2009年12月31日木曜日

「クラウド」で何を売りますか?何を買いますか?

  IT業界の今年を振り返れば、クラウドに明け、クラウドで暮れた一年だった。猫も杓子もクラウドである。なんだか、この言葉を使わなければ、時代に取り残されたような気持ちになる。

 景気が低迷を続ける中、何とかお客さまの関心を惹くために、その価値を斟酌することもなく、ただ目新しいからという理由だけで、このキーワードを乱発するソリューション・ベンダーも少なくない。

 また、ユーザー側も、一層のコスト削減を迫られ、自身のリストラも危ぶまれるなか、クラウドに可能性を求めた。

 まさに、「クラウド強迫神経症」とでも言うべき空気が、このIT業界に漂っていた。

 しかし、その神通力もそろそろ切れ掛かっている。「何だろう?」の好奇心から、「どうしよう?」の現実論へと、クラウドを取り巻く意識が、大きく変わり始めている。

 もはや「クラウドとは何か?」の期間は終わった。これからは、「クラウドをどう使えばいいのか?」を考える時期にさしかかっている。

 だからこそ、改めてクラウドの本質を冷静に見極め、産地偽装と本物のクラウドを見分ける必要がある。その上で、何が価値で、何がリスクかを公平に見極め、自分達にもっともふさわしい使い方を選択する。その駒は、そろそろ出揃い始めたといってもいいだろう。

 では、どのような使い方があるのか、そして、それがとのような効果を生み出すのか。簡単に整理してみようと思う。

  まず、クラウドとは何かについて、共通の認識を持っておいたほうがいい。とにかく、いろいろな人が、いろいろな定義をしている。そんな中、米国商務省の国 立標準技術局(NIST:National Institute of Standards and Technology)が、「クラウドコンピューティングの定義(The NIST Definition of Cloud Computing)」を公表している。これは、世の中の意見をうまく取りまとめた定義になっているように思う。

 以前のブログに日本語の解釈を載せた。この解釈で使用した文書は、2009年の6月に公開されたものである。10月にも新たなリリースが出ているが、大きくは変わっていない。つまり、そろそろ定義が、落ち着き始めているともいえる。

 では、どのような使い方が、効果的なのか、5つの可能性を考えてみることにしよう。

1.開発・テスト環境

 大手企業の場合、約半数のサーバーが開発やテストのために導入されているといわれている。稼働率も低い。これをクラウドという形で集約できれば、大幅なコスト削減が図れるものと期待できる。

 サーバーの仮想化とどう違うかということになるが、クラウドにあって、サーバーの仮想化にないものを考えると話が早い。NISTの定義に従うと、「オンデマンド・セルフサービス」と「システム資源のプール」ということになる。

 開発・テストが必要になったとき、人手を介さずに、かつ必要量のサーバー資源をダイナミックに割り当てることができる仕組みである。

 この仕組みが備わっていることにより、開発・テスト環境の構築は、大幅に短縮され、それに伴う、設備投資や運用管理に伴うコストを大幅に低減できることが期待される。

 大企業であれば、これをエンタープライズ・クラウド(企業内クラウド)とすることも考えられる。しかし、中小企業には、現実的ではない。従って、パブリック・クラウド(インターネットを介した公開型クラウド・サービス)が、現実的だ。

 また、開発・テスト用途であれば、セキュリティ・リスクも比較的少ない。その意味からも、パブリック・クラウドは、現実的である。

 もし、Windows Serverを使用している企業であれば、Windows Azure Platformは、検討に値する。なんといっても、オンプレミスと同じ環境を実現でき、Visual Studioに対応しているわけだから、使い勝手がいい。

 このように、開発・テスト環境として利用するのが、もっともリスクが少なく、コスト効果を短期に引き出すことができるのではないかと考えられる。

2.ピーク性の高いアプリケーション

 基幹業務系のアプリケーションは、ピークの予測が比較的容易であり、またその範囲も限られている。しかし、Webでのキャンペーンやオンライン販売などは、そのピークが予想できないことに加え、そのピークと定常時のギャップが、相当に大きなものになる場合がある。

 このようなタイプのアプリケーションは、クラウド向きといえるだろう。最低限のコストからはじめ、ダイナミックにシステム資源の割り当てを増減できる。

 オンプレミスとの組み合わせにより、このようなシステム環境を実現することも可能だろう。つまり、平時は社内システムを、負荷が大きくなりそうなときには、クラウドを使うという組み合わせだ。

 Windows Azure Platformは、そのあたりを念頭に置き、「シームレス・コンピューティング」環境を実現しようという戦略のようだ。

 (ところで、何度もAzureを引き合いに出すが、断っておくが、私はマイクロソフトの回し者ではありません(笑)。ただ、Azureの戦略は、これからのクラウドの使い方や可能性をよく研究して組みたてられたことが伺えます。その意味で、大いに参考になりますね。)

3.クラウドの課題を補完するサービス


 コストの安さで勝負するためには、大量のサーバー群を保有することが、ひとつの条件となる。しかし、このようなサービスを提供できる企業は、限られている。とするならば、他の価値を見出さなければ、売るに売れない、買うにも魅力がない。

 その切り口が、「クラウドの課題を補完するサービス」である。

  例えば、Google Appsを使えば、サーバーの所有に伴う一時費用や運用負担が軽減される。しかも、オフィース・アプリケーションであれば、可用性も基幹業務システムほど には必要ない。しかし、社内の機密情報やメールアドレスに付随する個人情報をGoogleに預けるには不安がある。そこで、個人認証は、社内のサーバーで すべて行い、社内で認証した結果だけを Google Appsに送りそこで認証。機密情報は暗号化して、社内のサーバーに残し、リンク情報だけをメールで送る。そうすれば、クラウドの良さを活かしつつ、その課題を解決することができる

  他にも、コンプライアンスやデータの保全性への不安も払拭できないものがある。ならば、その課題を解決するために、地域や業界でサーバーを運用して、サー ビスを提供することも意味があるだろう。コストは高くなっても、人や設備に依存することがなくなれば、ユーザー企業のメリットも大きいはず。

 このように、クラウドの課題を正しく評価したうえで、それを補完することができれば、そのサービスは、ユーザーに受け入れられるだろう。

4.クラウド・ブローカー

 クラウドによるサービスが多様化する中、ユーザーは、その選択や組み合わせに苦労することになるだろう。そこで、ユーザーにとって最適な組み合わせを提案し、それを構築、提供する事業者が必要になる。このようなサービス事業者を「クラウド・ブローカー」と呼ぶそうである。

 つまり、システム・インテグレーターのクラウド版ということになるだろう。

 ここに「クラウドの課題を補完する仕組み」も組み入れ、サービスとしての付加価値を高め、差別化を図ってゆくことも可能になる。

 ただ、今までのSIと大きく異なるところは、システム機器販売や環境構築の割合が、大幅や減ること。そして、システム技術力の価値が、相対的に小さくなることである。

 つまり、業務プロセスやアプリケーションにかかわる課題の整理、企画・提案といった、より上流に関わることができる能力が、求められるようになる。

5.デバイスの多様化を意識したアプリケーション・サービス

 クラウドの重要な特徴のひとつが、マルチデバイスである。Java Scriptが、サクサク動くブラウザーが搭載されていれば、それはすべてクラウド端末になりうることは、以前のブログで書いたとおりである

 PCの年間出荷台数は、3億台、これに対して、携帯電話の出荷台数は、PCの4倍に当たる12億台。うち、iPhoneなどのスマートフォンは、1億5千万台程度である。

 携帯電話の普及、特にスマートフォンの成長率は、PCや他の携帯電話を大きく上回っている。このような状況を考えると、クラウド・サービスの対象をPCに限定してしまう必要はないわけで、むしろ携帯やスマートフォンに向けたサービスを積極的に取り組むべきかもしれない。

 それは、かならずしもコンシュマーを対象とするものではない。最近iPhoneを使い始めたが、その機能や使い勝手の良さは、驚くばかりである。ネットワーク・サービスを利用する上でのPCの利用頻度が大幅に減ったことは確かである。

 法人をお客様としている多くのIT企業は、意外とこのあたりの感性が低いようだ。真剣に研究してみる価値があると思うのだが、いかがだろう。

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 さて、思いつくままにいろいろと書き連ねてみたが、何かご参考になっただろうか。まだまだ、いろいろな切り口はあるだろう。是非そのあたりは、正月のお屠蘇気分に浸りつつ、少し常識を逸脱して、考えて見られてはいかがだろう。思わぬ発想が生まれてくるかもしれない。

 ひとつ、最後に申し上げておきたいことがある。

 IT業界の不況は、世の中の経済指標が上向き始めたとしても、軌を一にすることはないだろう。その背景には、ITの投資判断基準が、大きく変わり始めたことがある

 こういう時代の節目を感じ取り、新たなビジネスの突破口を切り開く力を世の中や会社に求めたところで、ただ失望感を味わうだけである。

 自分自身を磨き、その能力を高めてゆくこと以外に道はないように思う。「自分力」こそが、これからのIT業界で生き残る唯一の武器となる。

 世の中が変わらないから、会社が動かないからを言い訳に、時代の流れを静観していても、むなしい時間を過ごすだけである。「いつでも、こんな会社辞めてやる!」といえる自信を持つこと。そんな自分力が、結果として組織を動かし、世の中を変える力となるという、「自分力」起点の発想を持つことが必要ではないか。

 経営者や管理者は、そんなチャンスを部下に与え続ける事であろう。それが、結果として、新たなビジネスの可能性を生み出すことになる。また、人は、自分の成長の場としての「会社」に魅力を感じる。優秀な中堅社員が辞めてゆく企業は、総じてその魅力に欠けている

 自分が成長したいと思う「社員」、その期待に応える「会社」という、相思相愛の関係を築くことが、この時代を乗り切り、新たなパラダイムへと駒を進める原動力となる

 そんな思いからはじめた「ITソリューション塾」も、来年1月から第3期がスタートする。既に申し込みも集まり始めているが、そのコメントを見ると、彼らの志の高さが、ひしひしと伝わってくる。「会社が受講料を出してくれないから自腹で参加したい」という人もいる。

 改めて、この取り組みを始めた意義を実感している。

 僭越なことを書いてしまった。ただ、自分自身への戒めでもあり、ご容赦願いたい。そして、また来年もお付き合い頂ければ幸いです。

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 この「ITソリューション塾」は、ITの最新動向やITビジネスにかかわる最新の知識を分り易く、体系的に整理し、提案活動の武器にしていただこうという企画です。

 例えば、「クラウド」というキーワード。知らない方はいらっしゃらないと思います。しかし・・・

 「クラウドと仮想化の違いを教えてください。」とお客様から聞かれて即答できなければ、信用失墜です?

あるいは・・・

  • iPhoneは、世界最初のモバイル・クラウド端末と言うことですが、それはなぜですか?
  • クラウドを使うとグリーンITを推進することになるとの事ですが、それはなぜですか?
  • Windows Azureの発表がありましたが、システム開発や運用は、どう変わるのですか?
 こんな、お客さまのご相談に答えることができれば、お客さまの信頼もますます高まるはずです。

 クラウドばかりではありません。国際会計基準、ネットワーク・セキュリティなど、ITのトレンドは、実に急速に動いています。

 「ITソリューション塾」は、こんなお客様からの相談を
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 そんな常識力を養っていただこうというものです。

 また、説明資料の分りやすさやビジュアルの美しさにも相当を気を使っています。

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そのパワーポイントの説明資料もソフト・コピーで差し上げます
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 営業さんばかりでなく、SEやコンサル、あるいは、マネージメントや経営者の皆様にもご参加いただければと準備しています。ぜひご参加をご検討いただければと願っています。

 詳しくは、こちらをご覧ください。

2009年12月27日日曜日

営業なんて必要なの?

 口に出しては言わないが、ソリューション・ベンダーやシステム・インテグレーターの経営者の多くは、そう考えているに違いない。

 いや、百歩譲って、「請求書の処理、クレーム対応、まあ、お客様に顔を出してご機嫌取り・・・とにかく、しっかり事務処理して、お客様との良好な関係を維持するためにやってくれればいい」ではないだろうか。

 いないのも困るが、所詮は、コストオーバーヘッド。あまり経費を使わないでほしい。

  「新規案件を取ってくるのは、営業の仕事」としている会社も少なくないが、たぶん本心は、期待されていない。じゃあ、何のためのそんなミッションを与えて いるのかといえば、「事務処理やトラブル対応だけでは、営業のモチベーションが下がるから、前向きなこともやらせておいたほうがいい。」という精神衛生上 の配慮からである。


 IT業界には、こんな言葉がある。「士農工商"営業"」。一番偉いのは、スタッフ、次がPM、次にSEやサポート、そして最後が、営業となる。

  「これからは、営業力を強化しなければならないと考えているんですよ。」。ソリューション・ベンダーやシステム・インテグレーターの経営者は、ほぼ口をそ ろえて、そういう言葉を口にするが、ここで言う営業力とは、「営業職の仕事」ではない。つまり、会社として、営業力をどう強化するかである。決して、営業 職への期待や施策ではない。

 景気がいいときは、営業などいなくても仕事は舞い込んで来る。しかし、不況ではそうはいかない。ITベン ダーに人がいても、技術があっても、お客様は買いたくない。だから、嫌がるお客さまの気持ちを何とかするための汚れ役を「営業」に期待する。不況の時の 「営業頼み」とは、この程度の期待にすぎない。

 確かに、営業という仕事は、営業職だけが担うものではない。しかし、営業職が、その中心的な役割を担うべきという発想が欠如している。というか、そんなことを営業職の人たちに期待していないのである。

 この業界の営業職とは、この程度の存在なのである。

 ある通信キャリアの研究所で研究者として仕事をしていた方が、子会社のシステム・ベンダーの営業として転籍となった。彼は、酒の席で「斎藤さん、営業なんかにされちゃいましたよ。はははは・・・」。悲しそうだった。その話しを聞いて、私は、もっと悲しかった。

 IBMを辞めて、彼らと同じ目線が持てるようになって、この実態に気づくことになった。

  IBMという会社は、実に営業の地位が高く、プライドも高い。オレが会社を背負っているんだというくらい意気軒昂である。しかし、その一方で重い責任も負 わされている。数字はもちろんのこと、お客様との関係を維持することは当然のこと。それが、評価や給与に直接連動している。社内にもそのコンセンサスがあ るから、SEもサポートも営業に従うのが当然と考えている。

 世間から見れば、大風呂敷で、尊大で、強引な営業である。しかし、その一方で、仕事に熱く、お客様にも篤かったのではないかと思っている。少なくとも、昔はそうだった・・・

 営業職を英語では、Sales Representativeという。Representativeとは、代表者であり、国会議員の意味もある。つまり、会社を代表する責任を持った職種であり、販売活動についての一切の責任を持つ社長の代理人という含意がある。

 日本の業界に、その理解はないようだ。

 「ちょっと、言い過ぎじゃないか。」と思っていただければ、これほど嬉しいことはない。そんな人たちが、これからのIT営業の役割を考え、どう育成すればいいかを考えればいいと思っている。

 New Normalの話しを書いた。ITビジネスが、大きな地殻変動を始めている。こんな時代だからこそ、営業もまた、役割を変えてゆかなければならない。

 「ソリューション・ビジネス能力モデル」研究会を立ち上げた。現在、22社、30名の方々にご賛同頂いている。先日、24日に今年最後の打ち合わせを行った。大手元請企業の役員もいれば、下請けの中小企業経営者も同席している。

