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2011年11月26日土曜日

これからのクラウド・ビジネスを考える3つのビジネス・モデル


「うちもそろそろクラウドビジネスに真剣に取り組まないとなぁ。どうすればいいだうろう・・・」

ある中堅SI事業者の社長からこんな相談をいただきました。この会社の現場では、未だ「クラウド=Force.comでの受託開発」という刷り込み(?)があるようです。まあ、クラウドという言葉に関わる仕事はこれしかしていないわけで、それも無理からぬことかとも思います。

この会社は、受託開発や派遣などの仕事が多く、請負開発もありますが実態はお客様の予算に合わせるための形式的なもので、技術の独自性や専門性を求められるものは必ずしも多くはないという状況です。

定められた仕様に忠実であり、バクもなくダウンしない品質を求められ、その工数に対して対価をもらう。いわば製造業型のビジネスです。このビジネス・モデルにおいては、彼らの仕事は高く評価されるものです。

しかし、クラウド・ビジネスはこの常識を大きく変えてしまうことになります。クラウド・ビジネスの本質は、サービス業です。開発と運用は一体であり納期はなく、この組み合わせ作業が継続されることになります。また「納品物」に対する一時的な収益は期待できません。単価が安く、大量の顧客を前提とした長期継続的な収益を前提にしなければなりません。工数をかけたからといって、その対価は期待できません。魅力的な機能や使いやすさが対価をきめることになります。

この両者の違いについては、先週のブログに詳細を書きましたので、よろしければご参照ください。

さて、受託請負を主体とした事業形態からこのようなクラウド型のビジネスへ一気に移行することは容易なことではありません。しかし、先週のブログでも記載の通り、お客様のデマンドは明らかにクラウド型を志向しています。この流れはもはや戻すことはできません。ならば、この流れにうまく乗って行かなければ生き残れないことになります。

ではどうすればいいのでしょうか。その選択肢を3つのタイプに分けて考えてみました。



まずひとつは、クラウド・プロバイダーです。GoogleやSalesforce.comなどがこれに当たります。自分たちが所有するシステム資源や独自のサービスをネットワークを介して低廉に提供するビジネス・モデルです。このタイプは、お客様に優れた機能や性能を低価格で提供しなければなりません。そのため大きな初期投資によりサービスを充実させスケールメリットで広範なお客様を獲得することが必要となります。

次は、クラウド・アダプターです。アプレッソのdataspiderやISRのcloud Gateなどはこの一例といえます。クラウド・プロバイダーのサービスはコストパフォーマンスにおいて大きな魅力ですが、その見返りとして独自の標準化に対応することが求められます。また、インターネットの介在、マルチテナントなどが前提となりセキュリティへの不安も払拭できません。このようなプロバイダーの提供するサービスの課題を補完し、これに共生する形でビジネスを展開するというものです。従って、このような機能を持つ製品やサービスを開発しなければなりませんから、ある程度の初期投資は覚悟する必要があるでしょう。

最後は、クラウド・インテグレーターです。これは様々なクラウド・サービス(プロバイダーやアダプター)をお客様の個別のニーズに対応して組み合わせ、お客様個別専用のサービスとして提供するものです。従来のSI事業者が行っているオンプレミスの商材を組み合わせたシステム・インテグレーションをクラウド・サービスの商材に置き換えたものと考えてもいいでしょう。このようなビジネスでは大きな初期投資は不要です。しかし、WebアプリケーションやWebサービスを前提とすることになりますので、そのような技術に対応できる能力と様々なサービスの目利き能力や最適な組み合わせを作り上げるプロデューサーとしての能力が必要となります。

もうひとつ、この3類型に共通するものとして、24時間365日の運用基盤は強力な武器になるでしょう。すでに申し上げたとおり、クラウド=サービス型のビジネスは開発と運用が継続時にかつ一体で進行します。開発と運用が一体で行われるとなれば、その両者に対応できる事業者は優位です。また、スマートフォンの普及は24・365の常時接続ユーザーが当たり前になりますから、それに対応できることはさらに強みとなるはずです。

どのビジネス・モデルがいいかと言うことについては、それぞれのSI事業者が置かれている状況によって異なります。ただ、クラウド・ビジネスを漠然と眺めてみても、なかなか答えを見いだせないのも事実でしょう。

これからの事業戦略を考える上で、ひとつの整理の仕方として参考としていだければ幸いです。

■ 日経コンピューター主催[ソリューションビジネス道場]が開講します ■

12月9日と15日の2日間、講師を務めさせていだきます。上記のような話題も含め、ITのトレンドやビジネス環境を整理し、これからどのような取り組みが必要かを考えてみようと思います。

また、先週のブログでも紹介させていだきましたが、これからのIT営業に期待される役割や機能は大きく変わってきます。どのようにして、このような時代の変化に対応して行けばいいのかを、その実践ノウハウを交えながら解説させていだきます。

対象者は、これからのソリューション・ビジネスに関わる皆さんです。経営者、技術者、マーケティング、営業などの皆さんにお役に立つように考えています。

なお、このブログに掲載させていただいたようなトレンドに関するチャート(百数十枚)もパワーポイントのソフトコピーで差し上げます。是非皆さんの営業活動にご活用ください。

11月30日(水)までのお申し込みには割引もあるようです。詳しくはこちらをご覧ください。



Facebookで、コミュニティ・ページを開設しています。このブログに掲載したチャート以外にもいろいろと掲載しています。

よろしければ、あわせてご覧ください。

2011年4月16日土曜日

産地偽装クラウド

 最近、多くの製品やサービスが、「クラウド」という冠をかぶっている。よく見れば、どうして「クラウドなんですか?」と首をかしげたくなるようなものもある。
 
 このようなソリューション・ベンダー各社の「クラウド製品、クラウド戦略」なるものを改めて静観してみると、まだまだ、クラウドというものの本質が、正しく理解されていないことを痛感する。
 
