2011年10月28日金曜日

相談される営業になるための条件: 組織や臓器の知識


「仮想化について、どうしようかと思っているんだけど、相談に乗ってくれないだろうか?」

お客様である情報システム部長から、このようなご相談を頂いたとしましょう。あなたなら、どのように対応されますか?

まず、「仮想化」と言うキーワードから思い浮かぶことは、「何の仮想化だろうか?」という疑問です。仮想化には、6つの仮想化があります。サーバーの仮想化、ストレージの仮想化、デスクトップの仮想化、クライアントの仮想化、アプリケーションの仮想化、ネットワークの仮想化です。

お客様にそのことを確認しますと、「デスクトップの仮想化」であることがわかりました。では、このお客様にとって、最適な方式はなんでしょうか。画面転送方式でしょうか、ネットブート方式でしょうか。

お客様がデスクトップの仮想化に関心を持たれた理由を伺ってみると、「既存のWindows XPをそろそろWindows 7にしたい。しかし、運用コストを考えるとデスクトップの仮想化もひとつの選択しかもしれない」と考えたからだそうです。

モバイルでの使用も想定しているとのこと。また、既存のXPマシンのリース満了のタイミングもまちまちです。そう考えると、シンクライアントを前提としたネットブート方式にすることは現実的ではないかもしれません。画面転送方式がいいかもしれません。となると、どのような製品を選択すべきでしょうか。

CitrixのXen DesktopとMicrosoftのHyper-vの組み合わせでしょうか。それともVMwareのvSphereとVMware Viewの組み合わせがいいでしょうか。それとも・・・

「情報システムのBCPについて、社長から計画を立てるように指示が出たんだけど、何から手をつけてゆけばいいだろうか?」

「情報システム+BCP」というキーワードから思い浮かぶ言葉は、「災害強度を高めるための取り組み」と「リモート・オフィースの実現」。

前者については次世代データセンター、拠点分散、クラウド、マネージド・サービスなどのキーワードが思い浮かびます。後者については、デスクトップの仮想化、認証基盤、安否確認、BYODなどとなるでしょう。では、次世代データーセンターについては・・・

案件獲得のきっかけは、こんなお客様との会話から始まることも少なくありません。しかし、「仮想化」といわれて、それを体系立てて頭に浮かべることができなければ、お客様に適切な質問をすることはできません。それ以前に、何を言っているかわからなければ、お客様との会話はこれで途切れてしまいます。

また、デスクトップの仮想化にいくつかの方式があり、各社様々な製品があり、金額も違えば、機能や性能も一長一短があります。詳細はわからなくても、要点がわかっていなければ、選択肢を絞り込むことができません。

仕事が早い、誠実に仕事をしてくれる、お願いしたことは確実にこなしてくれる。いい営業ですよね。でも、それだけでは、大切なことを相談できる相手にはなれません。

また、自社の製品には詳しくても、世の中の常識やその中での自社製品の位置づけを説明できなければ、お客様もがっかりでしょう。そういう相手は交渉相手にはなり得ても、相談相手にはなりません。

ならば、「私は詳しいことがわかりませんので技術に詳しいエンジニアを連れてきます。」と開き直ることもできるでしょう。しかし、どういうスキルのエンジニアをお客様に紹介すればいいのでしょうか。お客様の期待や要件を絞り込むこともできず、とんちんかんな説明でエンジニアを引きづり出したのはいいが、その人の専門とは全く関係のない話だったとすれば、お客様にとってもエンジニアにとっても、いい迷惑です。

キーワードとは「細胞」です。「細胞」はけっして単独では機能しません。役割の異なる様々な細胞が組み合わさり「組織」になり「臓器」になって初めて、その細胞の機能や役割、位置づけが明らかになります。

エンジニアは、この細胞を作り、それを組み立て組織や臓器にしあげなくてはなりません。そのためにプログラム言語やパラメーター駆使します。

営業は、どんな組織や臓器を作るかを描かなくてはなりません。お客様が知りたいのは細胞の細かな仕組みや機能、性能ではないのです。まずは、組織や臓器の仕組みや機能が知りたいのです。その中でひとつひとつの細胞=あなたの商品がどう機能するかを知りたいのではないでしょうか。