 みんな、真剣であり、切実である。

 どこかの国の悪しき平等主義のようにならないように、志のある人たちが、真剣に考えてくれればいいと思っている。

 もし、ご興味があれば、お問い合わせください

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 このたび 「ITソリューション塾 【第3期】」 を開講することとなりました。ご案内は、ここからダウンロードできます

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 ぜひご参加をご検討いただければと願っています。

 この塾は、毎週火曜日の18:30-20:30。全10回にわたり開催します。初日は、1月19日(火)を予定しています。

 既に2期、開催しました。参加者の意欲も出席率も高く、ご満足いただいているようです。

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 次回の「ITソリューション塾」では、最新の動向を反映し、今までの内容の大幅に見直しました。主な改訂箇所は、以下の通りです。

1.クラウドを基礎編と戦略編の2回に分けます。
  • 基礎編では、概念や定義、テクノロジーやビジネスへの影響などを体系化して解説します。
  • 戦略編では、国内外の各社のクラウド・ビジネス戦略を分析し、自分達のビジネスにどう活かせるだろうかを考えてみようと思います。
2.ネットワーク・セキュリティについては、脅威やリスクの体系化と共に、対策にも着目し、どのようなビジネス展開があるかを考えて見ます。

3.国際会計基準については、この基準の意義や本質だけではなく、システム・ビジネスとして、どのようなチャンスがあるかをしっかり掘り下げてみようかと思います。

4.プロジェクト管理(PMBOKなど)についても整理し、その基本を学んでいただこうと考えています。

5.営業スキルについては、この2回の経験を踏まえ、改めて内容を取捨選択し、毎回独立したトピックとしてではなく、系統的に話しをさせていただけるように改訂する予定です。

 最新の動き、さらには、新たな整理とドキュメント。とにかく、いっそう分りやすく、即実践で使えることを目指し、内容を進化させる予定です。

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2009年12月23日水曜日

「クラウド」がもたらす本当の変化

  「クラウドの定義:産地偽装に騙されないために」でも書いたように、「クラウド」という言葉が、その本質とはかけ離れ、キャッチフレーズとして世の中を闊歩している。

 例えば、データセンター・サービス。仮想化や運用の自動化、プロビジョニングへの対応がなくても、ネットワークを介して使うから「クラウド」であるという。

 ASPも同じ。既存のパッケージ・ソフトウェアを顧客ごとに立ち上げたシステムに導入し、ネットワークを介してサービスを提供する。シングル・インスタンスやマルチ・テナントというようなSaaSに求められる要件を備えていない。それでも「クラウド」である。

 「ソリューション」が、「プロダクト」より、高級な感じ・・・というノリと同じように、その本質を考えないままに「クラウド」という言葉が、キャッチフレーズとして使われている。

 ソリーション・ベンダーは、そろそろ本質を正しく受け入れ、責任ある行動をとるべきではないか。ユーザーも、この現実に気づいている。

 それを知らないのか、あるいは知っていても、思考を停止して無視しているのか、それは分らないが、そろそろプロとしての責任を果たすべきだろう。そうし なければ、「クラウド」のもたらす本当のパラダイムの変化から自ら乗り遅れてしまう。いや、それだけではない、「クラウドは、日本の企業には任せられな い。」とユーザーにそっぽを向かれてしまうだろう。

 先日、米国セールスフォース社が、自らのクラウド・サービスであるforce.comを、国内大手のソリューション・ベンダーにOEMとして提供するとの発表があった。そこには、NECや富士通などのサーバー・メーカーも含まれている。

 時代の流れだとはいえ、自身の稼ぎ頭のひとつであるサーバー・ビジネスを縮小させることに取り組まざるを得ない彼らは、まさに今の日本のIT業界の現実 を体現している。つまり、お客様にとって魅力的なクラウド・ビジネスを自分達が提供できないからであり、仕方なく米国のクラウド・サービス・プロバイダー と組したと見られてもしかたがないだろう。

 ちょっと穿った見方とのご批判は覚悟の上。ただ、それくらい危機感を持つべきなのである。それだけ、クラウドは、ITビジネスの潮流を大きく変えようとしていることに、もっと真摯に向き合うべきだと、私は考えている。

 「クラウド」は、システム資源の「所有から使用」へのパラダイムシフトだといわれている。しかし、それは表面的なことに過ぎない。むしろその結果として、ITビジネスの常識が、大きく変わることに気づく必要があるだろう。そのいくつかを、思いつくままにいくつか書き出してみると・・・

1.システム資源のグロバールかつシームレスな最適配置
2.システム開発や運用のグローバルな再編
3.情報システム部門の役割縮小とユーザー部門の発言力拡大
4.CO2削減のための「クラウド・シフト」圧力
5.クライアント・デバイスの多様化に伴う、システム利用の爆発的拡大
・・・

 ところで、クラウド・ビジネスを理解するうえで、もうひとつの重要なパラダイムの変化についても触れておこう。それは、「ハードウェア重視への回帰」である。

 かつて情報システム・ビジネスは、ハードウェア・ビジネスであった。IBMの営業として働いていた頃、メインフレームやその端末は、重要な収入源であり、売上げの8割近くを占めていた。

 しかし、ダウンサイジングの流れの中で、ハードウェア・ビジネスは儲からなくなった。だからこれを縮小し、サービス・ビジネスへの転換を図っていった。多くのハードウェア・メーカーが、サービス事業者への転換を図っていった。

 IBMも例に漏れず、現在は、その売上げの8割が、サービスからの収入となった。これは、IBMに限ったことではない。多くのハードウェア・メーカーが、事業転換を図ったのである。しかし、その過程で生き残れずに消え去っていった企業も少なくない。

 さて、今はどうか。実は、形を変えたハードウェア・ビジネスが、今のクラウド・ビジネスではないかと私は考えている。

 クラウドの魅力は何かと言えば、多くのソリューション・ベンダーは、「コスト」の削減であるという。しかし、コストを削減するためには、膨大なサーバー資源を保有することが前提となる。

 UCバークレーの論文「Above the Clouds」によると、「1000台クラスの中規模データセンターと、5万台クラスのデータセンターを比較すると、大規模データセンターのほうが7倍も効率がよい」との調査結果がある。つまり、規模とコストが比例するということだ。

 グーグルは、300万台のサーバーを保有しているといわれている。では、国内企業で、この規模、すなわち、コストで立ち向かえる企業はあるのだろうか。

 ハードウェアが、再び儲うけを生み出すようになったのである。これはハードウェア資源のレンタル・ビジネスである。かつての商売の仕方とは違うが、ハードウェアを商品とするビジネスであることに変わりはない。つまり新しい形の「ハードウェア・ビジネス」が、米国の大手クラウド企業のビジネスといえるだろう。「ハードウェア重視への回帰」とは、そういう意味である。

 つまり、クラウド・ビジネスの売りをコスト削減とする限りにおいては、日本のIT企業は、ハードウェア・ビジネスへの転換を図る必要がある。しかし、それは容易なことではないことは、言うまでもない。

 となるとスピード、つまり「時間」をクラウドで売るということになるのか。それとも、国内であることの「安心」を売ることになるのか。

 キャッチフレーズやバズワードの類を頭ごなしに否定するつもりもない。少なくとも、世の中に新しい動きの到来を広く知らしめる効果はあった。

 しかし、その役目は十分に果たした。そろそろ「クラウド」の本質を真剣に考えるべきである。そして、「クラウド」の美しき幻想である「コスト削減」は、自分達ではできないことを正直に伝え、「時間」や「安心」などの「コスト」以外の自分達の価値を、お客しさまに真摯に売り込むべき時期が来たのではないかと思う。

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2.ネットワーク・セキュリティについては、脅威やリスクの体系化と共に、対策にも着目し、どのようなビジネス展開があるかを考えて見ます。

3.国際会計基準については、この基準の意義や本質だけではなく、システム・ビジネスとして、どのようなチャンスがあるかをしっかり掘り下げてみようかと思います。

4.プロジェクト管理(PMBOKなど)についても整理し、その基本を学んでいただこうと考えています。

5.営業スキルについては、この2回の経験を踏まえ、改めて内容を取捨選択し、毎回独立したトピックとしてではなく、系統的に話しをさせていただけるように改訂する予定です。

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2009年12月18日金曜日

今までの仕事をやめて、新しい仕事をやりなさい!

「営業力を強化しなければと考えています。」

 最近、ソリューション・ベンダーやシステム・インテグレーターの研修担当者や経営者から、こんな話をよく耳にする。

 不況のあおりを受けて、受注が思うように伸びない中、この状況を何とかするためには、営業力に頼るしかないという、「最後の手段」的な営業力頼みである。

 景気がいいときは、技術力や製品力が大切であると考える。営業力は、ないよりもあったほうがいい・・・いや、お客さまの「言うとおり」を忠実に、滞りなく、そして、ちょっと納期を早める努力をしたり、ちょっと値引きを深くしてみたり、あるいは、マメにお客様に顔を出すことで、お客様の必要に直ぐに答えられるように・・・と言った程度の「優秀なる御用聞き」ができることこそ、営業力。それで十分に業績を上げることができたのだから、それが営業力だと言うことに何も疑問もなかった。

 しかし、今彼らが求めている営業力とは、どうもそういうものではないらしい。

 新規案件の発掘、新規顧客の開拓、既存顧客からのシェア拡大である。つまり、お客さまの「言うとおり」に逆らう行為だ。

 お客様の「言うとおり」にしていれば、仕事は減らされる。モノを買いたくないお客様に「買ってください」と言わなければならない。これはもう、天地真逆の仕事をしろと言われているようなものであり、今度はそれを営業力だという。

 「今までの仕事をやめて、新しい仕事をやりなさい」。表向き、営業という立場は、何も変わらないが、やることはまったく違う。そんな事実には目をそむけ、「うちの営業力は、まだまだ御用聞き営業から脱しきれず、これではこれからやっては行けない。だから、もっと営業力を強くしなければ・・・」などという発想は、どこか間違っているように思う。

 「営業力を強くする」という言葉の根底には、「弱いものを強くする」、「未熟を育成し成長させる」という考えがあるように思う。この発想は、今までの延長線上での話し。

 しかし、そうじゃないでしょ・・・と言いたくなる。

 まあ、過去を全面否定するつもりもないが、そんな延長線上の話しではなく、営業というパラダイムが明らかに変わってしまったことを、はっきりと意識すべきではないでしょうか。

 昨日、New Normalについて書きました。お客さまの意思決定基準が、明らかに変わっている。今までの「御用聞き営業」の発想や仕事の手順では、もはや営業として役割を果たせない。この現実に目を向けるべきではないのかと思うのです。

 「営業力を強化する」とは、今までの営業という名の下に行ってきた仕事を定義しなおし、これからの営業という仕事について、新たなあるべき姿や手順を明確にすることからはじめなければならないと思うのです。

 「新しい営業という仕事ができるようにするための職業訓練」。それが、今求められている「営業力の強化」です。

 クラウドの普及は、モノが売れなくなると言うことだけではありません。システム開発やシステム構築・運用の考え方をグローバルな視点で再編成することになると考えるべきです。換言すれば、お客様が期待する皆さんの役割が変わってしまうことを意味しているのです。

 そうなれば、当然仕事も変わり、求められる「営業力」も変わってきて当然。この現実を早く受け入れ、新しい時代に求められる「営業力」を構築すること。それが、今必要な「営業力の強化」なのだと思うのです。

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1.クラウドを基礎編と戦略編の2回に分けます。
  • 基礎編では、概念や定義、テクノロジーやビジネスへの影響などを体系化して解説します。
  • 戦略編では、国内外の各社のクラウド・ビジネス戦略を分析し、自分達のビジネスにどう活かせるだろうかを考えてみようと思います。
2.ネットワーク・セキュリティについては、脅威やリスクの体系化と共に、対策にも着目し、どのようなビジネス展開があるかを考えて見ます。

3.国際会計基準については、この基準の意義や本質だけではなく、システム・ビジネスとして、どのようなチャンスがあるかをしっかり掘り下げてみようかと思います。

4.プロジェクト管理(PMBOKなど)についても整理し、その基本を学んでいただこうと考えています。

5.営業スキルについては、この2回の経験を踏まえ、改めて内容を取捨選択し、毎回独立したトピックとしてではなく、系統的に話しをさせていただけるように改訂する予定です。

 最新の動き、さらには、新たな整理とドキュメント。とにかく、いっそう分りやすく、即実践で使えることを目指し、内容を進化させる予定です。

 どうぞ、ご参加いただければとぞんじます。また、御社の営業、SE、コンサル、マネージメントの皆様にご紹介頂ければと存じます。

 詳しくは、こちらをご覧ください。

2009年12月16日水曜日

「クラウドで物が売れなくなる」 その証拠

 リーマンショック以降、"New Normal(新しい標準)"という言葉が、米国のメディアに度々登場しているそうです。この言葉の意味は、たとえ景気が回復しても、以前のNomalには、もどりませんよ・・・ということで、お客さまが物事を考える上での常識が、変わってしまったということを言っているのだそうです。

 景気の低迷で、IT投資を抑制してきた日本の企業にも、この"New Nomal"が、常識となりつつあるようです。

 景気が回復し、システムの需要が拡大しても、システムの導入や開発が、今まで同様とはいきません。節約志向が定着した情報システム部門は、もはやかつてのNomalにもどる意思はないようです。

 事実、クラウドが、こんなにも早くITビジネスの第一線に出てくるとは、正直予想していませんでした。この不況に後押しされて、時計の針が、大きく動いたようです。

 情報システム部門の意思決定のメカニズムには、確実に「クラウド」のフィルターが、埋め込まれたようです。

 クラウドでモノが売れなくなると言う話し。こんなことを言うと、またかと言われるかもしれませんが、これには、確かな証拠があるのです。

 世界のサーバー出荷台数は、年間800万台。その内、Google、Yahoo、Amazon、Salesforceなどのクラウド各社は、その20%程度、およそ150万台から200万台程度を購入していると言われています。

 これらサーバーは、当然のことではありますが、通常の代理店経由ではありません。また、この出荷台数の相当数が、その他のクラウド・サービス・プロバイダーに出荷されているものと考えられます。

 また、Googleは、創業以来、サーバーを内製しています。その保有台数は、実に300万台。日本の年間出荷台数が、およそ50万台なので、国内需要の6年分を所有している計算になります。その他のクラウド各社も相当数所有していると考えると、たぶんその台数は、年間出荷台数を上回るのではないでしょうか。

 つまりこれだけの膨大な台数が、販売会社を経由せず販売されていること。また、膨大な数のサーバーが、クラウド・サービスに利用されていると考えると、その分、ユーザー企業は、自社のサーバーを使わずクラウドのサーバー・リソースを利用していると考えることができます。

 つまり、ユーザー企業のシステム需要が拡大しても、サーバーを購入するという過去のNormalは通用せず、New Normalが台頭し始めているのです。モノが売れなくなるのも道理です。

 ノークリサーチさんのレポートによると、クラウドの国内市場は、2009年の249億円から、2012年には、2065億円になると予測しています。実に8倍に拡大することになります。

 しかし、この間、お客さまの情報システム予算は、同様に8倍に拡大するでしょうか?そんなことにはならないはずで、今までのシステム購入費用が、クラウドに使われることになるでしょう。

 クラウドでモノが売れなくなるといっても、またまだ・・・なんて、甘い考えは捨てるべきでしょうね。

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 このたび 「ITソリューション塾 【第3期】」 を開講することとなりました。ご案内は、ここからダウンロードできます

 この「ITソリューション塾」は、ITの最新動向やITビジネスにかかわる最新の知識を分り易く、体系的に整理し、提案活動の武器にしていただこうという企画です。

 例えば、「クラウド」というキーワード。知らない方はいらっしゃらないと思います。しかし・・・

 「クラウドと仮想化の違いを教えてください。」とお客様から聞かれて即答できなければ、信用失墜です?