 クラウドの定義については、米国商務省の配下にある国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)の定義が有名だが、この定義に照らし合わせてみると、この条件を満たす「クラウド」サービスは、我国では、決して多くないように思う。 
 もちろん、NISTの定義が、絶対と言うつもりもないし、その条件が満たされなければ、クラウドというべきではないという偏狭な主張を振りかざすつもりはない。しかし、なぜ、NISTがあのような定義をしているのか。その背景を理解せずして、NISTの定義がおかしいとか、あれは日本には合っていないなどと主張するのも、情けない。それ以上に、クラウドの本質を見誤ることになる。
 
 NISTの定義には、ひとつの明確な思想がある。それは、「クラウド・コンピューティング=無人コンピューティング」である。
 
 NISTの資料をもとに、クラウドの定義をまとめてみたのが、下の図だ。
 
 
 この図の左側に記載の「重要な特徴(Essential Characteristics)」をご覧頂きたい。ひとつひとつの解説は、省かせていだくが、この意味するところは、「広範なネットワーク接続」を除けば、「コンピューティング・リソースを調達するに当たって、調達する側も提供する側も、人手を介さないためのに何が必要か」という目的にひもづけられている。
 
 米国は、日本に比べて、技能ある人材の人件費は、極めて高い。当然、低コストでシステムを調達/提供するためには、徹底的な人件費の削減、特に、高い技能を持つ人材を削減することが、課題となっている。クラウド・サービスは、そういう人材の使用を極力少なくして、運用やサービス提供の自動化を図り、コストの削減を目指している。
 
 日本の場合は、米国と異なり、社内で人を育て、人材を育成する。当然、育った人間は、やめさせたくはない。また、制度的にも人の解雇は難しい。そのため、技能のある人材の流動性は、かなり低い。従って、米国のようなやりかたで、人件費を削減することは、なかなか難しい。そのようなこともあって、人件費は、固定費として扱われ、なかなか削減を言い出しにくいという社会的背景がある。
 
 このような違いを踏まえて、考えてみるべきだろう。
 
 クラウドとは何かと問われ、「所有から使用へ」という特徴を挙げる人は多い。もちろん間違いではないのだが、それは手段であり、目的ではない。目的は、「スキルある人材の人件費を減らし、TCOを削減すること」である。これを実現するためには、先にも挙げたように、運用やサービスの自動化を図る必要がある。となると、結果として「変更、変化への迅速な対応」も可能になる。
 
 いろいろな「クラウド・サービス」なるものが、毎日のように発表されている。それが、クラウドの定義に当てはまらないから、そのサービスに価値はないなどと言うつもりはない。ただ、ソリューションという言葉そうであるように、その言葉の持つ本来の意味や思想を理解しないままに、かっこよく、時流に乗っているかのようにみせるための修飾語としての「クラウド」の使用は、いかがなものかと思う。もっと、堂々と、クラウドとは、関係ありませんが、こんなにすごいんです・・・と言えばいいのにと思う。

 その出自も理解せぬままに使っている「クラウドXXX」。これは、「産地偽装クラウド」というべきではないか。そうしなければ、本来のクラウドまでも、風評被害にあいかねない。

■さらにいろいろな資料をFacebookで紹介しています

 このブログのFacebookページをご覧ください。ほかにもいろいろな「これ一枚のXXX」を掲載しています。


2009年2月27日金曜日

ネットの向こう側は、信頼できるのか?

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 Gメールをご存じでしょうか?グーグルが、無料で提供しているウエブ・メールです。

 2004年のサービス開始当初、1GBを無償で使えると言うことで、ギガ・メーラーの先駆けとなったサービスです。今では、その容量も6.3GBに増え、今後もどんどん増え続けそうな勢いです。一生消さないで蓄えられるだけの容量が、確保されていると言っても過言ではありません。

 Gメールの魅力は、容量の大きさばかりではありません。複数アカウントの管理、フィルター設定など、PCメーラーが備えている一通りの機能を備えています。また、迷惑メール・フィルター、アンチウイルス機能も無償であり、その精度の高さには、文句のつけようがないくらいです。

 かつて、ウエブ・メールは、画面の表示には常に再読み込みが伴い時間がかかることやショートカット・キーが使えないことなどの操作性の悪さを指摘する声がありました。しかし、今では、Ajaxを利用し、PCメーラーとなんら遜色がありません。しかも、グーグルの得意とする高速、高性能な検索機能のおかげで、従来のようにきめ細かくフイルターで仕分けておかなくても、すぐに目的のメールを見つけることができます。これは、ほんとうに便利です。

 また、なによりも、特定のPCに依存しないところがいいですね。パソコンを持ちあるかなくても、もちろん携帯電話からでも利用できる便利さに、今では、メールはすべて、Gメールを経由しています。

 Gメールを使う、もうひとつの理由は、データのバックアップが必要ないことです。米国カーネギーメロン大学の調査によると、ハード・ディスク・ドライブの故障率は、年間で3%だそうです。また、Gメールを運営するグーグルでは、なんと8%も故障するそうですから、いつも持ち歩き、振動や衝撃を与え続けている自分のノートPCを考えると、ぞっとします。

 以前は、外付けのハードディスクにバックアップしていました。しかし、忘れることもしばしばで、そんなときに限って事故はおきるものです。おかけで、何度も悲しい思いをしました。

 今は、その心配もなくなり、心穏やかな日々を送っています。

 Gメールの利用は、私のような個人にとどまりません。例えば、日本大学では、10万人を越える全学生に対して、このサービスを利用したメール・アカウントを提供しています。

