2009年1月20日火曜日

「必要」と「ほしい」について (2) 完

 必要だけど、欲しくない。必要ないけど、欲しい。

 このような心の葛藤は、誰にでもあるはずです。それは、お客様でも同じことで、必要であることに気付いたとしても、ほしいという気持ちになって頂かなければ、購入に結びつきません。

 「欲しいという気持ちは、個人的な感情の話。法人営業は、会社の意思決定を引き出せばいいのだから、あまり気にする必要がないのでは?」

 そんな、ご質問をいただきそうですが、はたして本当にそうでしょうか。

 よく考えてみてください。お客様が法人であっても、商品やサービスの購入を企図し、予算を申請し、社内を説得し、稟議書を書き、体制を整えるために人を動かすのは、誰でしょうか。それは、紛れもなく、「個人」です。会社の看板を背負い、会社のお財布を使って、会社のために「個人」が動いて、購入のためのプロセスをこなしてゆくわけです。

 たとえ会社にとって「必要」であることに、ある人が気付いたとしても、それを経営トップや関係部門の人たちも同様に「必要」であると考えてくれるでしょうか。
 もちろん、営業であるあなたは、そういう人たちにも「必要」を気付かせる取り組みをしなければなりませんが、結局は、「自分が責任を引き受けます」という社内の「個人」が、声を上げ、動き出さなければ、会社としての決裁にはいたりません。

 このように考えればお分かりのとおり、たとえ法人営業であったとしても、売り込む相手は、「個人」であり、彼がほしいという気持ちにならなければ、社内の手続きも進まず、購入には至りません。

 「ほしい」とは、個人的感性の問題です。

 たとえば、このシステムを導入すれば、自分の仕事が楽になるのであれば、ほしいと思うかもしれません。
 あるいは、あなたが既に経営トップを説得していて、システムの早期稼動を大いに期待しているとしましょう。そのプロジェクトの責任者であるシステム課長としては、迅速に手続きを進めれば、経営トップにも評価され、昇進の機会を得るかもしれないとすれば、ほしいという気持ちになるのではないでしょうか。

 ほかにも、新しいことにチャレンジすることが好きで、その欲求を満たされるような新しいテクノロジーを使ったシステムを導入できるという提案であれば、ほしいと思うかもしれません。また、自分がリーダーとして人を動かし、支配することができるとすれば、ぜひともこのプロジェクトを実行したいとおもうかもしれません。

 個人には、それぞれにいろいろな「ほしい」があります。研修の中では、それを「意思決定に影響を与える6つの個人的欲求」として、解説しています。

 これら個人的な欲求は、強さの違いはあるものの、誰もがいずれかを複数持っているものです。「彼は、どのような欲求を強く持っているのだろうか?」などと考えつつ、もしそれが、リーダーシップへの欲求であるとすれば、「このプロジェクトを進めるにあたって、XXX課長のリーダーシップが必要です。そのことについては、部長や社長にも、わたしからお伝えするつもりです。」とあなたが言えば、この課長は「ほしい」と思い、システム導入に向けて動いていただけるのではないでしょうか。

  「必要」は、理性的であり、社内を説得するための合理的な根拠です。同時に、その「必要」を支えとして、社内を説得し、成約に至らしめるのは、個人の意欲であり、「ほしい」という感性です。

 「必要」と「ほしい」は、車の両輪のようなものです。「必要」だけでは、人は動きません。一方、「ほしい」だけでも、社内を説得することはできないでしょう。

 「ロジカル営業」、「ロジカル・セリング・プロセス」など、ロジカル営業の勧めをよくききます。たしかに、ロジカル=合理的な根拠に基づく「必要」は、意思決定の根拠となるものです。しかし、それだけでは、最後の押しが利きません。「必要」ばかりにとらわれ、「ほしい」をないがしろにしていると、いけると思っていた案件が先延ばしされたり、停滞してしまうことや、競合他社に出し抜かれることにもなりかねません。

 景気が低迷する中、お客様の予算は削られ、プロジェクトは絞り込まれつつあります。そんな状況の中で、成約を手にするためには、「本当に必要なプロジェクト」という説得だけでは不十分です。お客様の「ほしい」に火をつけて、優先順位を上げさせるための努力も必要ではないでしょうか?

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