2011年4月30日土曜日

感性なき営業に、営業力を期待しても無理

 先日、ある中堅SI事業者の社長と会食の機会があった。彼は冒頭、「斎藤さん、うちも、やっと4月から営業部を作ることにしました。これで、営業力の強化を図りたいんですよ。」
 
 私は、「やっとですか?」と、つい本音を漏らしてしまった(笑)。
 
 この会社ばかりではないが、ここ数年、営業部門を新設する中小SI事業者が増えたような気がしている。それ以前は、営業などいなくても、デリバリーの責任者やPMがお客さまの窓口となり、仕事を回すことができていた。また、「営業」という役職や組織があっても、事務処理や調達、トラブルへの対応などが、主な仕事であり、新規のお客さまや案件の開拓には、あまり時間をかけることはなかった。まあ、既存のお客さまでも、十分に食べてゆけたこともあり、あまり重視する必要もなかったと言うべきかもしれない。つまり、売り込みなどしなくても、受注はとれていたのである。
 
 しかし、リーマンショックのあたりから、受注は、大幅に減り、危機感を募らせた経営者が、営業力を強化して受注の拡大を図らなくてはと、考えるようになった。
 
 それ以降、「営業部門を作り、営業職を任命した。」という話しをよく聞くようになったが、実態を見ると、単なる看板の掛け替えである場合も多かった。中には、技術部門の余剰人員の受け皿として、営業部門を作ったようなところもある。
 
 まあ、「肩書きは、人を作る」という側面もあるので、最初の一歩という意味はある。しかし、いまだ、この最初の一歩に、踏みとどまっている企業も少なくはないように思う。
 
 ところで、経営者が、まず彼らに期待したのは、「新規顧客の開拓」だ。既存顧客からの受注が、大きく落ち込んでしまった以上、新規顧客でその埋め合わせをしなければと考えるのは、自然な発想だ。しかし、マーケット全体が、縮小している状況で、まったくこれまでに関わりのない新規をとることなど容易なことではない。この当たり前を考えもせず、これができないことで、営業力のなさを嘆き、なんでそんなことができないんだと営業の現場に怒りをぶちまけてみたところで、それは、自業自得と言うべきだろう。
 
 競合優位という武器も持たせず、「営業力」という能力の育成にも投資せず、「おまえはもうベテランなんだから、お客さまのことは、よく分かっているだろう。」という精神論だけを振りかざし、素手で前線に立たせている。唯一武器と言えるものが、「大手より安い」という竹槍みたいな武器であったが、昨今は、オフショアの台頭で、それさえも効き目がなくなりつつあるようだ。
 
 そんな会社から、営業力育成の相談を受けることも多いのだが、閉口するのは、営業力をプレゼンテーションやコミュニケーション、提案書の作成方法などの表面的なスキルであると考えているところである。
 
 中小SI事業者の多くは、経営者、特に社長が、優秀な、そして、唯一の営業職である場合が多い。そして、彼らは、「営業」という言葉の意味がどうかはともかくとして、仕事をとってくることに執念を燃やし、お客さまとの関係作りや交渉に高い意欲や感性を持っている。そして同じものを、自分の部下である営業の現場に期待している。
 
 確かに、そうあればいいのだが、だからあなたは、社長であり、彼らは、部下であるという当たり前の前提が、抜け落ちてしまっている。予めそのような意欲や感性が、備わっているのなら、こんな事態になるはずもない。そんなことを期待すべきではないだろう。
 
 だから、そういう人たちに、いくら表面的な「営業スキル」を学ばせたところで、それだけで、受注の拡大にはつながらない。営業という仕事の感性をたたき込むことなくして、営業力の強化は、あり得ないと思っている。
 
 こんなことを申し上げると、「また、精神論、根性論か」と言われるかもしれないが、そういうことでない。むしろ、感性を鍛えるためには、科学的であり、論理的であり、分析的でなくてはならないと思っている。
 
 どんな仕事にも手順がある。しかし、できる人は、それが体験的、感覚的に、からだに染みついている。しかし、それを因数分解して、ひとつひとつのプロセスに切り出して、説明することができない人が多い。
 