プログラム言語やパラメーターを知らなくても、それぞれの細胞がどうつながっているかの関係や構造がわからなければ、お客様の期待を整理することはできません。お客様の相談相手にもなれません。もちろん、提案の戦略を立てることもできません。

クラウドという言葉を知っていても、仮想化とどう違うかを説明できなくてはクラウドを知っているとはいえないでしょう。クラウドとHTML5の関係を説明できなければ、たとえそれぞれの「音」や「綴り」を知っていても、お客様に知っているといえるでしょうか。SOAとBPMはこれからの情報システムにとって重要なキーワードですが、それがなぜかを説明できなければ、お客様はそのことで、あなたに相談などしないはずです。

以前、このブログで「アウトプット思考」という話を書いたことがあります。「お客様にわかりやすいアウトプットとはどういうものかをイメージしながら考える」。そんな思考方法が、営業には必要だという話しでした。

下の図はそんなアウトプット思考の一例です。HTML5とは何だろう? CSSとJavaScriptとはどんな関係にあるのだろうか?これをどのように表現すれば自分は納得できるだろうか。お客様にすんなりと理解していだけるだろうか。そんな思考の結果が下の一枚です。




私は、営業にとって必要な知識とは、このような知識なのだろうと思います。つまり、「組織の知識」、「臓器の知識」です。言語でもなければパラメーターでもありません。そして、知っているとは、「わかりやすく説明できる」ことどたと思います。

細胞の知識ではなく、組織や臓器の知識を持つこと。それをわかりやすく説明できること。それがお客様に相談される営業になるための大切な要件ではないかと思います。



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先週は、コレ一枚シリーズに上記の「HTML5」以外に「オープン化の歴史」も追加しています。

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2011年10月22日土曜日

営業という仕事の価値


先日、ある製造業の情報システム本部長と話しをしました。

「私達は、3つの圧力に苦しんでいます。ひとつは、TCOの圧力です。運用や保守に関わるコストが予算の8割近くですよ。何か新しいことをやろうにも限界があるんです。

もうひとつは、予算削減の圧力です。震災への対応や円高に伴うコスト削減要請と海外へのシフト、本業に関わるお金が増えている中で情報システムの予算は、これまで以上に絞られています。今でもぎりぎりのやりくりをしている中で、これ以上切り詰めろと言われてもどうしようもありませんよ。

三つ目はクラウドの圧力です。経営者には、クラウドはコスト削減の特効薬のように見えるようです。しかし、膨大な既存のシステム資産をクラウド化することはそんな簡単なことではありません。しかも、クラウド化は自分たちのこれまでの役割を根本的に変えてしまいます。いわば我々の雇用を脅かす存在でもあります。経営者から見れば、私達の意欲や能力を問われるわけですが、そんな簡単にできる話ではありませんよ。」

申し訳ないが、私にはできないことの言訳に聞こえてしまいました。確かにこれまでの歴史を背負った当事者にとっては、この現実に対処しなければならない責任があり、ご苦労もわかります。しかし、企業はビジネス合理性を追求する組織です。この現実に対処することが、この方の責任でもあるはずです。簡単ではないということと、できない、やらないは別の話です。そのあたりが、はっきりと切り分けられないままの話になってしまっていたのも、そんな印象を持った理由かもしれません。

営業であるあなたは、このようなお客様にどのような提案をしますか?今まで以上に低コストで運用できるマネージド・サービスやオフショアでの開発・保守を提案するというのはどうでしょう。「安い」という話しならば、まずは耳を傾けていただけるかもしれません。
クラウドはどうでしょう。業務システムの根本的な構造改革に手をつけず、できる範囲でサーバーを仮想化・集約し、経費削減の要請に対応するという提案であれば、きっと検討の俎上に載せてくれるはずです。

しかし、それで本当にいいのですか?確かに一時できにはお客様の事態を改善できるかもしれません。しかし、それが真の解決につながるのでしょうか。営業の仕事って、そんなものなんですか?

お客様の状況や立場を斟酌し、なんとか彼の力になりたいと思うかもしれません。しかし、それでこの会社は成功するでしょうか、この情報システム本部長は、自分の職責を果たせるでしょうか。
それよりも何よりも、そんな仕事で自分の成長や生き甲斐をあなたは感じることができますか?それが営業という仕事の価値なのでしょうか?

