2011年5月28日土曜日

残念な営業を変えることができる・・・かもしれない

 「いつも、遅くまで働いて・・・がんばってくれているんだが・・・」
 
 あるSI事業者の営業本部長がため息混じりに、こんな話しをしてくれました。
 
 「動き回っていることは分かるんだが、いっこうに成果を上げることができないんですよ。どうすればいいものでしょうかね。私から見れば、ただ、お客さまへのアポイントをこなしているだけにしか見えないんです。実際のお客さまとの関わりを見ていないので、何とも言えないのですが、どうも、手持ちの製品の話しをしてくるだけのようで、うちの持っているリソースやサービスを紹介しているようには思えない。突っ込んで、お客さまの困っていることや望んでいることを引きだそうということに関心がないようなんです。」
 
 「いろいろ話を聞いたり、こうしてはどうかという話しをしても、自分は一生懸命やっている、タイミングが悪い、扱っている商材が悪い、だからダメなんだと不平を言い、最後は、かならず、自分の努力も足りないんで、いろいろと考えてやってみますとうまくまとめてしまう。でも、行動がまったく変化しないんです。この繰り返しなんですよ。」
 
 その営業さんは、けっして新人ではありません。他の会社でも営業として経験した40代前半のベテランです。私は、営業から外れていだくしかないのではと進言すると・・・
 
 「かれを営業から外すと、あてはめ先が、ないんですよ・・・」
 
 本人は、まったくそんなことに関心がないように見えます。自分だけの世界を作り、周りと関わることを避けているようにも見えます。なぜ、社内のリソースを使わないのかと聞くと、社内は融通が利かなくて、こちらの思うように動いてくれない、面倒なので使えないという返事が返ってきました。
 
 このような残念な人は、どこの会社にも一定の割合では、いるようです。
 
 こういう人に共通していることは、自分は頑張っているとほんとうに信じて疑わず、うまくゆかないのは、自分以外に原因があり、仕方がないのだと考えていることです。自分の考えは正しく、世の中が間違っていると考える。そして、あのひとの考え方がおかしいと自分の正当性を主張する。その話しは確信に満ち、雄弁で説得力があるのです。そして、必ず、自分が至らないことも言葉の上では認め、改善を約束する。しかし、結局は、何も変えようとしないのです。
 
 センスがない、感性がないと言ってしまえば、まさにその通りだと思います。しかし、そういう人が、企業には、必ず一定の割合でいる以上、経営者は、何らかの手を打たなければならないのです。それは、その本人の問題と言うよりも、部下や周りへの悪影響を減らすという意味においても、何とかしなければならないのです。
 
 しかし、だからといって、「感性を磨け!」、「営業というのはなぁ・・・!」と説教をしても、こういう人には、絶対に通じません。その場をうまく治める才覚には長けているので、殊勝に話を聞き、なんだか分かってくれたような安心感を漂わせてはくれるので、こちらも一息つくのですが、心の耳を閉ざしている人には、何も届かないのです。きっと、こういう人は、酒席で、「あの人は、なにもわかっちゃいないんだよ」と周りに愚痴をこぼしているに違いありません。
 
 では、どすればいいのでしょうか。残念ながら、本人の考えを、周りからとやかく言っても変えさせることはできないでしょう。人間を内側から変えることができない以上、それはかたちから矯正するしかないように思います。武道で言えば、「型」を徹底することです。その過程で、気付きがうまれ、「型」が習慣化できれば、結果として、考え方も変わってくる。そういうことを期待するしかないように思います。
 
 守破離という言葉があります。千利休が残した茶道の心得です。

    規矩作法  守り尽くして 破るとも  離るるとても 本ぞ忘るな
 
 「」とは先人の築き上げた「型」を守ることです。そこには、先人が苦労して成し遂げた経験が、織り込まれています。まずは、これを徹底してまねることで、先人の知恵を自分のものとして会得するのです。
 この「型」を徹底的に守り通した上で、これをあえて破ってみる。自分ならではの工夫で、試してみる段階、それを「」といいます。本来を知りつつ、自分なりにそのやり方をあえて破ることで、自分ならではの「型」を求める段階と言えるでしょう。
 そして、それを他にも伝えられるほどに洗練させることができたならば、そこには、今までにはない「型」が生まれてくるのです。この段階を「」といいます。
 
 残念な人に、守破離の全てを期待しても難しいかもしれません。しかし、まずは、「守」を徹底させることで、チャンスを与えるべきなのではないかと思うのです。気付きの機会を与え、自ら変わろうとする気持ちを引き出す。それが、「型」を守らせることなのです。

