2010年6月26日土曜日

「営業力」と「人間力」

 先日、こんなメールをいただきました。

 「貴社のホームページを拝見した際に、ITソリューション塾を知りまして、途中からではありますが、ぜひ今週から参加させていただきたく、このたび、メールいたしました。」

 そして、そこには、「わたくし、社会人一年目でXXX(一部上場の大手システムベンダー)の情報・通信システム事業部門に勤務しております。」と書かれていました。つまり、今年入社したばかりの新入社員というわけです。

 私は、「まずは、見学にいらっしゃい」と彼をさそい、水曜日の夜に開催されている「ITソリューション塾」に彼はやってきたのです。

 講義が終わり、私は、「新人君には、ちょっと難しかったかなぁ」と思いつつ、どうだったかと尋ねてみると、「難しかったですが、なんんとかついてゆけるように頑張ります!」とのこと。なんとも、こちらが勇気づけられる思いでした。

 ノーベル文学賞受賞者でアイルランドの詩人であるウィリアム・バトラー・イェーツは「教育とは、バケツを水で一杯にすることではなく、火をつけて、燃やしてやることだ」と語っています。

 つまり、教育とは、知識を詰め込むことではなく、学びたいという意欲を持たせてあげることだ言うのです。蓋し、名言です。

 先日のソリューション営業モデル研究会でも、「営業力は、人間力」ということが、話題になりました。

 どんなに知識を学ぶ機会を与え、マナーを教えても、本人に探究心や向上心といった「人間力」が備わっていなければ、知識や能力は、営業力には、結びつかない。この人間力をどのように高め、引き出してゆくかが、営業力育成のカギを握っているという議論です。

 しかし、「人間力」なるものは、抽象的で、主観的なものであり、これを評価することは、容易なことではありません。しかし、評価のできないものは、コントロールできず、育成の方法論を議論することができません。このジレンマに議論も行き詰ってしまいました。

 まあ、簡単に出せる答えではありません。ただ、それを考えること、それ自体に、私たちは、改めて「人間力」の大切さに気付かされました。

 では、イェーツが語るように「火をつけて、燃やす」ために、いったい何ができるのでしょうか。それには、3つ原則があるように思います。

1.知らないこと、足りないことに気付かせる

 危機感や不足感を満たそうという欲求は、だれにもあります。自分に何が足りないのか、このままでは、自分は成長できない。その思いが強ければ強いほど、炎は大きく燃え上がるはずです。

 自分の能力を客観的な指標で評価し、他者と比較すること。仕事の手順や業績を見える化し、現状を客観視することなどは、気付きを与える一つの手段となるはずです。

 また、対話することも大切です。話し合う中で、自分が整理でき、客観視できることも少なくありません。

2.やらせてみて、体感させる

 「このままではまずいぞ」と気付いたとしても、それは、限られた知識や経験の中の「想像」でしかありません。本当にそうなのかを検証してみることが必要です。とにかくやってみる。体感し、「想像」を「実感」に変えることで、初めて人はその知識や能力を手に入れるのだろうと思います。当然失敗もあるはずです。その失敗から学ぶことも多いはずです。

3.セーフティ・ネットを用意する

 「失敗して当然」を前提としてチャレンジさせる。それが成長の原動力になるはずです。しかし、最近は、過剰なコンプライアンス意識の高まりの中で、「失敗は許されない。あってはいけない」を前提とした組織も多いようです。確かにコンプライアンスも大切ですが、過剰な抑制は、むしろ成長の芽を摘むことになるでしょう。それよりも、何かあったら誰かが助けてくれる、相談できる、そんな風通しの良い組織を作ることのほうが、はるかに有効だと思うのです。

 このセーフティネットがあれば、失敗も小さなうちに表に出てきます。そして、適切な指導をすれば、それもまた学びの機会になるはずです。

 私たちは、時にして知識やスキルを教え、学ぶことで個人の能力が高まると考えてしまいがちです。しかし、教え、学ぶことは、目的ではなく手段であるということを思い返す必要があります。

 教え、学ぶという手段を通し、自分に何が足りないのかに気付くこと。その不足感と危機感が、「火をつける」ことになるのでしよう。そして、学ぶことによって、成長できる実感を、よろこびとして感じることが、真の目的あることに気付かなければなりません。

 件の彼は、誰に言われたわけではなく、自分で自分に火をつけたのです。なかなかできることではありません。その炎を燃やし続け、さらに大きくしてゆくことをお手伝いすることが、私たち大人の役割なのだろうと思うのです。