 これは、Google App といわれる有償のサービスですが、同様に多くの企業で利用され始めています。

 また、Google Docsといわれるワードやエクセルに相当する機能を提供するサービスもそろそろ使えるものになってきました。

 確かに、最新のマイクロソフト・オフィースに比べると機能は、劣ります。しかし、データの互換性は、そこそこですが、高度な機能を使うことは、めったにありませんので、それほど困ることがありません。最近、重要な原稿は、Google Docsにアップするようにしています。

 先日米国に住んでいる娘夫婦が帰国する際、彼女は、生意気にも、その日程をGoogle Docsのスプレッドシートに書き込んだので、私に共有するように連絡してきました。私は、その日程表にこちらの予定を書き込み、また、彼女も追加や修正を加えてゆきます。変更や追加したことは、直ちにメールに通知されることから(設定しだいですが)、タイミングを逸することはありませんでした。

 このように、同じデータを共有して作業を行うことは、PC版エクセルの標準的な機能では、できないことです。

 さすがは、わが娘です。「あれもお願い、これもお願い・・・」ということを、この機能を使い、さりげなく要求してくるところなど、私よりもはるかに先進的な(?)使い方を心得ているようでした。

 Ajaxを使い操作はネットのこちら側でサクサクと行い、データは、ネットの向こう側で確実に管理する。こんな使い方が、そろそろ当たり前の時代になりました。

 このような考え方は、パッケージ・ソフトウェアをビジネスの柱としてきたマイクロソフトの戦略にも大きな影響を与えています。次期オフィース製品であるoffice14には、Live Mesh という技術が搭載されるそうです。この技術は、ネットのこちら側のPCとネットの向こう側にあるサーバーの間でデータを同期するものです。

 グーグルは、ネットの向こう側にオリジナル(原本)を持ち、マイクロソフトは、ネットの両側、つまりどこにでもオリジナルを存在させるという考えのようです。どちらにしても、ネットワークとその向こう側を信頼するという前提で、サービスを提供しようとしていることには、まちがえはありません。

 今まで、ネットの向こう側に信頼を置くということには抵抗があり、「個人としては、使えても、企業では使えない」ということも言われてきました。しかし、Gメールは、99.9%のサービス品質保証制度を導入すると発表しています。

 ネットの向こう側に巨大なコンピューターを構築する。しかも、そのほとんどが、無料、あるいは低料金で利用できるのです。

 メールやオフィース・ツールだけではなく、フォト(写真)・ストレージ・サービスも膨大な登録会員を抱えています。また、今まさに書いているブログにしても、公開するだけではなく、自分の考えや情報を整理し、それを保管する手段として、ネットの向こう側に頼っているのです。

 ライフ・ログという考え方があります。言葉の通り、人生そのものを記録に残するというものです。メールや文書、写真などが、一生消されないままに蓄積できるようになり、ネットは、まさに巨大なライフ・ログの集合体となりつつあるのです。

 ソフトウエア開発、パッケージ導入やバージョンアップ。今まで私たちは、ネットのこちら側を前提として、ビジネスを考えてきました。

 「ネットの向こう側は、信用できないので、こちら側で持たなければ、大変なことになりますよ。」

 そろそろ、この考え方を変えなくてはならないようです。

 自分たちが、ネットの向こう側になるのか、それともこちら側になるのか。そういう視点で、これからのビジネスのあり方を考えてみるべきではないでしょうか。

■ 締め切り迫る ■ -----------

 今年度最後の「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」が開催されます。

 ■ 標準コース : 3月 5日(木)、 6日(金) 2日間 東京
 ■ 管理者コース: 3月 9日(月)、10日(火) 2日間 東京

 今回からは、今までの研修で頂戴した皆様からのご意見を反映し、より解りやすく、よ実践的な内容にリニューアルして、講義をさせていただこうと準備をしています。

 特に管理者コースでは、今年のプランニングや今年度の部下の育成計画についても、踏み込んだ内容にしようと考えています。この管理者コースにつては、この厳しい景気を反映してか前回は定員割れとなり延期となってしまいました。
 
 お申し込みを頂きました皆様には、大変申し訳なく、お詫び申し上げます。そんな、皆様のお気持ちに報いるためにも、張り切って内容の充実を図ってまいります。
  • お申し込みは、こちらから。
  • パンフレットは、こちらからダウンロード出来ます。
多くの皆様のご参加を楽しみにしています。

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2009年2月23日月曜日

システム 雲に載る (5) 完

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 SIS(Strategic Information System/戦略情報システム)、DSS(Decision Support System/意思決定支援システム)、EUC(End-user Computing)など、1990年ごろにもてはやされたキーワードです。もう死語となってしまいました。

 EA(Enterprise Architecture)やBPM(Business Process Management)なども、一次はやりましたが、最近は、あまれ聞かれなくなりました。

 こういう言葉は、コンピューター・メーカーが、マーケティング用語として作り出したものも多いわけですが、お客様に受け入れていただいたからこそ、その時代のトレンドをあらわすキーワードとして定着したのだろうと思います。コンピューター屋が勝手に押し付けたわけではないのです。

 営業という仕事が成り立つのは、お客様に仕事があるからです。見方を変えれば、お客様も仕事をしなくてはならならないので、仕事のネタを探しているのです。そんな、お客様に次の仕事のテーマやきっかけを提供するのが、こんなトレンド・キーワードなのです。

 旧態依然のシステムは、いずれコスト的にも機能的にも、時代に見合わないものとなります。また、時代の要請に応え、新たな仕組みを作る必要も生まれてきます。
 しかし、意思決定者にとって見れば、社内に、あるいは、経営者に対して、これからやろうという「仕事」が、世間の流れであり、常識になっていることを示さなくてはなりません。こういうときに威力を発揮するのが、トレンド・キーワードなのです。