 また、これは、その本人のためというだけではなく、その部下や周りの人を、残念な人の影響力から隔離する手段ともなります。つまり、残念な人の「型」に拘束されることなく、本来の「型」に接することができれば、心ある人は、自ら次の段階へと向かい始めるのではないでしょうか。そのチャンスを与えることは、会社にとっても大きな意義があります。
 
 営業という仕事における「型」のことを私は、「営業活動プロセス」と称しています。
 
 私は職人芸の域に達した営業を何人も見てきました。そういう人たちは、どなたも個性豊かで、決して人にはまねのできないような、動きをします。残念ながら、その奥義(?)は、本人でも説明不可能であり、まねることなど、容易なことではありません。
 
 しかし、そういう人たちの行動を見ていると、かならず共通の行動パターンが存在することに気付きます。
 例えば、初めてのお客さまに訪問するとき、可能な限り徹底的に情報を集め、お客さまの仕事や関心がどこにあるのかを探り、仮説を用意してお客さまとの対面に望んでいます。
 また、何らかの意志決定を迫るとき、その意志決定者だけではなく、だれがその意志決定に影響を与える人なのか、だれが承認してくれる人なのかを組織図だけでは見えない人と人との力の関係を探り、丁寧に関係者を説得して回っています。
 当たり前と言われれば、その通りなのですが、こういう当たり前をしっかりとこなしているからこそ、彼らは優秀なのだと思います。
 
 そんな彼らの当たり前の行動を分析的に洗い出し、描き出してみる。そして、時間軸に沿って整理してみる、つまり、仕事の手順として、並べてみたものが、「営業活動プロセス」なのです。私は、これを28のプロセスに整理してみました。もちろん、取り扱う商材やお客さま、社内用語の違いはありますので、それぞれに合わせて手直しはすべきですが、いざやってみると、大きな流れに違いはないようです。
 
 こういうもの作り、それに従って行動させる。実際には、チェックリストとして、案件やお客さま毎に自分の活動を評価させるのですが、それをマネージメントは、営業会議の中で、必ず確認するのです。もはや文学的表現で言い逃れすることはできません。やったかやらないかのチェックを確認するわけですから、弁解の余地はありません。
 
 抵抗はあります。でも、マネージャーは、それをこらえて、とにかくしばらく続けてみるのです。成果は、必ず出てくきます。
 
 残念な人が抵抗しても、その人以外の周りがそれを守り、行動が変わってくれば、もはや本人も言訳はできなくなります。それで、自分も、この型を守ってみようと心変わりしてくれれば、儲けものです。仮にダメだとしても、その残念な人以外は、次の段階へと進む準備ができてゆきます。会社としては、全体として、底上げができるはずです。
 
 そんな積み重ねの中で、誰かが「破」となり、そして、「離」となる。新しい営業の文化を築き上げてくれるかもしれません。
 
 「何でそんなことができないんだ!」と怒鳴ってみても、血圧を上げるだけで、売上は上がりません。まずは、「型」を示すことです。これに従わせて、チャンスを与えてみてはどうでしょう。
 
 何もしないよりは、きっとなにかが見えてくるように思うのですが、いかがでしょうか。


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2011年5月21日土曜日

「アウトプット思考」のすすめ

 「うちも、そろそろクラウドのことを真剣に検討してみようかと思うんだよ。」

 お客さまである情報システム部長から、こんな話しがあったなら、あなたは、どのように答えるだろうか。
 
 まずその前に、情報システム部長は、何を「クラウド」と言っているのだろうか。仮想化のことだろうか、それともデータセンターにシステムを預けて、ネットワーク越しにシステムを利用すること。いや、salesforce.comのようなアプリケーション・サービスを利用するというのだろうか。
 そもそも、「クラウド」とは、なんだろう。既存のシステムを仮想化し、集約すれば、それで「クラウド」になるのだろうか。データセンターにシステムを預けて利用するホスティングとは、何が違うのだろう。
 
 いやいや、それ以前に、なんのために「クラウド」を検討したいのだろう。コスト削減のため、BCP対応のため、人手不足への対応・・・では、「クラウド」を使えば、その目的は、達成できるのだろうか・・・
 
