2008年12月30日火曜日

営業力の科学:第二章 営業力を強化するための3つの対象 (1)

 以前、「営業力とは、スキルであり、生まれ持った才能やセンスではありません。」と書きました。これは、「営業力」を個人の能力として捉えたときの説明です。今回は、組織の能力としての「営業力」について、考えてみようと思います。

第二章 営業力を強化するための3つの対象 (1)

 ソリューション営業とは、
  • 個々のお客様の課題に応じて
  • そのお客様にとって最適な組み合わせを作り
  • 提案活動を通して販売する
活動と定義できます。

 このような営業活動は、規模の大きなものを狙うことになりますから、手間もかかり、受注するまでの期間も長く、関わる人や組織も増え複雑になります。見方を変えれば、規模が大きく、利益率の高いビジネスにしなければ、割の合わない営業活動です。

 このような営業活動を、ひとりの営業担当者に任せてしまうには、負担も大きく、「こなしきれない」というリスクがあります。その結果、効率も上がらず、ビジネス・クオリティの低下を招きます。従って、チームとして、組織力を活かした営業活動が求められます。

 組織力を活かした営業活動を行うためには、「プロセス」、「スキル」、「マネージメント」の3点に着目し、その能力を高め、仕組みを整備してゆくことが必要です。

 それでは、まず「プロセス」について考えてみましょう。

1.プロセス

 仕事には手順があります。これは、営業という仕事においても同様で、案件の発掘から受注を経てデリバリーに至るまでに、行うべき作業項目や確認事項、これらを遂行するための順序があります。この手順を整理したものが、「営業活動プロセス」と言われるものです。
 
 営業活動プロセスは、大きく4つのフェーズに分けることができます。

発見フェーズ:数ある「ありそうなはなし」の中から、これは攻め取るに値すると思われる案件を見つけ出し、絞り込むフェーズです。

定義フェーズ:既にこのブログで何度も申し上げていることですが、ソリューション・ビジネスは、はじめに商品はありません。お客様ごとにことなる課題を起点に、その課題を解決するためのオーダーメイドの組み合わせ商品を作り上げてゆく。それを提案活動を通じて売り込んでゆく活動です。この組み合わせを作り上げ、お客様との合意を築き上げてゆく過程が、このフェーズです。

確定フェーズ:「定義フェーズ」で作り上げた商品であっても、それが会社の合意として決済されるという保証はありません。財務担当者から予算的な成約を課せられるかもしれません。あるいは、頼りにしている部長のライバルから横槍が入るかもしれません。もしかしたら、競合他社が、トップと話を進めていて、参入障壁を築いているかもしれません。そういう壁を乗り越えて、確実に成約に結びつけてゆく過程です。

デリバリー・フェーズ:最後は、契約を頂いた内容を確実に仕上げ、売上に結びつけるフェーズです。デリバリーは、常にトラブルの火種を抱えています。これらをうまく処理して、納期、コスト、品質を守って納品する。その過程を適切にこなすこと、つまり「プロセス品質」を高めることで、お客様との信頼関係を一層強固なものとすることができます。また、新たな課題を整理し、次の仕事のきっかけを掴む絶好の機会です。

 この4つのフェーズを確実にこなしてゆくことが、営業の仕事です。各フェーズの詳細な活動内容や実践ノウハウについては、研修でご紹介していることでもありますので、ここでは割愛させて頂きます。

 この営業活動プロセスには、3つの役割があります。
  1. 要領よく営業活動を行う
  2. 営業活動の進捗を客観的に評価する
  3. 結果ではなくプロセスを管理する
(1)要領よく営業活動を行う
 予め仕事の手順が明らかであれば、次に何をすべきかが分かります。もちろん、全ての営業活動で状況が同じなわけはありませんから、その手順か完全に一致するとは言えません。しかし、当たりを付ける、あるいは、何をすべきかを考える上でのきっかけにはなります。つまり、やるべきことを先読みし、先手を打つことです。お客様の行動や反応を予測することにも役立ちます。

 このように、営業活動プロセスを予め明らかにしておけば、仕事は計画的に行えます。行き当たりばったりで、何か起きたら対処する「後始末」型の仕事の進め方ではなく、次にやるべきことを先読みし、先回りしてこなしてゆく「前始末」型の営業活動が行えるようになるのです。
 その結果、行動の無駄がなくなり、時間的余裕も生まれます。何よりも、心の余裕が生まれ、冷静で合理的な判断や行動ができるようになりますので、仕事の質を高めることができます。

(2)営業活動の進捗を客観的に評価する
 営業活動プロセスとして、仕事の手順が予め明示的に示されていますので、今どこまでその作業を完了しているのかを、具体的に示すことができます。つまり、営業活動プロセスは、進捗を把握する客観的な指標としも使えます
 特に営業活動の期間が長期化するソリューション営業活動においては、成約までに多くの作業をこなしてゆかなければなりません。その間、売上を計上することかできませんから、数字を進捗の指標にすることはできません。現実には、担当営業の「表現力豊かな説明」をマネージメントが聞いて、これならば、確度60%だとか、80%というように、経験と勘に基づいて進捗を評価しいる場合が多いのではないでしょうか。

 営業活動プロセスが具体的に示されていれば、このような主観的な評価ではなく、「この作業項目を完了したから、確度70%」と客観的に進捗を評価することができます。このような進捗評価基準を持つことにより、対象となる案件に関わるチームメンバー全員が、共通かつ客観的な進捗把握の手段を持つことができるようになります。

(3)結果ではなく、プロセスを評価する
 売上が上がったか否かではなく、どの作業項目を完了したかを客観的に捉えることができます。また、どの作業項目に取りかかろうとしているのか、どの作業項目が進捗していないのか、その理由は?対処法は?・・・というように、営業活動のプロセスこどに状況を把握、評価することができます。
 営業マネージメントは、部下の担当営業と共に評価し、その対応方法や支援について、話し合うことができるようになります。

 「とにかく、精一杯がんばりなさい!(営業の本音:何をどうやって、どうやってがんばればいいのか、教えてください!)」、「いまは、やるべきことをひとつひとつこなしてゆきなさい。(営業の本音:ひとつひとつの作業項目を具体的に教えてください!)」などと言った精神論的指導ではなく、営業活動の具体的な活動内容に即した評価や指導を行うことができるようになります。

 次回は、「スキル」について、考えてみようと思います。

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