2009年1月25日日曜日

お客様にとってマイナスになる提案をしよう!

 先日、あるパーティで、品質管理の権威であるコンサルタントと話をする機会がありました。彼は、数日前に、中国・瀋陽から帰国したばかりとのことで、向こうの事情を伺うことがではきました。

 瀋陽は、中国東北部にあり、中国最大のソフトウェア会社「東軟グループ」の拠点があるところで、IT分野の人材育成にも力を入れています。そういう人材を頼りに、IBM、HPなど、米国のIT企業が進出し、中国でもIT産業のメッカとして、地域の産業を支えてきました。

 しかし、昨今の米国IT市場の急激な冷え込みを受けて、米国系企業の拠点縮小や撤退が相次ぎ、一時期の活気がすっかり消え失せてしまったとのことでした。
 ただ、まだ日本企業はそれほどではないそうで、雇用を維持しているとのことでした。現地の実感としては、日本は、アメリカほど冷え込んでいないとの印象だったそうです。

 そんな彼が、帰国して改めて感じたたことが、「不況」、「景気後退」などの言葉が、あまりにも日本のマスコミに氾濫していること。「マスコミが不況を煽っている」との印象を受けたそうです。
 
 この点については、以前、このブログでも指摘したことでもありますが、好不況とはメンタルな側面が多分にあります。経済的に余裕があっても、世間がこんなことだから、今は世の中に倣って財布のヒモを締めておかなくてはと考える個人や企業も少なくないと思います。そんなことが、実態以上に不況感を煽り、実需を冷え込ませるといった悪循環に陥っているようにも感じます。

 マスコミが、経済指標や人員削減、厳しい雇用状況を伝えることは必要です。ただそれだけではなく、もっと公平に、そして冷静に分析して、マスコミとしての責任を果たして頂きたいと思うのは、私だけではないでしょう。事実、私の知っている企業でも、不況と言われる世の中にあって、確実に業績を維持している企業も少なくありません。そういう現実やその背景などを探り、人に勇気や意欲をかき立てるのもマスコミの役目ではないでしょうか。

 今、マスコミ自身も、広告が集まらず、厳しい経営状況にあるようです。しかし、考えてみれば、マスコミ自身が不況を喧伝し、自分で自分の首を絞めているといった側面もあるのではないでしょうか。マスコミとしての良識と責任ある行動を期待したいと思うのですが、果たしてかれらにその力量があるのかどうか ・・・ はなはだ疑問ではあります。

 まあ、こんな愚痴を述べてみたところしかたがありません。オバマ大統領ではありませんが、IT営業としては、現実を受け止め、前向きに可能性を追求し、現状を打開する。まさに、「不況をチャンスに」変えてゆく精神が必要です。きっと、みなさんの会社の社長や上司から、そんな発破をかけられている方も少なくないでしょう。

 そういう話を聞いて、「気持ちは分かるが、じゃあどうすればいいのですか?」との言葉をグッとのみ込んでいる方もまた多いのではないでしょうか。

 その「どうすれば」について、ここで少し考えてみようと思います。

 やはり、これも同じパーティでの会話ですが、ある大手SIerのCRMやコールセンター・ビジネスを担当されている営業部長さんによると、「大幅な売上拡大とはなりのせんが、案件は増える兆しがあります。それは、コスト削減プロジェクトです。」とのことでした。
 具体的には、複数拠点に分散していたコール・センターの拠点統合を図り、電話、データを統合したIPネットワークで、インフラを再構築するとの案件が、増えてきているとのことです。その一方で、新たな機能やサービスの追加という話は、まったく止まっているそうです。

 これは、コール・センターに限ったことではないでしょう。生産現場、事務系バックオフィース、企業のネットワーク・インフラなど、様々な業務分野で、このようなモチベーションが働くものと考えられます。
 
 年初のブログ「今年は何を商売のネタにすればいいのだろう」で、「企業体質の強化」がキーワードでることを申し上げました。コールセンターの拠点統合などは、まさに「低コスト経営基盤の構築」であり、体質強化のもっともわかりやすいテーマと言えるでしょう。

 このような提案を行う上で、特に配慮すべきは、わかりやすさです。複数拠点の統合、サーバーの集約などのように、目的をコストを削減のみに絞り込むことです。新たな機能やサービスの追加を伴わない話に仕立てた方がこのご時世、大いに説得力がまします。補足的に、新しいシステムにすることで、将来景気が回復したとき、新規の機能追加や拡張が即応できる、そんな基盤作りにもなることを付け加える。しかし、そこについては、今はやりませんと、はっきり宣言すべきでしょう。

 また、「システム運用業務の委託コストを、一律20%削減することになったのでよろしく!でも、仕事の内容は今まで通りにお願いしますね。」とお客様に言われる営業さんも少なくないと聞きます。そういうときには、例えば、オンライン・ディスクを使用した自動バックアップや変更管理、監視の自動化やアウトソースを提案し、新たなビジネスを生み出すことも可能かもしれません。一律削減は、上位の命令ですから、これを覆すことはできません。ならば、新たな機能を追加することで、50%削減しましょうと提案できれば、ビジネス・チャンスは、確実にあなたの下に引き寄せられるはずです。

 お客様にしてみれば、サービス・レベルを落とさずに、コストを削減できればいいわけです。一方、私たち営業としては、そこに新たなプロジェクトが生まれ、仕事が受注できればいい。お客様の支払は、リースや月額サービス費用という形で繰り延べできます。結果として、月々のコスト、年額の経費が削減できれば、お客様としても満足なはずです。

 そう言うところに、ビジネス・チャンスを探してみては如何でしょう。

 マスコミ不況に惑わされることなく、お客様の業務の実態や経営の状況を冷静に見つめれば、お客様が、必要としているものが見えてきます。お客様の現状を冷静に分析し、機能やサービスをプラスするプロジェクトを提案するのではなく、機能やサービスはそのままに、コストをマイナスにするプロジェクトを提案する。それは、結果として、お客様にとっても、私たち営業にとっても、実は、プラスになるはずです。

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