確に、お客様がして欲しいことに応えることができれば商売にはなるでしょう。売上と利益という数字を背負っている営業にとって、とても魅力的な選択です。「営業の人格は数字だ!」と私もかつては上司によく言われたものです。数字をあげられなければ、企業の経営は成り立ちません。営業は、数字という大きな責任を負っているのも事実です。

どうすれば、この両者を両立することができるのでしょうか。残念ながら、絶対的な解決策など無いように思います。ただ、私達は、このような現実、このようなお客様を相手に仕事をしているという自覚を持つべきであるとは、言い切れます。

もう一つ大切なことは、この会社の経営者と話しをすることでしょう。業務やシステムの当事者は、与えられた職責をこなすことに精一杯です。たとえあるべき論はわかっていても、日常の降ってくる様々な業務への対応で、大所高所をしっかりと考え対処することは容易なことではありません。その優先順位を切り替えさせることができるのは経営者しかいないのです。

営業は、情報システム部門の方に対しては、ITの専門家として、その良き相談相手にならなくてはなりません。そして、経営者に対しては、情報システム部門の良き理解者として、そして経営という視点から情報システムのあるべき姿を客観的に語れるアドバイザーであるべきです。

営業のプロフェッショナリティとはそういうことなのだろうと思います。私達は、意思決定者でもなければ実務の当事者でもありません。その判断と行動に責任を負うことはできません。ただ、彼らが成功するためにはどうすればいいかを一緒に考える役割は果たせるでしょう。

自社の製品について詳しく語り、他社との違いもはっきりと伝えることができる・・・それもまた営業力の大切な要素です。しかし、そのことだけで、お客様はあなたに仕事を任せてくれるでしょうか。競合他社もきっと精鋭を繰り出してくるでしょう。我が社の商品が如何にすばらしいかをあなた以上にうまく話しているかもしれません。あなたは、そんな低次元の戦いに満足していいのでしょうか。

営業の仕事に「これしかない」はありません。それぞれにスタイルがあり、理想があると思います。ただ、ひとつはっきりと言えることがあります。「営業の仕事とは、モノやサービスを売ることではなく、お客様の価値を高めて対価を頂く仕事です。モノやサービスは手段である」ということです。

数字に追われる日々ですが、ここだけは忘れないようにしたいですね。




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先週は、コレ一枚シリーズに「HTML5」と「オープン化の歴史」の2枚追加しました。
自分としては、なかなかうまくまとめられたんじゃないかと、軽く握り拳しています(笑)
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2011年10月15日土曜日

雑用係を育てるOJT


新入営業も現場に配属されて数ヶ月たちました。先日、そんな彼らと話しをする機会がありました。「大変です」、「よくわからないことばかりで・・・」、「忙しくて余裕がありません」などなど、自分たちの未熟を訴えながらも、なんだか楽しそうに見えました。

入社したすぐの頃は、社会人としてのマナー、ワープロや社内システムの使い方がわからない、何とか早く一人前の社会人として行動したいという悩みを抱えていた彼らも、お客様との関係、自分たちの商品やサービスの良さをどのようにお客様に伝えればいいのか、優先順位の管理や効率のいい仕事の進め方へと関心が移り始めているようです。

彼らを見ていて思うことですが、しっかりと自分の未熟を自覚しています。だからこれではだめだ、何とかしなければとあせっています。

啐琢同時(そつたくどうじ)という言葉があります。雛が卵から産まれ出ようとするとき、殻の中から卵の殻をつついて音をたてます。これを「啐」と言います。その機を逃さず親鳥が外から殻をつつきます。これを「啄」と言います。そしてこの「啐」と「啄」が同時に行われて、初めて殻が破れて雛が産まれるわけです。つまり、求めるものと与えるものが、タイミングを逸することなく同時に行動するとき、人は大きく成長できることのたとえです。

育成を効果的にと考えるならば、このタイミングを逃さず、最大限に利用しなければなりません。

誰でもそうだと思いますが、教えられたら学ばない、やれと言われればやりたくないのが人情です。しかし、彼らは違います。彼らは今、大いに渇望している、何とかしたいと心から願っているのです。だから育成の役割を担うあなたは、渇望している彼らに、その渇望を満たす手段を提供すればいいのです。