 もちろんキーワードだけでモノが売れるほど、世の中はそんなに甘いものではありません。ただ、キーワードは、お客様の注意を喚起し、話しのきっかけを作ることには、大いに貢献してくれることは確かです。

 また、新しいトレンド・キーワードが世の中に出始めたころは、特にお客様の関心も高く、話しのきっかけを作りやすいものです。こういうきっかけを利用しない手はないでしょう。

 昨日のブログでも紹介しましたが、その言葉の意味や解釈が十分に定着していないときこそ、最も利用価値が高いといえるでしょう。営業は自ら進んでその言葉を整理し、自社の製品やサービスと組み合わせて新しいコンセプトを作り出してゆく。そこに自分たちなりの解釈、独自の組み合わせを組み込むことで、自社のユニークネスを発揮できるチャンスになるのです。

 お客様も自分の「仕事」のために、それを利用したいと思っているのです。新しいテーマを求めているのです。こういう時期だからこそ、そんなお客様の期待に応え、新しいトレンドをテーマに積極的な提案を仕掛けてみてはいかがでしょう。

 「クラウド」も旬のうちに、どんどん使わなくては、もったいないですよ。

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2009年2月22日日曜日

システム 雲に載る (4)

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 前回に引き続き、クラウド型サービスを前提としたビジネスについて、考えてゆこうと思います。

4.インフラまたは、共有サービスを提供するパブリック・クラウド型サービスを利用したお客様のアプリケーション開発を請け負う

 プラットフォーム・レイヤーや共通サービスレイヤーのクラウド型サービスは、アプリケーションを自社で用意し、コンピューティング・リソースを外部に依存するシステム利用の形態です。そのアプリケーション開発やそのシステムと社内システムを連携させる仕組みを開発する業務が生まれます。

 ただ、この場合、単にプロセッサーやストレージを外部に依存すると言うだけではなく、サービス・プロバイダーが提供する機能やサービスと組み合わせることで、クラウドならではの付加価値を高めることも可能となります。

 たとえば、世界最大のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)であるFacebook.comが提供するサービスでは、ここで開発したアプリケーションを自社のサービスとして外部に提供できるのですが、ここで提供されているSNS機能を組み込むことで、Facebook.comの巨大なソーシャル・グラフ(人と人との相関図、関係図)を自社のサービスに組み込むことが出来るようになります。

 また、Microsoft AzureやGoogle Appのように、各サービスが提供する各種パーソナル・ツール類をサービスに組み込むこともできます。このように、クラウド型サービスが提供する共通サービスや上位のアプリケーションを利用することで、開発するアプリケーションの機能を向上させたり、自社だけで出来ないことが可能になるといったメリットを享受することが出来るようになります。

5.インフラまたは、共有サービスを提供するパブリック・クラウド型サービスを提供する事業者にアプリケーション・サービスを提供する

  プラットフォーム・レイヤーや共通サービスレイヤーを提供するサービス提供者に対し、アプリケーション機能を提供することや彼等のサービスを利用して自らサービスを提供するスタイルです。

 コンピューティング資源だけを利用して運用コストやスキルの問題を解決することも可能です。しかし、それだけではなく、クラウドならではの機能を利用することで、提供するアプリケーションの完成度や利便性を高め、サービスの品質を向上させることが可能となります。

 たとえば、先ほどのFacebook.comのように、自社だけであの強大なソーシャルグラフを作ることは出来ません。また、オフィース系のツールを組み込むことでユーザーの利便性を高めることも考えられます。このように、利用するサービスの特性を活かしながら、更に自社のアプリケーションの魅力を高める事も可能になるはずです。

6.パブリック・クラウド型サービスを提供する事業者のシステムを構築する

 一般的なデータセンター・サービスを提供する企業が、クラウド型サービスへ転換することを提案し、システム環境構築を行うビジネスです。ネットワーク、サーバー、VMやファイル共有、ロードバランシングなどを組み込んだシステム構築スキルが必要です。また、課金や運用監視にも対応しなければなりません。従って、システム運用管理に関わる技術も必要です。

 クラウド型サービスを一度使い始めたユーザーは、コンピューティング・パワーもストレージも、なかなか減らすことはできなくなります。特にストレージは、バックアップなどを考えれば、増えることはあっても減ることはありません。そう考えると、サービス開始当初は、コストが高くても、ハードウェアの値段は下がりますから、サービス提供者の収益力は高まります。従って、このようなお客様をしっかりつかんでおけば、継続的なリピート・オーダーを期待することができるかもしれません。

 ただ、そのためにもお客様のテクニカル・アドバイザーとして、頼りにされる専門知識と積極的な改善提案を行える人材の育成が必要となるでしょう。

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 かなり大雑把ではありますが、ソリューション・ベンダーとしてのクラウド・ビジネスにどう取り組めばいいのかを類型化してみました。

 ソリューション営業として大切なことは、このようなトレンドの変化をうまく利用して、お客様に新たな可能性への期待、夢を提供することだと思います。

 ちょっと、視点は違うかも知れませんが、お客様も仕事をしなければなりません。お客様もテーマを探しています。

 研修でもお話ししていますが、インターネットなどにより、情報入手の手段が増え、お客様も営業である皆さんも、情報の量に於いては、同じ立場にあります。従って、かつてのように、営業が、情報量の優位を武器にすることは出来なくなりました。

 しかし、こういうトレンドの変わり目は、営業にもチャンスがあります。それは、世の中の考えが、まだ統一されていないためです。お客様とは違う考え方を示しても、何らおかしくありませんし、新たな視点が、自社のユニークネスにもなりうるからです。