 それができない自分の能力のなさを棚に上げ、「なんで、そんなことが分からないんだ!」と怒鳴ってみても、それは、自分の能力のなさの原因を部下に押しつけているだけであり、なんの解決にもならない。押しつけられた方もたまったものではない。
 
 つまり、感性とは、その構造を体系化でき、プロセス化でき、分析的に整理できてこそ、初めて相手に伝えることができる。営業という仕事の成功体験や自分の描くあるべき姿をプロセスとして要素分解し、その意味や仕事の手順を相手に伝える。相手は、それを「ものさし」として、自分の仕事にあてがってみる。すると、自分には、何ができていて、何ができていないかに、自分で気付くはずである。
 
 できているとこについては、安心できるし、できていないところは、何とかしなければと思うはずである。それが、その人のモチベーションとなり、自発的な改善や成長を引き出すことになる。
 
 それが、感性を伝えることではないかと私は考えている。
 
 残念ながら、このような理性的な伝え方をしても、自分の問題として受けとめようとしない人は、確かにいる。しかし、そういう人は、どんな仕事をしても成果を期待することはできないのだから、はじめからあきらめるしかないのかもしれない。ほんとうに、残念ではあるが・・・
 
 感性とは、人間ひとり独りの個性であり、それを他人が強要することはできない。だからこそ、理性的に、感性を分解し、本人の意志により気付かせ、自発性を引き出し、自らの意志で行動を変化させる。このような取り組み無くして、本物の感性を身につけさせることはできないだろう。
 
 こういう時代だからこそ、経営者は、即効性を期待する。だから、表面的なスキルや知識で何とかしたいと思う気持ちも理解できる。しかし、それだけでは、本物の営業力の強化は、図れない。
 
 即効性のある武器と教育、そして、感性の強化を合わせて行なうべきだ。この両方の施策を重ね合わせて実行できてこそ、真の営業力強化につながるのではないだろうか。
 

 既にご案内致しました「緊急営業会議:3.11後のITビジネスと営業の役割」で、営業現場にいる多くの皆様のお考えを活かし、意味のあるものにしたいと思っています。お忙しいことは、承知しておりますが、是非、ご協力いただけないでしょうか。結果は、きちんとフィードバックさせていただきます。
 
 このような、営業の第一線立つ皆様からのアンケートというのは、かつて無かったように思います。ぜひ、ご理解と、ご協力をお願いします。
 

> Facebookに、このブログのページを開設しています。併せてご覧ください。


 先日の4/27(水)に第6期の最終講義を終えましたITソリューション塾。25名の志の高い皆さんと共に、相互研鑽の機会をいただきました。ご参加いただきました皆様には、改めて御礼申し上げます。

 さて、引き続き、第7期を下記の要領で開講致します。
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 5月25日(水)より7月27日(水)/6月最終週休講/全9回
 会場 東京・市ヶ谷(アシスト社セミナールーム)
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 詳しくは、このメールへの返信にてお問い合わせいただくか、このホームページをご覧ください。
 
 次回は、今回にはなかった「コミュニケーション&コラボーション」を追加すると共に、各社のビジネス戦略を整理し、自分たちの立ち位置をしっかりと自覚していただけるようにと考えています。また、時事の話題にも触れながら、最新のITトレンドを確実につかんでいただけるようにするつもりです。

 また、お客さまや社内で使えるプレゼンテーション資料の完成度をいっそう高めようと、あれこれ頭を悩ましています。もちろん、説明資料のパワーポイントは、ソフトコピーで提供させていただきます

 さて、次回予定している「コミュニケーション&コラボーション」は、facebookやTwitterに代表されるマイクロブログ、CMSなど、新たな情報活用の手段を体系的に整理してみようというものです。特に、震災以降、ワークスタイルの変化が叫ばれる中、大変注目されている分野でもあり、ビジネスにどうつなげるか
という視点から、整理させていただきます。

【重要】-------------------------------
 なお、会場の制約上、上限を25名とさせていだきます。ご検討という段階
でも、まずは「ご意向表明」だけでも、お送りいただければ幸いです。
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 なにとぞよろしくお願い致します。

2011年4月23日土曜日

クラウド・レディの壁

 クラウド・サービスの市場規模は、2010年の実績で、SaaS、PaaS、IaaS合計で前年比45%増の454億円という結果になったそうです。また、2015年には、2000億円程度と予測されており、その高い成長率には、目を見張るものがあります。
 