あるいは・・・
  • iPhoneは、世界最初のモバイル・クラウド端末と言うことですが、それはなぜですか?
  • クラウドを使うとグリーンITを推進することになるとの事ですが、それはなぜですか?
  • Windows Azureの発表がありましたが、システム開発や運用は、どう変わるのですか?
 こんな、お客さまのご相談に答えることができれば、お客さまの信頼もますます高まるはずです。

 クラウドばかりではありません。国際会計基準、ネットワーク・セキュリティなど、ITのトレンドは、実に急速に動いています。

 「ITソリューション塾」は、こんなお客様からの相談を
  • 「理解」できる。
  • 「説明」できる。
  • 「整理」できる。
 そんな常識力を養っていただこうというものです。

 また、説明資料の分りやすさやビジュアルの美しさにも相当を気を使っています。

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そのパワーポイントの説明資料もソフト・コピーで差し上げます
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 営業さんばかりでなく、SEやコンサル、あるいは、マネージメントや経営者の皆様にもご参加いただければと準備しています。

 ぜひご参加をご検討いただければと願っています。

 この塾は、毎週火曜日の18:30-20:30。全10回に渡り開催します。初日は、1月19日(火)を予定しています。

 既に2期、開催しております。参加者の意欲も出席率も高く、ご満足いただいているようです。

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 次回の「ITソリューション塾」では、最新の動向を反映し、今までの内容の大幅に見直しました。主な改訂箇所は、以下の通りです。

1.クラウドを基礎編と戦略編の2回に分けます。
  • 基礎編では、概念や定義、テクノロジーやビジネスへの影響などを体系化して解説します。
  • 戦略編では、国内外の各社のクラウド・ビジネス戦略を分析し、自分達のビジネスにどう活かせるだろうかを考えてみようと思います。
2.ネットワーク・セキュリティについては、脅威やリスクの体系化と共に、対策にも着目し、どのようなビジネス展開があるかを考えて見ます。

3.国際会計基準については、この基準の意義や本質だけではなく、システム・ビジネスとして、どのようなチャンスがあるかをしっかり掘り下げてみようかと思います。

4.プロジェクト管理(PMBOKなど)についても整理し、その基本を学んでいただこうと考えています。

5.営業スキルについては、この2回の経験を踏まえ、改めて内容を取捨選択し、毎回独立したトピックとしてではなく、系統的に話しをさせていただけるように改訂する予定です。

 最新の動き、さらには、新たな整理とドキュメント。とにかく、いっそう分りやすく、即実践で使えることを目指し、内容を進化させる予定です。

 どうぞ、ご参加いただければとぞんじます。また、御社の営業、SE、コンサル、マネージメントの皆様にご紹介頂ければと存じます。

 詳しくは、こちらをご覧ください。

2009年12月9日水曜日

クラウドの目指す「あるべき姿」:シームレス・コンピューティング

 先月、マイクロソフトは、クラウド・コンピューティング(PaaS)のプラットフォームとして、Windows Azure Platformを発表した。このWindows Azure Platformの肝(きも)は、オンプレミスとクラウドをひとつのプラットフォームとて一体化することである。これについては、「Windows Azureに垣間見るマイクロソフトのしたたかな戦略」に書かせていただいたので、よろしければご覧いただきたい。

 さて、このタイミングでもうひとつ、これからのマイクロソフトのクラウド戦略を読み解く上で、ひとつの重要な発表がなされている。それが、Silverlite 4である

 Silverliteが何かをご存じない方もいらっしゃるだろうから、簡単に解説しておこう。

 これは、アドビの提供するFlushやAirに相当するもので、アニメーション、ベクターグラフィックスの表示や音声・動画再生などの機能を備える、いわゆるリッチインターネットアプリケーション (RIA) のプラットフォームである。

 ちなみにアドビのFlushも、Silverliteも、ブラウザーのプラグインとして、ブラウザーに閉じ込められた形で動作する。

 これに対して、Airは、Flushの技術をベースにブラウザー機能を内蔵している。つまり、ユーザーからは、ブラウザーを立ち上げたり、意識する必要がない。当然、ユーザーは、そのアプリケーションが、ネットのリソースを使っているのか、ローカルPCのリソースを使っているのかも意識することはない。

 今回発表されたSilverlite 4は、このAirに相当する機能も取り込むことを表明した。

 つまり、AirもSilverliteも、ともにユーザーから見れば、そのアプリケーションの動作をローカルなのか、クラウドなのかを意識させないクライアント環境の実現を狙っていることになる。

 また、両者ともに、マルチプラットフォームで動作することを宣言している。つまり、Mac、Linux、Windows、iPhoneのOS上にリッチインターネットアプリケーション・プラットフォームのレイヤーがかぶさり、OSを隠蔽してしまう。

 となると、AirやSilverliteで開発したアプリケーションは、OSの種類を意識することなく、共通のプログラム・コードを利用できるようになることも意味している。

 このように、Silverliteは、Windows Azure Platformで、サーバー環境について、オンプレミスとクラウドをひとつのプラットフォームとして一体化したように、クライアント環境を一体化することを狙ったものと考えることができるだろう。

 しかも、開発環境としては、ほぼデファクト化しているVisual Studio /.Net Frameworkがそのまま使える。となると、その潜在的な開発パワーは、相当強大といえるだろう。

 Window7の評価が高い。また、chrome OSにも注目が浴びている。確かに、OSなくして、コンピューター・システムは、動かないわけで、なくなることはないだろう。しかし、クラウドが普及すれば、ハードウェア機能を効率よく、安全安心に動作させることのみを担うようになるのかもしれない。これは、chrome OSの狙いと一致している。

 FireFoxの開発母体となっているMOZILAも同様のクライアントprismの開発を進めている。

 このような各社の動きを見ていると、これからのクラウド・アプリケーションの姿が見えてくる。

 つまり、クラウドというコンピューティング環境は、「どこか雲の上」のサーバーと、ローカルなサーバーやクライアントPCを別のものとして捉え、それを連携・組み合わせて利用するという考え方ではないということだ。

 雲の上と下を大きな単一のプラットフォームと捉え、アプリケーションを構築するという考えたに行き着くのではないか。

 クラウドとオンプレミスをシームレスなコンピューティング環境にする。これが、クラウド・コンピューティングが、目指している「あるべき姿」なのかもしれない。

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あなたも「ITソリューション塾」に参加しませんか?

2010年1月 第3期生 募集を開始します。

 クラウドという言葉を知らない人はいないでしょう。しかし・・・
  • クラウドとSOA関係は?
  • 仮想化とクラウドとは、何がどう違うのでしょうか?
  • iPhoneは、なぜ最初のクラウド端末といわれているのでしうか?
  • MicrosoftとGoogleとAmazonの戦略の違いを説明できますか?
  • クラウドが、ユーザーの意思決定や仕事の仕方にどのような変化をもたらすのでしょうか?
・・・ あなたは、この質問に答えられますか?

 クラウド以外にも、国際会計基準、仮想化、グリーンIT、ネットワーク・セキュリティなど、多くのキーワードが私たちの周りをにぎわしています。あなたは、その単語を知っているだけで、それを理解したつもりになってはいないでしょうか?

 言葉の断片をただ漫然と見渡しても物事の本質は見えてきません。また、機能や特徴を理解するだけではなく、その課題やリスク、その背景が分らなければ、安心して使うことなどできません。これらを結びつけ、体系化してめて、理解したといえるのです。

 このITソリューション塾は、
  • 毎週火曜日の夜18:30から20:30、計10回に分けて、ITソリューションに関わる重要なキーワードをテーマに解説します。
  • 分りやすく系的に整理するとともに、課題やビジネスの可能性についても掘り下げます。
  • メインテーマは、1時間程度、美しく、整理されたビジュアルを駆使したパワーポイントの資料と共に、解説します。また、その時々の最新の話題についても取り上げ、その意味や背景を30分程度で解説します。
  • 説明に使用したパワーポイントの資料は、そのままソフトコピーで差しげます。社内やお客さまへの説明資料や提案書に自由にお使いいただけます。
  • 営業、SEに関わらず、経営者やマネージメントの方々にもぜひご参加いただきたい内容です。

2009年11月30日月曜日

Windows Azureの本質 ITビジネスはどう変わるのか

 11月17日、マイクロソフトが、Windows Azure Platformを発表した。これは、システム・インテグレーターやITソリューション・ベンダーにとって、新しいビジネス・チャンスとなるかもしれない。

 詳しい解説は、ZDnet Japanに投稿したブログをご覧いただきたい。

 Windows Azure Platformの本質は、オンプレミスとクラウドをシームレスにつなぐ、新しいシステム・プラットフォームであるという点だ。

 以前説明したことでもあるが、クラウドの大きな課題は、可用性セキュリティであるといわれている。一方、オンプレミスは、トラフィックの増減に柔軟に対応できなことが上げられる。

 この両者の弱点をお互いに補完できる組みあわせが実現すれば、これほどいいことはない。Windows Azure Platformは、まさにこれを狙っている。

 今までのクラウド・サービスの多くは、オンプレミスとは、まったく別のシステムであり、両者の連携には、いろいろと工夫が必要だった。

 というよりも、そもそも、どの大手クラウドベンダー(Google,Amazon,Saleforceなど)も、自前のオンプレミスのプラットフォームを提供していない。そこに、自前のオンプレミス・プラットフォームを持つマイクロソフトが、両者の同一性を武器に参入してきたのである。

 Windows Azure Platformは、基本的には、Windows Serverのレプリカである。つまり、Visual Studio / .Net Framworkが、そのまま使えるシステム環境なのである。しかも、両者をうまく連携させる仕組みについても準備が進められている。このハードルは、大きく下がったといえるだろう。

  開発者にとって、このシステム環境は、大変分りやすく、使いやすい。また、オンプレミス型Windowsアプリケーションを大量に抱えているお客様やサービス・プロバイダーは、クラウドを含めて、最適配置しなおすといった検討も容易になる。

 これからのシステム・インテグレーションや運用のビジネスは、この両者をひとつのプラットフォームとして考えなくてはならないだろう。

 この組みあわせが、クラウドのすべての問題を解決するなどとは、もちろん思わない。しかし、ひとつの選択肢となりうることは、間違えない。たぶん、お客様からも、それを求められるだろう。

 クラウドにするか、オンプレミスにするか、という両者を区別した議論に加え、ひとつのプラットフォームとして連携させて利用するという考え方は、Windows Azure Platformに始まったアイデアではない。しかし、Windowsという、膨大なユーザーや開発者の資産を考えると、今回の発表は、この動きをますます加速することになるだろうことは、容易に想像できる。

 システム・インテグレーターとして、ソリューション・ベンダーとして、皆さんは、その答えを用意しているだろうか?サービスの本格リリースは、あとわずか一ヶ月後に控えている。

[緊急のお知らせ]-----------------------------------------------

クラウド・ビジネス戦略策定支援セッションを開催します!

日時: 12月16日(水)10:00-17:00

場所: 東京・九段下

 クラウドの一般論を理解することが目的ではありません。皆さんの会社の事業戦略スタッフの視点で、これからのビジネス戦略、製品戦略に必須の突っ込んだ情報やアイデアを提供します。 

 システム・インテグレータやソリューション・ベンダーの経営者、営業責任者、マーケティング担当者の皆様が対象ですが、情報システム部門の方にもお役に立つと思います。

こちらから、お申し込みいただけます。

開催趣旨 ----------------

 既に多くの企業が、クラウド時代に向けた取り組みを始めています。しかし、その一方で、その具体的な施策に頭を悩ましている方も少なくないようです。

 そんな皆さんを対象に、言葉の断片をつなぎ合わせるだけの解説ではなく、ユーザーが、そして、企業が、クラウドにどう取り組むべきか、そして、そのベンダーは、それにどのような対応をすべきかなど、少し突っ込んだ検討をしてみようと思っています。

 定員が限られています。ご関心ある方は、どうぞ、お早目のエントリーを

内 容 ------------------

1.クラウドを体系的に理解する

 クラウドとその周辺にある言葉の断片を拾い集めても本質は見えてきません。そこで、これらを関連付け、体系的に整理します。また、クラウド・ビジネスを考える上で、関係の深い周辺技術の動向についても詳しく解説します。
・クラウド・コンピューティング体系: 定義と課題
・クラウド時代のリッチクライアント(クラウドとAjaxの不可分な関係)
・クラウドとSOAの組み合わせがSIの今後を変える
・クラウドのアキレス腱、セキュリティ問題とは

2.ビジネスに与える影響と事業戦略について考える

 クラウドの普及が、お客様の意思決定にどのような影響を与えるのか。これに対し、私たちは、どのような対策をとるべきかを検討します。また、クラウドプレーヤー各社の比較や各種統計についても検討します。
・クラウド・ビジネスの動向を整理する
・ITビジネスへの影響と課題
・想定しうるビジネス戦略

3.自社のビジネス戦略のアイデアを整理する

 1,2の知識を参考に、クラウドへの今後の取り組みや戦略について、各自、整理してみます。
・整理するためのフォームを提供
・個別のアドバイス

------- どうぞ、ご検討ください。

こちらから、お申し込みいただけます。

2009年11月27日金曜日

求む!ソリューション・ビジネス能力モデル 策定メンバー有志

 プロダクトからソリューションへ。ITビジネスへのニーズは、大きくそのウエイトを移しつつあります。

 ソリューション・ベンダー各社も、これに対応すべく取り組みを進めつつあります。しかし、ソリューションについての各社各様の解釈に加え、何を目標に、どのような人材を確保育成しなければならないのか、あるいは、社内体制のあるべき姿についても、手探り状態にあるというのが、現実ではないでしょうか。

 ソリューションのひとつの解釈として、「特定のプロダクトやサービスに依存するのではなく、お客様の個々のニーズに対応した個別の解決策」とするならば、その組み合わせは、実に多様です。加えて、クラウドの普及は、この組み合わせをますます複雑にするでしょう。

 現在、ITプロジェクトの70%が、失敗に帰しているという統計があります。クラウドの時代になれば、ますます深刻の度を深めることになるでしょう。

 このような事態を受け、プロジェクト管理の質を高めるべくPMBOK/PMPを採用する企業が、増えています。しかし、このガイドラインも、プロジェクト実施以前の超上流、すなわち、課題の発掘やプロジェクトの必要性の認識、ステーク・ホルダーの利害の調整、プロジェクト実施の意思決定プロセスへの対応といった、本来ソリューション・ベンダーの営業やコンサルタントの関わる領域までは、カバーしていません。

 この領域の一部をカバーする目的で、「ビジネス分析の知識体系(BABOK)」が、提唱されています。その有効性を否定するものではありませんが、その専門性の高さは、高度な訓練と経験をつんだコンサルタントの対応領域であり、お客様接点の最前線で、日々忙しく働く営業が採用するには敷居の高いものとなっています。

 日本におけるこのようなビジネスの現状を踏まえつつも、ソリューションをビジネスとするための人材や組織のあるべき姿や基準を明らかにすることは、大変意義のあることだとおもっいます。

 そこで、「ソリューション・ビジネス能力モデル」策定プロジェクトなるものを立ち上げることにしました。対象は、「ITビジネスにおける営業という仕事」です。

 ここで言う「営業」とは、「営業職」と同一ではありません。「営業という仕事」であり、企業における「営業活動」となります。企業によって、営業という仕事は、様々な人が、責任をおっています。営業職の方はもとより、コンサルタント、PM、SEもそうですし、社長も「営業」という仕事をしています。

 「ITビジネスにおける営業という仕事」という、少し広い解釈をしてゆこうと思っています。

 私たちソリューション・ベンダーやシステム・インテグレーターは、お客さまの価値を最大化するために、どのような能力を身につけ、組織としてどう振舞うのか。その目標となる基準を明らかにできればと考えています。

 また、実践のためのノウハウやツールなど、営業の現場で、そして、企業の大小に関わらず、夫々の立場に応じて取捨選択して、本当に使えるものを整備してゆきたいと考えています。

 ご関心のある方は、参加されませんか?