 「マシンが多すぎて、今使っているデータセンターでは、入りきらなくなっているんだけど、仮想化すれば、どうにかなるだろうか。」
 
 システム運用担当の部長から、こんな相談を持ちかけられた。貴方なら、どんな提案ができるだろうか。
 
 ところで、部長は、「仮想化」といっているのだが、何を「仮想化」すれば、マシンを減らすことができると考えているのだろう。「仮想化」と言えば、当然サーバーのことなのだろうが、この会社では、圧倒的にストレージの数が多い。サーバーを「仮想化」し集約しても、限界がある。とすれば、ストレージはどうすればいいのだろう。ストレージの仮想化も当然考えるべきだろうが、容量を減らすことは容易ではない。なにかいい方法が・・・そういえば、シンプロビジョニングという話を聞いたことがある。それが使えるのだろうか。
 
 ところで、ネットワーク接続はどうなるのだろう。サーバーも目的によって異な
るネットワーク構成の中で運用されているが、それに対応するためには、どうすれば・・・
 
 そもそも、サーバーを仮想化するにしても、Hyper-Vなのか、Xen Server、それともvmware・・・それぞれの違いは?どれが、このお客さまに最適なのだろう。
 
 営業である貴方は、お客さまのこんな「ささやか」な疑問に、応えられるだろうか。それ以前に、お客さまの言っている「クラウド」や「仮想化」とはなにかを理解しているだろうか。これが、理解できていなければ、お客さまの言っていることが、理解できないも同じである。たとえ、「クラウド」や「仮想化」という言葉は知ってはいても、それが、どのような関係にあるのか、分かっていなければ、お客さまに適切な質問などできるはずがない。

 話は変わるが、今年の年初、日本IBMの社長が、「今年はメインフレームにフォーカスする」と宣言した。いったいこれは、どういうことなのだろう。レガシーマイグレーションが、喧伝される中で、いまさら、そんな古くさいメインフレームなどで、ビジネスを牽引することができるのだろうか。日本IBMもついに売るものがなくなって、悪あがきしているだけなのだろうか。
 
 しかし、現実を見てみると、米国でのメインフレームの売れ行きは好調で、米IBMの第4四半期実績でも前年同期比69%増という実績に達している。これは、いったいどういうことなのだろう。
 
 世の中は、大きく動いている。特にIT業界の動きは、実にスピードが速い・・・というが、本当にそうなのだろうか。
 
 世の中には、様々な動きがある。その全てを追いかけることなどで、できるはずはない。しかし、その根底にある大きな流れ、つまり、トレンドというものは、それほど急激に変化しているわけではなく、比較的緩やかに流れている。表面に見える変化、つまり、新製品や新技術といわれるものも、そんなトレンドの変化から、かけ離れてしまうと、決して普及はしない。そんな目線で、表面に出てくる話を聞いていると、それが、決して、突拍子もないものでないことが分かる。
 
 IBMが、「今年はメインフレームにフォーカスする」と聞いて、「なるほど。妥当な話しですね。」と、私は納得した。そして、その方法も自ずと想像がついた。
 
 「そんなことが、どうして理解できるんですか?」と質問されることがある。もちろん、私が、IT業界の全ての事情に精通しているわけではない、世の中の情報の全てを知りうるなど、そんなことなどできるわけがない。それでも、ある程度の常識は、心得ているつもりでいる。

 それを可能にする手段が、「アウトプット思考」である。一言で言えば、「書いてみる、描いてみる」ことで考えるということだ。
 
  例えば、「今、我国のSI事業者は、どんな課題を抱えているのだろうか」と疑問を持ったとしよう。私は、それをノートに殴り書きしながら、頭の中を整理する。分からなければ、ネットで検索して、人の意見を参考にすることも多い。そして、書き上げたのが、この一枚のメモである。

  
 チャートができあがったとき、この芸術的作品に、私は、大いに感動した。「これだよ、これだよ・・・こういうことなんだ!」と。しかし、多分、これを他の人が見ても、何が何だか分からないだろう。そこで、これをパワーポイントで清書したのが、次のチャートだ。
 

 清書をする過程で、またいろいろな気付きがある。「なるほど、こういう単語を使った方が、わかりやすいな。」、「配色は、こちらの方がいいかもしれないなぁ」・・・つまり、自分以外の他人に分かってもらうためには、どうすればいいだろうかを、徹底的に考えるわけである。それで、できあがったのがこのチャートだ。
 
 (1)疑問を持つ
 (2)調べたり考えたりしたことを、とにかく描き出してみる
 (3)自分以外の人に分かってもらえるためには、どう表現すればいいかを試行錯誤しながら、清書する。
 
