2008年12月17日水曜日

新商品を売り出す その1:「商品の価値」とは?

 ものを売ることは、決して簡単なことではない。営業を経験した人であれば、身にしみていることだろう。ましてや、新しい商品やサービスを販売するとなると、その難しさは何倍にもなる。幾重にも立ちはだかる壁を崩し、やっとその向こうにあるお客様にたどり着く。一足飛びに、向こう側へ飛び越えたいところだが、そんな都合のいい方法は、そうあるものではない。

 まず最初に突き当たる壁は、その商品の価値を明確にすることだろう。そんなことは当たり前だと言われるかもしれないが、意外とこの肝心なことができていない場合が多い。

 例えば、海外の製品を販売する場合。マニュアルや製品紹介の資料を和訳し、それをそのままWebに掲載したり、お客様への説明資料として使っているケースをよく目にする。このような資料は、やたら文字が多く、専門的な用語が多用されており、わかりにくい。何が違うのか、どこが画期的なのか、じっくり読まなければ分からない。

 また、使い方や事例などが書かれていても、海外のものばかりで、それが日本の事情とかけ離れているものも多く、折角読んでもピントこないものも少なからずある。

 そもそも、そんなものを平気で製品説明資料として使っている感性が疑われる。本当に売る気があるのなら、お客様がその資料を見ただけで、「ぜひ売って下さい!」と言わせるぐらいのものを用意しようと考えるべきだろう。

 このような資料を作るときに、まずとり組むべきことは、製品の機能や性能について深く理解することではない。この製品が解決しようとしていること、つまり、製品の目的とでも言うか、どのような価値をお客様にどどけようとしているのか。それを理解することだ。

 その上で、自分の思いこみではなく、日本の実情に合わせ、お客様の現場で使われるシーンをイメージし、このような使い方なら、これだけの価値を生み出すことができる。そのひとつひとつを明らかにし、お客様が、「なるほど、このような使い方ならわが社でもありそうだ。それで、これだけの価値があるならば検討してみよう。」と思わせることだろう。

 製品紹介資料とは、そのようなことを伝えるもののことを言う。製品スペックや価格資料も必要ではある。しかし、それだけでは、お客様にほしいと思っていただくまでの道のりは遠い。

 もちろん、既に同様の商品が出回っていて、その商品のもたらす価値が広く理解されているものであれば、「価格が1/3」や「スピードが10倍」と言うだけでも、十分に価値は伝わる。しかし、新しい考え方や分野の商品となると、利用シーンや必要性の背景にある法律や制度、世の中のトレンドなどの変化と絡めて、必要性を喚起することから始めなくてはならない。知恵の使いどころだ。

 新商品の開発でも同じことだが、この商品がもたらすお客様の価値は何かを考え、仕様を絞り、作り込んでゆく。よくある「技術者の趣味」でつくられた商品は、「お客様が欲しいもの」というものが乏しく、「こんなにすごいんです」という自己満足と自慢に満ちていて、売るに売れない。機能は豊富だが、「そんなに必要ないのでもっと安くしてください」という大半のお客様の期待に沿うことができない。

 「商品の価値」とは、「お客様がほしいと思う気持ち」である。これをどうやったら生み出すことができるのか。新しい商品を新たに作るにせよ、海外から優れた商品を持ってくるにせよ、お客様の目線、お客様がまさに利用しようとしている状況に即して、お客様の「ほしい」を徹底的に考える。それが、新しい商品を売り込む上で、最初のステップとなる。

 次回は、「商品を魅力的に見せる」方法について、考えてみよう。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

最近の斎藤さんのブログ内容は、毎日中身がかなり濃い状態ですね!まるで研修の課外授業です!
日々、「発見」そして「考え」ています。

斎藤昌義 Saito,Masanori さんのコメント...

しずくさん

コメント有り難うございます。最近ちょっと気合いを入れています。是非、お知り合いにもご紹介ください。

よろしくおねがいします。