 参加者に制約はありません。企業や組織、立場を超え、夫々の立場でご参加いただければと願っています。

 インターネット上にSNSも立ち上げる予定です。

 ご興味のある方は、メールにてご連絡ください

[緊急のお知らせ]-----------------------------------------------

クラウド・ビジネス戦略策定支援セッションを開催します!

日時: 12月16日(水)10:00-17:00

場所: 東京・九段下

 クラウドの一般論を理解することが目的ではありません。皆さんの会社の事業戦略スタッフの視点で、これからのビジネス戦略、製品戦略に必須の突っ込んだ情報やアイデアを提供します。 

 システム・インテグレータやソリューション・ベンダーの経営者、営業責任者、マーケティング担当者の皆様が対象ですが、情報システム部門の方にもお役に立つと思います。

こちらから、お申し込みいただけます。

開催趣旨 ----------------

 既に多くの企業が、クラウド時代に向けた取り組みを始めています。しかし、その一方で、その具体的な施策に頭を悩ましている方も少なくないようです。

 そんな皆さんを対象に、言葉の断片をつなぎ合わせるだけの解説ではなく、ユーザーが、そして、企業が、クラウドにどう取り組むべきか、そして、そのベンダーは、それにどのような対応をすべきかなど、少し突っ込んだ検討をしてみようと思っています。

 定員が限られています。ご関心ある方は、どうぞ、お早目のエントリーを

内 容 ------------------

1.クラウドを体系的に理解する

 クラウドとその周辺にある言葉の断片を拾い集めても本質は見えてきません。そこで、これらを関連付け、体系的に整理します。また、クラウド・ビジネスを考える上で、関係の深い周辺技術の動向についても詳しく解説します。
・クラウド・コンピューティング体系: 定義と課題
・クラウド時代のリッチクライアント(クラウドとAjaxの不可分な関係)
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・クラウドのアキレス腱、セキュリティ問題とは

2.ビジネスに与える影響と事業戦略について考える

 クラウドの普及が、お客様の意思決定にどのような影響を与えるのか。これに対し、私たちは、どのような対策をとるべきかを検討します。また、クラウドプレーヤー各社の比較や各種統計についても検討します。
・クラウド・ビジネスの動向を整理する
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2009年11月23日月曜日

ビジネス・リーダーを超えて、ビジネス・クリエーターを目指す

 一通りのビジネスの基本動作を心得た中堅のソリューション営業は、次に何を目指すべきでしょうか。

 当然、営業組織やチームのリーダーとして、営業活動を引っ張ってゆく事を自他共に求められるようになります。また、そのような、活動を当して、若手の範となり、彼等の成長を助けてゆくことも期待されるでしょう。

 また、お客さまの課題を探り、ビジネスを掘り起こすことができなくてはなりません。

 自分の会社が、新しい商品やサービスを発表したときには、率先して、それらをお客様の課題に結び付けて、その解決策を提案し、ビジネスにする。そんな行動が、求められるのではないかと思います。

 誰もが、このようなあるべき姿を描き、自分をそこに向かわせようと努力しているのではないでしょうか。

 しかし、ことは、そう簡単なことではありません。誰も、このあるべき姿を思い描きながらも、様々な障害に突き当たり、思うようにそうなれない自分に、あせりや怒り、焦燥を感じている方も少なくないはずです。

 ソリューション営業研修を行うとき、冒頭で、この研修に期待することを伺うと、必ずこのような話が出てて来ます。私は、その志の高さと、自分を過信せず、「まだまだ」という気持ちを持ち続けている皆さんに、熱いものを感じます。

 しかし、私は、あえてこの志を否定したいと思うのです。

 確かに、中堅以上のソリューション営業として、自らビジネスを牽引し、会社に貢献すること。また、部下のよき模範となって、彼らを一人前に育てようとすることが、間違っているというつもりはないのですが、それを自らのあるべき姿と考えることに、疑問を感じるのです。

 このような行為は、しょせん手段に過ぎないのだということ。その手段の先にある、本当の目的。そこに真のあるべき姿があることに気がつかなくてはなりません。

 それは、「世のため人のため」を実現しようとすること。つまり、「いかにすれば、お客様を成功させられるか」を目指すことではないかと思うのです。

 なんだか、聖人君主のようなことを言うようですが、多くの優れた営業は、この意識をしっかりと持っています。

 以前、あるビッグプロジェクト提案しているベテラン営業と話しをしたときのことです。

 彼は、お客様だけではなく、そのお客様が属する業界、ひいては、日本や世界が、どうあるべきかを熱く語ってくれました。

 「このままでは、ダメと思うんですよ。リーマンショック以来、お客様も業界も、価値基準が大きく変わりました。それは、あまりにもヒステリックで、現実を無視しすぎています。だからこそ、このプロジェクトをお客様に提案し、受け入れてもらおうと思っています。そうしなければ、これからのお客さまの未来も、日本の再生もありえないと思っています。」

 彼の勝手の思い込みかもしれません。独りよがりという人もいるかもしれないでしょう。しかし、彼の声は、お客さまの気持ちを動かし始めているのです。

 彼は、その手段にこだわっていません。もちろん、営業ですから、システムに関わる提案がそこに含まれていることは、言うまでもあれリません。しかし、お客様の成功について、お客様もそれを理解し、受け入れてしまえば、手段は、ついてきます。たとえ、その手段が、他のものに変わったとしても、「お客さまの成功」という、あるべき姿が、ぶれなければ、それはたいした問題ではないのです。

 私は、ここに「ビジネス・リーダー」と「ビジネス・クリエーター」の違いを感じるのです。

 「ビジネス・リーダー」とは、お客さまの課題を解決するためのプロジェクトを成功させる指揮官であり、プロデューサーです。もちろん、この役割を否定するつもりなどありません。

 しかし、それは、お客さまの成功という、より高い次元の「あるべき姿」を実現してこそ、意味があるのです。

 お客さまの成功、さらには、その成功を超えるイノベーションを作り出すためには、お客様や社会をもっと良くしたいという、熱い思いと、調べ、考え、自分の意見を持つことが必要です。

 それは、お客や自分の周りに、新しい可能性を気づかせ、結果として、新しいビジネスを引き寄せる力にもなるのです。

 私は、このような人たちのことを、「ビジネス・クリエーター」ということにしています。

 よきリーダーであることは、よきクリエーターのひとつの要素に過ぎません。その先が、あることを理解し、これを実現することにまい進する。

 それこそが、ソリューション営業の目指すべき「あるべき姿」ではないでしょうか。

[緊急のお知らせ]-----------------------------------------------

クラウド・ビジネス戦略策定支援セッションを開催します!

日時: 12月16日(水)10:00-17:00

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1.クラウドを体系的に理解する

 クラウドとその周辺にある言葉の断片を拾い集めても本質は見えてきません。そこで、これらを関連付け、体系的に整理します。また、クラウド・ビジネスを考える上で、関係の深い周辺技術の動向についても詳しく解説します。
・クラウド・コンピューティング体系: 定義と課題
・クラウド時代のリッチクライアント(クラウドとAjaxの不可分な関係)
・クラウドとSOAの組み合わせがSIの今後を変える
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2.ビジネスに与える影響と事業戦略について考える

 クラウドの普及が、お客様の意思決定にどのような影響を与えるのか。これに対し、私たちは、どのような対策をとるべきかを検討します。また、クラウドプレーヤー各社の比較や各種統計についても検討します。
・クラウド・ビジネスの動向を整理する
・ITビジネスへの影響と課題
・想定しうるビジネス戦略

3.自社のビジネス戦略のアイデアを整理する

 1,2の知識を参考に、クラウドへの今後の取り組みや戦略について、各自、整理してみます。
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2009年11月11日水曜日

クラウドでどんなビジネスが考えられるか

クラウドの普及が、システム・インテグレーターのビジネスをどのように変えてゆくのだろうか。今日はその点について、整理してみようと思う。

 クラウドの普及は、モノの販売や開発請負や運用受託などのヒトの提供に関わるビジネスを縮小するであろう事は、以前説明したとおりである。

 しかし、直ちにこのような事態になるかというと、そんなことはないだろう。その背景には、クラウドが本質的に抱えるリスクや課題の存在がある。この点については、別のブログで詳しく解説したので、そちらをご覧いただきたい

 このようなリスクや課題は、ある程度時間とともに解消されるであろうから、クラウドそのものが、普及しないという結論は、早計であろう。

 むしろ、クラウドが、本来持っている魅力、つまり、システム資源についての低コスト、迅速、ダイナミックな調達やアプリケーションの容易な利用などといっとた魅力が勝っており、リスクや課題を解消しようという力学が、強く働くであろう事は、間違えない。

 まさに、この点にこそ、ビジネスの可能性が、存在している。具体的には、

1.クラウド・システムのリスクや課題を補完するサービス
2.クラウド・サービスのインテグレーション
3.SOA化支援サービス

などである。

1.クラウド・システムのリスクや課題を補完するサービス
 運用管理の手間やコストを考えると、電子メールをSaaSに移行したいという企業も多いはずだ。しかし、クラウドのリスクにセキュリティやコンプライアンスが上げられる。このようなリスクを抱えながら、個人情報や企業機密をやり取りする電子メール・システムをSaaSに預けることに抵抗もあるだろう。
 
 そこで、この課題を解消するひつとの手段として、個人認証は、人事システムと連動した自前のシステムで行い、認証を受けたIDのみをSaaS型電子メール・システムのAPIを介して、電子メールのログインを行えばいい。また、添付ファイルは、暗号化され、自社サーバーに保管。そのリンク情報のみを電子メールで送り、別途管理されている復号化のためのキーを使って手に入れる(Gmailを利用しているユニチャームのケース)。

 このような対策により、クラウドのもつ課題を補完することができれば、それは、ひとつのビジネス・チャンスになりうるだろう。

2.クラウド・サービスのインテグレーション
 クラウドの普及は、サービスの多様化を加速することになる。つまり、どのようなサービスを組み合わせれば、業務課題の解決に最適かとなると、これは大変複雑なものになることを意味する。そこには、クラウド上のサービスだけではなく、オンプレミス型のサービスやシステムをも含む、大きな組み合わせも考えなくてはならない。

 その最適な組み合わせを考え、提案でき、構築できる高度なサービス・インテグレーターとしての役割は、必要となるだろう。
 
 また、既存のクラウド・サービスを組み合わせ、お客様専用のサービス、あるいは、顧客視点で使い勝手を向上させるためのインタフェース型SaaSを立ちあけるという可能性もある。

 他にも特定の専門領域に特化したクラウド・サービスを自ら運営し、それを売りにして、お客様の必要とするアプリケーション全体をインテグレーションするというビジネスも存在するだろう。

3.SOA化支援サービス
 クラウドとSOAの関係については、いずれ詳しく述べようと思うが、とりあえず、クラウドの普及は、SOAの普及と不可分な関係にある。

 従って、既存の社内のサービスをクラウドと連携させるためには、既存システムのSOA化というニーズが存在する。

 長年使われ、各社各様に最適化された業務システム。これをクラウドがいかに便利であるからとって、一から作り変えたり、置き換えることは容易なことではない。しかし、クラウドのいいところは、うまく組み合わせて使いたい。

 このような、ニーズに対応する手段が、SOAということてにる。ここにも、かなりのビジネス・チャンスが存在するのではないかと考えている。

 この3つに共通することは、自らが必ずしも、クラウド・サービスのメジャープレイヤーを目指すのではないということだ。

 メジャープレーヤーは、GoogleやAmazonなどにお任せしておき、それを利用しつつ、クラウドのビジネスを考えられないかという視点。

 ご参考まで。

2009年11月3日火曜日

私事で恐縮です・・・


 本日15時58分、初孫が生まれました。体重3225g、身長48.5cmの女の子。母子共に健康です。安心しました。

 いつ生まれるかと、やきもきしていたのですが、満月の今日、無事出産です。助産婦さんに伺うと、「満月と台風の日には、よく生まれるんですよ」とのこと。なるほど、人間もまた自然の一部なんですね。

 末の娘は、21歳。旦那は、22歳の若夫婦。喜びと生活の現実。これから大いに苦労し、悩むこともあるでしょう。しかし、あなたたちの子供は、それ以上に大きな喜びや感動を与えてくれますよ。

 名前は、栞菜(かんな)だそうです。10月の神無月に生まれる予定で、この名前を考えたそうです。残念ながら、少しずれ込んでしまいましたが、本人たちは、大いに気に入っているようで、そのままこの名前にするそうです。

 出産の連絡を受けて、直ぐに病院に駆けつけました。初対面の彼女は、娘の傍らで、真っ赤な顔をして、泣いたり休んだりの繰り返し。赤ん坊とはよく言ったものです。

 新しい世界へ出てきた不安なのでしょうか、それとも、大仕事を終えて空腹なのでしょうか。しかし、よくもこんな小さな身体で、あんなにも大きな声が出せるものです。

 初めてのオッパイ。看護婦さんに介添えを受けながら、娘の乳房に吸い付こうとしています。しかし、どうもうまくゆかない。そんなことを何度か繰り返すうちに、要領をつかんだようです。自分の手で乳房を押さえながら、オッパイに吸い付いて、ぐいぐいと飲んでいます。すごいですよね。よほどお腹がすいていたのでしょうか。なかなか離そうとはしません。これには、感動しました。

 暫くして、お腹がいっぱいになったのでしょう。さっきまで、あんなに泣いていたのに、まったく泣き声も出さず、すやすやと寝てしまいました。現金なものです。

 ひとを泣き声で意のままにこき使い、それでいて、「よかった、よかった」と喜ばせるすべを彼女は、生まれながらに心得ている。たいしたものです。

 初孫を見て、感動するかなぁと期待していました。しかし、それほどでもなかったというのが、正直な気持ちです。ただ、じんわりと、よかった、よかった、という気持ち。そして、壊れてしまいそうな、この小さな身体で大丈夫なのだろうかという不安。なんとも、複雑な思いでした。

 実は、長女26歳も来年の3月に出産の予定です。こちらも女の子だそうです。我が家は、三姉妹ですから、オンナ続きです。だからなんだというつもりはありませんが、なんだか、申し訳ないような気持ちになります。