「渇望を満たす手段を与える」とは、「渇望を満たすこと」とは違います。どうすれば、自分の力で渇望を満たすことができるか、その方法を身につけさせることです。答えを与えてしまっては、人は成長のチャンスを逸してしまいます。そうではなく、答えを手に入れる方法を与えることで、自ら成長したいという意欲を後押しするのです。

育成とは、「渇望」と「手段」を提供し続ける取り組みといえるかもしれません。手段と言っても細かな作業を指示するのではなく、状況の解釈、戦略の建て方、直面する課題を解決するための対処の仕方などの仕事のフレームワークというべきものです。このような手段を教えても、未熟故に失敗もするでしょう。しかし、未熟を自覚している彼らならば、それまもた貴重な経験となり、能力の定着に大いに貢献してくれるはずです。

話は変わりますが、先日、宮城県南三陸町へお邪魔したとき地元のボランティア・リーダーと話しをしました。彼は、こんな話しをしてくれました。

「モノやお金を与える支援だけではこの町を復興させることはできません。どうすれば、モノやお金を手に入れることができるのか、その方法を提供しなくてはいけない時期にきています。」

このボランティア・リーダーのような志の高い人を手厚く支援すれば、すばらしい町を創りあげてくれるだろうと確信しました。しかし、行政はまだまだ誰でも一律にお金やモノを与える施策を採り続けているように見えます。

渇望し、志があり、何とかしなければと思っている人に、それを解決する道筋と方法を提供する。育成のあり方も、支援のあり方も根っこは同じだと思います。

「切り捨てられる人がいる。全員を平等に底上げするべきだ。」という声も聞こえてきそうです。しかし、それでは世の中もビジネスの世界もよくはなりません。

話しが横道にそれてしまいました。OJTの話題に戻りましょう。

私が、ここでお伝えしたかったことは、求める人がいるのに、「OJTというほったらかし」で、せっかくのチャンスを逃してはいけないと言うことです。

「明日から、OJTリーダーとして新人の面倒を見なさい。やり方はおまえに任せるから・・・」では、任された人は何をすればいいのか迷ってしまいます。なかには、OJT=仕事体験と思い込み、自分のやりたくない雑事や自分でも大変な仕事を押しつけてOJTをやっていることにしてしまう。しばらくはこれもまた新人諸氏には新鮮で、大変ながらもそんなものだと思って仕事をこなすでしょう。しかし、このような仕事に達成感を見いだすことはなかなかありません。次第に意欲がなくなって行く。つまり、学びたいという意欲を失って行く。これでは、OJTの本来の役割を果たしません。

人は、自分のやることに納得できる目的があり、それが自分の成長に結びつくものであり、自主的に行える裁量を与えられれば、たとえそれが大変で忙しくても喜んで立ち向かいます。OJTリーダーのミッションは、そういう仕事をアレンジし、環境を整え、彼らに与え続けることです。

もう一つ大切なことは、仕事の楽しさを伝えることでしょう。ただし、その方法は言葉とはかぎりません。そういう気持ちで仕事をしている姿を見せることが大切です。
大変だけど、楽しい・・・そんな姿を見せることもまた、OJTリーダーの大切な仕事だと思います。

「このままではだめだ!」と心底思える時期は、人生にそう何度も訪れません。そんな人生の貴重な時期に関わる仕事がOJTリーダーという仕事です。その自覚を持つことが、OJTリーダーの最初の仕事かもしれませんね。



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2011年10月8日土曜日

感動を与えるプレゼンテーションの本質


50人ほどの聴取を前に、前を見ることもなく、ただうつむき加減にマイクに向かっている20代と思われるマーケティング担当の女性。まるで今日初めて手にした教科書を、突然教師に当てられ朗読するように促された小学生のように中身もわからないままに平板に、そして朗々と読み上げていました。

彼女の後ろでは、パワーポイントのデフォルト書式に整理された文字が繰り出されます。ページごとに文字量にばらつきがあり、小さな文字や大きな文字がページが替わるたびにランダムに映し出されていました。クリップ・アートも様々なデザインが使われ、統一性がありません。なんとも「とっちらかった」という印象でした。