 これが、「アウトプット思考」だ。
 
 特に、「自分以外の人に分かってもらう」ということを意識して欲しい。自分が分かったつもりでも、自分の考えを他人に正しく伝えられなければ、ビジネスの世界では、なんの役にも立たない。他人に伝えるためには、どうすればいいかを追求することで、ものごとの構造や本質に気付くことも多い。
 
 ちまたには、情報が氾濫している。そんな情報の氾濫の中でも、「えっ、どうして?」、「これはいったいどういうことだろう」と思うことに出会う。そんなときに、この「アウトプット思考」を試みてみる。すると、疑問に思ったそのことが理解できるだけではない。「なるぼど、こういうところにつながっているのか」とか、「なるほど、こういう構造が隠れていたんだ」と気付かされることも多い。
 
 そういう繰り返しが、自分の常識を養ってくれるのだろうと思っている。
 
 新入社員研修で、「どうすれば、こんなことが分かるようになるんですか?」と質問されることがある。そういうときには、迷わず「アウトプット思考」をお勧めしている。是非、お試しあれ。
 

 Facebookで、これ一枚シリーズを公開しています。私が疑問に思ったITに関わる様々なキーワードを自分の理解のために「アウトプット思考」した結果です。もし、「なるほど」とご理解いただければ、私は理解できていると言うことでしょう(笑)。ぜひ、そんな私の知的訓練にご協力いただければ幸いですww・・・

*お知らせ*

 ご案内させていただきました「ITソリューション塾」は、おかげさまで、定員に達しました。有難うございました。いつものように志の高い皆さんにお集まりいただき、こちらも身の引き締まる思いです。徹底した「アウトプット思考」で、私もしっかり勉強させていだこうと思っています(笑)。
 
 次回は、9月の開催を予定しています。改めてご案内いたしますので、その折にはご検討ください。 

2011年5月14日土曜日

震災で試される営業の力量

 「震災特需なんてとんでもない。いいことなんか、何もありませんでした。」
 
 5月9に開催された「緊急営業会議:3.11以降のITビジネスと営業の役割」で、新潟を中心にビジネスを展開している丸新システムズの副社長・熊倉さんが、こんな発言されていました。熊倉さんは、2004年の中越地震、2007年中越沖地震を経験されています。
 
 「中越沖地震の時は、直下型の地震であり、家屋の倒壊被害が顕著でした。1年間はビジネスは全くないと考えていました。特に中小のお客さまが多く、資金繰りに苦しみ、倒産したお客さまも少なくありません。IT において震災特需は有り得ないと考えるべきです。特に製造業は案件の消失が多く、震災によってもたらされる良いことはひとつまありませんでした。BCP、DRの話もでましたが、実際にはビジネスへと具体化したことは少なく、お客さま自身も何をすれば良いかわからない状態だったんです。」
 
 熊倉さんは、このような状況の中で、お客さまにITの話しなど聞いている余裕はないこと、そんなお客さまの気持ちを逆なでするようなことをやるべきではないと言うことも、話されていました。真剣にお客さまの困ったことに向き合い、自分たちにできることはなにかを考えることが、営業の役割であると話されていました。
 
 この「緊急営業会議:3.11以降のITビジネスと営業の役割」には、会社の垣根を越えて、150人の営業関係者が集まりました。普段は、ライバル同士の営業ですが、「お客さまの“困った”を解決する」という役割においては、同士と言えるかもしれません。そういう皆さんが、今お客さまはどうなっているのか、自分たちに何ができるのだろうかを考えようと、この会議は開かれました。
 
 告知してひと月もありませんでしたが、これだけの多くの方が、お集まりいただいたことを、私は真摯に受け止めています。
 
 日本情報通信の三宅さんから、こんなご発言がありました。
 
 「ホスティング・サービスを提供しているデータセンターが、計画停電の対象地域でした。しかし、お客さまのシステムを止めるわけにはゆきません。そこで、自家発電のための重油は大丈夫か、その際の対応はどうなっているのかを委託している管理会社と確認し、対応のために走り回りました。私たちの仕事は、「お客様の困った」を解決することです。改めてITの範囲を超えたことにも、自分にできることはなにかを考えなければいけないと痛感しました。」
 