 だからこそ、こういう時期に提案の切り口として、新たなコンセプトと可能性を皆さんの言葉で積極的に伝えることが大切です。ビジネスでイニシアティブをとれるチャンスが生まれるのです。

 クラウドは、まだそんな過渡期にあるキーワードと言えるでしょう。

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 今年度最後の「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」が開催されます。

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2009年2月21日土曜日

システム 雲に載る (3)

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 ソリューション営業として、クラウド型サービスをとのように考え、ビジネスとして取り組んでゆくのか。その点について、考えてみようと思います。

1.自社で投資してパブリック・クラウド型サービスを提供する

 これには、先行的な設備投資が必要になります。また、どのようなサービスを提供するかも重要です。AmazonやGoogle、Microsoftのまねをすることは容易なことではありませんから、やはりアプリケーション、地域、人的サービスとの組み合わせなどにより、特化した独自性を提供することが必要になります。

 すでに独自のアプリケーション・パッケージを持っているとか、プラットフォーム構築に自信があれば、このようなサービスを提供することも可能でしょう。
 
 地域性を活かすというのは、意味があるかも知れません。昨日紹介したクラウドのリスクのかなりの部分は、ある特定の地域の中で運用、提供され、しかも相談できる相手がすぐそばにいると言うことで、大半は解決できるかも知れません。
 見方を変えれば、地域に特化したオンデマンド型データセンターという発想です。それを「XX地域クラウド・プラットフォーム・サービス」とでも命名すれば、なかなか先進的な印象も与えられるでしょう。

 ただ、単なるラック貸しやレンタルサーバーのままでは、看板を掛け替えただけであり、クラウドでも何でもありません。柔軟でダイナミックな・システム・リソースの利用とプラットフォームの仮想化は、前提となります。

 以前ご紹介したSaaS (Storage as a Service)を提供するブルーシフトは、少し特化したモノですが、自社の得意とするものをうまく活かしたサービス・レイヤの好例といえるでしょう。

 また、BPOサービスとの組み合わせという考え方もあるかも知れません。システムだけではなく、人的リソースとあわせ、また、業務スキルも含めて、全て丸抱えするという考え方です。このような、ビジネス形態は、システム事業者ではなく、業務受託サービスを提供している事業者が主体となるほうが、効果的かも知れません。

 どちらにしても、共通のプラットフォームを提供するというのではなく、独自の特色をどう出してゆくかで勝負が決まると思います。

2.お客様のプライベート・クラウド環境の構築を行う

 インフラやプラットフォーム構築を得意とするソリューション・ベンダーが、サーバービジネスを提案するときの「気の利いたメッセージ」になると思います。要するに、VM、ロードバランサー、SANそして、運用管理システムをひとつにまとめて、全体の構築を請け負いますという話です。

 今と何が違うのかという議論はありますが、クラウドという言葉の勢いを借りて、提案のチャンス、あるいは、セミナーなどの集客が行いやすくなるかも知れません。

 ただ、プライベート・クラウドの目的は、単に既存の分散するシステム資源を集約し、コストを削減することではなく、将来にわたって、常に全社として、低コスト、最適リソースで運営できる基盤を構築することにあります。ですから、単にオフィース系の分散されているサーバーをVMで集約するという単純な話ではなく、全社的あるいは、大きなユーザーを抱える事業所などの単位で、大きな仕掛けとして提案すべきではないかと思います。ここを差別化のポイントと考えてみてはいかがでしょうか。

3.お客様のクラウド型サービス利用のための環境構築を支援する

 クラウド型サービスを使うと言っても、全社のシステムを全てクラウドに置き換えてしまうことは、現実的ではありません。リスクを十分に考慮し、クラウドならではの良さを最大限に活かせるものから、クラウドを利用してゆくことを考えるべきでしょう

 たとえば、比較的リスクが少なく、モバイルでの利便性を考えるなら、Webメーラーやスケジュールなどのコラボレーション・ツールなどは、比較的容易に利用できる分野です。

 IBMが、今年の1月、香港の大手アプリケーション・サービス・プロバイダーであるOutblazeの電子メール・サービス資産を買収したのは、この分野のビジネスを加速しようとの思惑があるからです。IBMは、このシステムをビジネス・コラボーレーションのクラウド型サービスであるBluehoseと連携させることを考えているようです。

 また、GEの取引先50万社をつなぐSCMをSaaSで提供する話なども、企業をまたがる仕組みであり、リソースのダイナミックな配分が必要とされることを考えると、現実的な選択であったのかも知れません。

 このような、クラウドの利用を企画、計画の段階からコンサルティングし、その最適な利用形態を考え、計画を作ることもソリューション・プロバイダーに求められます。

 また、クラウド化されたサービスと既存システムとの連携や、シンクライアントなどの利用環境の革新も必要となります。これらをコーディネイトし、最適な利用環境を構築することが求められるはずです。

 ソリューション・プロバイダーの役割は、クラウド型サービスを利用するお客様の上流から下流までをトータルコーティトすることにあります。その上で、自社のサービスを提供できるのなら、ビジネスの規模を大きくすることができます。

 残りの3点については、次回考えてみようと思います。

■ 研修のご案内 ■ -----------

 さて、いよいよ、新たな年度のスタートに備え、下記日程にて、今年度最後の「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」が開催されます。

 ■ 標準コース : 3月 5日(木)、 6日(金) 2日間 東京
 ■ 管理者コース: 3月 9日(月)、10日(火) 2日間 東京

 今回からは、今までの研修で頂戴した皆様からのご意見を反映し、より解りやすく、よ実践的な内容にリニューアルして、講義をさせていただこうと準備をしています。

 特に管理者コースでは、今年のプランニングや今年度の部下の育成計画についても、踏み込んだ内容にしようと考えています。この管理者コースにつては、この厳しい景気を反映してか前回は定員割れとなり延期となってしまいました。
 