話しの内容も機能・性能の解説に終始し、如何にこの製品がすばらしいかを語っているようなのですが、いったいどこが凄いがよくわかりませんでした。それよりも何よりも、いったいこちらの何を解決してくれるのかの課題設定が最後まで曖昧なままで、いったいこの製品の魅力は何だろうかと、こちらで一生懸命考えさせられました。そしてついに「これだ!」と自分なりに答えを見つけたときには、ちょっと興奮し軽く握り拳・・・しかし、彼女の話の中には、その説明は一切なし。おいおい、そうじゃないでしょ、僕が説明してあげますよ・・・そう言いたい気持ちを抑えながら、20分の話しが終わったときには、なんだか拷問から解放されたような開放感を味わうことができました。

久々に凄い?プレゼンテーションを聞きました。

プレゼンテーションとは、相手の心を動かすことが目的です。そういう意味では、私の心は「いらいら」と大いに揺れ動いたわけなので大成功だったかもしれませんが、この製品の魅力に感動し、心を動かされることはありませんでした。

先日、あるSI事業者の研究所長をされている方のプレゼンテーションを拝聴しました。正直申し上げてドキュメンテーションはそれほど美しいとはいえませんでした(このブログをご覧になっていたらすみませんm(_ _)m)。しかし、ほんとうに感動し、彼の見識の深さと洞察力、そして何よりも、この人はこういうことが大好きなんだなぁと、彼の人となりがはっきりとわかるすばらしいスピーチでした。そして、それがお客様にどのような価値をもたらし、私達のビジネスがどう変わるかもしっかりと伝わってきました。

この二人の最大の違いは、間違えなく「愛情」の深さです。

自分の語る対象への深い愛情。そして、大好きだからこそ徹底的にその本質に迫ろうとしているパッション。本質を知っているが故に、最終的に何を伝えればいいかのゴールを明確にしっているので、ストーリーが簡潔です。修飾語をいっぱいつけて着飾らなくても、その本質が明快で美しいから人の心にしっかりと突き刺さるんですね。

確かにきれいな資料やわかりやすい話し方ができたほうが伝わりやすいでしょう。しかし、何よりも自分が語ろうとするものへの深い愛情と理解がなければ、相手の心を動かすことはできません。

Jobsが亡くなりました。彼のプレゼンテーションを見ると、彼の製品への愛情の深さを感じざるを得ません。その愛情は決して独りよがりのものではなく、美しさが人を豊にすること、この新しいライフスタイルがもっとすばらしい人生をもたらしてくれることを彼はいつも語っているのです。そんな他人への愛情もまた、彼のスピーチの魅力でした。

もちろんスピーチのテクニックもすばらしいものです。しかし、それだけでは、あれだけ多くの人の心を動かし、時代の流れを作り出すことはできなかったように思います。

私の研修で、プレゼンテーションの技巧で悩んでいるという話をよく聞きます。しかし、技巧よりも何よりも、自分たちの商品についての徹底した理解と愛情、そしてそれがもたらすお客様の幸せをあなたは理解していますかと申し上げることがあります。そのパッションがあれば、技巧は多少稚拙でも十分に相手の心を動かすことができるはずです。

プレゼンテーションの本質は愛情だと言うこと。これもまたJobsの残してくれたもののひとつだと思っています[合掌]。




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先日、これ一枚シリーズの最新版をアップしました。テーマは、「これ一枚でわかる クラウドのこれからとITビジネスのこれから」です。さて、うまく私のメッセージが伝わりましたでしょうか?

