2009年9月6日日曜日

常識が、非常識となるとき(2)

 機構系CAD関連のビジネスが、大きく落ち込んでいる。ある大手機構系CADベンダーは、前年対比30%の売上減。また、ある大手自動車メーカーに機構系CADを販売している企業は、前年10億円近い売り上げがあったにもかかわらず、今年の第一四半期の売り上げは、一千万円そこそこという。

 機構系CADビジネスの低迷は、自動車をはじめとした製造業の業績低迷だけが原因ではない。共通化や流用といった設計業務そのものを減少させようという取り組みとも重なった動きといえるのではないだろうか。

 たとえば、自動車の場合、車台(プラットフォーム)のメーカーを越えた統合化が、設計需要の低迷を加速させている。車台の統合は、車台そのものだけではなく、その周辺の部品や製造ラインの共通化にも大きく貢献することから、コスト削減や開発期間の短縮の効果は高い。

 また、今後、電気自動車が普及するようになれば、駆動系は簡素化され、ますます機構系の設計需要が減少するだろうと言われている。

 かつて稼ぎ頭であった機構系CAD需要の低迷は、これを生業にしてきたCADベンダーやソリューション・ベンダーにとって、致命的な課題を突きつけている。だが、既存顧客との関係や自社で抱えるエンジニアやオペレーターをどうするかという問題、また、確かに将来的な需要動向の変化はあるとはいえ、今は不況による一時的な需要の低迷であって、不況がとおりすぎれば、まだ一息つけるチャンスはあるたろうという楽観視が、危機感の頭を抑えている感がある。

 しかし、この状態にある程度ならされてしまったユーザーとしては、たとえ景気が回復したとしても、すぐには、かつてと同様にシステムを増設はしないだろう。また、これを機会に、開発方式や設計方法を大きく変えようという動きが加速することも考えられる。

 そうなると、景気が回復しても需要が大きく回復することは、難しいかもしれない。

 インフラ・ビジネスについても、同様なことが考えられる。SaaSやPaaSの普及により、システムを所有することが、絶対的な要件とはいえなくなった。

 確かに、信頼性や可用性に課題があるとはいえ、開発やテスト目的ならば、十分に使える。また、クリティカルではない業務、たとえば、電子メールやグループ・ウェア、ワークフローといった業務では、十分に利用できる。

 また、SMBは、ITスキルを持つ人材を確保することが容易ではない。そう考えると彼らにしてみれば、クラウドは、救世主に見えるかもしれない。

 クラウドの普及は、所有から使用への移行といわれる。これは、システム部門のユーザー化を意味している。また、システム部門を介さずにエンド・ユーザー部門が、システムの選定に大きく影響を持つようになることも考えられる。

 つまり、今まで以上に、システムの選定は、上流で判断されることになる。インフラ、すなわち、サーバー、OS、ミドルウェアなどが、システムの選定に影響しないようになるだろう。

 これは、インフラが不要になるということではなく、システム選定に当たって、ユーザーは、インフラを意識しないようになることを意味している。また、システム・ユーザーの人数の増減、キャパシティを意識する必要もなくなるだろう。

 このように、ユーザーの意思決定基準が、大きく変わると共に、意思決定者そのものが、業務部門などのエンド・ユーザー側へ大きくシフトする。

 そうなると、システムに強いだけでは、お客様に価値を提供できないことになる。SMB系は、エンタープライズ系よりもこの動きが先行するはずだ。

 このような、ユーザー・ニーズの変化に対応できないSIerやソリューション・ベンダーは、淘汰されてゆくだろう。

 機構系CAD需要の変化は、カタストロフィカルな、出来事といえるかもしれない。しかし、インフラ・ビジネスやSIビジネスに同様の劇的変化がおきない保証は無い。

 では、このような変化にどう備えればいいのだろうか。次回は、この点について考えてみようと思う。

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