「最近、暇なんですよ。遊びに行ってもいいですか?」
SCM(Supply Chain Management)システムのプロマネをしている友人から、そんなメッセージが届き、オフィースを訪ねてきた。聞くと、予定していたプロジェクトが延期となり、改めて来下期に費用対効果を含め、実施するか否かを再考することになったとのこと。
「おかげで、アメリカまで勉強に行かされることになりました。最新の製品や技術についてみっちり勉強してこいと言うことで・・・」
なるほどと感心した。
SCMともなれば、売り込みには一年やそこらはかかるのが普通だ。あわてても仕方がない。ならば、今はしっかりと知恵を蓄え、次の好機を逃さないための準備をする。スペシャリストの育成、マーケティング・ツールの整備など、武器を揃える。きわめてまっとうな戦略だと思う。
不景気がいつまでも続くわけではない。だからこそ、今そのための備えをする。昨日、「ストック・ビジネスが加速する」という話題にふれたが、具体的な備えをするのは、まさにこの時期かも知れない。
過去の歴史を振り返れば、不景気の後に全く同じ市場が戻ってくることはない。不況下において進むであろう「体質強化」の取り組みが、企業の意志決定の基準を変えてゆくはずである。これをどう読みとり、今どのような備えをすればいいのか。ビジネスの明暗を分けることになるだろう。
営業力の強化に向けた取り組みも、そんな新たな時代への備えといえるだろう。ブログに掲載した「営業力の科学」でも申し上げたことだが、営業力の強化は、個人と組織の両面から取り組まなければならない。
個人の力量やセンス、自助努力にのみ求める時代は、もう過去の話だ。「仕事がないなら、とにかくお客様のところへでも行って、なんでもいいから仕事を見つけてこい!」。そんな精神論だけでは、これからのお客様の期待に応えることも、越えることも出来ない。
組織力として、そして、サイエンスとして、営業力をとらえなければ、これからのITビジネスで生き残ってゆくことなどできない。
商品のアドバンテージではなく、お客さまの享受する価値で競い合う時代。こんな時代に営業に求められるのは、商品知識の豊富さや優れた価格交渉力などではない。お客さまの課題を整理し、個々のお客さまにとって最適な商品やサービスの組み合わせを創り出す力。そして、それを分かりやすく説明し、説得できる能力である。
こような営業の力を育て、活かしてゆくためのマネージメントの仕組みを確立することや、時間のかかる営業活動プロセスを管理するための取り組みが、これからのIT企業に求められている。
営業個人や営業部門もまた、「体質強化」への取り組みが求められている。
「今どんな商材が売れるのか?」を追求することも必要なことだ。しかし、いくらそれを考えても、いくらそれがすばらしいものであっても、お客様は、「今は新しいものに手を出したく」ないという心理的なドライブがかかっているので、なかなか決定打とはならないだろう。だからこそ、今は、「なに」を売るかではなく、「なぜ」売るのか、「どのように」売るのかを追求する、そしてそのための基盤を築く取り組みにもっと関心を払ってもいいのではないかと思う。
商品力の強化ではない。営業力を強化すること。つまり、営業個人と営業組織の「体質強化」への取り組みである。
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