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2009年2月20日金曜日

システム 雲に載る (2)

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  クラウド型サービスのリスクについて、米国の調査会社、ガートナーが、次の7つの点を上げています。その記事が、コンピューター・ワールドのWeb版に掲載されていましたので、それを一部要約する形で、紹介させて頂きます。

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1. 特権ユーザーによるアクセス
 ユーザー企業が利用するサービスの運営を外部に任せることになります。そうなると、システムの「物理的管理」「論理的管理」「人的管理」は、サービス提供者に依存せざるを得なくなります。「特権を持つ管理者や彼らに対するアクセス監視/制御を行うよう求める必要がある」(Gartner)と指摘しています。

2. コンプライアンス関連
 自社データの安全性と完全性は最終的にユーザー企業の責任となります。従って、外部の監査や安全性のチェックをユーザー企業が行うことができなければなりません。

3. データの保管場所
 クラウドですから、データがホスティングされる正確な場所は顧客は、わかりません。国内であるとも限らないわけです。とすると、データの保管/処理の法的権限、プライバシー保護規制などについて、サービス提供者とユーザーとが、契約を結んでおく必要があります。
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4. データの隔離 
 ユーザーのデータは、クラウド・システム内で他の顧客のものと共有されます。暗号化や運用の手順などで、どのようなリスクがあるのか、あるいは、問題は生じないか、確認しておく必要があります。

5. データの復旧
 バックアップ、リカバリーの対応を明確にしておく必要があります。災害時への対応、トラブルが起こった場合の復旧時間、サービスの継続性などとともに、データの消滅や不整合の発生は避けなければなりません。

6. 調査に対する協力姿勢
 不適切行為や違法行為が行われたとき、調査ができるかどうかです。サービス提供者のコンプライアンス体制や調査請求や開示要求への対応条件など、明らかにする必要があります。

7. 長期にわたる事業継続性
 「決して倒産せず、大手企業に買収もしくは吸収されることのないクラウド・ベンダーを選びたい。」が理想としても、それができる保証はありません。データや運用のバックアップも含め、対策を講じる必要があります。
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 この指摘にもあるとおり、このようなリスクを考慮したうえで、利用するサービスの範囲や業務の棲み分けを考えておく必要がありそうです。

 ただ、過去の例をみれば、新しいサービスが多くの課題やリスクを持つことは、当然のことです。これら課題を解決してゆくことで、サービス品質を向上させてゆくのが、サービス提供者の仕事であり、利用する企業もそれを見ながら適用範囲を広げてゆくという相互関係によって、クラウド型サービスが徐々に普及、拡大してゆくと考えるべきでしょう。

 どこかの記事で読んだのですが、「20世紀初頭の製造業は、どこも自社内に発電所を持って操業していました。今では、そういうところは、ほとんどありません。」。クラウド型サービスもそんな過渡期にあると考えるべきでしょう。

 このような、クラウド型サービスを、どのように事業化し、また、IT営業として販売してゆけばいいのかについて、次に考えてゆこうと思います。

■ クラウド型サービスを販売する

 大きく分けると、次の6つのビジネス形態が考えられます。
  1. 自社で投資してパブリック・クラウド型サービスを提供する
  2. お客様のプライベート・クラウド環境の構築を行う
  3. お客様のクラウド型サービス利用のための環境構築を支援する
  4. インフラまたは、共有サービスを提供するパブリック・クラウド型サービスを利用したお客様のアプリケーション開発を請け負う
  5. インフラまたは、共有サービスを提供するパブリック・クラウド型サービスを提供する事業者にアプリケーション・サービスを提供する
  6. パブリック・クラウド型サービスを提供する事業者のシステムを構築する
それぞれについて、考えてみようと思います。

・・・ すみません。2回で完結しようと思ったのですが、いろいろと調べたり、考えたりしている内容がどんどん膨らんでしまいました。次回以降、複数回に分けて、もっと深掘りしてゆくことに方針転換です。

 よろしかったら、お付き合いください。また、ご質問やご意見、大歓迎です。是非、コメントでお寄せください。

■ 研修のご案内 ■ -----------

 さて、いよいよ、新たな年度のスタートに備え、下記日程にて、今年度最後の「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」が開催されます。

 ■ 標準コース : 3月 5日(木)、 6日(金) 2日間 東京
 ■ 管理者コース: 3月 9日(月)、10日(火) 2日間 東京

 今回からは、今までの研修で頂戴した皆様からのご意見を反映し、より解りやすく、よ実践的な内容にリニューアルして、講義をさせていただこうと準備をしています。

 特に管理者コースでは、今年のプランニングや今年度の部下の育成計画についても、踏み込んだ内容にしようと考えています。この管理者コースにつては、この厳しい景気を反映してか前回は定員割れとなり延期となってしまいました。
 
 お申し込みを頂きました皆様には、大変申し訳なく、お詫び申し上げます。そんな、皆様のお気持ちに報いるためにも、張り切って内容の充実を図ってまいります。
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多くの皆様のご参加を楽しみにしています。

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2009年2月19日木曜日

システム 雲に載る (1)

 「クラウド型サービスの事業戦略を検討するように指示されています。今年の柱のひとつとして位置づけたいと考えているんです。」

 先日研修に参加されたソリューション・ベンダーの方が、こんな話しをされていました。確かに昨今のIT関連の話題を見ているとクラウド・コンピューティングの話題が、増えてきたように思います。

