2012年2月24日金曜日

「シームレス・ハイブリッド・クラウド」 エンタープライITプラットフォームの本命


米Rackspaceが、OpenStackによるプライベートクラウドの構築運用に参入(Publickey)。

こんなブログのエントリーが目に飛び込んできました。

この記事の意味するところは、パブリック・クラウドとプライベート・クラウドのさらなる融合が進み、両者をひとつのリソース・プールとして扱うハイブリッド・クラウドの実現を目指す動きです。

つまり、

  • オープン標準のOpenStackというIaaSの構築運用基盤で、パブリック・クラウドとプライベート・クラウドが構築される。
  • ユーザーは、この共通化・標準化されたパブリック・クラウドとプライベート・クラウドの組み合わせ(ハイブリッド・クラウド)をひとつのリソース・プールとして運用することができる。
  • これにより、アプリケーション毎に異なるセキュリティやコストパフォーマンンス条件を考慮し、ダイナミックで最適なディプロイメント実現できる。


つまり、「シームレス・ハイブリッド・クラウド」という世界ができあがるわけです。



この源流は、Windows Azure Platformの登場にあります。

Windows Azure Platformの登場以前は、オンプレミスとクラウドの開発・実行環境は異なったものであり、相互の互換性はないに等しいものでした。そんなときにWindows Azure Platformは、Windows Server互換の開発・実行環境をPaaSとして提供しました。これにより、オンプレミスとクラウドの垣根を取り払い、シームレスなひとつのリソース・プールとして取り扱うことを可能としたのです。

今回の発表は、これをより下位のレイヤーであるIaaSのレベルで共通化・標準化し、より自由度の高いシームレスなひとつのリソース・プールの実現を目指そうというものです。


こういう話しは、米国発が多いわけですが、意外にも日本でも同様の発想で、いち早く、「シームレス・ハイブリッド・クラウド」戦略を打ち出しているソリューション・ベンダーが存在します。それは、新日鉄ソリューションズ(NSSOL)です。



彼等は、自社のパブリック・クラウド基盤であるabsonneとプライベート・クラウド・アプライアンスであるNSGRANDIR+を共通のアーキテクチャーで実装し、これをセルフ運用ポータル「クラウドマネージャー」により、ひとつのリソース・プールとして捉え、構成の自動化や一元的な運用管理を可能とするITプラットフォーム戦略を打ち出してきました。

また、
  • ソフトウェア・スイッチによるユーザードメイン毎のネットワークの個別分離
  • L2によるパブリック・クラウドのネットワークとユーザー社内ネットワークとの接続
  • 仮想リソースを占有させるバーチャル・プライベート・クラウドに加え物理リソースも固定的に割り当てるオプション
  • きめ細かなセキュリティ・オプションによりカスタマイズに近い設定を実現
  • 監査レポートの提供
  • 次世代型データセンターでの運用により、低コストと高いセキュリティ・耐災害対応の両立

などという、かなりてんこ盛りなサービスを提供するそうです。しかも、計画停止を含めて99.99%の可用性の実現を目指そうとしていいるそうです。

なぜ、これを紹介したかというと、もはやクラウドは、このようなミッションクリティカルが求められるエンタープライズ・システムの受け皿として、十分に検討に値する段階に到達していることを紹介したかったからです。

未だ世の中にはクラウドに懐疑的な風潮もあります。それに根拠がないと言うつもりはありません。しかし、サービス提供者側も、それを十分承知しています。だからこそ、その課題を克服すべく様々な対策を講じてきています。そろそろ、どこかで折り合いをつけないといけない時期に来ているのではないでしょうか。

以前にも紹介しましたが、ユーザー企業の現実は、「IT予算が頭打ちであるにもかかわらずTCOは全予算の7割」という状況です。これに対処するためには、もはやクラウドに向かうしかありません。

しかし、制約の多いパブリック・クラウドに全てを移行することは現実的ではなく、結果として、ハイブリッド・クラウドという選択肢しか残らないでしょう。そのとき、「シームレス・ハイブリッド・クラウド」と言う考え方は、運用管理のしやすさ、コストパフォーマンスや変更への柔軟性という観点から、魅力的な要件のひとつとなるものと考えています。