 私は、このお二人の話を伺い、改めて営業の果たすべき役割について、気付かされました。つまり、私たち営業は、「お客さまの困った」を解決するプロデューサーなのです。

 お客さまの困ったをITだけで解決することはできません。ITは、その手段の一部に過ぎないのです。お客さまは、IT製品やサービスを買いたいわけではありません。お客さまは、自分の困ったを解決し、こうしたいを実現したいのです。そして、それが満たされるのであれば、必要な対価を支払っていただけるのです。
 
 BCPやDRを売り込むことなど不謹慎だと言いたいわけではありません。まず、そのような商材以前にお客さまのこまったに真剣に向き合い、それを解決するためには、何をすべきかを真剣に考えることが、まずは、営業のとるべき態度なのだろうと思います。その上で、ITに何ができるかを考えるべきなのです。

 私たちは、ITの専門家なのですから、ITをうまく活用し、効果的にお客さまの困ったを解決するための方策をガイドすべきなのです。それがお客さまの期待であり、営業の役割なのだと思います。

 お客さまの話を伺い、それを整理し、最適な解決策を提案する。営業は、そのために、たくさんの引き出しを持っていなくてはなりません。その勉強を怠っては、ならないと思います。
 
 「ソリューション営業」という言葉があります。これを言い換えれば、「お客さまの困ったに真摯に向き合い、その解決に全力を尽くす営業」ということかもしれません。
 
 今、私たちは、その力量を試されています。この緊急営業会議での皆さんの意見を伺いながら、改めて、営業の役割について、考えることができました。
 

[会議の映像]この映像は、新日鉄ソリューションズ様のご協力により、同社クラウド・サービスである absonne より提供しております。また、映像は、V-CUBE様のWeb会議システムを使わせていただき、編集にもご協力いただきました。

[議事録]緊急営業会議の議事録(PDF)を公開いたしました。日本情報通信の千住さんにより、この議事をまとめていただきました。

[メディアでの紹介]


ささやかながら、下記の右下にもリンクを掲載いただきました。

この緊急営業会議に関するFacebookページも開設しています。よろしければ、「いいね!」をクリックして、ご参加ください。

このように、多くの皆様のご協力により緊急営業会議は開催されました。改めて皆様に感謝申し上げま。この機会を多くの皆様と共有できればと切に願っております。よろしければ、このブログをご覧の皆様にもご協力いただき、この取り組みを、ご紹介いただければ幸いです。

■ 既にご案内のITソリューション塾、多くの皆様のお申し込みをいただき、有難うございます。まだ若干名の余裕がございます。どうぞ、ご検討の方は、早々のご連絡を御願いいたします。

2011年5月7日土曜日

自分たちの製品については話せても、世の中の常識を語れない営業を信頼できますか?

 「自分たちの製品については話せても、世の中の常識を知らない営業を信頼して、相談できると思いますか。」
 
 IBMに入社して、まだ数年の頃でしょうか、お客さまである某製造業のシステム部門長から、こんなことを言われました。この言葉は、未だに頭を離れません。
 
 当時IBMは、メインフレームからクライアント・サーバーへのダウンサイジングの流れの中で、厳しい競争に晒されていました。また、PCの普及により、エンド・ユーザー・コンピューティングなどの言葉が流行となり、お客さまの意志決定も情報システム部門だけではすまなくなっていました。
 
 それ以前は、「コンピューター=IBM」の時代でした。しかし、もはやそういう時代ではなくなりつつあったのです。当時、電気電子関連の製造業のお客さまを担当していたのですが、DEC、SUN、HPなど、それまでのIBMとはまったく毛色の違う製品が、お客さまに広く受け入れられ、ここに食い込むことは、容易なことではなかったのです。
 
 そんな頃だったと思います。私は、いつものようにIBMの製品が、如何に優れているかを、お客さまに自信を持って説明していました。機能や性能は他社に卓越していること、その技術力や開発、サポート体制が、どれほどすばらしいかを、お客さまに蕩々と語っていたときだったと思います。
 
 私は言葉に詰まりました。私は、自分の製品には自信がありましたが、なるほど、そう言われてみると、他社と何がどう違うのかを説明することができませんでした。また、世の中の大きな動きや全体の中での自分たちの位置づけを何も知らなかったのです。

 それが、お客さまの業務にどう関わり、どのような価値を生み出しているかも、感覚的には分かっていても、具体的な事実として理解していなかったのです。また、自社の限界や課題はどこにあるかもわかっていませんでした。
 