 まあ、みんな健康であれば、それでいい。そして、彼女たちが、幸せな人生を送れる世の中にするためには、まだまだ、やることはありそうです。がんばらねば・・・

2009年11月2日月曜日

営業の3つのタイプ

 営業には、3つのタイプがある。ひとつは、商品販売型。ふたつ目は、事務処理型。最後は、プロデューサー型である。
 どれが優れ、劣っているかという話しではない。

 商品販売型とは、まず「商品ありき」から、スタートする。団子屋さん、パン屋さんなどは、その典型である。お客様は、味の良し悪しやバリエーションなど、商品そのものが持つ価値や魅力で選択する。営業は、その商品が、他の店と何が違うのか、どれほどおいしいのかなどの魅力を、お客様に伝えることに腐心する。パッケージ・ソフトやハードウェア機器などの販売を手がける企業もこのタイプだ。

 事務処理型とは、お客様に必然的な需要が存在し、滞りなく、お客様からの注文を処理し、コストや納期を守ることが求められる。例えば、大手企業のシステム子会社などが、親会社の仕事をするような場合で、特に売り込みは必要ないが、確実に事務処理や仕様の確定などをこなすことが求められる。

 プロデューサー型は、商品販売型とは対照的に、「商品がない」からスタートする。お客様の要望に応え、最適な商品やサービスを組み合わせ、お客様個別の商品を作る。広告代理店の営業などは、この典型。これといった、特定の商品がない。お客様のニーズを捉え、広告宣伝の効果を具体化。そして、最適な広告宣伝手段を組み合わせ実行する。SIも、このタイプの仕事といえるだろう。

 ところで、IT業界では、商品販売型と事務処理型の営業が、ますます難しくなっている。

 まず、商品販売型。たとえば、サーバーは、ブランドや筐体が違っても、どれも中身は、インテルであり、OSは、Window、データベースは、オラクルかDB2・・・というように区別がない。ネットワーク機器にいたっては、どこもシスコ製品を扱い、たとえメーカーが違っても、できることに大差はない。 オープソフトもやっかいだ。無料なのだから、売上は、あがらない。クラウドになれば、パッケージやサーバーなどを自社で所有する必要がない。したがって、売上げ規模は、縮小する。

 事務処理型も、厳しい現実に直面している。不況の荒波に苦しんでいる親会社からの発注は減少している。それも、仕事量より金額が・・・である。 コスト削減は、親会社としても存続をかけた取り組みである。背に腹は代えられないから、よりコスト競争力のある国内企業に仕事が回る。また、開発や運用のオフショア化、クラウドの利用など、仕事量減少の危機が迫っている。

 親会社からは、「分社の原点に立ち返り・・・」グループ外からの受注比率拡大を、今まで以上に求められるようになる。
 独立系SIerも、多くは、商品販売型だ。ヒトという商品を売っているだけで、新たな付加価値の創造や提案はない。  あるいは、既存のお客様からの仕事に胡坐をかいて、新たな商品開発や顧客の開拓を怠ってきたところも少なくない。これは、事務処理型と大差はない。

 どちらにしても、差別化できる商品や新規案件を開拓できる営業力がなければ、親会社というよりどころもないわけで、ますます厳しい状況に追い込まれている。

 プロデューサー型が、今求められている。この厳しい局面に生き残るためには、特定の商品や特定の会社に頼っては、いられない。

 お客様の課題を起点に、お客様個別のオーダーメイドの組み合わせをつくり、それを売り込む営業力なくして、生き残ることはできないだろう。

 プロデューサー型の営業を育てることはたやすいことではない。また、商品販売型や事務処理型が主体となっていた営業組織の場合は、人材の育成だけではなく、組織運営のあり方も代えてゆかなければならないだろう。

 そのあたりについては、改めて紹介させていただこうと思う。

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2009年10月30日金曜日

案件を発掘するということ

 先日の「産地偽装型クラウド」という記事を掲載したら、「ならば、産地偽装と本物とは、どこで線引きすればいいのか。」というご指摘をいただいた。

 なるほど、もっともである。ということで、「クラウド・コンピューティングの定義」という記事を別のブログ・サイトにアップしました。ぜひ、ご覧ください。

 さて、この定義ですが、アメリカの標準規格を司るお役所「米国商務省・国立標準技術局(NIST:National Institute of Standards and Technology)」が、公開しているものですが、なぜ、日本のお役所は、こんなことができないんでしょうかねぇ。

 まあ、IT先進国を自認する米国のプライドもあるのでしょう。しかし、まだまだ、あいまいなところもある「クラウド・コンピューティング」なるものを、いち早く定義し、世間の混乱を収拾しようという態度は、立派なものだと思います。

 内容的には、特に目新しいものではありませんが、世の中の大勢をうまく整理しているなぁと感じますね。

 基本的に彼等の態度は、「とりあえずこう決めます。合理的な理由があれば、柔軟に変えますよ。」といった姿勢。これに対し、わが国のお役所のスタンスは、上から目線とでも言いましょうか、「一度決めたらそう簡単に変えないので、しっかり熟成してから、定めます。」というもの。

 どちらが優れているという一般論は別にして、ITの世界については、やはり前者が、理にかなっているように思います。

 とにかく、変化が早い。クラウドという言葉も、グリッドやオンデマンド、ユーティリティとどう違うのか。はやり廃りがあるわけで、世の中の意見が定まらないうちに、新しい言葉がでてくる世界ですからね。

 お客様への提案についても同じです。

 とにかく、「こうでなくちゃいけない。」と言い切る。もちろん、あてずっぽうのいい加減じゃなくてですよ。

 お客様について、調べ考え、仮説を立てる。そして、ITの常識や最新トレンドについての知識もなくちゃいけない。

 そういうものを持って、このお客様が、成功するためには、こうしなくちゃいけないという、自分なりの見解を持つこと。それをお客様にぶつけてみるんですよ。

 もちろん、お客様からは、いろいろと反応もあるでしょう。「なるほど、確かにそうだよなぁ。」といってもらえれば、御の字ですが、「なに、生意気なことをいってるんだ。」といわれるかもしれない。

 しかし、どちらにしても、話しのきっかけが生まれるわけだし、こちらも真剣に考えているから、そう簡単には、引き下がらない。

 そんな態度で、じゃあどうすればいいのかと、一緒になって当初の仮説や定義に修正を加えてゆく。

 これが、案件を発掘するということですよ。

2009年10月26日月曜日

クラウドについての「5つの質問」

 前々回、クラウドについて、皆さんに質問をしておきながら、回答を出さずでは、信用問題です。ということで、今日は、その回答を・・・

[質問1]仮想化とクラウドの違いについて、説明してください。

 クラウド・コンピューティングを別の言葉で置き換えるなら、「無人コンピューティング」かも知れません。もちろん、クラウド・システムそのものを運用するには、人ではかかります。しかし、クラウドを利用するユーザーの視点に立てば、自分達で使うシステム・リソースは、実質無人で運用されているといえるでしょう。

 従来のように自社に運用要員を置く必要はなく、外注に依存するわけではありません。運用に関わる業務をシステムに任せることができます。例えば、必要に応じてリソースを割り当てる機能、バックアップやリカバリー、故障の修復や脅威への防御などは、クラウドの世界では、システム任せです。そうしなければ、膨大なユーザーの要求に対応することは、できません。

 リソースの割り当てが、ダイナミックにできるということは、仮想化が必須となります。しかし、それだけでは不十分で、運用の自動化が、併せて必要となります。

 つまり、クラウドとは、仮想化と運用の自動化の組み合わせが、必要なのです。仮想化だけでは、クラウド・システムは、構成されないと考えるべきでしょう。

 ちなみに、この運用の部分をいまだ人手に依存し、データセンターのシステム・リソースを仮想化して提供し、これをクラウド・サービスとしているところも少なくはありません。

 それが、まちがっいているとはいいませんが、GoogleやAmazonなどのサービスと比較すれば、コスト競争力、スピード、人的介在によるミスのリスクなどで、不利な状況です。そう考えると、完成度は低いといえるでしょう。

[質問2]SaaS、PaaS、IaaSの関係について、説明してください。

 下の図をご覧ください。


 SaaSとは、ユーザーから見れば、アプリケーションに見えます。PaaSは、ミドル・ウェア、IaaS/HaaSは、OSに見えます。ちなみに、IaaS/HaaSの代表であるAmazon EC2で利用できるOSは、Linux,Open Solaris, Windowです。

[質問3]クラウド、SOA、BPMの関係について説明してください。

 クラウドのあるべき姿は、特定のクラウド・サービスのみに依存するのではなく、夫々の機能や特長を活かして、サービスを組み合わせ、自社に最適なシステムを構築できることです。

 言うなれば、C to C(Cloud to Cloud)システムの構築を可能にすることです。そのためには、システム機能を部品化し、インターフェイスを相互に連携できるようにすることが必要です。これは、SOA(Service Oriented Architecture)の考え方です。

 また、システム機能を部品化するということは、その前提となるビジネスをプロセスに分解し、それを整理することが必要となります。つまり、分解されたプロセスが、システム部品に対応するわけです。これは、BPM(Business Process Management)の領域といえるでしょう。

[質問4]クラウドとオンプレミスを比較し、システム構築、アプリケーション開発、システム運用において、どのような違いがあるのでしょうか?

こちらについては、以下の図をご覧ください。たぶん言葉で説明するまでもないでしょう。





 インフラの構築やその運用に関わる業務。あるいは、アプリケーション開発を請け負う業務には、少なからざる影響が生じるはずです。

[質問5]マイクロソフトとグーグル両者のクラウド戦略の違いについて、説明してください。

 さて、これは、かなり奥が深いし、不謹慎を覚悟で申し上げれば、かなりおもしろい話です。こちらについては、改めて別の機会に話しをさせて頂きます。

 そうそう、明日のセミナーでも、その話はさせて頂きます。よろしければどうぞ・・・

2009年10月21日水曜日

「自分の知ってること」を「お客様の知りたいこと」に翻訳する

 クラウドの特徴を3つ挙げろといわれたなら、営業であるあなたなら、なんと答えますか。私なら、以下の3つをあげるでしょう。

1.OSはなくならないが、OSを意識しなくてもいい
2.使いたいときに、すぐに必要な構成を用意し、使用できる
3.ユーザー規模の増減、システム・キャパシティを意識しなくてもいい

 いまさら「仮想化」、「運用の自動化」、「マルチテナント」などといっても、お客様には、「ア~そうですか」といわれるのがオチ。お客様だって、この程度のことは、既にご存知のはず。ですから、ちょっと違う視点で、説明してみる。そうすれば、「えっ?それどういうことです??」となって、話がさらに深まるはずです。

 気の利いた営業なら、その程度の薀蓄は、働かせるべきでしょう。では、どのように「気を利かせる」のか・・・「自分の知ってること」を「お客様の知りたいこと」に翻訳することです。

 確かに、「仮想化」、「運用の自動化」、「マルチテナント」も間違えではありませんが、それは、「製品仕様」みたいなものです。しかし、お客様の立場から見れば、「だから、なんなのよ?自分達の使い方が、どう変わるの?」ということになります。

 「製品仕様」だけをお客様に説明し、それがどのような便益をお客様にもたらすのかについては、どうぞ、お客様自身でお考えくださいでは、営業としての仕事をしていない。私が、お客様の立場なら、早々にお引取り願うと思いますよ。

 自分の知ってる言葉を話すだけなら、なんの苦労もいりません。しかし、それは、必ずしも、お客様の知りたいこととは限りません。

 確かに、営業ですから、仕様や特徴について、メーカーの視点から理解すること、言葉を知ることは、必要です。しかし、それをそのままお客様に伝えているようでは、営業としての存在価値などありません。

 製品の仕様や特徴だけなら、ホームページを見ればいいわけですから、わざわざ時間を割いてまで、営業さんの話しを聞く必要などありません。

 「お客様の立場に立つ」とは、知ってることを伝えることではなく、お客様の知りたいことを伝えることです。そこに時間を割き、考え、資料を作る。だから、営業が必要なんです。

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10月22日(木) または、10月27日(火) 15:00~17:00 東京・九段下 

  ITソリューション・ベンダーやSIerの人事・採用担当の皆様を対象としたセミナーです。これからの時代の流れの中で、2010年度採用予定の新入社員をどのように育てて、戦力としてゆくのか。

詳しくは、こちらをご覧ください。
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2009年10月12日月曜日

「産地偽装」型クラウド・コンピューティング

 ITベンダーは、いま一斉にクラウドの大合唱です。しかし、よくよく中身を覗いてみると、いままでのASPやデータセンターのサービスに形容詞として「クラウド」をつけているだけのもの。仮想化を「クラウド化」などと称し、中身は同じといった「産地偽装」まがいのものも少なくないようです。

 外国産を国産といっているみたいなもので、何も変わっていない。残念ながら、ITの世界にJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)は、ないので取り締まりもできません。こんなことをやっていると、いずれはお客様も疑心暗鬼になり、「クラウド」に見向きもされなくなるでしょう。

 「クラウド」という、買う側にとっても、売る側にとっても、大きな変革のチャンスを、みすみす逃してしまいかねません。

 ITベンダーは、もっと真摯になって、この「クラウド」を考えるべきです。そして、自らの責任を自覚すべきです。そして、その可能性と限界について、正直に伝えるべきです。

 しかし、ITペンダーの中には、「クラウド」を「新しい・・・」とか、「次世代の・・・」程度の形容詞としてしか使っていない。これでは、産地偽装といわれても仕方がない。お客様もその価値や魅力を感じないでしょう。

 先日、ある知り合いのITベンダーが、「自社のパッケージをクラウド型サービスで提供する」という記事が掲載されていました。

 当事者に「いままで提供していたASPサービスとどう変わるのですか?」と質問したら、「サーバーを仮想化したからクラウド」という答え。

 しかし、それによって、いったいサービスの中身がどう変わるのか。ユーザーは、どんな便益をこうむるのかと聞いてみると、どうもはっきりしない。結局は、自社サーバーの台数を減らし、運用コストを削減することが目的とのこと。使う側にしてみれば、何の変化もない。これを「クラウド」と称しているわけで、まさに「産地偽装」の詐欺行為みたいなものです。

 ここで質問です。

[質問1]仮想化とクラウドの違いについて、説明してください。
[質問2]SaaS、PaaS、IaaSの関係について、説明してください。
[質問3]クラウド、SOA、BPMの関係について説明してください。
[質問4]クラウドとオンプレミスを比較し、システム構築、アプリケーション開発、システム運用において、どのような違いがあるのでしょうか?
[質問5]マイクロソフトとグーグル両者のクラウド戦略の違いについて、説明してください。
 
 さて、いかがですか?あなたは答えられますか。

 この程度は、IT営業の常識です。もし、この答えが分らないのなら、「クラウド」を売るべきではありません。お客様は、「クラウド」の価値を享受できないでしょう。そして、お客様のIT戦略を誤らせてしまいます。

 回答は、次回・・・

 そうそう、我がITソリューション塾に参加されている皆さんなら、即答ですね(笑)!

