2009年2月19日木曜日

システム 雲に載る (1)

 「クラウド型サービスの事業戦略を検討するように指示されています。今年の柱のひとつとして位置づけたいと考えているんです。」

 先日研修に参加されたソリューション・ベンダーの方が、こんな話しをされていました。確かに昨今のIT関連の話題を見ているとクラウド・コンピューティングの話題が、増えてきたように思います。

 不況の影響でコスト削減への注目が高まっている中、お客様の関心が高まっていることも背景にあるのでしょう。

 クラウド・コンピューティングとは何かについては、いろいろなところに紹介されています。そこで、このブログでは、ITソリューション営業として、どのように考え、取り組んでゆくべきかという視点で、2回に分けて考えてみようと思います。

■ クラウド・コンピューティングとは

 まず、最初にクラウド・コンピューティングとは何かと言うことについて、簡単にまとめてみようと思います。

 そもそも、クラウド・コンピューティングとは、全く新しい概念のことばではありません。今までにも使われていた、グリッド・コンピューティングやSaaS、Webサービス、ユビキタス・コンピューティング、オンデマンド・コンピューティングなどという言葉を包括する言葉として使われています。

 上記のような個別のシステム形態を包括した言葉にすぎません。しかし、Web2.0と同じように、この言葉によって、ひとつのトレンドをイメージすることができるという意味においては、新鮮な印象を与えています。マーケティングや営業活動のキーワードとして、お客様との会話を進める上で、また、提案の切り口として、使える言葉ではあります。

 さて、このクラウド・コンビューティングでは、その言葉通り、サーバーやストレージなどのシステム資源が、雲(=ネットワーク:ネットワークを雲のように描くことから)の向こう側にあります。ユーザーは、雲のこちら側からそのシステム資源を利用することになります。

 クラウド・コンピューティングでは、システム資源を利用する単位が、今までと大きく変わることになります。たとえば、従来は、ハードウェアについては、製品と台数が単位でした。しかし、クラウド・コンピューティングでは、「処理能力」となります。また、アプリケーションについては、パッケージ単位だったものが、処理機能単位に変わります。

 この考え方は、IBMが提唱していたオンデマンド・コンピューティングをインフラやプラットフォームだけではなく、アプリケーションにまで拡張した考え方といえるかもしれません。必要に応じて、ダイナミックにシステム・リソースを変更できることが、クラウドの魅力でもあります。

 ところで、Amazonのクラウド・サービス「EC2」とは、 Elastic Compute Cloud (Elasticとは、弾力のある、融通の利く、伸び縮みするという意味)のことです。

 ところで、クラウド・コンピューティングを、次の3つのレイヤーに分けて考えるとわかりやすいようです。

 ● プラットフォーム
 ● 共通サービス
 ● アプリケーション

プラットフォーム」とは、サーバーやハードディスク、オペレーティング・システムなどを提供するレイヤーです。クラウド・コンピューティングでは、これを仮想化技術などを組み合わせて、提供しています。

 IBMのクラウド・サービス「Blue Cloud」を見ると、サーバーの仮想化技術としてXenやPowerVM、分散ファイルシステムとしてHadoopを使うとしており、これ自身が特に目新しい技術というわけではなさそうです。しかし、これを大規模に組み合わせて、しかもサービス品質を維持しなければならないわけですから、必ずしも容易なことではありません。

 次の「共通サービス」は、データベースやユーティリティ、開発環境などが、含まれます。Amazon EC2、Google App、foce.comなどは、プラットフォームとともに、このレイヤーもカバーしています。

 最上位が、「アプリケーション」となります。Amazonのサービスを見ると700もの複数社のパッケージが共有サービスとして提供されており、それらをAmazonのプラットフォーム上で組み合わせて利用できるようになっているようです。

 他にも、salesfoce.comなどの法人向けサービス、GoogleのGmailやDocsなど、個人も含めたより広範なユーザー層を対象にしたサービスも提供されていています。

 また、クラウド・サービスを「パプリック」と「プライベート」に分けて説明されることがあります。
 
 たとえば、法人を対象としたsalesfoce.comやIBMのBluehouse/Lotus Live、個人を対象としたGoogleのGmailやDocsなど、インターネットを介して、広範なユーザーを対象に無償または安価で提供されているクラウド・サービスがあります。これを「パブリック」クラウドと呼んでいます。

 それに対し、「プライベート」クラウドは、ファイヤーウォールの内側、企業内で管理、提供されるサービスです。
 企業内に分散したリソースを単一のコンピューティング・プールとして利用することを目的とし、システム資源の最適化やコスト低減を図ろうというものです。場合によっては、ビジネス・パートナーやサプライチェーンなどを構成する自社と密接な関係にある企業も含めた利用環境も想定されます。

 「パブリック」クラウドで問題となるネットワークの帯域や可用性、機密漏えいなどのセキュリティについても、自社の管理下におくことで解決することができます。

 「パブリック」クラウドを提供しているAmazonは、自社内のシステム・リソースをXenを利用した仮想化プラットフォーム上で運用し、この「プライベート」クラウドを実現しています。

 世界的な市場調査会社であるガートナーは、今後の数年は、企業の「プライベート」クラウドの需要が拡大すると予測しています。ただ、このような取り組みが可能なのは、大企業に限られているとし、小規模、中堅企業(SMB)においては、「パブリック」の需要が、拡大するとも指摘しています。

 ところで、クラウド・コンピューテングの価値は、どこにあるかということですが、もっとも大きな魅力は、コスト低減にあります。また、SMBでは、運用に関わる人材の確保からも開放されるという魅力もあります。

 ハードウェア・コストが下がる一方で、人件費の割合は、相対的に高まります。クラウド化は、この問題を解決する手段となります。しかし、その一方で、システムの安定稼動やデータの保全、セキュリティへの懸念は、つきまといます。従って、すべての企業が、一気にクラウドに置き換えてゆこうということにはならないでしょう。

 しかし、解決は時間の問題です。また、用途を限れば、今でも十分に使える領域があるわけで、徐々にその範囲が拡大することになりると考えておくべきでしょう。
 GEが50万社を対象とした自社のサプライチェーンをSaaSで構築したケースを見れば、その可能性が十分にあることが理解できます。クラウドが一時的なブームに終わることにはならないと思います。 

 また、大企業とSMBでは、その対応が異なります。その違いとともに、営業としてどのように対処してゆけばいいのか、そのあたりについては、次回で考えてゆこうと思います。

■ 研修のご案内 ■ -----------

 さて、いよいよ、新たな年度のスタートに備え、下記日程にて、今年度最後の「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」が開催されます。

 ■ 標準コース : 3月 5日(木)、 6日(金) 2日間 東京
 ■ 管理者コース: 3月 9日(月)、10日(火) 2日間 東京

 今回からは、今までの研修で頂戴した皆様からのご意見を反映し、より解りやすく、よ実践的な内容にリニューアルして、講義をさせていただこうと準備をしています。

 特に管理者コースでは、今年のプランニングや今年度の部下の育成計画についても、踏み込んだ内容にしようと考えています。この管理者コースにつては、この厳しい景気を反映してか前回は定員割れとなり延期となってしまいました。
 
 お申し込みを頂きました皆様には、大変申し訳なく、お詫び申し上げます。そんな、皆様のお気持ちに報いるためにも、張り切って内容の充実を図ってまいります。
  • お申し込みは、こちらから。
  • パンフレットは、こちらからダウンロード出来ます。
多くの皆様のご参加を楽しみにしています。

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