 ただ、この数字を冷静に眺めてみると、確かに大きな金額ではありますが、日本の情報サービス産業の市場規模が、11兆9141億円であることを考えてみると、わずか0.4%に過ぎないという事実も見えてきます。
 
 これだけ、世の中がクラウド、クラウドと騒ぎながらも、その現実は、まだまだ、これからというのが、どうも実態のようです。
 
 事実、SI事業者やソリューション・ベンダーは、「もはやクラウド以外に選択肢はない」と言わんばかりに、喧伝する一方で、お客さまは、必ずしもその勢いには、乗り切れていない。つまり、売上げにつながっていない・・・そんなギャップを感じている営業の方も多いのではないでしょうか。
 また、このような現実に、「クラウドとは言うけれども、いったい自分たちは、何を売ればいいんだろう」と頭を悩ましている営業も、少なくないように思います。
 
 なぜ、こんなギャップが生まれているのでしょうか。私は、そこに「クラウド・レディの壁」が、大きく立ちふさがっているのではないかと考えています。
 
 上記、統計を改めて冷静に見るとコミュニケーションやコラボレーションなどのSaaSが、市場を大きく牽引していることが見て取れます。これは、業種業態にかかわらず、企業個別の独自性はあまりなく、かつ、ミッションクリティカルではない非基幹業務です。
 
 そもそも、この分野の市場規模は、ITビジネス全体を見てもそれほど大きなものではなく、ここに頼っていてる限りでは、クラウド市場の大きな拡大は期待できません。そうなると、基幹業務のクラウド化に期待したいところですが、現実はどうもそうではないようです。基幹業務となると、これを積極的にクラウド、特にパブリック・クラウドに移行しようという動きは、なかなか聞こえてきません。
 
 その理由として、よくあげられるのは、セキュリティやコンプライアンスの問題、そして、レイテンシ(遅延時間)の問題です。しかし、これらは、どれもクラウド・サービス事業者の問題なわけですが、私は、それ以上に、ユーザー企業側の問題が、大きく立ちふさがっていするように思うのです。それが「クラウド・レディの壁」です。
 
 クラウドの特徴として、「仮想化」、「運用の自動化」、「サービス化」の3つのがあげられます。
 
 「仮想化」とは、言うまでもなく、部門や拠点、あるいは、アプリケーションや機能毎にバラバラに配置された物理マシンを仮想化によって集約することを意味しています。
 
 しかし、いくら仮想化の技術を使い物理マシンを集約しても、運用に関わる手間が少なくなるわけではありません。むしろ、物理マシンと仮想マシンの混在、簡単に仮想マシンを構築できることによる仮想マシンのスプロール現象などを考えると、むしろ運用は複雑化し、技術的にも高度化することは避けられません。この問題に対処できなければ、仮想化のメリットを引き出すことはできません。だから、「運用の自動化」は、大切な要件となります。
 
 さらに、集約されたシステム・リソースをいちいち人手を介して割り当て、提供してゆくようでは、運用の手間は、むしろ増加します。仮想マシンの割り当てや消去、あるいは、課金などの一連の手順をワークフローとして定義し、サービスとして自動化する取り組みが合わせて必要になるでしょう。
 
 これは、インフラやプラットフォームばかりではなく、アプリケーションにもあてはまることであり、このような仕組ができて、TCOの削減や変更、変化への迅速な対応も可能になるわけです。
 
 このようなクラウドを基幹業務で利用するためには、現状のシステムの利用状況を調査し、適切な計画を立てる必要があります。その上で、まずは、各拠点に散らばる物理マシンを一カ所に集め、それをブレード・サーバーなどに集約する。さらには、異なる運用の実態を整理し、いくつかのパターンに対応した運用グループ毎に標準化をはかる・・・などの様々な準備作業が、必要になるでしょう。そのような手間を経て、初めて、物理マシンを仮想マシンへ集約するという最初のステップをクリアすることができるわけです。
 