 不況の影響でコスト削減への注目が高まっている中、お客様の関心が高まっていることも背景にあるのでしょう。

 クラウド・コンピューティングとは何かについては、いろいろなところに紹介されています。そこで、このブログでは、ITソリューション営業として、どのように考え、取り組んでゆくべきかという視点で、2回に分けて考えてみようと思います。

■ クラウド・コンピューティングとは

 まず、最初にクラウド・コンピューティングとは何かと言うことについて、簡単にまとめてみようと思います。

 そもそも、クラウド・コンピューティングとは、全く新しい概念のことばではありません。今までにも使われていた、グリッド・コンピューティングやSaaS、Webサービス、ユビキタス・コンピューティング、オンデマンド・コンピューティングなどという言葉を包括する言葉として使われています。

 上記のような個別のシステム形態を包括した言葉にすぎません。しかし、Web2.0と同じように、この言葉によって、ひとつのトレンドをイメージすることができるという意味においては、新鮮な印象を与えています。マーケティングや営業活動のキーワードとして、お客様との会話を進める上で、また、提案の切り口として、使える言葉ではあります。

 さて、このクラウド・コンビューティングでは、その言葉通り、サーバーやストレージなどのシステム資源が、雲(=ネットワーク:ネットワークを雲のように描くことから)の向こう側にあります。ユーザーは、雲のこちら側からそのシステム資源を利用することになります。

 クラウド・コンピューティングでは、システム資源を利用する単位が、今までと大きく変わることになります。たとえば、従来は、ハードウェアについては、製品と台数が単位でした。しかし、クラウド・コンピューティングでは、「処理能力」となります。また、アプリケーションについては、パッケージ単位だったものが、処理機能単位に変わります。

 この考え方は、IBMが提唱していたオンデマンド・コンピューティングをインフラやプラットフォームだけではなく、アプリケーションにまで拡張した考え方といえるかもしれません。必要に応じて、ダイナミックにシステム・リソースを変更できることが、クラウドの魅力でもあります。

 ところで、Amazonのクラウド・サービス「EC2」とは、 Elastic Compute Cloud (Elasticとは、弾力のある、融通の利く、伸び縮みするという意味)のことです。

 ところで、クラウド・コンピューティングを、次の3つのレイヤーに分けて考えるとわかりやすいようです。

 ● プラットフォーム
 ● 共通サービス
 ● アプリケーション

「プラットフォーム」とは、サーバーやハードディスク、オペレーティング・システムなどを提供するレイヤーです。クラウド・コンピューティングでは、これを仮想化技術などを組み合わせて、提供しています。

 IBMのクラウド・サービス「Blue Cloud」を見ると、サーバーの仮想化技術としてXenやPowerVM、分散ファイルシステムとしてHadoopを使うとしており、これ自身が特に目新しい技術というわけではなさそうです。しかし、これを大規模に組み合わせて、しかもサービス品質を維持しなければならないわけですから、必ずしも容易なことではありません。

 次の「共通サービス」は、データベースやユーティリティ、開発環境などが、含まれます。Amazon EC2、Google App、foce.comなどは、プラットフォームとともに、このレイヤーもカバーしています。

 最上位が、「アプリケーション」となります。Amazonのサービスを見ると700もの複数社のパッケージが共有サービスとして提供されており、それらをAmazonのプラットフォーム上で組み合わせて利用できるようになっているようです。

 他にも、salesfoce.comなどの法人向けサービス、GoogleのGmailやDocsなど、個人も含めたより広範なユーザー層を対象にしたサービスも提供されていています。

 また、クラウド・サービスを「パプリック」と「プライベート」に分けて説明されることがあります。
 
 たとえば、法人を対象としたsalesfoce.comやIBMのBluehouse/Lotus Live、個人を対象としたGoogleのGmailやDocsなど、インターネットを介して、広範なユーザーを対象に無償または安価で提供されているクラウド・サービスがあります。これを「パブリック」クラウドと呼んでいます。

 それに対し、「プライベート」クラウドは、ファイヤーウォールの内側、企業内で管理、提供されるサービスです。
 企業内に分散したリソースを単一のコンピューティング・プールとして利用することを目的とし、システム資源の最適化やコスト低減を図ろうというものです。場合によっては、ビジネス・パートナーやサプライチェーンなどを構成する自社と密接な関係にある企業も含めた利用環境も想定されます。

 「パブリック」クラウドで問題となるネットワークの帯域や可用性、機密漏えいなどのセキュリティについても、自社の管理下におくことで解決することができます。

 「パブリック」クラウドを提供しているAmazonは、自社内のシステム・リソースをXenを利用した仮想化プラットフォーム上で運用し、この「プライベート」クラウドを実現しています。

 世界的な市場調査会社であるガートナーは、今後の数年は、企業の「プライベート」クラウドの需要が拡大すると予測しています。ただ、このような取り組みが可能なのは、大企業に限られているとし、小規模、中堅企業(SMB)においては、「パブリック」の需要が、拡大するとも指摘しています。

 ところで、クラウド・コンピューテングの価値は、どこにあるかということですが、もっとも大きな魅力は、コスト低減にあります。また、SMBでは、運用に関わる人材の確保からも開放されるという魅力もあります。

 ハードウェア・コストが下がる一方で、人件費の割合は、相対的に高まります。クラウド化は、この問題を解決する手段となります。しかし、その一方で、システムの安定稼動やデータの保全、セキュリティへの懸念は、つきまといます。従って、すべての企業が、一気にクラウドに置き換えてゆこうということにはならないでしょう。

 しかし、解決は時間の問題です。また、用途を限れば、今でも十分に使える領域があるわけで、徐々にその範囲が拡大することになりると考えておくべきでしょう。
 GEが50万社を対象とした自社のサプライチェーンをSaaSで構築したケースを見れば、その可能性が十分にあることが理解できます。クラウドが一時的なブームに終わることにはならないと思います。 

 また、大企業とSMBでは、その対応が異なります。その違いとともに、営業としてどのように対処してゆけばいいのか、そのあたりについては、次回で考えてゆこうと思います。

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2008年12月10日水曜日

商品=プロデュースX(機器+サービス)

 「SIerやITベンダーは、サービスの時代になって、中抜きになる」と書いた。となると、一体、その両端は、誰が来るのだろうか?