2009年10月9日金曜日

「ビジネス開発力」と「システム開発力」

 SIerにとってシステム開発力は、商品そのもの。だから、エンジニアを対象とした研修制度を整えている企業も少なくない。研修制度とまではいかないが、外部の技術研修にコストをかけ、技術者の育成を図っているところも多い。

 しかし、いくら立派な商品がそろっていても、それを売るための能力育成となるとどれほどの手間とコストをかけているだろうか。

 以下の表をご覧いただきたい。この表は、ITベンダーが、お客様をどれだけ理解しているかを、ユーザー企業、ITベンダー企業の双方に尋ねた結果である(情報サービス産業白書2009を参考に作成)。

 この表を見ると、ユーザー企業、ITベンダー企業の双方とも、約6割が、お客様の課題を理解していない、解決策を提示できていないと認識している。

 言うまでもないが、お客様の課題を把握できずして、ビジネス・チャンスを手に入れることはできない。

 こういう話をSIerの経営者や営業幹部にすると、必ずといっていいほど、「そうなんですよ、営業をもっと強化しなければならないと考えているんです。」というコメントが返ってくる。ここ最近は、特にそんな声が増えてきたように思う。

 しかし、何か具体的な手を打っているかというと、何をどうすればいいのか分らないままに、結局は何もしていないという企業が大半だ。

 私は、最近「営業力」ということばを意識して使わないようにしている。というのは、「営業力」というと、「営業職の人の能力」と受け取られてしまう場合が多いからだ。

 営業力とは、「営業という仕事」の能力である。この「営業という仕事」は、なにも営業職ばかりがやるものではない。経営者、SE、コンサル、PMも「営業という仕事」をしている。

 だから、「営業力」ではなく「ビジネス開発力」と言い換えている。

 「ビジネス開発力」とは、「システム開発力」を売る仕事である。そのためには、3つの要素を満たす必要がある。

 ひとつは、「知識」。ITばかりではない。お客様の業務や業界、社会経済のこと、人脈や組織の力関係などへの理解である。

 ふたつ目は、「スキル」。プレゼンテーションやコミュニケーション、ドキュメンテーションやファシリテーションといった能力である。

 最後は、「プロセス」。仕事を進める手順である。お客様を開拓し、課題を明らかにし、提案して受注に至る一連の仕事の手順である。

 「知識」とは、何を売るかを考える元となる。つまり、戦略立案の基盤となるもの。それに対して、「スキル」は、お客様との合意形成や受注に至る一連の仕事の過程を効率よく、確実に進めるための手段である。つまり、「スキル」が高ければ、お客様への説明や交渉が、スムースに行え、仕事の時間短縮ができるからだ。

 いくら「知識」があっても、「スキル」がなければ、うまく相手に伝わらない。一方、「スキル」はあっても「知識」がなければ、お客様は、魅力を感じないだろうし、納得もしないだろう。

 この「知識」や「スキル」を効果的に使うためには、タイミングが重要。それを知るためには、「プロセス」を理解しておかなくてはならない。

 顧客開拓から、課題発掘、提案、決済、受注に至る仕事の手順には、定石がある。その定石を理解し、夫々のプロセスで何をすればいいかが分っていれば、仕事に無駄がなく、確実に進捗を進めることができる。

 システム開発には、エンジニアリングという考え方がある。作業の手順を予め明らかにし、チェックポイントを設けて、進捗や品質、コストを評価しながら、作業進めている。

 「ビジネス開発」にも同様にエンジニアリングという発想を取り入れることができる。

 「営業という仕事は、人を相手にする仕事だから、計画や管理、予測は難しい。生まれ持った個人の才能やセンス」とあきらめている人も多いが、決してそんなことはない。

 私は、この「プロセス」を4つのフェーズと28のプロセスに整理してみた。今まで、数百人の研修受講者に説明しているが、基本的なところでは、大きなずれはない。ただ、一部、官公庁やパトナー販売となると、ユーザーを相手にする場合とは違うプロセスが必要となるので、これは例外といえるだろう。

 このように、「ビジネス開発力」とは、「知識」と「スキル」と「プロセス」を使いこなす能力である。

 オフショアが普及し、クラウドが当たり前になりつつある時代。どんなにすばらしい「システム開発力」という商品を抱えていても、今までどおりのやり方で、ビジネスが向こうからやってくることはない。

 新しい時代の潮流に踏み込んで、自らビジネスを開発してゆかなければ、いずれ流れに飲み込まれてしまうだろう。

*** こんなブログをはじめました・・・

2009年10月5日月曜日

「コスト削減」の限界 次の一手は、とこにあるのか?

 四半期の締めが終わり、ため息交じりの声が聞こえてくる。

 ニュース記事を見れば、世の中の景気指標は、徐々にではあるが、好転の兆し。しかし、IT営業に話しを聞くと、どうも実感とはかけ離れている。

 確かに「案件」は、増えてきたという。しかし、数字がついてこない。では、なぜ「案件」が、増えたのか?

 話しを聞いてみると、相談は持ちかけられるが、かならず競合他社との比較案件。今までなら、事情を良く知っている付き合いの長いところだけに声をかけていたお客様でも、最近は、必ず相見積りとなる。

 お客様も切羽詰っている。経営サイドからは、少しでもコストを下げるようにと求められる。それに対応できなければ、自分達の首も危ない。背に腹は、代えられない。結局、いろいろなITベンダーやSIerに声をかける。見かけ上の「案件」が増えることになる。しかし、数字は伴わない。

 ストック・ビジネスは、不況期に強いといわれている。しかし、そのストック・ビジネスさえも、マイナスに転じ始めている。
 リーマン・ショック直後は、新規開発をストップすることで、即効性のある支出削減策が実施された。その結果、委託業務は激減し、新規の請負が、ストップした。

 リースが満了してもリースを延長して機器を延命する企業も少なくない。当然、ハードウェアやパッケージ・ソフトの新規売上が減少する。

 しかし、この時点では、まだ保守やライセンスなどのストック・ビジネスは、すぐには数字に表れてこなかった。
 「新規」はカットした、今度は、「既存」である。無駄(?)なハードウエアを減らし、ライセンスや保守料金も削減する。設備を統合し、運用負担を減らす。見直してみると、意外と使われていないハードやライセンスは少なくない。仮想化など、難しいことを考えなくても、相当数のサーバーを減らすことができる。

 結果として、ストック・ビジネスも時間差で、マイナスに転じ始めたようだ。
 「コスト削減」。この強迫観念は、景気回復後もしばらくは、トラウマのごとく、お客様の意思決定を支配し続けることになるだろう。

 ならば、これを逆手にとって、ビジネス・チャンスを築くしかない。5%や10%などという、みみっちい話ではない。1/2、1/3といった、提案をできないものだろうか。

 ただ、既存のシステムを前提に考えれば、無理である。SaaSやPaaSも、選択肢に加え、お客様が、それは無理でしょう・・・と言わせるぐらいの、思い切った発想の転換を提案すること以外、生き残るすべはない。

 もうひとつ大切なことは、コスト・センターではなく、プロフィット・センターに果敢にアプローチすること。

 コスト・センターとは、一般的なIT部門や総務部門など、与えられた予算内でサービス・レベルの維持、向上を求められる組織。彼らが、この要請に応えるためには、「コスト削減」しか、選択肢はない。

 一方、プロフィット・センターは、「投資対効果」で、考える。事業部門であり、経営者である。今、新しいビジネスを切り開こうとするのなら、彼らに直接アプローチするしかないだろう。

 お客様の業務、そして、その業界についての理解、ITのトレンドやその戦略的活用。その考察なくして、まともな話などできるはずはない。  また、業務の課題を整理する力。それを、ITで解決するための企画構成力と提案力も必要になるだろう。
 どうすれば、「コスト削減」ができるかを考え、そのためのソリューションを用意すること。IT部門にアプローチするためには、必要な武器である。しかし、それだけでは、限界がある。

 また、ITのコスト削減だけで、事業部門や経営者に彼らに直接アプローチすることはできない。というのは、これは、彼らにとっては、自分の管轄外であり、検討の主導権を握る立場にはないからだ。

 改めて、自分たちの営業力を問い直してみてはどうだろう。本当に事業部門や経営トップに直接切り込める力が自分たちにはあるのだろうかと。それは、技術力でもなければ、コストの安さでもない。お客様の業務や経営について考え、課題を整理し、それを提案に結びつける力である。

 経済指標が、たとえ元に戻っても冷え込んだ心は、容易には変わらない。そんな彼らの心に、新しい取り組みへの火種を注ぐことができなければ、ビジネスは、生まれない。その相手は、IT部門ではない。

 景気がいいときは、IT部門で仕事ができた。しかし、これからしばらくは、そうはいかない。技術力、コストで勝負するだけではなく、業務革新を提案する力なくして、ビジネスを大きくすることはできない。

 その取り組みは、一朝一夕でできるものではない。
  
 
 
 
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2009年9月27日日曜日

メインフレームを知れば、クラウドが見えてくる

 クラウド・コンピューティングは、何を目指しているのだろうか。その答えは、メインフレームにある。

 「クラウド・コンピューティングとは、オープン・システムのメインフレーム化」といってもいいだろう。

 クラウドが、以下のような技術要素の集大成であることを考えれば、小職の暴言も、多少はご納得いただけるのではないだろうか。
  • コンピューティング資源の仮想化
  • ストレージの仮想化
  • 運用の自動化
  • プロビジョニング
  • 高可用性
  • 負荷の最適化(負荷管理機能)
  • マルチ・テナント
  • ・・・
 1964年にIBMが、システム360という汎用コンピューターを世に出した。ここから、メインフレームの歴史が始まった。その後、1970年にシステム370が出現し、仮想化の進化が始まった。

 当時のコンピューターは、大変高価なものであり、一台の機械を大勢が共有することが前提となっていた。そのため、少ないシステム資源を公平かつ便利に使ってもらうために仮想化は、不可欠な機能となっていた。

 利用者の個別のニーズに対応して、必要なシステム資源を最適配分するための技術として用いられたのである。

 また、処理特性の異なるバッチ系とオンライン・リアルタイム系に対して、一定のサービス品質を維持しながら負荷の最適化を図るロード・バランシング機能も進化した。

 また、リソースの必要量に応じたプロビジョニング、基幹業務を支えるためのノンストップ・システムの追求、そして、自動運用機能の追及による運用負担の軽減を目指してきたのが、メインフレームである。

 しかし、メインフレームは、その高額さ故に敬遠され、UNIXやPCをベースのサーバーへと、その地位を譲り渡すことになった。

 しかし、ここにきて、今大きな変化が訪れている。

 PCサーバーの取得コストは、毎年劇的に下がっている。そのため、アプリケーションあるいは、機能単位にサーバーを導入した。その結果、多くの企業が、必要とする処理能力をはるかに超えるPCサーバーやその周辺機器を所有する事態となっている。

 また、基幹業務への適用も増えているため、可用性の確保も重要な課題だ。そのため、冗長化により、ますますシステム資源が、肥大化し、TCOの拡大に拍車をかけている。

 また、CO2削減が、CSR(企業の社会的貢献)という意味合いから、CSD(企業の社会的義務)となりつつある中、システム資源の2割程度しか使われていない実態を何とかしなければという機運も生まれつつある。

 その解決策が、仮想化であり、運用の自動化であり、マルチテナントであるといった、クラウドを実現する要素技術の活用であるといえるだろう。

 つまり、その行き着く先が、クラウド・システムということになる。

 しかし、以前のブログでも紹介したが、オープン・システムを前提としたクラウドは、いくつかの課題を抱えている。
  • 単体で信頼性の低いPCサーバーを冗長化により可用性を高めた結果、システムが複雑化して、運用負担が増大すると共に、システム全体の信頼性の低下も招いている。
  • 仮想化や運用の自動化を実現するために異なった企業やオープンソースのミドルウェアを導入。単体での完成度は上がっても、全体の組み合わせに対する信頼性や責任の所在は、逆にあいまいになってしまっている。
 その観点から見ると、メインフレームは、この上記、ふたつの課題を解決している。その40年を超える歴史の中で、信頼性を追求し、ノンストップを当然とした設計思想を貫いてきた。また、仮想化や運用の自動化も一社が、一貫して開発し、保証してくれる。

 つまり、メインフレームは、それ自体、「クラウド・マシン」として進化してきたといえるだろう。

 IBMは、2000年にz/Linuxのサポートを正式に表明し、EBCDIC以外のコードでも利用できるオープン・プラットフォームとなっている。意外と知らない人も多いが、Linuxコミュニティの相当数は、IBMのエンジニアであるといわれている。

 メインフレームの大きな魅力のひとつが、負荷の最適化を管理する機能だ。

 オンライン系のプログラムが単独で稼動している場合に良好なパフォーマンスを発揮していても、裏でバッチ系プログラムを走らせたとたんに、オンライン系プログラムのレスポンスタイムが極端に悪化する。これは、プロセッサやI/O帯域などのハードウェア資源の不足のためであったり、複数アプリケーション間の資源のバランスを適切に調整できないためである。

 これに対処しようと、オンライン系プログラムの優先順位を単純に上げても、バッチ系プログラムが、いつまで経っても完了しないという現象が生じることがある。これをスターベーションという。

 メインフレームでは、このような事態が発生しないように、各プログラムのパフォーマンス目標(レスポンスタイムやバッチの完了時間)を設定し、そのパフォーマンス目標を可能な限り満たせるように、優先順位を動的に調節するといった「ワークロード管理機能」が、OSレベルで実装されている。

 そのため、一台のメインフレーム上に数百や数千といった仮想マシンを同時に動かしてもQOSを保証することができる。これをPCサーバーで実現することは、不可能だ。

 確かにPCサーバーを単体でみるとTCA(取得コスト)は、安い。しかし、クラウドを構築するとなるとTCO(所有コスト)は、むしろ高くなる。ましてや信頼性や可用性についての不安は、払拭できない。

 私は、決して「メインフレーム」を無条件に推奨するものでない。しかし、「メインフレームは、レガシー(過去の遺物)」という先入観は、捨て去るべきであろう。メインフレームは、明らかに時代に対応して進化し続けている。クラウドの時代と叫ばれている現在、あらためて、メインフレームを冷静に見直してみては、どうだろうか。

 かつて、ベストセラーとなった徳大寺有恒氏の著「間違いだらけのクルマ選び」に、「車を買うならまずベンツを見ろ」と書いてあった。車のあるべき姿がそこにあるから、それを基準に車を選べば、間違えはないという話である。

 メインフレームが、コンピューター・システムのあるべき姿かどうかは別としても、今、クラウド・コンピューティングが目指している理想は、それに近いことは、間違えない。

 クラウドのビジネスを考えるとき、メインフレームの目指してきたものを見ると、その本質が見えてくる。また、お客様が、プライベート・クラウドを求めているとすれば、メインフレームによるクラウド(?)も選択肢として考えてもいいのではないか。そちらのほうが、可用性と信頼性は保証され、TCOは、大幅に削減できるだろう。

 クラウドとメインフレームは、形こそ違うが、その狙いや思想は、共通している。改めて、歴史的進化のスパイラルを見せ付けられているようだ。

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メインフレームもオープンも、大切なのは、本質
ソリューション営業塾は、ITの本質を知るための講座です。

 ・10月6日(火) 開始 12月15日(火)終了
 ・毎週火曜日の18:30~19:30
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2009年9月23日水曜日

これからの営業に求められる2つの力

 機能や性能だけで商品を選択するのなら、営業は必要ない。ECサイトで購入するか、コールセンターに電話をすればすむ話しだ。

 サーバーやノートPC、ネットワーク機器なら、複数社の金額を比較しながら、もっとも安いものを選ぶことができる。

 今の世の中、インターネットで検索すれば、大概の情報は手に入る。営業にたずねるまでもない。なまじ、営業などに声をかけると、自社製品の自慢話を聞かされ、公平で客観的な商品比較ができなくなってしまう。