 このような事前準備を考えなくていいのが、開発やテスト環境のクラウド化です。セキュリティやコンプライアンスに対する配慮も基幹業務ほどではありませんから、一足飛びにクラウド化も可能です。意外とこの需要は大きいようです。例えば、大手の金融機関などは、開発、テストのためのサーバーが、全所有サーバーの6割から7割を占めているそうで、その中には、資産上残っているだけというものもあるそうです。当然、稼働率も低く、従量課金のIaaSやPaaSを利用すれば、大幅なスペースの削減やTCOの削減が期待できるはずです。
 
 しかし、基幹業務となると、今現実にそれを動かしているわけですし、業務によって様々な使われ方をしています。その現状を洗い出し、整理し、計画を立て、標準化するというのは、なかなか大変なことです。しかし、この作業をすすめてこそ、初めて「クラウド・レディ」になるわけです。
 
 一旦、クラウド・レディの状態にすれば、それをプライベートやパブリックで運用する。あるいは、それを組あせてハイブリッド・クラウドとして運用するという選択肢を選ぶことができます。
 
 クラウド市場の拡大は、基幹業務のクラウド化が、大きな鍵を握っています。これは、お客さまにとっても、TCOの削減や変更、変化への柔軟かつ迅速な対応を実現するために、大変有効な手段になり得ると思います。しかし、まずは、クラウド・レディの状態を作らない限り、次のクラウドに進めないのも事実です。
 
 改めて、クラウドをビジネスとして考えるとき、一足飛びにクラウドを売り込むのではなく、クラウド・レディのお手伝いするというアプローチがあるのではないでしょうか。
 
 これには、そこそこの時間がかかるはずです。その間に、パブリック・クラウド・サービスの多くの課題は解消され、様々な解決策も出てくるはずです。そういう時代が来たときにすぐに対応できる準備、つまり、クラウド・レディへの取り組みこそ、私たちは、今、積極的に提案してゆくべきではないでしょうか

> Facebookページに「これ一枚で分かるクラウド・レディ」を掲載しました。
 

 既にご存じの皆さんも多いことと存じますが、上記会議を開催します。
 
 営業活動にに関わる全ての皆さんが対象です。企業の大小にかかわらず、ベンダー、メーカー、SI事業者にかかわらず、IT営業の第一線に関わる皆さんが、対象です。もちろん、営業職の皆さんだけではなく、エンジニアもマーケターも経営者も、営業活動に関わる皆さんです。

 こんなことを申し上げれば、不謹慎のそしりを受けるかもしれませんが、営業の現場にいるものとして、この震災が、自分たちのビジネスにどのような影響を与えるのかを、是非知っておきたいと考えている人は多いはずです。そして、どうすれば、この震災を乗り越え、あるいは、これを切っ掛けとして、ビジネスを伸ばしてゆくかを模索されているのではないでしょうか。

 無償の貢献、ボランティア活動・・・私たちは、可能な限り、できることを行なうべきです。しかし、それだけでは、いずれ支援を続ける側が、体力を無くしてしまいます。これでは、将来の復興もあり得ません。
 
 そんな現実的な視点に立ち、営業としてできること、営業としてやるべきことを、この業界に関わる多くの人とともに議論しようという企画です。

 発起人をご覧いただければ分かるとおり、会社の垣根を越えて、大小を問わず、多くのITソリューション・ベンダーの皆さんが、ボランティアで名前を連ねていだきました。また、IT系のメディア各社もご協力いただくこととなりました。
 
 いかがでしょう。皆さんも参加されませんか。私たちにできること、やるべきことを、一緒に考えてみませんか?
 
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 2011年5月9日(月)18:00-20:30
 新日鉄ソリューションズ会議室/東京・新川
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2011年4月16日土曜日

産地偽装クラウド

 最近、多くの製品やサービスが、「クラウド」という冠をかぶっている。よく見れば、どうして「クラウドなんですか?」と首をかしげたくなるようなものもある。
 
 このようなソリューション・ベンダー各社の「クラウド製品、クラウド戦略」なるものを改めて静観してみると、まだまだ、クラウドというものの本質が、正しく理解されていないことを痛感する。
 