 当時は、インターネットもない時代です。勉強すると言ってもそんなことを効率的に学べる教科書もありません。結局は、図々しくも、お客さまの机の横にどかっと座り込み質問をしたり、現場を見せていただいたりしながら、仕事や他社製品について教えていだいたことを記憶しています。お客さまも、よくつきあってくれたなぁと思います(笑)。
 
 今思うと、お客さまには、迷惑な話だったと思います。しかし、まだその時代は、セキュリティも甘く、余裕もあったのだと思います。今なら、お客さまの執務室に入ることなど許されません。

 私が現役の時代は、まだまだ、IBMなど一部の企業がITのトレンドを握っていた時代ですから情報も限られ、それなりに整理されていました。インターネットなどという便利な道具もありませんから、情報の流通手段も限定されていました。ですから、お客さまにとっては、営業の説明やセミナーが貴重な情報源だったわけです。しかし、もはやそんな時代ではないのです。

 お客さまも自分たちも情報の量では、差がありません。むしろ現場を知っているお客さまの方が、ある意味、情報量は多いわけです。そういうお客さまと対等に話しをするためには、こちらもしっかりと、情報を持ち、知識として整理しておくことが必要です。そういうことができない営業から、お客さまは、話しを聞いてくれるでしょうか。
 
 情報は、氾濫しています。ですから、多くの営業は、言葉を知っています。しかし、その意味や関係、言葉の背後にある思想や歴史を理解できていないのです。

 例えば、クラウド・コンピューティングという言葉を知らない人はいないでしょうが、仮想化との違いをわかりやすく説明できるでしょうか。あるいは、AjaxとSOAとの関係を説明できるでしょうか。また、Google、Microsoft、Salesfoce.comの各社の戦略や立ち位置の違いを説明できるでしょうか。

 国際会計基準(IFRS)もよく聞く言葉です。では、お客さまの業務やシステムにどのような影響を与えることになるのでしょうか。そして、それは、いつからなんですか?

 BIが注目されています・・・というと、そうなんですよ・・・という人は多いのですが、そもそも、BIとはなんですか?あるいは、SAP、ORACLE、IBMが、BIで大きく勝負をかけてきているのですが、それはなぜですか?

 仮想化には、様々な種類があります。また、vmware、Citrix、Microsoft、ORACLEなど様々なプレーヤーがいるわけですが、彼らの戦略や機能の差異はどこになるのでしょうか?
 
 このようなことが分からないで、お客さまと会話をしても、お客さまの信頼など得られません。これが全てだと言うつもりはありませんが、営業力の大切な要素であることに間違えはないと思います。
  
 営業の育成や組織力強化の仕事に関わりながら、この現実に直面しています。この当たり前を営業が自信を持ってお客さまに語れないのです。それ以前に、お客さまの話しをこのような常識に当てはめて整理し、理解できないのです。

 営業の仕事の起点は、ここにあるわけですが、これがなかなかできないのです。営業自身も自信をなくすし、お客さまも、どうしたものかと困ってしまいます。
 
 常識を知らず、自分の製品やサービスしか語れない。そんな営業をお客様は、頼りにしないでしょう。これは、いつの時代も同じことです。
 
 もちろん、そんな人ばかりではありません。しかし、残念ながら、それができるひとは、限られています。そういう人は、自分の力で何とかしてきているわけで、組織的に、計画的に、育成されてきたわけではない場合が多いようです。
 
 経営者が、自助努力を促すこと、それは、いいことだと思います。しかし、同時に、その筋道を示し、切っ掛けを提供できなければ、成果は、本人任せであり、運を天にまかせるだけではないでしょうか。これでは、計画的な育成はかないません。

 営業にとっての常識とは、プログラミングができることでもなければ、システムの仕様書を書くことでもありません。世の中で語られる様々な言葉を体系的に整理し、その意味や関係を整理できることだろうと思います。

 営業の仕事とは、このような技術やビジネスの動きを正しく読み取り、お客様の課題を解決するための適切な筋道をガイドすることです。そのための常識が、必要なのだろうと思っています。

 そんな現場をお手伝いできないかと始めたのが、ITソリューション塾です。三年前に始めたこの取り組みに、大手、中小にかかわらず、営業もエンジニアも経営者も…様々な方にご参加いただきました。どなたも、本当に志の高い方ばかりです。だから、こちらも手が抜けません(笑)。

 まもなく、第7期が、始まります。さて、こんどは、どんな説明をすれば、わかりやすいだろうか。どんな資料を作れば、あっと言わせられるだろうか・・・そんな思いを巡らせながら、楽しく準備をしているところです。

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