2009年2月5日木曜日

会社や製品の紹介をしてはいけません

  「お客様に会うことができても、2回目につながらないんですよ。」

 新規顧客開拓をしている営業の方から、こんな相談を受けました。

 「紹介もあるのですが、比較的評判のいいパッケージを持っているので、ウエブからのお問い合わせもよくあります。セミナーや展示会からのお客様も多いですね。そんな機会を利用して、初めてのお客様に伺うのですが、最初の訪問で終わってしまうことが多いんです。」

 どんな話をしているのか聞いてみると。

 「まずは、会社の紹介をします。そして、このソフトウェア・パッケージの紹介や導入事例などをご紹介します。その上で、お客様にいかがでしょうか?と聞くのですが、多少の質疑応答のやり取りはあっても、結局は、"ありがとう、検討してみます"という話で終わってしまい、それきりなんですよ。」

 その後のフォローについて聞いてみると。

 「もちろん、しばらくしてから電話やメールでご検討の状況を聞きます。デモのお誘いもしてみるのですが、なかなかうまく行きません。」

 わたしは、こんな質問をしてみました。

 「ところで、お客様に伺う前にどんな準備をしていますか。」

 「はい、お客様の会社のホームページを見て、どんな会社なのかを確認します。それから、会社案内や製品のパンフレットを用意し、お客様に伺うことにしています。」

 さて、皆さんは、どこに問題があるとお考えでしょうか? 

 まず私が最初に思ったことは、「お客様の状況や課題を、どのタイミングで聞いているのだろうか」という疑問です。
 かれに聞いてみると、「最初に会社や商品を話をした後、いろいろと聞いてはみるのですが、あまり盛り上がらないんですよ。」とのこと。どうもここに問題がありそうです。

 お客様にとっては、初めての営業の訪問は、半信半疑、疑心暗鬼、あたるも八卦あたらぬも八卦・・・ といった気持ちでしょう。だれかの紹介だから仕方なく会うことになったのかもしれません。仮に何か解決したい課題を抱えていたとしても、初めての訪問者にどれだけ話していいものかと、壁を作っているはずです。

 そんな相手が自分の会社紹介や製品の話を蕩々とするわけです。自分の課題との関わりについては、自分で勝手に結びつけて考えてくれと言わんばかりです。気の重い時間が続きます。きっと、「はやくおわりにしてくれないかなぁ」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。

 そんな気持ちにさせる相手からの質問に、まともに答えようなどとは思わないでしょう。当然、再び話を聞いて見ようなどとは、決して思わないはずです。

 まず最初に会社や製品の紹介をする。一見当たり前のようですが、これは新規顧客開拓営業のやってはいけないリストの堂々1番目に掲げられている行為です。そんなことにお客様は、まったく興味がありません。

 お客様は、そんな話を聞くために、あなたと会ったのではありません。自分にとって、有意義な情報を引き出そう、相談に乗ってもらおうと思ってあっているのです。あなたの会社や商品の自慢話を聞きたいわけではありません

 まずは、お客様の状況や課題を聞き出すことです

 だからといって、「何か課題はありませんか?」、「どんなことでお困りでしょうか?」と聞いても、初めての相手に何でも話をしようとは思わないでしょう。また、お客様自身も自分の課題を人に正確に伝えられるほどに整理できていないかもしれません。そんなお客様に、何か課題はありませんかと聞いても、たいした話を聞くことはできないでしょう。

 最初にやるべきことは、お客様について情報を徹底的に仕入れることです。お客様のホームページだけではなく、お客様の競合会社、業界紙、いろいろいと得られる情報はあるはずです。そんな情報から、お客様の状況や課題について、自分なりの仮説を立てておくといいでしょう。

 「今御社(あるいは、お客様の業界)では、このような状況ではないかと思うのですが、XXXという対応はされているのでしょうか?」というように、お客様にあなたの仮説をぶつけてみることです。
 あるいは、「いま、御社のような業界では、こんな取り組みに積極的ですが、御社は如何でしょうか?」というように、お客様についてのあなたの理解や疑問を問いただしてみることです。そうすれば、それに応える形で、お客様は、いろいろな状況や課題を教えてくださるようになるはずです。

 不十分とはいえ、自分たちのことについて調べ考えてきてくれた相手には、お客様も安心感や信頼感を持って頂けるはずです。そういう相手なら、話をしてもいいと思って頂けるのではないでしょうか。

 お客様の懐に飛び込むとは、まさにこういうことです。

 こういう話をした上で、「今伺いました御社の課題については、弊社のソフトウェアのXXXという機能を使えば対応ができると思うのですが、ご興味はありますでしょうか?」と話してみてはいかがでしょう。お客様は真剣に話を聞いてくれるでしょうし、感想や新たな情報も提供してくださるのではないでしょうか。

 お客様の視点に立って話をするとはこういうことです。

 最初は、名刺を交換し、簡単な挨拶をすれば、それで十分です。それ以上の会社の話、商品の話は、無用です。お客様が聞きたいと思わない限り、あなたがいくら熱弁をふるっても相手には伝わりません。

 お客様との話が盛り上がり、最後になって、「あっ、ところでお宅は、どこの会社の方でしたっけ?」と言わせるぐらいでなければ、次にはつながりません。

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