 クラウドの定義については、米国商務省の配下にある国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)の定義が有名だが、この定義に照らし合わせてみると、この条件を満たす「クラウド」サービスは、我国では、決して多くないように思う。 
 もちろん、NISTの定義が、絶対と言うつもりもないし、その条件が満たされなければ、クラウドというべきではないという偏狭な主張を振りかざすつもりはない。しかし、なぜ、NISTがあのような定義をしているのか。その背景を理解せずして、NISTの定義がおかしいとか、あれは日本には合っていないなどと主張するのも、情けない。それ以上に、クラウドの本質を見誤ることになる。
 
 NISTの定義には、ひとつの明確な思想がある。それは、「クラウド・コンピューティング=無人コンピューティング」である。
 
 NISTの資料をもとに、クラウドの定義をまとめてみたのが、下の図だ。
 
 
 この図の左側に記載の「重要な特徴(Essential Characteristics)」をご覧頂きたい。ひとつひとつの解説は、省かせていだくが、この意味するところは、「広範なネットワーク接続」を除けば、「コンピューティング・リソースを調達するに当たって、調達する側も提供する側も、人手を介さないためのに何が必要か」という目的にひもづけられている。
 
 米国は、日本に比べて、技能ある人材の人件費は、極めて高い。当然、低コストでシステムを調達/提供するためには、徹底的な人件費の削減、特に、高い技能を持つ人材を削減することが、課題となっている。クラウド・サービスは、そういう人材の使用を極力少なくして、運用やサービス提供の自動化を図り、コストの削減を目指している。
 
 日本の場合は、米国と異なり、社内で人を育て、人材を育成する。当然、育った人間は、やめさせたくはない。また、制度的にも人の解雇は難しい。そのため、技能のある人材の流動性は、かなり低い。従って、米国のようなやりかたで、人件費を削減することは、なかなか難しい。そのようなこともあって、人件費は、固定費として扱われ、なかなか削減を言い出しにくいという社会的背景がある。
 
 このような違いを踏まえて、考えてみるべきだろう。
 
 クラウドとは何かと問われ、「所有から使用へ」という特徴を挙げる人は多い。もちろん間違いではないのだが、それは手段であり、目的ではない。目的は、「スキルある人材の人件費を減らし、TCOを削減すること」である。これを実現するためには、先にも挙げたように、運用やサービスの自動化を図る必要がある。となると、結果として「変更、変化への迅速な対応」も可能になる。
 
 いろいろな「クラウド・サービス」なるものが、毎日のように発表されている。それが、クラウドの定義に当てはまらないから、そのサービスに価値はないなどと言うつもりはない。ただ、ソリューションという言葉そうであるように、その言葉の持つ本来の意味や思想を理解しないままに、かっこよく、時流に乗っているかのようにみせるための修飾語としての「クラウド」の使用は、いかがなものかと思う。もっと、堂々と、クラウドとは、関係ありませんが、こんなにすごいんです・・・と言えばいいのにと思う。

 その出自も理解せぬままに使っている「クラウドXXX」。これは、「産地偽装クラウド」というべきではないか。そうしなければ、本来のクラウドまでも、風評被害にあいかねない。

■さらにいろいろな資料をFacebookで紹介しています

 このブログのFacebookページをご覧ください。ほかにもいろいろな「これ一枚のXXX」を掲載しています。


2011年4月10日日曜日

これ一枚で分かる ITソリューション営業の仕事

 先日、娘の手術が、無事成功しました。股関節の病気で、全身麻酔で数時間にわたる大がかりな手術でした。術後の経過は良好とのこと、安堵しています。
 
 実は、娘が手術に至るまでには、いろいろと紆余曲折がありました。異常を感じ始めたのは、3年ほど前です。最初に受診した接骨院では、単純な関節炎か、筋肉の炎症だろうとマッサージやシップで処置されたそうです。しかし、どうもおかしいと言うことで、病院で診察を受けたところ、「これはもう直らない。いずれは、人工関節しか処置の手段はない」と言われたそうです。
 
 専門家の意見です。それも仕方がないと本人は、あきらめていました。しかし、どうにも痛みがひどく、歩くことも大変になってきました。そして、再び、別の医者に診察を受けたところ、「まだ間に合うかもしれない。私にはできないが、いい手術法があるので専門の医者を紹介する。診察を受けてみてはどうか」と進められました。早速、受診したところ、「今なら手術で直る可能性があります。少し大変な手術になるが、やってみませんか。」と進められ、即座に承諾しました。
 