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2011年10月1日土曜日

営業は棋士、社長は駒


「“営業” を英語でどう書きますか?」

営業研修の冒頭、こんな質問をします。するとほとんどの方からは、“Sales”という答えが返ってきます。もちろんそれも間違えではありませんが、私は“Sales Representative”という言い方があるという話しをします。

英語での慣例を考えれば、単にお客様を担当する営業という意味で使われている場合もあります。ただ、Representative=代表者、代理人という意味からもわかるように、本来は、新規の顧客開拓や大切なお客様との取引を任される人という使われ方をしているようです。つまり、「会社の代表として取引に責任を持つ人」です。

ですから、“Representative”として働くためには、マーケットの分析に始まり、どの企業がお客様になりうるポテンシャルを持っているのか、そしてその会社といかにしてよい関係を作り、お客様との関係を発展させて行くのかを考える能力、つまり、情報収集能力、分析力、計画策定能力が求められます。また、何よりも新規顧客との関係を構築するための行動力と積極性、コミュニケーション能力が必要となります。

士農工商営業と言われるこの業界の中で、「会社の代表として取引に責任を持つ人」というのは、どうもぴんときませんよ・・・そんな声も聞こえてきそうですが、だからこそ、まずは自分自身が、その自覚を持つことが大切なのだろうと思います。

「自分は、会社の代表として取引に責任を持つ人としての能力を磨いているだろうか?そんな動きをしているだろうか?」と問い返してみてください。

「そんなことを言われますけど、うちの会社では、だれもそんな風には思っていませんよ。むしろ、余計なことをするなと言われてしまいます。」

残念ながら、そんな現実も少なくありません。だからこそ現場の自覚から、その風潮を変えてゆくべきなのだと私は信じています。

先日、あるSIerの社長から、「新規顧客開拓が今うちには是非とも必要なことなんです。でもうちの営業は新規開拓が全然できなくて・・・」という話を聞きました。

「じゃあ、新規開拓に邁進できる環境を彼らに与えていますか?」と質問すると、結局はその他多くの仕事の一部であり、営業本人の自助努力として「新規顧客開拓もおまえの仕事だからな」と言い含めているだけのようでした。この会社の営業は、“Representative”としての責任は与えられていないようでした。これではうまくゆくはずはありません。

新規開拓という仕事は、簡単なことではありません。選択肢が多様化している時代にあっては、なおさらです。「他社の1/3の金額でできます」なら、まだやりようはあります。しかし、それができないのであれば、「新規顧客を開拓する専門職」としての責任を明確にして、それを支援する仕組みと共に取り組むことが大切なのだろうと思います。

一方で、営業もその自覚が必要です。「会社の代表として取引に責任を持つ人」として自分を鍛え、追い込むしかありません。また、会社を代表し、お客様に、あるいはプロジェクトに責任を持つならば、会社同士の関係を築くという発想も必要でしょう。

お客様の担当者と担当営業だけではなく、お客様の管理者や経営者と会社の責任者である社長や役員との信頼関係を築くことはとても大切なことです。お客様は、大金を払って仕事を任せる以上、それはあなた個人ではなく、会社への責任を求めるわけです。その責任者である社長が信頼されているとなれば、あなたの仕事は、ほんとうにはかどります。

営業=Sales Representativeの仕事は、お客様との取引一切について全体を見渡し、その責任者として、全体の動きを指揮することです。つまり、あなたは将棋の棋士であり、社長はそのゲームをうまく進めてゆくための駒であるという自覚を持つべきなのです。適材を適所に最適な駒を配置する。少なくとも自分が担当するお客様との関係においては、自分が責任者であるという自覚を持つべきです。

新規開拓に限ったことではありませんが、今ITの国内マーケットは、かつてのように「しっかり仕事をしていれば必ずリピートがもらえる」時代ではなくなりました。他社との棲み分けなどと言う甘い期待ももはや夢の話しです。競合に打ち勝つための取り組みが必要なのです。

Sales Representative”の本来の意味に立ち返ってみてはどうでしょう。営業はその自覚を持ち、経営者は言葉だけで叱咤激励するのではなく制度や組織の仕組みとして、その役割を与えてみてはいかがでしょう。

そんなお互いの自覚と取り組みが、結果として組織としての営業力を底上げし、「新規顧客を開拓する力」を育ててゆくように思います。



自社製品の性能や機能については話せとも、世の中の常識と自社製品との関係は話せません。

そんな営業をお客様は、信頼するでしょうか?

では、どうすればいいのでしょうか。よろしければ、こちらをご覧ください。

場所:東京・市ヶ谷
期間:10月5日から12月7日 
毎週水曜日 18:30~20:00
全10回
費用:9万4千5百円/一括

内容はこちらをご覧ください。


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