 また、今なら特別割引があるからと急かされ、こちらの都合でことをすすめることができない。

 ならば、すべてを決めた上で、価格や納期を確認するためにだけ、営業に声をかけるのが、もっとも効率的な営業の使い方だ・・・

 あなたのお客様は、こんなふうに考えてはいないだろうか。

 私たち営業は、どこに存在価値を見出せばいいのだろう。見積りや注文書の運び屋、トラブル処理係、それとも、代金の督促をすることなのだろうか。
 
 クラウドの時代になれば、アプリケーションは、Webサイトで、必要な機能を選択し、買い物カゴに入れればそれで済む。サーバー環境を手に入れたければ、CPU能力、ストレージ容量、OSの種類を選択し、発注ボタンを押せば、数分後に使えるようになる。

 こうなると、営業は何をすればいいのだろうか。

 私は、営業という仕事は、カウンセラーの仕事に似ているのではないかと思っている。カウンセラーとは、「何らかの問題を抱えている人から相談を受け、それに適切な援助を与える職種(Wikipedia)」ということらしい。

 皆さんのお客様が、指示された仕事をこなす限りにおいては、営業の仕事は、単なる事務処理だけである。交渉といっても、決められた範囲での値引きや納期の調整程度であり、なんら付加価値を生み出すものではない。

 しかし、お客様がそんな仕事ばかりをしているわけではない。

 IT部門であれば、経営者から、一層のコスト削減を求められ、さてどうしようかと、頭を痛めている場合もあるだろう。また、サーバー台数が増え、運用の負担がますます重くなるが、予算は削減しろといわれている。どこにボトル・ネックがあり、どう対処すればいいのかを、整理できずに困っているかも知れにない。

 経営者であれば、新たな事業に進出するために、ITを効果的に使って、競合優位を図りたいと考えているかもしれない。しかし、その具体的な方策を見出せないでいるかもしれない。

 こんなとき、営業であるあなたは、お客様のよき相談相手となって、課題を整理し、その解決策を見出すお手伝いができるだろうか。

 それは、こちらの一方的な押し付けであってはいけない。お客様が、課題や現状を整理し、目的や目標、途中のマイルストーンを設定するお手伝いをすることが第一だろう。

 そんな、お客様の整理整頓を援助するのが、カウンセラーの仕事である。

 お客様が、自分で整理整頓し、自分で課題を認識し、自分で解決しようという意思を持たなければ、たとえこちらがどんなにすばらしい(と勝手に思っている)解決策を提示しても、受け入れてはもらえない。

 お客様の自発的な行動を促し、自ら解決したいという気持ちにならなければ、ビジネスにはならない。

 また、クラウドが普及すれば、その選択肢はますます多様化し、その組み合わせもますます複雑になる。

 そんなお客様に、お客様の価値を最大化するための選択肢を提示することも、カウンセラーの役割である。

 お客様の課題を整理整頓し、お客様に自発的な取り組みを促す力。急速に変化するITトレンドの要点と課題を理解し、その時点で最適な選択肢を提示できる力。

 このふたつの力がなければ、営業はいずれ、ECサイトに置き換えられてしまうだろう。

 あなたは、大丈夫ですか?

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常識のない営業。お客様には、そうは思われたくありませんよね。

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2009年9月17日木曜日

「わかりやすさ」の3要件

 「わかりやすさ」とは、なんだろうか?自分なりに心がけていることをご紹介しよう。

 まずは、「3」。これには、結構こだわっている。3つにまとめると、わかりやすい。

 例えば、セミナーやブログのタイトルの場合は、「クラウドの3つの要件」、「顧客満足の3段階」、「売上拡大のための3つの原則」・・・

 お客様との打ち合わせの出だしは、「本日、ご相談したいことは、次の3点です。まず一つ目は、・・・」・・・

 何か相談をされたときの最初のひと言は、「それは、3つの理由があると思いますよ。例えば、・・・(3つの理由がそのとき思い浮かばなくても、まずそう切り出して、話しながら考えます(笑))」・・・

 「2」では、どうも足りない感じ。「4」では、多すぎる。どうしても、「3」に収まらなければ、「5」にすることで、何とか落ち着かせている。「5」は、次善の策としては、ありですね。

 なぜなのか、理由はわからないのだが、「3」は、とても落ち着き、すっきりと記憶に定着する。

 話しを聞いて、物事を理解しようとするとき、人はまず、この人は何を言おうとしているのだろうかと、自分なりに目次を作る。つまり、話しを受け入れる引き出しを用意するということ。

 そして、その目次に従って、話が進むと、その都度、その引き出しを開けて、話しをそこに収めててゆく。そうすると、非常に安心感があり、難しい話でも、記憶に残りやすい。

 その記憶の引き出しの数が、「3」なのではないかと、私は、考えている。

 次は、「結論は、最初」。理由や背景は、「結論」の後に追加する形。

 例えば、提案を説明するとき、「これは、御社の運用コストを1/2に削減するための提案です。具体的には、・・・」・・・ 

 トラブルに際して、「なんとしてでも、30分以内に復旧したい。どうすればいいだろうか?」・・・

 見積りを依頼するときは、「50万円の予算しかありません。その範囲で、できることをご提示いただけませんか?」・・・

 結論に魅力があれば、理由を聞きたくなる。しかし、結論に魅力を感じなければ、話しを聞いても時間の無駄。そう思いませんか。

 あなたがユーザーで、営業が、商品の説明に来たと思ってください。理由や背景を、ぐだぐだと最初に語られると(自己紹介が長いのもうんざりですが・・・・)、「・・・で、結論は、何なんですか?」と言いたくなりませんか?

 結論を後回しにしているときは、自信がないか、相手を騙そうとしている、そう思っても、いいかもしれませんね。

 結論が最初に見えない話しは、不安なんですよ。その不安が、相手の思考に雑音を与える。雑音が多いから、相手の話の要点が、すんなり理解できない。つまり、わかりにくいということになる。

 最後は、「美しさ」。たとえ同じ内容でも、美しくなければ、見たくないし、聞きたくない。

 先日、ある自治体の新庁舎建設に当たり、LAN工事の提案コンペがあった。その審査を任された。いくつかの評価基準を作り、それに対応して評価した。予算や要件は、詳細にRFPとして事前に提示されている。最終的に3社に絞り込まれたのだが、見事に機器構成や作業内容は、同じである。当然といえば当然なのだが、実によくそろっている。

 しかし、決定的な違いがあった。あるベンダーの提案資料だけが、実に「美しく」作られていた。

 表紙のデザイン、各ページのレイアウトやフォントの統一、美しくわかりやすい図表、要約(結論)、概要、詳細へと展開される目次構成・・・メリハリが利いていて、とてもわかりやすいドキュメンテーションだった。この営業さんは、きっと私の研修に参加したに違いない(笑)と思うくらい

 こうなると、気持ちは、この提案に傾いてしまう。「内容で判断する」の原則は、意識していた。しかし、他社の「内容」の些細なアラが、どういうわけだか、気になってしまう。それが心情というものだ。

 評価項目に「ドキュメンテーションのわかりやすさ/美しさ」という項目はなかったが、結局は、美しい提案書を提出したところが、最高点となった。

 しかし、これには、明確に理由がある。見た目が美しいということは、相手にできるだけ負担をかけず、訴求点や仕事の内容を間違えることなく、確実に伝えようという態度の現われと見る。つまり、相手の立場を慮っての行為であり、こちらが仕事をお願いするに当たり、双方のコミュニケーションがうまく行くであろう事が期待できる。

 これは、一緒に仕事をする相手の条件として、ととも大切なことなのです。


 「わかりやすさ」とは、相手への思いやり。自分が伝えたいことではなく、相手が知りたいことを伝えること。相手がどう思うか、どう感じるかを想像し、それに対処することなのです。

 伝えたという自分の満足ではなく、伝わったという相手の真実が大切です。つまり、相手への思いやりの気持ちが、「わかりやすさ」の心なのだと思います。

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クラウドの3つの要件を、お客様に説明できますか?

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2009年9月15日火曜日

信頼をかち得る条件

 組閣が進んでいるようだ。誰が、どこの大臣になるかは、われわれ庶民のはかり知ることではないが、政権交代に寄せる期待に、是非とも応えていただきたいと願うばかりである。

 山本七平氏の著「論語の読み方」に「『由(よ)らしむべし、知らしむべからず』の曲解を正す」という一節があった。

 「由らしむべし、知らしむべからず」とは、「民には、なにも知らせてはならない、信頼させて、だまってついてこさせるべきだ」と解釈され、戦時中の日本になぞらえ、批判されてきたと語っている。

 しかし、正しくは、「民衆からは、その政治に対する信頼をかち得ることはできるが、政治の内容を知らせることは難しい。」ということであるという。

 山本は、多くの人がこれを誤って解釈しているのではないかと指摘している。

 なるほど、そういわれると、自分もまた前者の通俗的解釈で理解していた。恥ずかしい限りである。

 この正しい解釈で、改めて考えてみると、まったくその通りだなぁと思うのは、私だけではないだろう。

 確かに、どのようなプロセスで政治が進められているのかを説明されても、その当事者でもなければ、専門家でもないわれわれにとっては、全体を正確に理解することは難しい。しかし、政治に信頼があれば、たとえその内容を十分には理解し得なくても、私たちは、それに従い、彼らを支えることができるだろう。

 こんなことを、今から2500年も前の人が言っていたわけである。孔子の偉大さもさることながら、人間とは、かくも変わらぬものかと苦笑いしてしまう。

 では、信頼はどのように「かち得る」かである。やはり、成果を確実に上げ、民意に応えることが第一である。全戦全勝は、無理でもプラス・マイナス・プラスにはしてほしい。

 次に大切なことは、「わかりやすい説明」であろう。詳細な内容やプロセスを事細かに説明すのではなく、「目的やあるべき姿」「得られる価値」「課題やリスク」を完結明瞭に、聞く側の言葉で伝えてもらいたい。

 当然、全員賛成にはならないだろうが、信頼の基盤となることは、間違えない。

 これは、政治だけのことではない。私たちが、お客様から、信頼を勝ちうるための条件ともいえる。

 ITが進化し、多くのお客様にとって、そのテクノロジーの詳細を理解することは、難しくなっている。特に、SMBのお客様にとっては、人材も限られており、なおさら容易なことではない。

 クラウドの時代となり、その技術的な基盤が、遠くネットの向こう側に置かれ、お客様は、利用するだけの立場となれば、ますますその内容を、詳細にご理解いただくことは難しくなる。

 どのような仕組みで実現しているかではなく、自分達にどのような価値をもたらし、どのようなリスクがあるのかを、お客様は知りたいと願っている。

 仕組みを理解していただくことが、ますます難しくなるこれからの時代、私たちは、お客様の信頼をかち得るためにはどうすればいいかを、今まで以上に真剣に考える必要があるだろう。
  • 成果を確実に上げること。
  • 「目的やあるべき姿」「得られる価値」「課題やリスク」を説明すること。
  • 完結明瞭に、お客様の言葉でわかり易く伝えること。 
 この3つを忘れないことを、改めて肝に銘じておきたいと思う。

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2009年9月14日月曜日

イチローにみる「第二の天性」 

 イチローが、9年連続200本安打を達成した。彼の才能を称える声もある。それは間違えないだろうが、私はそれ以上に、彼が目標達成に執着し、練習を積み重ねてきたからこそ、できたことだと思っている。私は、そんなイチローの不屈の精神にこそ、心からエールを送りたい。

 以前、撃墜王・坂井三郎が著した「大空のサムライ」について紹介した。彼は、この著の中で「第二の天性」の大切さを述べている。坂井は、生まれ持った「第一の天性」だけではなく、人には、自らの理想を実現するために、努力して手に入れる「第二の天性」があるのだと語っている。

 イチローにしろ、坂井にしろ、自分はどうありたいかという「あるべき姿」をしっかりとイメージし、それを実現するために日々の努力を惜しまなかった。生まれ持った才能やセンスだけに頼ったわけではない。努力の人であることにこそ、彼らの偉大さがあるように思う。

 先週の木、金と「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」を開催した。そこでも「営業力は、生まれ持ったセンスや才能だけで決まるものではない」という話をした。

 センスや才能は、その人の個性を表現するもの。営業力は、スキルと知識とプロセスで決まると。つまり、第二の天性で獲得しうるものであるという話しである。

 この研修には、SE、プログラマー、はたまた、この間までスーパーでおばちゃん相手に野菜を売っていましたという方も参加している。売るものも違えば、そのスタイルもまちまちだ。理屈っぽい人、能天気に明るい人・・・夫々に、その人なりの経験の積み重ねがあり、個性がある。

 こういう人たちが、この研修に参加される目的は何かといえば、営業として、あるいは、SEやコンサルとして、お客様に信頼され、お客様に喜んでいただけるビジネスをしたいという思いである。言葉の上での表現は夫々に違うが、心は完全に一致している。

 第二の天性とは、このような理想を思い描くことが、出発点であろう。そう考えれば、この研修に参加された方は、まずは、スタート・ラインを超えられていることだけは間違えない。

 イチローは、他の選手の何倍も練習していることは、多くの人が知っている。もちろん量をこなしているだけではないだろう。どうすればバットに当てられるか、飛距離を伸ばせるか、考え工夫しながら、第二の天性を磨いてきたのだろう。

 改めて、凡人である自分を振り返れば、果たして、努力して「第二の天性」を育ててきたのだろうかと思うと、はなはだ恥ずかしい限りだ。しかし、イチローにしろ、坂井にしろ、よき実例があるではないかと思うと、恥じてばかりもいられない。

 イチローとまではいかないが、「もうちょっとがんばってみようか・・・」と、彼の快挙をみて、そう思う。

 でも、そんなひとが私以外に大勢いるだろう。そう考えると、改めて彼の偉大さを感じざるを得ない。

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2009年9月11日金曜日

常識が、非常識となるとき(5) 最終回

 クラウドの普及は、システム選定におけるお客様の意思決定基準を変化させることになります。

 前々回のブログで解説いたしましたが、インフラに関わるシステム技術的な判断基準の比重が下がるだろう考えられます。その一方で、より上流の業務要件やビジネス・プロセスが、意思決定を行う上で、今まで以上に重要となります。

 クラウド、特にSaaSにおいては、業務サービス機能の利用です。となると、自社の業務目的、ビジネス・プロセスを整理分析し、個々のプロセスに重複や機能的な過不足が無いように、分解整理する必要があります。これは、BPMのアプローチです。ここで分解された個別のプロセスに対応するサービス機能を利用する必要があります。これは、SOAのアプローチです。

 つまり、理想論を申し上げれば、BPMでビジネス・プロセスを分解、整理し、それをSOAに基づきサービスを部品化する。それに対応するサービスをクラウド上に載せる、あるいは、相当するサービスを利用するという流れが出来上がります。

 ビジネス・プロセスの分解、整理は、単に既存の業務の再定義ではなく、より効率的なプロセスを実現するための業務プロセスの最適化、再構築を目指す動きへとつながることも考えられます。

 これは、特に大手企業にとっては、2015年からの国際会計基準(IFRS)の強制適用に連動する流れが、生まれるかも知れません。あるいは、このような企業の動きを捉えて、クラウド・ビジネスの拡大を図るという戦略もありうるでしょう。

 IFRSは、決して会計財務の問題ではなく、企業行動やその意思決定に大きな影響を与えるものであり、ビジネス・プロセスの見直しは不可分です。その影響範囲は広範に及ぶわけですから、当然ビジネス・チャンスも広がることが期待できます。