「シームレス・ハイブリッド・クラウド」を実現するために忘れてはならないのが、ネットワークの仮想化です。

クラウド・コンピューティングは、コンピューティング・リソースを物理的なレイヤーから切り離し、仮想マシンを簡単に、そして突然出現する環境を作り出しました。また、ライブ・マイグレーションによりネットワークを越えて仮想マシンを移動させことも簡単にできるようになりました。そのような仕組みは、リソースの最適配置やシステム全体の可用性向上には、もはや不可欠と見なされるようになっています。しかし、これに伴うネットワークの構成や経路の変更は、いまだ多くを人手に頼っているのが現実です。

「シームレス・ハイブリッド・クラウド」は、クラウド・プロバイダーのデータセンターとユーザー・サイトという、地理的に異なるロケーションをまたいで、ダイナミックなネットワークの構成や経路の変更を必要とします。

そのためには、ふたつのデータセンターのネットワークをひとつの論理ネットワークとして扱い、ネットワーク機器やネットワーク経路の構成をプログラマブルに、かつダイナミックに運用する。つまり、物理的なネットワーク・レイヤーの上に、両者をまたがるひとつの仮想ネットワークを作り上げることが必要になります。

これを実現する新しいネットワークの考え方が「Software-Defined Network(SDN)」であり、それを実現するプロトコルとしてOpenFlowが注目されています。



「シームレス・ハイブリッド・クラウド」と「Software-Defined Network(SDN)」のふたつは、これからのエンタープライズ・クラウドを考える上で、外せないキーワードになると考えています。

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2012年2月18日土曜日

営業 as 移動式パンフレット・ラック

【営業】 「新しい製品を発売することになりまして、ご説明に伺いたいのですが、お時間をいだけないでしょうか?」

【顧客】 「ありがとう。でも製品の説明なら資料をPDFで送っておいてよ。見ておくから・・・」

パンフレットやWebページで製品やサービスについて知らせることと、営業が直接お客様に話しをするのとでは、何が違うのでしょうか?

ある情報システム部門での出来事です。新しいサービスについて紹介したいという営業さんの話につきあってくれと頼まれ、情報システム部長に同席して話を聞くことになりました。

その営業さんは、名刺交換や型どおりの挨拶を済ますと、自分たちの会社のこと、製品のこと、サービスのことを紹介してくれました。簡単なデモを交えた20分ほどの説明は、なかなかわかりやすく実績もしっかりしているようで、ものとしては悪くはないなといった印象を持ちました。

一通りの説明を終えた彼は、「いかがでしょうか?このようなサービスにご興味をお持ちでしょうか ? 」と切り出しました。

話を聞いていた情報システム部長は次のように回答しました。

「なかなか良さそうだけれども、うちには使えそうにないね。」とにべもない回答。一瞬、その営業さんの落胆が伝わってきました。

しかし、流石にベテランの営業さんです。ならばこんなサービスもあります、こんな製品も取り扱っているのですがいかがでしょうとパンフレットを取り出し、なにか引っかかってくれそうなものは無いかと話を始めました。

しばらくして、情報システム部長は最後を次のように締めくくりました。

「パンフレットは見ておくよ。今日は、ありがとう。」

達成感のなさとでも言うべきでしょうか。時間を無駄にしたなぁという気持ちがこみ上げてきました。また、この営業さんのセンスのなさに、なんともがっかりしてしまいました。

この営業さんは、人当たりもよく、説明も丁寧でわかりやすいものでした。場慣れしていることもあるのでしょうが、物怖じすることもなく、堂々とした説明は、なかなか好感の持てるものでした。しかし、決定的に欠けていたのは、彼の話になんの「びっくり」も無かったことです。