■ 研修 「営業活動プロセスとその実践ノウハウ」 開催します

ソリューション営業の即戦力化と成約率を高める取り組みについての研修です。

7月7日(水)・九段下にて開催いたします。

ご興味があれば、 こちらをご覧ください。

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2010年6月19日土曜日

「ソリューション」という言葉に抵抗感を持つあなたへ

 ソリューションという言葉をつかうことに抵抗があるとか、あえて使わないようにしているという方が、いらっしゃるようです。先日も、Twitterで、「ソリューションという言葉を安易につかわないほうがいい」という呟きを見かけました。

 このような意識の背景には、「他人の課題を解決できるなどと偉そうなことを言うべきではない」という正義感とでもいうか、倫理観とでもいうか、そんな意識があるようです。また、「ソリューションという言葉の意味が、あいまいで、自分で自信を持って使えない」という方もいらっしゃるでしょう。

 どちらにしても、「ソリューション」という言葉を十分に納得できないままに、使うことに抵抗があるという、きわめて真摯な思いが、背景にはあります。

 確かに、IT業界では、この「ソリューション」という言葉が、安易に使われているようです。

 本来、「ソリューション」とは、「お客様の課題を解決すること、あるいは、その解決の手段」です。しかし、実態は、「わが社のソリューションは・・・」と称して、自社の商材を「ソリューション」という言葉に読み替えているだけの人も少なくありません。

 それでは、どう考えても、「お客様の課題」の解決ではなく、「自分たちのノルマを達成し、売り上げを上げる」ための「自分の課題」を解決する行為に過ぎません。「ソリューション」という言葉が、このような安易な使われ方をされることにも、抵抗感を感じる方は、いらっしゃると思います。

 では、IT業界の中で使われる「ソリューション」とは、いったいどういう意味なのか。歴史的な背景をも振り返りながら、私なりの解釈をご説明したいと思います。 

 「ソリューション」の字義は、「解決または、解決策」です。では、何を解決するかといえば、お客様の課題を解決することです。ならば、解決すべき対象である「課題」とは、なんでしょうか。

 「課題とは、お客様がこうありたいと"望んでいる姿(あるべき姿)"と"現状"との"ギャップ"」です。

 たとえば、"あるべき姿"が、「売上高を100億円にする」と考えているお客様がいらっしゃったとしましょう。しかし、このお客様の"現状"は、「売上高が80億円」です。とすると、「20億円足りない」という"キャップ"が存在します。すなわちこれが、「課題」となるわけです。もし、あるべき姿と現状が一致しており、ギャップがなければ、当然ながら、課題は存在しないことになります。

 このギャップを解消することが「課題を解決する」ことであり、その手段を「解決策=ソリューション」と考えれば、課題とソリューションの関係をすっきりとご理解いただけるのではないでしょうか。

 ですから、「ソリューション」を提供するためには、まずお客様の望んでいるあるべき姿と現状を明確にする必要があります。お客様とこれらについての話もせずに、冒頭「わが社のソリューションは・・・」と演説することが、いかにソリューションという言葉からは、程遠いものであるかは、いうまでもありません。

 プロダクトやサービスなどの商材は、「お客様の課題を解決(=ソリューション)するための手段であって、目的ではないのです。

 お客様は、プロダクトやサービスをほしいわけではありません。また、あなたの会社を採用したいわけではありません。自分たちの課題を解決したいのです。その課題を解決してくれる確実な手段を提供してくれるのであれば、結果として、あなたの会社を採用してくれるはずです。この順序がひっくり返っては、いないでしょうか。

 ところで、IT業界でソリューションという言葉が使われるようになったのは、1980年代頃ではないでしょうか。このころのソリューションは、プロダクトより上等なもの、あるいは、「わが社は、他社とは違いますよ」というキャッチフレーズとして、「ネットワーク・ソリューション・カンパニー」とか、「トータル・ソリューションをお届けします」というような使われ方をしていました。

 それ自体、何も間違えではありませんが、なんとなくあいまいなままに、使われていたように思います。そのひとつの転機になったのが、1990年代の半ば、IBMの定義したソリューションの意味です。

 ご存知のように、IBMは、メインフレームが事業の柱でした。しかし、ダウンサイジングが始まり、世の中が、メインフレームからミニコンやオフコンへと関心が移る中、IBMは、メインフレームのアーキテクチャの一貫性をウリに、プロセッサーから端末、ソフトウェアを含むすべてのコンポーネント、そして、開発、保守にいたるまで、IBM一社に任していれば、その組み合わせを一切保証し、安定的な運用をお約束しますといって、ダウンサイジングに対抗していました。