 このすすめを受けて、昨夏、最初の手術を受けました。手術は、左右両足になるのですが、同時に行なうとリハビリが難しくなるので、片方づつ行なうとのこと。そして、今回が最後の手術となります。昨年手術した足は、術後、これまでの痛みがうそのように消えたそうです。ほんとうに良かったと思っています。
 
 施術してくれた医師に話しを聞きましたが、この手術方法は、決して新しいものではないそうです。かといって、必ずしもポピュラーなものではないのですが、関節や整形の医師ならば、知っていておかしくないはずとのことでした。医師曰く、「これ以上進行していれば、今回の手術も無理だったでしょう。」とのこと、本当に幸運だったと思っています。
 
 私たち営業の仕事も、この専門医を紹介してくれた医師のようであるべきではないでしょうか。たとえ自分に直せなくても、どのような方法が可能なのか、その専門家はどこにいるのか、可能性ある道筋をアドバイスしてくれれば、お客さまにとって、本当にありがたい存在となるはずです。
 
 幸いにもIT営業は、医者と違って、人の命に直接関わりません。ですから、自分が勉強不足であっても、それほど気にすることはないのかもしれません。確かにその通りでしょう。しかし、お客さまの経営や企業としての競争力に関わっているとすれば、それはお客さまという企業の存在に影響を与える立場であるとも言えるかもしれません。
 
 このような考え方を「偏った営業観」と見る方もいらっしゃるかもしれません。そんなことを言っても、会社の商品やサービスを売るのが、営業なのだから、そこまで期待されても困るし、その必要もないとおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。
 
 私も、その考え方を否定するつもりはありませんが、お客さまが信頼を寄せ、また相談しようと思える営業になりたいと思うならば、こういう「偏った営業」になるのも悪くないと思っています。
 
 「ソリューション営業の仕事」をチャートにまとめてみました。お客様の期待を実現するために、営業はなにをすべきだろうかと。このチャートを描きながら、まだまだこのような有るべき姿に達していない自分に気付かされます。だからこそ、そういう気持ちを持ち続けたいと思います。そして、このあるべき姿になるためには、どんな勉強をすべきだろうかと、考えてゆきたいと思っています。


■本チャートに記載の「お客さまの情報」をFacebookで紹介しています

 このブログのFacebookページに掲載致しました。

■「緊急討論会:3.11後のITビジネスと営業の役割(仮題)」開催します

 Facebookページに上記討論会の開催意向を掲載させていただきました。参加に資格は必要ありません。よろしければ、ご覧ください。

2011年4月2日土曜日

新入社員諸君、静かな戦場へ、ようこそ!

 新入社員の皆さん。社会人への門出を心からお祝い申し上げます。
 
 今皆さんは、人生の新たな節目に立ちました。きっと、大きな希望と無限の可能性に、胸を膨らませていらっしゃるだろうと思います。しかし、その一方で、今回の大震災が、自分たちのこれからに、どんな試練をもたらすのだろうかという不安もいだかれているのではないでしょうか。
 
 そんな皆さんに、これからのIT業界がどうなるのか、そして、皆さんは、何をすべきなのか、若干の先輩風を吹かせながら、少し語らせていただきます。
 
 希望に胸を膨らませる皆さんの気持ちに水を差すようで申し訳ないのですが、これからしばらくの間、この業界は、厳しい試練の場に立たされると覚悟してください。多分、皆さんが就活された時のように、そう、リーマンショックが、日本の経済を大きく落ち込ませた時のように、ITへの需要は抑制されるでしょう。
 
 なぜならは、震災の復興でまず優先されるのは、建物であり、生産設備であり、ライフラインだからです。ITへの新たな需要は、後回しにされるでしょう。
 
 お金は、天から降ってわいてくるものではありません。企業は、限られた資金の中で優先順位を決めて、お金を使います。だから、まずは、企業は、その存続に必須の活動を優先するでしょう。ITへの需要も、企業活動の基幹をなす既存システムの日々の運用に、優先的に配分されることになります。新規の開発や設備投資は、当面先送りされるだろうと考えられます。
 