情報の価値は、相手が知らななったことをどれだけ伝えられるかにあります。情報理論では、ある人がその情報を知ったことによって、それ以降の行動がどのように変化したか。その変化の比率をもって情報量(=情報の価値)と定義しています。つまり、情報量が多いとは、言葉の数や資料の厚さではなく、その情報が相手に与える「びっくり」の強度と言い換えてもいいかもしれません。

「ぴっくり」は、相手の予期せぬこと、期待していなかったことを提供することですが、その前提として、それが相手の必要を満たしてくれなければなりません。

つまり、コストを削減したいという相手に、世界最速のコンピューターの話しをしても、興味深い話しとは思えても「びっくり」にはならないでしょう。ましてや、「ならばこのコンピューターを買いましょう」という行動を、この情報によって引き出すことはできません。

しかし、「クラウドを利用することで、コストを現行の1/10にできるかもしれません」という情報を伝えたらどうでしょう。相手は、せいぜい二割、三割のコスト削減を期待していたとすれば、これはもう「びっくり」です。是非話を聞かせて欲しいというように、相手は自らの行動を変えることに積極的になるはずです。

つまり、相手が何を期待しているのかを知らず、ただ一方的に物量としての情報を与えてもしかたがありません。それが相手の期待の方向になければ、なんの価値もないことになります。それを確認しないままに、こちらのもっている情報を絨毯爆撃のように与え、偶然にも重要施設に当たってくれれば儲けものです。しかし、このような偶然を期待するアプローチでは、相手は疲れ、感度も鈍くなります。仮に役立つ情報があっても見過ごしてしまうでしょう。このようなやり方で営業効率が上がるはずはないのです。 

件の営業さんのセンスのなさとは、まさにここにあるように思います。つまり、「自分の持っている情報を相手に伝えることが仕事」という意識ではなかったのでしょうか。説明もわかりやすい。しかし、これは手段であって目的ではありません。目的は、相手の行動を変化させることです。つまり、検討する、購入するという行動に結びついて始めてその営業さんは役割を果たしたことになるはずです。

そのためには、一にも二にも、相手が何に困り、何を期待しているかを確認することから始めなくてはなりません。それも、「何かありませんか?」ではなく「こういうことはありませんか?」と具体的な事例やありそうなケースを示して、相手からイエスかノーの確認を引き出すことです。そのためには、相手についての事前の情報収集と「仮説としての相手の期待」を自分なりに用意しておくことです。

そして、そこで確認した相手の期待に応えるようにカスタマイズして情報を提供しない限り、また、その期待を越えるものでない限り、相手の「びっくり」を引き出すことは決してできません。

かれは、このもっとも基本的な行動を取らなかったのです。

「パンフレットやWebページで製品やサービスについて知らせることと、営業が直接話しをするのとでは、何が違うのでしょうか?」

この最初の質問への回答は、「お客様にあわせた情報提供のカスタマイズができるかできないかの違い」です。

お客様の個別の期待を正確に聞き取ることは、人間でなければできないことです。そして、情報の物量ではなく、その期待に沿って「びっくり」の強度を最大化できる情報を提供すること。そのカスタマイズ力こそ、営業がお客様に説明することの価値ではないかと思うのです。

たくさんのパンフレットをクリアホルダーに詰め込み、どんな話しにも対応できるように準備していることを自慢する営業さんもいます。それはそれで立派な心構えかもしれません。しかし、その前提として、お客様の期待を確認できること、そして、それにあわせて、それぞれのお客様に最適化された情報の組み合わせを提供できないのであれば、営業がわざわざ出かけていって、お客様に説明する価値はありません。

自分の伝えたいことだけを伝える、持っているパンフレットを消費する、そのことにしか関心がないようであれば、それはもはや移動式パンフレット・ラックでしかないのです。



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2012年2月11日土曜日

競争に勝てない営業と常に勝ち続ける営業の違い


「自社のMFP(多機能プリンター)と競合他社のものと、どう違うのでしょう。何処が他社に比べて優れているのでしょうか? 」

某オフィース機器メーカーの若手営業職を対象とした研修で、冒頭こんな質問をさせて頂きました。何人かの人に聞きましたが、この質問に納得できる説明ができた人は、ひとりもいませんでした。