 その答えについて話をする前に、前回の補足として、PaaSとクラウドコンピューティングについて、まずは考えてみようと思う。

 PaaSとは、SalesFoces.comが、昨年発表したコンセプトで、Platform as a Service つまり、サービスとして提供されるプラットフォームの略である。SaaS(Software as a Service)つまり、サービスとして提供される(アプリケーション)ソフトウェアほど、業務システムに関わるところまで、事業者に委ねてしまうのではなく、システムを運用するプラットフォームと開発環境だけをサービスとしして提供するというものだ。
 SalesFoces.comがいうまでもなく、このようなサービス形態は、すでにいくつもあるが、ますます広がってゆくことは十分に考えられる。

 SaaSに比べて、こちらのほうが個々の企業の業務実態に即してシステムを柔軟に開発することができるという考え方もある。そうすると、SIや開発の受託は残るわけで、Sierも中抜きにならずにすむという見方もある。

 しかし、前回も申し上げたとおりSIとは、結局のところハードウェア・ビジネスに結びついてこそ成り立っている側面があるだけに、開発だけとなるとどれだけビジネスとしての旨みがあるかは、なはだ疑問といわざるを得ない。ましてや、SIと称しながらも、システム販売、導入、ネットワーク構築などに依存してきた事業者にとっては、大変厳しい時代となるだろう。

 お客様にしてみれば、ハードウェアをサービス事業者に任せてしまうわけだから、システム開発にだけ着目して、その品質、納期、コストをさらに厳しく追求するようになるだろう。しっかりとした、開発標準や管理体制を提供できない事業者は淘汰されてゆく。お客様が、サービスにもとめる要求水準がますます高くなってゆくのである。

 視点を変えれば、ハードウェアの販売を手がける大手事業者にとっては、根本的な事業転換を求められることになるのだろう。

 その一方で、彼ら大手が一時請負事業者となり、そこからシステム開発のみを受託されていた企業にとっては、ビジネス・チャンスと見ることもできる。プロジェクトマネージメント、プロセス品質の管理などを徹底し、それを「サービス商品」として持つことができれば、売り込む上での強力な武器となるだろう。

 PaaS以外にも、SaaS、ASP、WebAppなど、自社にシステム開発や運用の環境を持たず、ネットの向こう側、つまりインターネットを介してシステム資源利用するコンピューター環境のことをクラウド・コンピューティングと言う。

 PaaSにしろクラウド・コンピューティングにしろ、アメリカ人は、言葉を作るのがうまい。切れのいい、そうかと思わせるような言葉を作り、わが社の事業コンセプトであり、業界のトレンド・リーダーという顔をする。こちらもなにか新しい考え方が生まれてきたような錯覚にとらわれる。
 しかし、従来からの流れを整理し、それをこのような言葉に表現しただけのことであり、珍しいものではないとさめたみかたもできるが、たしかに自分で考えをまとめたりお客様に説明するには、これはこれで役に立つ。

 横道にそれてしまったが、クラウドにしろPaaSにしろ、インターネット越しの向こう側にシステム資源を置くという考え方。この不況の中で、ますます企業は、真剣にその可能性を追求するようになるだろう。

 その一方で、それらサービスを提供してくれる企業に対する依存も高まるわけで、ビジネス・コンティニュイティの観点から、リスクが高まることは避けられない。

 もし、サービスを提供してくれる事業者が潰れてしまい、サービスを提供できなくなってしまったらどうなるか。あるいは、そこまで行かなくても、事業の拡大にあわせてシステム資源を大きくするときやより高いサービス・レベルの要求に対して迅速に対応してもらえるのかといった課題も残る。

 となると、このようなサービスを提供できる事業者は、安定した経営基盤を持つ大手企業ということになるのだろうか。
 このような、大手企業のPaaSを利用し、SaaSやASP、あるいは、BPOを提供する事業者も現れるだろう。このような分業が、今後ますます進むことは想像に難くない。

 「中抜きの両端は、誰が来るのだろうか?」という最初の問いかけに戻るが、片方はお客様。それも、システム部門ではなくエンドユーザーに近い部門である。システム部門は、彼らに対するアドバイザーであり、システム・サービスを購入する購買部門的な役割となるかもしれない。
 
 もう片方は、ネットワーク事業者、プラットフォーム・サービス提供事業者、アプリケーション・サービス事業者というように、役割分担がますます進んでくるだろう。

 このようにパラダイムが大きく変わろうとしている時期に、みなさんは、どのようなポジションで仕事をされようとしているのか。

 まじめにこつこつしっかりと仕事をし、信頼関係を築き、きちんとリピートをもらえているから安心・・・という時代ではなくなろうとしている。景気動向とあいまって、お客様の購入基準も大きく変わろうとしている。

 ソリューション営業とは、このような顧客の変化を捕らえ、お客様個別の課題解決のための「商品=プロデュースX(機器+サービス)」を作り、提案を通して提供して、販売活動を行う仕事である。

 営業個人が「ソリューション営業力」を持つだけではなく、時代の変化を見据えた、企業としての「ソリューション営業戦略」が今求められている。