、お客さまが、それを自分の「課題」として、受け入れない限り、ビジネスは前に進みません。
 
 今日のあなたは、とてもうまく説明できたかもしれません。「これで分からないなら、分からない方がおかしい」と思うかもしれません。確かに、あなたはうまく事実=問題を伝えることが出来たかもしれませんね。しかし、どうでしょう、お客さまに、その問題を解決したいという意欲=課題を引き出すところまで、お客さまと会話できたでしょうか。あなたは、そのことを確認しましたか?
 
 課題発掘とは、お客さまの問題を見つける活動ではありません。お客さまに解決したいという意欲を引き出す活動です。
 
 もうおわかりですよね。なぜ、最初のふたつの会話が、お客さまの「課題」を見いだすには、ほど遠いかを。
 
 ところで、「意欲を引き出す・・・」とは、どういうことでしょう?これについては、いずれまた。


 「ITで日本を元気に!」 このメッセージを東北の地から発信してゆくためにできることは何か。それは、ITビジネスに関わる私たちの営業力やビジネス開発力を高めてゆくことに他なりません。東北地域だけではなく、日本全国に、この地の優れた技術や人材を売り込む力を持つことができれば、その力によって、日本の元気を取り戻し、震災の復興にも寄与するはずです。

 この「緊急研修会」は、そんな趣旨のもと、トライポッドワークスの佐々木社長のご協力をいただき、ITビジネスに関わる皆さんの営業力とビジネス開発力を強化しようと開催されるものです。

 売り込みのための紐付き研修ではありません。ぜひ、地元の皆さんのご参加を期待しております。
 
 参加費は無料です。くわしくは、こちらをごらんください。


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2011年6月18日土曜日

「OJT」というほったらかし、「育成」という名の押しつけ

 「最近の新人は○○○だ」と一般化して評する人も少なくありません。しかし、本当にそうなのでしょうか。自分の時代を考えてみると、大して変わらないようにも思えます。
 
 自分で考えて行動できない、保守化している、覇気がない・・・大人達は、自分たちの時代を懐かしみ、あたかもその時代こそが良かったのだと言わんばかりに、あえて、その違いを強調しているようにも思えてしまいます。
 
 また、そんな議論の中に、そういう若者達を世の中に送り出した自分たちの責任について語られることは少ないようです。
 
 ITソリューション塾をもう3年やっています。昨年2人の新入社員が、この塾の門をたたきました。なぜ参加したいのかと聞くと、「配属が決り、現場に出て、何も知らないことに愕然としました。このままでは、やっていけません。ぜひ、勉強させてください。」というものでした。
 
 もちろん、会社の正規の研修ではありません。ブログで見つけて、連絡してきたとのことですが、当然、参加費は、自腹です。それでも参加したいという若者もいるのです。
 
 このように志の高い若者もいる、そうでないものもいる。時代は変われど、いつの時代も、いろいろな若者がいるということには、かわりがないと思っています。
 
 もちろん、それぞれの時代の社会環境の違い、そこから生ずる若者の意識の違いまでも否定するつもりはありません。例えば、社会学者である山田昌弘氏の著「なぜ若者は保守化するのか」を読むと、なるほどとうなずけることも少なくありません。例えば、 
  • 産業のサービス化、IT化の流れの中で、複雑で知的な労働については正社員として雇用し、単純労働は非正規雇用者で賄う。結果として、正社員需要が減っている。
  • ITやサービスを主体とする知識型産業の富の源泉は、土地や工場などではなく、能力のある人間である。そうなると、土地のある地方であることの必然性は無くなり、効率の点から都会に人が集まり、富も集中する。結果として地方が衰退する。
  • 少ない正規雇用と都会への集中、産業の空洞化により、市場の成長も限られてきた。高度経済成長の時代は、努力すれば報われる「努力保証社会」であったが、努力の積み重ねても、収入や社会的地位に直結することはなく、努力をしても「バカらしい」という意識を生み出している。だから、成功は、「宝くじ」頼みであり、運を天にまかせるしかないというあきらめが生じている。
 そんな中で、自分の生活の安定を図らなければならず、結果として保守的な志向を持たざるを得ないというものです。
 