技術の進化は、技術を見えなくする進化でもあります。iPadやiPhoneを使えばわかることですが、技術を知らなくても直感的に使いこなすことができます。まさに技術の進化のひとつの答えです。

技術者は、誰もが、簡単に、安価に使えるものを目指して、日夜苦労して開発をしています。そんな各社の取り組みは、お互いに切磋琢磨しながら進化を促し、いずれは各社横並びに高い完成度を達成します。そして、結果として製品では差別化できない状況を生み出してしまいます。MFPはまさにそんなケースの代表的なものです。

また、HPとIBMとDELLと富士通とNEC・・・のPCサーバーは何が違うのでしょうか。各社各様に様々な工夫もあります。しかし、突き詰めてゆけば、全てIntelのXeonであり、OSはWindowsかLinux、データベースはOracleです。もはや明確な差別化は困難です。

自社の独自のサービスであったとしても、類似のものは世の中にたくさんあります。ここは凄いと言えるところが仮にあったとしても、各社それぞれにこれは凄いを主張するでしょう。お客様から見れば、一長一短と言うことになるのではないでしょうか。

もはや、製品やサービスのアドバンテージだけで、差別化し、競争力を保つことは容易なことではありません。

ではどのようにして、営業は競争を制することができるのでしょう。

答えは、競合を作らないこと、だと思います。

自社製品の機能や性能について、詳しく知っていることは大切なことです。しかし、それしか説明できないとすれば、お客様もまた他社に同様の説明を求めて、それを比較し判断されるでしょう。

しかし、先ほども説明の通り、機能、性能から、絶対的な競争優位を見出すことは難しい時代になりました。結局は価格や納期などの競争に陥ってしまいます。

お客様は何を求めているのでしょうか。私達はこの最も基本的な疑問に立ち返る必要があります。

お客様は、決してあなたの会社の製品やサービスを購入したいわけではないのです。自分の抱えている課題を解決したいのです。また、世の中かどうなっているのか、自分たちは正しい方向に向かっているのかを知りたいのです。そんな世間の常識と比べて、自分たちの選択が妥当であることに確信を持ちたいのではないでしょうか。

営業は、お客様にとって、よき相談相手になるべきです。世間の常識を語り、世の中のこれからの方向を説明し、お客様はどのような選択をすべきなのかを説明する。自社製品のことではなく、世の中のことであり、お客様のことです。その中で、自社の製品の得意不得意を客観的に語ることができる存在になることが大切です。

世の中に完全無欠な製品やサービスなど存在しません。そんなことはお客様もご存知です。いいことばかりでなく、不十分なところも冷静に説明し、運用でカバーする、ほかと組み合わせるなどの方法もあわせて説明すべきでしょう。私達の仕事の目的は、お客様の課題を解決することです。自社製品はその手段であるとを自覚しなくてはなりません。

お客様の課題はITだけで解決できません。そこも含めて、お客様と一緒に解決策を考える。そんな相談相手になることができれば、もはや競合はありません。あとはあなたにお任せしますとなり、自社製品で対応できることを優先しつつも、他社も含めた最適な組み合わせを提供すればいいのです。

相談し御願いする営業から、相談され御願いされる営業になる

ITに関わることなら、まずはあなたに相談するという関係を築くことができれば、もはや競合はありません。

どんな職業にもプロフェッショナルとアマチュアがいます。営業の世界でのプロフェッショナルとは競合を作らない営業です。

そのために、あなたは何をしていますか。どんな勉強をしていますか。あなたが、もしプロフェッショナルを目指すならば、そんなことを自問してみることも大切かもしれませんね。


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2012年2月4日土曜日

CIOの無知、変革を促さないSIer、崩壊するビジネスの構図


「ITの使われ方が業務と密接に絡んでいるのに、ユーザはITをSIerに丸投げしてしまう、あるいは業務プロジェクトのIT化の進め方が解っていない。一方のSIerも業務の変革に踏み込もうとしない。あるいは踏む込む知識を持ちえない。」

