2009年7月20日月曜日

かりゆし

 沖縄の空の色は、東京とはまるで違う。深く、透明な青色。これが本当の空の色なのかなぁ。暑さもまた、沖縄らしい。じりじりと身体にしみこむような感じ。白い地面の照り返しも、このじりじり感に一役買っているのかもしれない。じっとり、まったりとした東京の暑さとは、どうも質が違うようだ。

 先週は、木金と沖縄で営業研修の機会をいただいた。今年二月に続いて二回目の沖縄。あの時は、空の色も暑さもそうとは気づかなかった。やっぱり夏の沖縄は、もっとも沖縄らしい季節なのかもしれない。

 レンタカーを借りて、ホテルへ向かう。夕方6時ごろの那覇へ向かう道は、大渋滞。急ぐわけでもないが、せっかくの南の島なんだから、椰子の並ぶ海岸線を気持ちよく走りたかった。まあ、仕方ないか。

 ホテルで着替えて、友人との約束の場所へ。「シンちゃん」といっぱい飲もうという話。彼は、IBM時代に同じ営業所で一時期を過ごした。同年ということもあり、むかしから気の合う奴だった。去年からIBMの沖縄支店長として、東京から単身赴任している。

 待ち合わせ場所にいると「かりゆし」姿のシンちゃんがやってきた。アロハともちょっと違うようだが、そんな「かりゆし」にスラックスと革靴。しっかりとビジネスバックを抱えての登場。沖縄が板についている。

 うちなー(おきなわ)料理の店に案内をされた。まずは、オリオン・ビールで乾杯。オリオン・ビールは、東京でも飲めるが、どうも薄くて、いまひとつなのだが、沖縄で飲むとなぜかこれがとてもおいしく感じる。後は、うちなーのつまみをつつきながら泡盛。

 東京の居酒屋で隣に居合わせた「うちなんちゅー(沖縄の人)」に「“まさひろ”うまいから 沖縄へいったら 飲むといいよー」といわれたことを思い出し、それを注文した。43度のクース(古酒)である。ロックでいただいたが、確かにうまい。「豆腐よう」を肴にちびちびといただいた。

 「豆腐よう」については、前回来たときにちょっとした失敗をしでかした。私は、他のつまみと同じように箸でつついていたのだが、ふと周りを見ると、だれもそんな人はいない。みんな、爪楊枝でちびちびとほじりながら口に運んでいる。ということで、今回は、初めからうちなー流だ。おかけで一切れの豆腐ようでたくさんの泡盛が飲める。ありがたいし、とてもこれがよくあうんだなぁ。

 「シンちゃん」は、沖縄のITベンダーのサポートをしている。彼は、酒を飲みながらも厳しい口調で「こんなことしてるからダメなんだよ。だから、XXXに負けちゃうんだ。」と苦言。前回もそうだったが、お客様であるITベンダーの役員にも平気で、同じことを言う。

 私は心配になって、彼に「もうちょっと、お客さんなんだから、言い方を変えたらどうよ。」というと「関係ねぇーよ。俺は、お客さんに良くなってほしいんだ。その気持ちがある。だから相手にもそこは伝わるし、わかってくれる。そうだろぉー」と。

 なんだか、嬉しくなった。昔は、IBMにもこんな営業がたくさんいたが、最近付き合う営業にこんな気骨のある人間は少なくなったような気がする。営業の仕事は、お客様を幸せにすることだと研修でも話をしているが、まったくそのとおりだとおもう。自分の思うところを正直にぶつけてこそ、お客様に受け入れてもらえる。彼はそんな当たり前をやっているに過ぎないわけだ。

 気がつくとホテルのベットで寝ていた。相当飲んだらしい。オリオン・ビールのあと、43度のクースを2合は飲んだ記憶はある。それで終わったのか、もっと飲んだのかはよくわからない。まあ、うまい酒は、飲む相手と料理だなぁ。

 ちょっと、こめかみに違和感を感じながら、シャワーを浴びて、その日の研修の準備をした。沖縄の日の出は、東京より一時間ほど遅い。白む空を眺めながら、メールをチェックしたり、資料の確認をした。早朝ジョグとも思ったが、この日はやめにした。前日の泡盛のせいか、身体がその気になってくれない。

 朝8時30分、ホテルを出発し、会場の沖縄県産業振興センターへ向かう。車で10分ほどのところ。駐車場を降りて、エレベーターに乗るが、誰一人背広にネクタイ姿の人はいない。私だけだ。みんな「かりゆし」をすっきりと着こなしている。

 研修に参加された方も全員「かりゆし」姿。そうだよなぁ、背広にネクタイは、暑いよなぁ。

 「かりゆし」とは、沖縄の方言で「めでたい」という意味だそうだ。聞くと、夏にネクタイなどしているひとは誰もいないという。「自分は半そでのYシャツは、一枚も持っていませんよ」という人もいた。

 「よし、それなら明日は自分もかりゆしを買って、それを着て講義をしよう。」 そんな小さな決心を胸に、初日の研修をはじめた。

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