2009年9月11日金曜日

常識が、非常識となるとき(5) 最終回

 クラウドの普及は、システム選定におけるお客様の意思決定基準を変化させることになります。

 前々回のブログで解説いたしましたが、インフラに関わるシステム技術的な判断基準の比重が下がるだろう考えられます。その一方で、より上流の業務要件やビジネス・プロセスが、意思決定を行う上で、今まで以上に重要となります。

 クラウド、特にSaaSにおいては、業務サービス機能の利用です。となると、自社の業務目的、ビジネス・プロセスを整理分析し、個々のプロセスに重複や機能的な過不足が無いように、分解整理する必要があります。これは、BPMのアプローチです。ここで分解された個別のプロセスに対応するサービス機能を利用する必要があります。これは、SOAのアプローチです。

 つまり、理想論を申し上げれば、BPMでビジネス・プロセスを分解、整理し、それをSOAに基づきサービスを部品化する。それに対応するサービスをクラウド上に載せる、あるいは、相当するサービスを利用するという流れが出来上がります。

 ビジネス・プロセスの分解、整理は、単に既存の業務の再定義ではなく、より効率的なプロセスを実現するための業務プロセスの最適化、再構築を目指す動きへとつながることも考えられます。

 これは、特に大手企業にとっては、2015年からの国際会計基準(IFRS)の強制適用に連動する流れが、生まれるかも知れません。あるいは、このような企業の動きを捉えて、クラウド・ビジネスの拡大を図るという戦略もありうるでしょう。

 IFRSは、決して会計財務の問題ではなく、企業行動やその意思決定に大きな影響を与えるものであり、ビジネス・プロセスの見直しは不可分です。その影響範囲は広範に及ぶわけですから、当然ビジネス・チャンスも広がることが期待できます。

 このような一連の動きを想定すると、SIerやソリューション・ベンダーは、次のような取り組みが求められます。

◎ 業務分析スキルの強化と課題発掘、提案能力の強化
◎ 経営層、業務部門へのアプローチ拡大、浸透
◎ サービス・ビジネスの企画、充実

 いずれにしても、製品力や技術力、あるいは、開発や運用に必要な人材提供に競争優位を求める企業にとっては、なかなか厳しいものになる可能性があります。

 再三申し上げていることでもありますが、クラウドが直ちにITの実態を変えてしまうことありません。これから時間をかけて、クラウドの適用領域が拡大してゆくもの考えられます。

 しかし、これからシステム選定を考えるユーザー企業の当事者にとっては、決して将来の問題ではありません。既にクラウドは、重要な選択肢のひとつとなっています。

 仮に、現時点では、オンプレミス(自社で所有、運用するシステム利用形態)を選択するにしても、そのシステムがクラウドにどのような橋渡しが用意されているかは、知りたいと考えるでしょう。このようなお客様の期待に応えられるようになることは、SIerやソリューション・ベンダーにとって喫緊の課題です。

 「クラウドなんて、まだまだこれからですよ。」という言い訳は、「お客様の将来に関心を持っていません。」とお客様に宣言するに等しい行為と考えるべきでしょう。

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