Publickeyに掲載された、「特許庁の基幹システムはなぜ失敗したのか。元内閣官房GPMO補佐官、萩本順三氏の述懐」に掲載されたこの言葉は、SIerとお客様との関係を見事に描いています。

ITは業務の効率化やコスト削減の手段です。これに対処しようと情報システム部門が行き着いた先は、SIerの工数単金の引き下げと値引きを求めることでした。そして、SIerはこれに愚直に応えようとしています。両者は、共にITによるイノベーションに抵抗しているかのようにも受け取れます。

この閉塞の中から、ITによる経営の革新、そしてITを前提とした新しいビジネスが創出されるとは、とても思えません。

この理由のひとつは、真の意味でのCIOが不在だからではないでしょうか。

本来、CIO(chief information officer:最高情報責任者)は、情報システムの戦略的活用を推進し経営に貢献する役割を担います。CIOという肩書きは、情報システム部門長という意味もあるのですが、本来的には経営者の役職です。つまり、「情報システム技術を活用して経営の変革と効率化を推進する」という役割を担っているのです。

しかし、現実には情報システム部門の利益代表者として、あるいは、経営サイドから情報システム部門を牽制する立場として、どちらか一方に偏っている場合が多いように思います。

前者の場合は、情報システム部門の出身者である場合が多く、後者の場合は、情報システム部門の経験なしにその役割を任される場合です。ただ、どちらにも共通しているのは、あたらしい情報システム技術に無知あるいは無関心であるという事実です。

前者は、自分が経験してきたメインフレーム時代の技術や仕事のあり方をあるべき姿と考え、パソコンやスマートフォン、クラウドなどの新しい技術や方法論を一段低く評価する傾向があります。そして、新しい技術の勉強を怠り、その本質を見ようとしない人たちです。

後者は、情報システムを経営のひとつの道具に過ぎないと考え、技術は専門家が知っていればよく深く知る必要は無いということで無関心を決め込む人たちです。どちらにしても、新しい技術のトレンドに無知であり、その本質を理解しようとはしません。

これまで何度か米企業のCIOと話す機会がありましたが、かれらの多くは実に情報システムのトレンドや技術の細部を熟知していました。新しい技術の本質を理解し、それを経営の革新にどう利用できるかを、そして自分はどうしたいかをしっかりと語ってくれました。

もちろん、全ての日本のCIOがITトレンドに無知であると言うつもりはありません。経営の立場から情報システムのあるべき姿を追求されている方を少なからず存じ上げています。しかし、その一方で、確かに一定の割合で、先のようなCIOが存在していることは確かだと思っています。これでは情報システムの戦略的活用は進まず、クラウドなどのITテクノロジーがもたらすイノベーションを経営に積極的に取り込んでいこうという機運が生まれることはありません。

業務を知らず、現状を変えることに消極的な情報システム部門。新しい技術のトレンドに無知なCIO。両者の無作為になんの変革も促さないSIer。そんなお互いのなれ合い、不干渉の構図が、ITの戦略的活用を遅らせていると考えるのは間違っているでしょうか。

情報システム・ビジネスに関わるものとして、この事態を真摯に受止めなくてはなりません。

円高や国内市場の低迷を受けて、情報システムの国内需要は伸び悩んでいます。経営からは時代の変革に対応できない情報システム部門への不満が拡大しています。そんな時代の流れの中で、変革をアピールできないSIerは、変革に躊躇する情報システム部門やCIOとともに一蓮托生で干されてしまう。そんな可能性も否定できないように思います。

萩本順三氏の指摘にあるようなSIerとお客様の関係を変えてゆくことは簡単なことではないでしょう。しかし、この事態をブレークスルーしなければ、ITが真の意味でビジネスに革新をもたらすことはありません。

それよりもなによりも、SIerがこれまで頼りにしていたビジネスのスキームは、もはや成立しなくなるのです。今まさに、そういう状況に立たされているのではないでしょうか。


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