 このような一連の動きを想定すると、SIerやソリューション・ベンダーは、次のような取り組みが求められます。

◎ 業務分析スキルの強化と課題発掘、提案能力の強化
◎ 経営層、業務部門へのアプローチ拡大、浸透
◎ サービス・ビジネスの企画、充実

 いずれにしても、製品力や技術力、あるいは、開発や運用に必要な人材提供に競争優位を求める企業にとっては、なかなか厳しいものになる可能性があります。

 再三申し上げていることでもありますが、クラウドが直ちにITの実態を変えてしまうことありません。これから時間をかけて、クラウドの適用領域が拡大してゆくもの考えられます。

 しかし、これからシステム選定を考えるユーザー企業の当事者にとっては、決して将来の問題ではありません。既にクラウドは、重要な選択肢のひとつとなっています。

 仮に、現時点では、オンプレミス(自社で所有、運用するシステム利用形態)を選択するにしても、そのシステムがクラウドにどのような橋渡しが用意されているかは、知りたいと考えるでしょう。このようなお客様の期待に応えられるようになることは、SIerやソリューション・ベンダーにとって喫緊の課題です。

 「クラウドなんて、まだまだこれからですよ。」という言い訳は、「お客様の将来に関心を持っていません。」とお客様に宣言するに等しい行為と考えるべきでしょう。

2009年9月9日水曜日

常識が、非常識となるとき(4)

 昨日[9/8(火)]、「クラウド時代に勝つ・・・ソリューション営業力強化セミナー」を開催させていただました。大勢のご参加を頂きました。ありがとうございました。

 さて、セミナーの内容は、以下のようなものです。

・誰もが言葉では知っている「クラウド」を体系的に整理。
・いい事ばかりじゃない、クラウドの抱える課題の洗い出し。
・クラウドの普及がSierやITソリューション・ビジネスにどのような影響を及ぼすか。
・ビジネス環境の変化にどのような施策をとるべきか。
・求められる営業スキルの変化とそれへの対処方法。

 アンケートを拝見したところ、
「クラウドやSaaS、SOAなどの言葉は知っていたが、それらが体系的に結びついていなかった。それが整理できた。」
「世間では、クラウドのプラス面ばかりが紹介されているが、多くの課題が残されていること、また、それがビジネス・チャンスになりうることが良くわかった」
「自分達のおかれている状況を客観視できた。危機感を認識できた。」

 などのコメントを頂きました。少しはお役に立てたようです。

 10月8日(木)にも、以下の無料セミナーを開催します。


 このセミナーでも、クラウドについて、売る側の視点で話しをします。また、それ以外に、仮想化、オープン・システムとメインフレーム、グリーンIT、国際会計基準をコンパクトにまとめ、その要点やビジネス可能性などについても紹介させていただきます。

 自社の強みをどう生かすか、どの分野にリソースを投入するか、ビジネス戦略を考える上でのご参考になればと考えています。

 さて、前回の続き、今回のセミナーでも紹介したことですが、「クラウドがもたらすビジネス環境の変化にどう対応するか」について、話を続けたいと思います。

 下記の図をご覧ください。

 クラウドの普及は、「ビジネス規模の縮小」と「お客様の意思決定基準の変化」という影響を与えることは、前回申し上げたとおりです。

 「ビジネス規模の縮小」への対応ですが、以下の3つの方策が考えられます。

1.組み合わせによるビジネス規模の拡大
2.クラウドに内在する課題を補完するソリューションの提供
3.パブリック・クラウドを利用した独自サービスの提供

 ビジネス規模の縮小は、特にインフラおよ機器・パッケージ・ライセンス関連の販売が縮小することに起因します。この部分の比重が大きいSIビジネスは、大きな影響を受けることになります。従って、垂直統合型のSIから脱却し、アプリケーションやサービス機能の組み合わせ、つまり水平への広がりを拡大させる組み合わせビジネスを模索する必要があるでしょう。

 また、クラウドの抱える課題は少なくありません。例えば、可用性の低さ、セキュリティへの不安、バックアップ・リカバリーの保証、対監査性のあいまいさなどなど、いろいろとあります。そのような課題を克服するための補完的手段を提供することで、ビジネスの拡大を図ることです。

 最後は、積極的にパブリック・クラウドを活用し、アプリケーション・サービスを拡充するアプローチです。自前でクラウドのプラットフォームを持つことは容易なことではありません。ですから、他人のふんどしを利用して、サービス・ビジネスにシフトする戦略です。

 いずれにしても、今までのビジネスの基盤を変えなければならない選択が求められるかもしれません。

 ノークリサーチさんのレポートによると、クラウドの市場は、2009年の249億円から、2012年の2065億円へと急激に拡大すると予想されています。

 しかし、これは既存のIT予算の範疇であり、新たな予算がどこからか生まれてくるわけではありません。つまり、いままでのIT予算の一部が、クラウドにシフトすることを意味しています。

 この現実を考えるならば、現状の延長線へのこだわりを捨て、売る側も大きくなパラダイムの転換を覚悟すべきでしょう。

 次回は、「お客様の意思決定基準の変化」にどう対応するかについて、考えてみようと思います。

2009年9月7日月曜日

常識が、非常識となるとき(3) SIerビジネスへの影響

クラウドの普及は、SIerやソリューション・ベンダーのビジネス規模を縮小させる可能性がある。

1.ハードウェア機器、パッケージ販売ビジネスの縮小
2.インフラ・プラットフォーム構築ビジネスの縮小
3.運用業務に関わる受託、派遣業務の縮小

1については、言うまでもないだろう。いままで、オンプレミス型が当たり前であったシステムの利用形態に、SaaSやPaaSといった選択肢が加わる。このようなクラウド型のシステムは、使用量や使用する機能に対応した従量課金制であり、モノを販売するビジネスにとっては、大きな脅威となる。

 特に、スキル・レベルの高い人材を確保することが難しいSMBや開発、テスト目的でのシステム導入。非基幹系で、あまりクリティカルではないアプリケーション(たとえば、オフィース系)などは、クラウドへのシフトが、先行するものと考えられる。

 2については、インフラ・プラットフォームを自社で持つ必要がなくなるわけで、この部分のビジネスは、減少するだろう。これは、クラウドだけの問題ではなく、仮想化やそれに付帯したシステムの統廃合も並行して進むだろうから、ますますビジネス規模は、縮小する。

 3については、サーバーや一部クライアント系のアプリケーションも、ネットの向こう側で運用されることになるので、ユーザー・サイトでの運用業務は、少なくなるだろう。

 このように、モノ売りやヒト売りを生業にしてきた企業にとっては、マーケット・サイズの縮小が懸念される。

 また、お客様の意思決定基準の変化もビジネスに大きな影響を与えることになるだろう。

1.IT部門のユーザー化による上流プロセスでの判断重視
2.ユーザー部門主導によるシステム選定の増加
3.購入単位の変化(数量から利用量へのシフト)

 1については、IT部門は、開発に際してOSやインフラを意識する必要は無くなり、サービスとして、アプリケーションやシステム・リソースを利用することになる。これは、IT部門のユーザー化である。いままでのようなテクニカルな提案やジャスティフィケーションは、重要視されなくなるだろう。上流での判断、すなわち、アプリケシーュンや業務プロセス、業務要件検討に関与することが、今まで以上にもとめられるだろう。

 2は、IT部門の対応にもよるが、IT部門がオンプレミスにこだわり続ければ、当然痺れを切らししてユーザーは、IT部門を跳び越してSaaSの導入を推進するかもしれない。事実、Salesfoce.comは、そんなかたちで入っているところも少なくないようだ。かつての部門コンピューター、部門オフコンと似たような展開が考えられる。

 3は、先にも触れたが、購入+リース+運用・保守 と 使用+使用料金 との対決である。システムのクリティカル度、要求される立ち上げスピードなどにも関係するが、意思決定がユーザー部門にシフトすれば、システム所有へのこだわりは、著しく減退するだろう。この結果、既存のモノ売り、ヒト売りビジネスが、食われる事は必至の情勢にある。

 ビジネス規模を縮小とお客様の意思決定基準の変化という、ふたつの大きな変化。SIerやソリューション・ベンダーは、これに対処しなければならない。

 では、どのように対処すればいいのだろうか。次回は、この点を解説する。

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2009年9月6日日曜日

常識が、非常識となるとき(2)

 機構系CAD関連のビジネスが、大きく落ち込んでいる。ある大手機構系CADベンダーは、前年対比30%の売上減。また、ある大手自動車メーカーに機構系CADを販売している企業は、前年10億円近い売り上げがあったにもかかわらず、今年の第一四半期の売り上げは、一千万円そこそこという。

 機構系CADビジネスの低迷は、自動車をはじめとした製造業の業績低迷だけが原因ではない。共通化や流用といった設計業務そのものを減少させようという取り組みとも重なった動きといえるのではないだろうか。

 たとえば、自動車の場合、車台(プラットフォーム)のメーカーを越えた統合化が、設計需要の低迷を加速させている。車台の統合は、車台そのものだけではなく、その周辺の部品や製造ラインの共通化にも大きく貢献することから、コスト削減や開発期間の短縮の効果は高い。

 また、今後、電気自動車が普及するようになれば、駆動系は簡素化され、ますます機構系の設計需要が減少するだろうと言われている。

 かつて稼ぎ頭であった機構系CAD需要の低迷は、これを生業にしてきたCADベンダーやソリューション・ベンダーにとって、致命的な課題を突きつけている。だが、既存顧客との関係や自社で抱えるエンジニアやオペレーターをどうするかという問題、また、確かに将来的な需要動向の変化はあるとはいえ、今は不況による一時的な需要の低迷であって、不況がとおりすぎれば、まだ一息つけるチャンスはあるたろうという楽観視が、危機感の頭を抑えている感がある。

 しかし、この状態にある程度ならされてしまったユーザーとしては、たとえ景気が回復したとしても、すぐには、かつてと同様にシステムを増設はしないだろう。また、これを機会に、開発方式や設計方法を大きく変えようという動きが加速することも考えられる。

 そうなると、景気が回復しても需要が大きく回復することは、難しいかもしれない。

 インフラ・ビジネスについても、同様なことが考えられる。SaaSやPaaSの普及により、システムを所有することが、絶対的な要件とはいえなくなった。

 確かに、信頼性や可用性に課題があるとはいえ、開発やテスト目的ならば、十分に使える。また、クリティカルではない業務、たとえば、電子メールやグループ・ウェア、ワークフローといった業務では、十分に利用できる。

 また、SMBは、ITスキルを持つ人材を確保することが容易ではない。そう考えると彼らにしてみれば、クラウドは、救世主に見えるかもしれない。

 クラウドの普及は、所有から使用への移行といわれる。これは、システム部門のユーザー化を意味している。また、システム部門を介さずにエンド・ユーザー部門が、システムの選定に大きく影響を持つようになることも考えられる。

 つまり、今まで以上に、システムの選定は、上流で判断されることになる。インフラ、すなわち、サーバー、OS、ミドルウェアなどが、システムの選定に影響しないようになるだろう。

 これは、インフラが不要になるということではなく、システム選定に当たって、ユーザーは、インフラを意識しないようになることを意味している。また、システム・ユーザーの人数の増減、キャパシティを意識する必要もなくなるだろう。

 このように、ユーザーの意思決定基準が、大きく変わると共に、意思決定者そのものが、業務部門などのエンド・ユーザー側へ大きくシフトする。

 そうなると、システムに強いだけでは、お客様に価値を提供できないことになる。SMB系は、エンタープライズ系よりもこの動きが先行するはずだ。

 このような、ユーザー・ニーズの変化に対応できないSIerやソリューション・ベンダーは、淘汰されてゆくだろう。

 機構系CAD需要の変化は、カタストロフィカルな、出来事といえるかもしれない。しかし、インフラ・ビジネスやSIビジネスに同様の劇的変化がおきない保証は無い。

 では、このような変化にどう備えればいいのだろうか。次回は、この点について考えてみようと思う。

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2009年9月5日土曜日

常識が、非常識となるとき(1)

 中小SIerが、土砂降りのようだ。

 先日、ノークリサーチの伊嶋さんと話しをする機会があった。倒産、廃業、統合が、進んでいるという。

 世間では、景気回復の兆しありとは言うが、この業界は、まだまだそうではないらしい。実際にお付き合いさせていただいているSIerの方からも同じような話を聞く。

 ある営業に話を聞くと、システム部門も、ずっと殻に閉じこもっていたこともあり、そろそろ何かしなければと、話しや相談は増えてきているという。しかし、商談に結びつく話しには、なかなかならないようで、いっしょになって、どうしようかと語り合っているに過ぎないようだ。

 伊嶋さんとの話の中で、需要に対して、SIerやソリューション・ベンダーの数が多すぎるという話しがあった。

 確かに、サーバーの稼働率は、せいぜい2割程度に過ぎない。この不況である。冷静に考えれば、システムの統廃合、仮想化を進めれば、理屈の上では、サーバー台数を1/5にできることになる。もちろん、技術的な限界もあり、理屈道理に行かないにしても、過剰であることに違いは無い。

 TCA(システムの購入コスト)が、どんどんと下落し、既存のサーバーを機能拡張して、稼働率を高めるより、アプリケーション単位、あるいは、機能単位でサーバーを導入したほうが安いということで、サーバー台数がどんどんと増えていった。しかし、その結果として、TCOは、増加していった。

 結局は、ITシステムに関わる費用は、何も変わらない。むしろ、適用業務の範囲が広がり、可用性を高めるための冗長化も、結局はTCOを引き上げている。TCAが安いからと、どんどん増やしてきたサーバーは、今度は、TCOの増大で、導入意欲の低下を招いているといっても過言ではないだろう。

 この矛盾を断ち切らなければならないと、ユーザー企業は、考え始めている。つまり、今までの常識は非常識となり、いままでのユーザーとSIerの「これでよかった関係」は、もはやそうではなくなることを意味している。

 今は、不況である。こういう時期は、今までの常識が否定され、それを誰もが、当然と考える。経営者は、さらに厳しく、「他の選択肢を考えなさい」とシステム部門に求めている。この言葉の裏には、「もっと安いところと付き合ったらどうですか!」という、暗黙の指示が隠れている。

 伊嶋さんからいただいたレポートの中に、「IT投資の効果がはっきりと見えるモノ以外は、投資しない」との言葉があった。つまり、「収益に直結する投資」か、「コスト削減につながる投資」かのいずれかである。

 収益に直結する投資は、ITの場合、なかなか見えにくいし、時間もかかるので、この時期、なかなかプロジェクトを起こすことは難しい。となると、コスト削減につながる投資ということになる。

 もっとも簡単な話しは、サーバーやストレージなどの機器類の統廃合による削減であり、システムを自ら所有し運用する方法から、SaaSなどを利用した従量課金型サービスへの移行ということになる。

 このような取り組みは、ユーザー企業にとっては、必ずしもいいことばかりではない。手間もかかるし、リスクも伴う。しかし、こういう時期だからこそ、背に腹は変えられないわけで、コスト削減に向けた施策がどんどんと進められることになるだろう。

 先日、あるSIerの社長に話を聞いたところ、「いままで運用を受託していたが、サーバーを半減して、今までの2箇所のセンターを一箇所に統合かるから、運用の要員も減らしたいという話が来ている。最近、そんな話ばかりが増えてきた。」と嘆いていた。

 不況は、この動きをますます加速するだろう。

 このブログでも、度々申し上げているが、身体を丸めて、不況をやり過ごせば、またもとの状態にもどるだろうという期待は、早々に捨てたほうがいい。

 ならば、SIerやITソリューション・ベンダーは、何をすべきか。

 次回は、その点について、掘り下げてみようと思う。

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