ある製造業のIT部門長に話を伺いました。
「好不況にかかわらず、コストの削減には、これまでも継続的に取り組んできました。これ以上コストを削減しろと言われても、その余地はあまりありません。これ以上のコスト削減となると、内部でできることは社員の残業代を減らすことぐらいです。あとは、再リースによるリプレースの延期、外部委託している人数の削減、委託単価引き下げ交渉など、ベンダーさんにも協力して頂かないとどうしようもありません。しかし、日常の仕事量を急に減らせるわけでもありませんから、ほんとうに頭が痛いですよ」とのこと。
みなさんのお客様はいかがでしょうか。
このようなお客様にどのような提案をすればいいのでしょうか。私なら、あえてリスクの高い提案をしてみようかと思います。
たとえば、業務プロセスを大きく変えなければならないいアプリケーション・システムやネットワーク・インフラの再構築です。
いままでは、リスクが高いからと敬遠していたものであっても、これが抜本的なコスト削減につながる可能性があるとすれば、自信を持って提案してみてはいかがでしょうか。こんな時代だからこそ、お客様は真剣に話しを聞いてくださるのではないでしょうか。
先のIT部門長のコメントにもありますが、部分最適でのコスト削減は、既にどこの企業でも限界があります。結局は、お客様も皆さんもお互いに痛みを増し、疲れ切ってしまうだけのことです。これでは、真の解決には至りません。
手近な部門を相手にした部分最適のコスト削減提案ではなく、会社全体を巻き込んだ大きな仕掛けで、全体最適の提案を果敢に仕掛けてみるというのはいかがでしょうか。
「窓口は、情報システム部門にしかなく、なかなか業務のキーパーソンや経営トップにアプローチできなくて・・・。」と愚痴をこぼす営業の方!その壁を破る手段は、お願いやニコニコ笑顔ではありません。業務部門をも巻き込み、企業経営にも貢献できる提案です。
今までは、だれもが非常識と考えていたようなことでも、今ならお客様はあらゆる可能性を求めています。そんな提案ができたならば、相手から話を聞かせてほしいと依頼が来るはずです。
営業に必要な資質として「政治力」があります。「政治力」とは、けっして気配りの才に長けていることではありません。大きなビジョンを持ち、それをなんとしてでも成し遂げるぞ、という強い意志の力です。
そんな政治力を発揮して、お客様をアッと言わせることができれば、お客様もきっと皆さんの提案に耳を傾けてくださるのではないでしょうか。
先日のブログ「お客様にとってマイナスになる提案をしよう!」でも紹介した分散しているコールセンターやオフィースの統廃合、受発注-物流業務の刷新に伴うシステムの再構築、ネットワーク・インフラの最適化など、いろいろと可能性はあるはずです。
新しい機能やサービスの追加を上積みする提案ではなく、業務プロセスを全体最適化して、大規模なコスト削減の可能性を提示してみてはいかがでしょう。
システムの提案ではなく、業務改革の提案としてお客様にぶつけることが大切です。システムは、所詮、結果を出すための手段でしかありません。もっと大きなメッセージが伝わってこそ、お客様全社の経営課題として、捉えていただけるようになるのです。
不景気がいつまでも続くわけではありません。景気が元に戻ったときに、一気に攻めに転じられる事業基盤を築いておくこと。部分最適のコスト削減では、そんなことは期待できません。
部分最適で小さなコスト削減のご要望をそのまま受け入れるだけではなく、全体最適を提案し、もっと大きなコスト削減と景気回復に向けた備えをする。そんな提案を逆に仕掛けてみるというのはいかがでしょうか。何か大きな動きが始まるかもしれませんよ。
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