 また、電力不足に伴う計画停電は、経済活動を落ち込ませることになるでしょう。生産設備や商業施設の稼働時間の短縮でモノやサービスが提供できません。また、何事にも「控えなければ」という気持ちが、人々の消費意欲を低迷させるでしょう。人がものを買わない、使わなければ、企業は、たとえ供給ができても、お金を稼ぐことはできません。そんな悪循環に陥るかもしれません。当然、お金が稼げなければ、ITへの予算は、後回しにされ、絞られてしまいます。
 
 皆さんは、いまそんな状況の中で、社会人としてのステップを歩み始めました。しかし、もはや後戻りはできないのです。この宿命を皆さんは、受け入れる以外にはないのです。
 
 その一方で、この震災は、人々を寛容にし、シェア(ともに分かち合う)の精神を広めています。そして、節電や節約、リスクの少ない社会の大切さに気付かせてくれました。私のような大人達が、当たり前に思ってきたことに「非常識」の三文字を突きつけているのかもしれません。
 
 私たちの時代、ITは、生産性を高め、消費を促し、豊かさを生み出す道具でした。ITという言葉が使われるようになる以前のコンピューターは、魔法であり、未来であり、発展の象徴でした。そのために、私たちは、がむしゃらに働き、社会に貢献し、家族を支えてきたのです。
 
 そんな時代の流れに、ブレーキをかけたのは、2年前のリーマンショックでした。IT投資は、抑制され、多くのIT企業が、経営危機に直面しました。そんな中で、ITビジネスのあり方にも、見直しの声がかかりました。多くのIT企業は、その変化の方法を模索し始めていたのです。そんなやさきに、今回の震災がありました。
 
 私は、今回の震災が、この大きなパラダイムの変化を加速するだろうと思っています。
 
 皆さんは今、そんな変化の転換点に、はじめの一歩を踏み出したのです。私たちが、築き上げたITの常識が、大きく変わり始めようとしています。そして、皆さんは、この変化の担い手とならなければならないのです。それもまた、皆さんの宿命であると心得てください。 
 いずれ気付くことになると思いますが、残念ながら、過去の栄光が、未だに通用すると固く信じている大人達がいます。たとえ言葉では、「もう、俺たちの時代じゃない」と、ものわかりのいいことを言いながら、自分流の常識や価値観をおしつけ、従わせようという大人達は、少なくはありません。
 
 彼らもまた、間違えなく、その時代を背負ってきた人たちであり、成功者です。社会人の先輩として、そして、人生の先達としての彼らに敬意を払うべきは、人の道だと思います。ただ、時代の感性や技術的方法論は、皆さん自身に分があります。大人達の「当然」を鵜呑みにする必要などありません。自信を持って、自分の考えを主張し、行動すればいいのです。
 
 「自分を主張し、意見を述べる」。そういう社会人に、なって欲しいと思っています。しかし、それは、ただ若いと言うだけでできることではありません。それは、勉強しなければできないのです。
 
 IT業界に限った話しではありませんが、勉強をしない社会人は、いつまでたっても自分を主張することもできなければ、変化の担い手にはなれません。やらされ仕事をさせられ、生きるために必要な糧を得ることが精一杯です。社会のグローバル化が進む中で、それさえも、厳しさを増してくるでしょう。
 
 では、「勉強」とは何か?です。けっして、難しいことではありません。次の3つを実行してください。
 
1.「なぜ?」と疑問を持ち、その理由を追及すること。
2.「なんだろう?」と思ったら、やってみること、聞いてみること。
3.毎朝1時間、自分のための時間を作ること。

1.「なぜ?」と疑問を持ち、その理由を追及すること。
 ものごとには、必ず理由があります。また、そうなった経緯や事情があるのです。言われたことを鵜呑みにするのではなく、なぜそういうことなのか、なぜこれをしなければならないのか、なぜこの人はこういうことを言うのだろうか・・・そういうことに、関心を持ち、考え、聞いてみることです。
 
 皆さんの目に見えることは、景色の断片に過ぎません。その周りには、もっと広く、もっと深い景色が広がっているのです。景色の断片の裏側にある構造や仕組、法則に関心を持つことです。そうすると、あなたの見ている景色は、奥行きを増し、色彩も鮮やかになります。そうすると、わずかな景色であっても、いろいろなことが見えるようになります。そして、未来が見えてくるのです。