 確かに、デファクト・スタンダードやオフープン・スタンダードというものは、怪しいものでした。多くのベンダーが、わが社の製品は、これらにすべてに準拠して作られていますというのですが、いざ組み合わせてみると、うまくつながらないこともしばしばです。そんなことをクレームすると、「どうも、相性が悪いようです」となんだかよくわからない答えしか返ってきません。しかし、コストの安さと自由度の高さは如何ともしがたく、ダンサイジングは、ますます広がっていったのです。

 しかし、組み合わせの一切をメーカーに任せることができたメインフレームと違い、ミニコンやオフコンの組み合わせは、ユーザー自身が、責任を持たなければなりません。

 確かに、TCA(Total Cost of Acquisition = 取得のコスト)は、大幅に下がりました。そして、各部門の裁量で、部門マシンが増殖してゆきました。しかし、その結果として、組み合わせや運用にかかわるユーザーの負担やTCO(Total Cost of Ownership)は、むしろ増えてゆきました。

 そんなころ、IBMのCEOになったのが、ガースナーです。彼は、IBMとしては、初めての社外からのCEOで、コンピューターの常識を知らない人物だと、ささやかれたものです。

 そんな彼は、このお客様の現状をみて、「お客様の課題」を解決しないのは、おかしいと考え、「IBMだけではなく他社の製品も含め一切の組み合わせに責任を持つ」と宣言し、それをソリューションといい始めたのです。そして、このソリューションを実現するサービス事業を「システム・インテグレーション」と定義したのです。

 いま、IT業界で使われている「ソリューション」という言葉には、このような歴史的な背景もあるように思います。

 「ソリューション」という言葉をどう解釈するかは、人それぞれです。どれが、絶対的な正解であるとはいえません。ただ、「お客様の課題を解決する」という本質に変わりはありません。

 それは、単一の商品を意味するものでもなければ、プロダクトより上等なものというキャッチフレーズでもありません。

 「お客様毎の個別の課題を起点として、これを解決するための手段(プロダクトやサービス)の組み合わせを提供すること」となることだけは、間違えないように思います。

 どうでしょうか、このように考えてみると、プロダクトを売るにしても、SIを売るにしても、それは、ともにソリューションを実現するための取り組みであることが、お分かりいただけると思います。

 「ソリューション」という言葉に、抵抗を感じたり、拒否反応を示す必要は、どこにもありません。自信を持って、「ソリューション」を語ればいいのです。

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 私が、「ソリューション営業モデル研究会」を立ち上げたのは、この「ソリューション」を伝えてゆくためには、営業がこの言葉を深く理解し、効果的に動くための能力が、重要であると考えたからです。

 「お客様の価値を高める」ことは、営業にとって、何よりの幸せです。ただ、その能力を高め、スキルを身に着けることを、個人の自助努力に任せているだけでは、この業界の健全な発展は望めません。そんな思いに共鳴してくれた多くの方が、今この取り組みに参加してくれています。ご興味があれば、ご連絡ください。

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  日時 6月22日(火)15:00-17:00

  場所 東京・九段下 → 詳細、申込はこちらまで

  * 座席に限りがございます。お早めにお申し込み下さい。 *

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2010年6月12日土曜日

OJTを楽しむ3つの原則

 ことしの新入社員。ゆとり世代の一期生、そつなくこなすが型どおり、安定志向・・・「最近の若い者は・・・」とため息をつく大人たちも、かつては、同じことを言われていた。「まあ、そんなものです」と、大人たちを持ち上げておくのも、社会人としてのたしなみである。 

 大人たちはといえば、現場実習と称したOJTを引き受けることになる。以前「OJTというほったらかし」という記事を書いたが、そんなところばかりではない。自分の責任を自覚している大人たちも少なくはない。しかし、どうすれば、いいのかに不安を感じている人は、少なくないだろう。 

 では、OJTで何をすればいいのか、新入社員とOJT担当の大人たちのために、OJTを楽しむための三つの原則をあげておこう。

原則1 目的や意義を共有しろ

 教える側にどれほどの技量があったとしても、教えを受ける側に、学びたいという気持ちがなければ、馬の耳に念仏である。

 教える側は、いろいろと教えてやろうなどと考えるべきではない。むしろ、学びたいという意欲を持たせることである。そのためには、これからやろうとしていることが、お客様に、会社に、社会にいかなる価値をもたらすのかを理解させることである。

