昨日、外資系の自動車部品メーカーの日本代表を務める友人と話をする機会がありました。
例に漏れず、この不況で大変なのだろうと話を聞いてみると、意外にも業績好調とのことでした。理由を聞くと、同業他社がこの不況で倒産してしまい、その仕事がことごとく自分たちの会社に回されてくるので、不況前よりも仕事が増えたという話でした。
この会社の製品は、決してハイテクなものではありません。しかし、技術力も高く、品質がいいこと、また、ニッチな分野であったこともあり、確実な売上を維持していたそうです。
この会社には、決して安売りはしないという経営者の方針もあります。そのため、大企業ではないため売上高そのものは、それほど大きくはないのですが、常に高い利益率を維持し、財務体質も健全だったそうです。
昨年の秋、自動車不況が始まったときは、さすがにこの会社も受注が減り始め、大丈夫だろうかという心配もあったそうです。そんな折、品質はそこそこに、安値攻勢でシェアを拡大していた新興国の部品メーカーの経営が立ち行かなくなり、彼らに仕事が回ってきたのだそうです。今では、不況前よりも売上げを伸ばしているのだそうです。
この会社は、決して派手なビジネスをしてきたわけではありません。しかし、自社の強みを活かせる特定の領域で、確実に収益を確保してきました。目先の収益にとらわれることなく、利益を確保するする戦略も、結果として企業としての体力を強化してきたといえます。
今、IT業界も未曾有の不況の中にあります。しかし、そんな中でも確実に売上げを維持し、利益を出し続けている企業も少なくありません。そういう企業の多くに共通する点は、「安くない」、「信頼できる」、「そこしかない」です。
「安くない」は、確実に利益を確保していることを意味します。安くなくても、信頼できるところであり、そこしか頼む相手がいなければ、依頼をするしかないのです。
好不況にかかわらず、そういう商品を育ててきた経営戦略が、危機に直面してもぶれることのない、安定感を維持する基盤となっているようです。
こういう時期だからこそ、私たちは原点に立ち返ってみるべきかもしれません。
自社に「安くない」、「信頼できる」、「そこしかない」があるのだろうかと。もし、その仕込が不十分であれば、それを加速しなければなりません。
不況はまだまだ続きます。お客様の選択眼は、ますますその厳しさを増すことになるでしょう。これに応えるものがなければ、生き残ることはできません。
自分への戒めもこめて、私も、この事実に向き合ってみようと思っています。
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