 確かに、このような社会的な背景から生まれる「若者意識」があることを否定するつもりはありません。しかし、だからといって、おしなべて、その平均を目の前にいる新入社員に押しつけて考える必要もないように思うのです。
 
 以前、「OJTというほったらかし」という記事を書きました。「我が社は、実践で人を育てる。」だから、OJTで十分という会社もあります。その志は、立派だと思います。しかし、実際のOJTの現場は、先輩社員が、部下を単なるアシスタントや雑用係として使っているだけであり、目標設定はなし、OJTリーダーに育成のノウハウもなければ、志もないのです。
 
 確かに、これで育つ若者もいるのですが、それはOJTの成果ではなく、「これじゃあ大変だ」という本人の危機感であり、自助努力でしかないのです。つまり、育つか育たないかは、本人任せのほったらかしなのです。言うなれば、運任せです。
 
 育たなければ、あいつには才能がなかったとか、仕事があっていなかったと自らの責任を棚上げにする。それをOJTといってはばからない大人の無神経を悲しく思います。
 
 また、山田氏の言うかつての「努力保証社会」では、お客さまに行けば仕事がもらえました。「靴底を減らして、なんぼの世界」だったわけで、今管理職の立場にいる人の中にも、それで成功した人も多いと思います。
 
 しかし、もはやそんな時代ではないのです。靴底を減らして、お客さまを足繁く回っても、仕事をもらえる時代ではありません。そんな今を見ようともせず過去の成功体験を、そのまま押しつける。それでは、うまくゆくわけはなく、若者達に「バカらしい」という意識を持たせてしまう。
 「バカらしい」と開き直るくらいならまだいいのですが、「自分は役に立たない。何をやってもダメだ・・・」、そう考えて、心を病んでしまう。こうなってしまうと、本当に不幸です。これは、本人の責任ばかりとも言えないように思います。
 
 では、どうするか。まずは、今の若者達と真剣に向かい合うことです。自分の成功が、今も通用するという思い込みを捨てることです。「こうすればいいんだ」と自分の主張を押しつけないことです。
 
 自慢できる成功も、恥ずかしい失敗も、全て素直にさらけ出すことです。そして、独りの人間として、部下の声に素直に耳を傾けることです。そうして、自分ならどうするかを、真摯に考えることです。
 
 その上で、自分は、どう思うかをしっかりと伝えることではないでしょうか。それは、決して、過去の成功の自慢話をすることではありません。「俺の若い頃はなぁ・・・」は、もはや過去の栄光に過ぎないことを自覚すべきです。
 
 「本質おいては一致し、行動においては自由に、全てにおいては信頼を」とは、ドラッカーの一節です。まさに、本質を部下と語り合い、一致する。後は信頼して、まかせておけばいいのです。そして、困ったことや助けを必要とするときが来たらすぐに行動するセーフティネットを提供する。そんな、心の準備をしておくことでしょう。
 
 自分で考えて行動できない若者が多くなったのではなく、このような現実を自分で考えて行動できない大人達が多くなったことの方が、むしろ問題なのでは・・・と考えてしまいます。


 「ITで日本を元気に!」 このメッセージを東北の地から発信してゆくためにできることは何か。それは、ITビジネスに関わる私たちの営業力やビジネス開発力を高めてゆくことに他なりません。東北地域だけではなく、日本全国に、この地の優れた技術や人材を売り込む力を持つことができれば、その力によって、日本の元気を取り戻し、震災の復興にも寄与するはずです。

 この「緊急研修会」は、そんな趣旨のもと、トライポッドワークスの佐々木社長のご協力をいただき、ITビジネスに関わる皆さんの営業力とビジネス開発力を強化しようと開催されるものです。

 売り込みのための紐付き研修ではありません。ぜひ、地元の皆さんのご参加を期待しております。
 
 参加費は無料です。くわしくは、こちらをごらんください。


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