2.「なんだろう?」と思ったら、やってみること、聞いてみること。
 TwitterやFacebookが、注目されています。スマートフォンやタブレットを多くの人たちが持ち歩いています。なんだろう、どうなっているんだろう、使えるのだろうか・・・もし、少しでもそう思ったら、使い始めてください。そして、いろいろと試してください。これを暇つぶしや趣味と片付けないで欲しいのです。そこには、いろいろなビジネスの可能性があります。
 
 トレンドものに限った話しではありません。「なんだろう?」、「こうしてみてはどうだろう?」「こんな資料を作ってみたらどうだろうか?」・・・切っ掛けはいろいろです。もし、そう思ったら、使ってみること、試してみること、行動してみることです。
 
 失敗もあるでしょう。時間の無駄と感じることもあるかもしれません。しかし、それとて、大切な勉強であることに代わりはありません。
 
 本や人の言葉だけでは、ものごとの本質は、分からないものです。身体で感じてみて、初めて理解できることも少なくはないはずです。めんどくさがらないでください。そのためらいが、あなの成長のチャンスを確実に減らしいるのだと思うべきです。

3.毎朝1時間、自分のための時間を作ること。
 朝の1時間を私は、人生のゴールデンタイムと呼んでいます。何をするかと言えば、今日やることの確認とイメージ・トレーニングです。また、仕事に関係あるかどうかに関係なく、いろいろと情報を集めたり、整理したりする時間として使っています。
 
 毎朝、1時間を自分のために使ったとしましょう。あなたは、10年間で、ゴールデンタイムを待たない人に比べて、1年半余計に、自分に投資できるのです。
 
 感覚的な表現ですが、今日やることのイメージ・トレーニングをするだけで、仕事は、3割から5割、効率的に使えます。言い換えれば、人生の密度が、濃くなるのです。また、効率的な仕事ぶりは、周りからも評価されます。すると、難しい仕事もどんどん任されるようになるでしょう。ますます、あなたの成長のスピードは加速します。
 
 社会とは、静かな戦場です。親が、社会が、誰かが与えてくれる、よき時代は終わったのです。社会は、自分の成長を武器に闘う戦場です。人よりも優れた能力や知識を持ち、効率よく仕事ができる。それを武器に競い合うのです。思いやりや仲間意識を否定するつもりはありません。しかし、みんなで一緒に・・・は、ないのです。社会には、リーダーが必要だし、またそれを支える人も必要です。その役割分担は、そんな戦いの結果として、自然と決ってくるのです。
 
 
 「若気の至り」という言葉があります。新入社員の皆さんは、この「若気の至り」が、許されるうちに、大いに「若気の至り」に励んでください。もちろん、よく考えた上での行動であり、ただ無分別に行動することではありません。それが、世の中のため、お客さまのため、会社のためであれば、たとえ失敗したとしても、怒られて終わりです。「しょうがないやつだなぁ・・・」とあきれられるだけの話しです。あなたは、そのマイナス以上に、多くのことを学ぶはずです。
 
 30才にもなって、「若気の至り」は、もはや通用しません。多分、そこまでが限度でしょう(笑)。とにかく、やってみる、試してみることです。
 
 「頑張りすぎる必要はない」という人がいます。私は、かならずしもそうは思いません。頑張りすぎて、自分の限界を知ることも、大切な勉強だと思います。もちろん息抜きも必要でしょう。しかし、頑張るときは、おもいっきり頑張りすぎてみる。そんな勉強の仕方もあると思います。
 
 とにかく、枠をはめないことです。答えを決めてかからないことです。これから、社会が大きく変わろうとしています。それは、パラダイムの変化です。いままでのパラダイム、つまり過去の常識の延長線上には、答えがないからです。
 
 その変化の担い手は、皆さん自身です。勉強してください。行動してください。頑張りすぎてください。
 
 そして、これからの未来を、もっともっと居心地のいいものにしてください。ITは、間違えなく、そのためのかけがえのない手段となるはずです。それを創り出し、活かしてゆくのは、皆さんの役割なのです。

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