 「自分のためになるから」というような、あいまいなせりふで説得を試みても、まったくリアリティはない。自分のためとは何かをわかっていない相手に、どれほどの現実感があるだろう。

 むしろ、自分のことではなく、自分の行うことが、自分の周りに変化や価値をもたらすとすれば、ほんとうに幸せなことである。世のため人のために貢献できることは、本当に幸せなのである。それを伝えることで、学びたいという意欲を引き出すこと。また、新入社員もまた、それをしっかりと話し合い、納得することである。 

原則2 セーフテイ・ネットを作れ

 新入社員諸君!若気の至りで赦されるうちに、どんどんと若気の至りを楽しみなさい。30歳を過ぎて、同じことをしていては、それはもはや若気の至りでは済まされません。ならば今のうちです。

 OJTリーダーは、そんな彼らを決してほったらかしておいてはいけません。大切なことは、報告を受け、話を聞き、徹底的に相談に乗ること。困ったことがあれば、いつでも相談できる相手がいることを伝えておくことです。

 限られた知識を搾り出すより、時間をひねり出すほうが、自分の楽だし、彼らにとってもずっとありがたいことなのです。その自覚を持つべきです。

 大学時代、障害者教育学の教授が語った言葉を、いまでも忘れられません。

 「急な坂道を大汗をかきながら上る車椅子の人がいました。周りには、大勢の人がいるにもかかわらず、だれも手を貸そうとはしません。そんなとき、その車椅子が、突然後ろに下がりはじめたのです。すると、周りにいた全員が、いっせいにその車椅子に駆け寄ってきたのです。周りの人は、みんな彼を気にかけていたのです。これが成熟した、大人の社会というものです。」

 これこそが、セーフティ・ネットなのだと思います。 

原則3 スポンサーシップを実行せよ

 OJTリーダーは、自分のやり方や理想像で、彼らを見ないこと。自分の理想と比べ、あれができていない、これはひどいと減点志向で彼らを評価するのは、実に不遜な態度です。あなたは、それほど立派な人なのですか?自分のやり方でやらせようという態度も、現に禁物です。彼らは、あなたとは違う、もっと新鮮な目を持っているかもしれません。

 「できていないのが当たり前」を前提に、かれらのあるがままを受け入れ、ここはできている、なかなかがんばっていると、彼らのできていることを加算して評価するスタイルをとるべきです。

 「なぜできないんだ!」ではなく、「どうすれば、できるだろう?」。「なぜ、やらなんだ!」ではなく、「やるために、私は何ができるだろう?」と聞いてみる。そんな態度にこそ、彼らの自発性をひきだすきっかけを作ることになります。

 さて、いかがでしょう。この原則を守れば、OJTも少しは楽しくなるのでは?

■ [無料]クラウド時代に勝つ!ソリューション営業力育成セミナ

http://www.ices.co.jp/news/news_1.php?id=404

 営業力は、「強化」から「質的な転換」へと変わりつつあります。クラウドは、IT業界にどんな変革をもたらそうとしているのか、それに応えるために、営業にはどのような能力が、求められるのか。そんなことを考えてみようと思います。

 定員が限られています。どうぞ、お早めに。

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  日時 6月22日(火)15:00-17:00

  場所 東京・九段下

  申込 http://www.ices.co.jp/news/news_1.php?id=404

  * 座席に限りがございます。お早めにお申し込み下さい。 *

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2010年6月5日土曜日

営業力を強化すれば何とかなるという幻想

 「営業力強化」を謳う本が、数多く書店に並んでいる。それだけ、関心も高いのだろうが、中をのぞいてみると、応対術や交渉術、提案書の書き方など、技能に的を絞ったものが多いように見える。

 お客様に受け入れられるためには、どんな心遣いが必要か、そのためには、どんな行動をとるべきかを語ったものも少なくない。

 どちらにしても、「営業力」というものは、世間では、個人の技能や意欲、精神性の問題であると捉えている向きがあるようだ。

 これもまた「営業力」のひとつの側面であることに違いはない。しかし、こと、SIerにあっては、もっと本質的な「営業力」の強化を優先しなければ、この先仕事はなくなってしまう。それは、「強化」というよりも、「質的転換」と言うほうが、ふさわしいかもしれない。

