2008年12月10日水曜日

商品=プロデュースX(機器+サービス)

 「SIerやITベンダーは、サービスの時代になって、中抜きになる」と書いた。となると、一体、その両端は、誰が来るのだろうか?

 その答えについて話をする前に、前回の補足として、PaaSとクラウドコンピューティングについて、まずは考えてみようと思う。

 PaaSとは、SalesFoces.comが、昨年発表したコンセプトで、Platform as a Service つまり、サービスとして提供されるプラットフォームの略である。SaaS(Software as a Service)つまり、サービスとして提供される(アプリケーション)ソフトウェアほど、業務システムに関わるところまで、事業者に委ねてしまうのではなく、システムを運用するプラットフォームと開発環境だけをサービスとしして提供するというものだ。
 SalesFoces.comがいうまでもなく、このようなサービス形態は、すでにいくつもあるが、ますます広がってゆくことは十分に考えられる。

 SaaSに比べて、こちらのほうが個々の企業の業務実態に即してシステムを柔軟に開発することができるという考え方もある。そうすると、SIや開発の受託は残るわけで、Sierも中抜きにならずにすむという見方もある。

 しかし、前回も申し上げたとおりSIとは、結局のところハードウェア・ビジネスに結びついてこそ成り立っている側面があるだけに、開発だけとなるとどれだけビジネスとしての旨みがあるかは、なはだ疑問といわざるを得ない。ましてや、SIと称しながらも、システム販売、導入、ネットワーク構築などに依存してきた事業者にとっては、大変厳しい時代となるだろう。

 お客様にしてみれば、ハードウェアをサービス事業者に任せてしまうわけだから、システム開発にだけ着目して、その品質、納期、コストをさらに厳しく追求するようになるだろう。しっかりとした、開発標準や管理体制を提供できない事業者は淘汰されてゆく。お客様が、サービスにもとめる要求水準がますます高くなってゆくのである。

 視点を変えれば、ハードウェアの販売を手がける大手事業者にとっては、根本的な事業転換を求められることになるのだろう。

 その一方で、彼ら大手が一時請負事業者となり、そこからシステム開発のみを受託されていた企業にとっては、ビジネス・チャンスと見ることもできる。プロジェクトマネージメント、プロセス品質の管理などを徹底し、それを「サービス商品」として持つことができれば、売り込む上での強力な武器となるだろう。

 PaaS以外にも、SaaS、ASP、WebAppなど、自社にシステム開発や運用の環境を持たず、ネットの向こう側、つまりインターネットを介してシステム資源利用するコンピューター環境のことをクラウド・コンピューティングと言う。

 PaaSにしろクラウド・コンピューティングにしろ、アメリカ人は、言葉を作るのがうまい。切れのいい、そうかと思わせるような言葉を作り、わが社の事業コンセプトであり、業界のトレンド・リーダーという顔をする。こちらもなにか新しい考え方が生まれてきたような錯覚にとらわれる。
 しかし、従来からの流れを整理し、それをこのような言葉に表現しただけのことであり、珍しいものではないとさめたみかたもできるが、たしかに自分で考えをまとめたりお客様に説明するには、これはこれで役に立つ。

 横道にそれてしまったが、クラウドにしろPaaSにしろ、インターネット越しの向こう側にシステム資源を置くという考え方。この不況の中で、ますます企業は、真剣にその可能性を追求するようになるだろう。

 その一方で、それらサービスを提供してくれる企業に対する依存も高まるわけで、ビジネス・コンティニュイティの観点から、リスクが高まることは避けられない。

 もし、サービスを提供してくれる事業者が潰れてしまい、サービスを提供できなくなってしまったらどうなるか。あるいは、そこまで行かなくても、事業の拡大にあわせてシステム資源を大きくするときやより高いサービス・レベルの要求に対して迅速に対応してもらえるのかといった課題も残る。

 となると、このようなサービスを提供できる事業者は、安定した経営基盤を持つ大手企業ということになるのだろうか。
 このような、大手企業のPaaSを利用し、SaaSやASP、あるいは、BPOを提供する事業者も現れるだろう。このような分業が、今後ますます進むことは想像に難くない。

 「中抜きの両端は、誰が来るのだろうか?」という最初の問いかけに戻るが、片方はお客様。それも、システム部門ではなくエンドユーザーに近い部門である。システム部門は、彼らに対するアドバイザーであり、システム・サービスを購入する購買部門的な役割となるかもしれない。
 
 もう片方は、ネットワーク事業者、プラットフォーム・サービス提供事業者、アプリケーション・サービス事業者というように、役割分担がますます進んでくるだろう

 このようにパラダイムが大きく変わろうとしている時期に、みなさんは、どのようなポジションで仕事をされようとしているのか。

 まじめにこつこつしっかりと仕事をし、信頼関係を築き、きちんとリピートをもらえているから安心・・・という時代ではなくなろうとしている。景気動向とあいまって、お客様の購入基準も大きく変わろうとしている。

 ソリューション営業とは、このような顧客の変化を捕らえ、お客様個別の課題解決のための「商品=プロデュースX(機器+サービス)」を作り、提案を通して提供して、販売活動を行う仕事である。

 営業個人が「ソリューション営業力」を持つだけではなく、時代の変化を見据えた、企業としての「ソリューション営業戦略」が今求められている。
 

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