 日本のSI業界は、長年、一部の大手ゼネコンSIerの配下に、多数の中小下請けSIerがつらなり、そこからの下される仕事をこなすことで、成り立っていた。

 しかし、ここ数年の不況に加え、オフショア開発やクラウドの普及が、今までの産業構造を成り立たせていた前提を大きく崩し始めている。

 まず、不況については、いうまでもなく、仕事の絶対量の減少である。これは、大手ゼネコンSIerも、その下で働く中小SIerも一律に影響を受けてきた。

 しかし、オフショア開発やクラウドの普及は、まったく次元の違う話である。

 不況からの脱却が進むとともに、新規開発案件は、増えている。しかし、それが、かつてのように、下請けのSIerに回らない。

 不況によるお客様企業のコスト意識の高まりは、同じレベルの仕事であっても、もっと安く仕上げてほしいという要求を強めている。大手ゼネコンは、その要求に応えなければ、競合に負けてしまう。その解決策が、オフショアやクラウドというわけである。

 今までのように、国内のSIerに開発を任せるのではなく、単金安い中国やインドを使う。開発しなくてもいい、クラウドを使う。

 上流を押さえている大手SIerの仕事がなくなるわけではない。お客様のSIerへの要求が、ビジネス・モデルや業務プロセス、システム全体の企画や設計にシフトする中、それに答える余力はある。また、海外開発会社の買収や提携、クラウド事業への進出により、新たな収益構造を築き始めている。

 その一方で、大手SIerからの受託開発や要員の派遣を仕事の柱に据えていた多くのSIerは、単金の低下圧力、受託案件の減少に耐えなければならない。

 これは、彼らの開発者としての能力や品質が、低下したからではない。いうなれば、SIビジネスのグローバル化、あるいは、クラウドを含めたシステム開発、運用環境の大きなパラダイム・シフトによってもたらされた、構造的問題なのである。

 従来、中小SIerの営業は、大手SIerとのしっかりとした人脈を保ち、彼らからの要求を確実にこなしてゆく。その管理能力と開発要員の調達能力が、求められてきた。トラブルへの対応、理不尽な要求に対しても、うまく対応できてこそ、営業は、その真価を発揮できたのである。そのためには、この仕事での豊富な経験、つまり年の功は、営業力を支えるものでもあった。

 しかし、もはやその時代は、過去のものである。お客様は、まったく違ったものに、価値を見出し始めている。

 このような業界構造の大きなパラダイム・シフトの中で、「営業力」を応対の技能や精神力の強化で乗り切ろうという考えは、的外れといわざるを得ない。

 その能力の不要を申し上げている訳ではない。もっと、本質的な「営業力」、つまり、他社にはまねのできない戦略的思考や、これを確実に売り込んでゆく企画力や提案力が、「営業力」の本質といえるだろう。 これは、個人の技能や精神力の問題ではない。企業が、組織的に取り組むべきものである。

 では、それは、技術力や商品力を高めることであるかというと、必ずしもそうではない。確かに、このような努力は、すべきである。しかし、クラウドになれば、高度なデータベース・スキーマを設計するような技能の出番は、減少する。商品も、圧倒的な差別化ができればいいか、競合優位を維持し続けることは、容易なことではない。

 このような現実の中で、海外にはできないものがあるのではないか。また、クラウドに内在するリスクや課題ゆえに、本格的な採用をためらう企業は、少なくない。それを補完し、克服できる手立ては、あるはずである。

 お客様の現場に入り込み、お客様の業務を間近に見てきたからこそわかることは、多い。そこから、お客様の課題を明らかにし、かゆいところに手が届く解決策があるはずだ。そんな、きめ細かな対応をオフショアやクラウドに求めることはできない。

 今必要なのは、それを見出し、提案の戦略を組み立て、大手SIerやエンドユーザー企業に、仕掛けてゆく、そんな「営業力」なのだと思う。

■ [無料]クラウド時代に勝つ!ソリューション営業力育成セミナ

http://www.ices.co.jp/news/news_1.php?id=404

 営業力は、「強化」から「質的な転換」へと変わりつつあります。クラウドは、IT業界にどんな変革をもたらそうとしているのか、それに応えるために、営業にはどのような能力が、求められるのか。そんなことを考えてみようと思います。

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  日時 6月22日(火)15:00-17:00

  場所 東京・九段下

  申込 http://www.ices.co.jp/news/news_1.php?id=404

  * 座席に限りがございます。お早めにお申し込み下さい。 *

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