2010年1月29日金曜日

信頼されない営業になるための5つの方法

 営業研修の冒頭、受講者に自分の思い描く「理想の営業像」について語っていただくようにしている。そのとき、必ず聞く言葉は、「お客様に信頼される営業」である。

 しかし、お客様に信頼されるようになるということは、簡単なことではない。むしろ、「信頼されない」ままでいるほうが、はるかに楽だ。

 無理して、信頼されようとはせず、素直に自分の実力を受け入れ、信頼されないままにする。いや、信頼されないように努力したほうが、潔い。

 もちろん、嘘をついたり、犯罪まがいのことをすれば、簡単に信頼されなくなる。しかし、これでは、会社にもいられないし、生活もできなくなってしまう。そのあたりをうまくすり抜けながら、確実にお客様の信頼を失う方法について、考えてみようと思う。

第一条 お客様の話しを知ったかぶりでごまかす

 お客様が、こんな質問をしたとしよう。

 「うちもクラウドへの対応を考えようと思うんだけど、どうすればいいかなあ?」

 これに対して、あなたは・・・

 「クラウドですか?そんなものは、単なる流行言葉で、気にする必要なんかありませんよ!」

 と答える。そうすれば、あなたは一気に信用を失うことができる。

 お客様とて意外としっかりと勉強しているものだ。ある程度のことが分った上での質問と心得ておくべきだろう。そんなときに、クラウドと仮想化の区別もできず、SaaS、PaaS、IaaSの区別も分らないまま、強気でしらを切り、「そんなことより、こんど、こんな製品を出したんですが・・・」と自分の知っていること、都合がいいことに話しを向ける。

 お客様は、「こいつは、何もわかってないんだなぁ」と、それ以降相談されなくなるだろう。

第二条 美しくない資料を作る

 お客様が、「概算の費用を教えてくれない?」とあなたに依頼する。当然金額を間違えるわけにはゆかないから、Excelで細かいオプションも含めて費用計算する。その作業で作ったExcelシートを体裁も整えず、あて先も書かず、すべての細かい項目もそのままに、お客様に提出する。 

 提案書を出してほしいといわれる。しかし、ページごとにタイトルの位置や大きさがばらばら。フォントもコジックと明朝を同じページに混在。きれいをカラフルと混同し、いろいろな色を多用する。

 図表の縦横の位置が、そろっていない。文字が背景色に隠れて、なんと書いてあるのか良く分らない。

 それを「おかしい」と思わずに、そのままお客様に提出する無神経。お客様に「なに、これ?」と常識を疑われることは、間違えない。

第三条 見積金額を間違える

 見積り金額を間違え、後で修正する。高い金額を安く修正するなら、「なんとか、がんばって、安くしました。」という言い訳でごまかすことができるかもしれない。しかし、お客様は、間違えを見抜いている。しかし、自分に不利な話しでもないので、この芝居に付き合ってくれるかもしれない。

 しかし、安いものを高くする場合は、そうは行かないだろう。

 どちらにしても、お金や数字への感性が低い相手は、心配であり、不安である。こんな相手と、商売の話しをしたいとは思わないだろう。

第四条 競合他社の批判する

 「A社は、とんでもない会社ですよ。X社で、こんな失敗をしでかして、大変なことになっているらしいんですよ。」

 「あの製品には、この機能がありませんから、使い物になりませんよ。」

 他社の批判は、自分の自信のなさの裏返しである。自信がないから、相手を貶(おとし)め、自分の存在を高めようとする。しかし、自分が高くなったわけではない。

 本当に事実なのだろうか。たとえ事実であったとしても、それが目の前にいるお客様にとって関係があるのだろうか。また、機能や性能の良し悪しは、どう使うかとの関係で決まる場合も多い。単なる○×の比較で、どちらがいいと決められるほど簡単なことではない。

 そんなことも考えず、善意の第三者であり、専門家である顔をして、講釈をたれる。たぶんのその腹の底は、直ぐに見抜かれてしまうだろう。

第五条 お客様に話をさせない

 自分の言いたいことだけを話し、お客様の話しを聞こうとしない。

 お客様が話しをしていても、馬耳東風。聞いてる振りはするけれども、理解しようなどという了見は持ってはいけない。

 自分の売りたいものをどうすれば魅力的に伝えられるか、分り易く伝えられるか・・・それだけを考え続け、お客様の話のタイミングを見計らって、一気呵成に自分言いたいことを繰り出す。

 なるほど・・・とうなずくのもあり。聞いている振りをし、「なんと真剣に聞いてくれている人だろう」という好印象を与えておくのも、ひとつのテクニックだ。しかし、本当のところは、何も聞いていない。ただ、自分が話し始めるタイミングを推し量っているだけにする。

 お客様の話を最後まで聞かず、途中でさえぎり、それはこういうことですよ・・・と説得にかかるのも効果的。

 お客様から、「こいつには、なにを話しても無駄だなぁ」と思わせることができる。

 さて、皆さんは、以上のうちのいくつを実践されているだろうか?もし、ひとつでもできているのなら、信頼を失いかけていると、自信を持てばいい。3つ以上実践している人は、すばらしい。間違えなく、お客様に愛想をつかされている。

 それでも、そう簡単に会社はあなたをやめさせることはできないから、どうぞご安心ください。

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2010年1月21日木曜日

クラウドがもたらすSIビジネスの3つの構造変化

 クラウドで、モノが売れなくなる理由については、以前のブログで紹介したが、では、開発請負業務や開発、運用、保守などの準委任業務などのヒト・ビジネスは、どのような影響を受けるのだろうか。今日は、この点について考えてみよう。

■ 大手元請企業は、中小の下請企業を使わなくなる


 不況の継続とニューノーマルの広がりにより、お客様のコスト削減への関心は、これからも続くことが予想される。これに応えるために、大手元請各社は、グループ内での内製化とオフショア利用の拡大を加速させ、独立系の下請企業は、仕事量が減るものと予想される。

  また、クラウド・システム(PaaSやIaaS)をプラットフォームとしたシステム開発や運用も広がるだろう。まもなくサービスを開始するWindows Azure Platformは、この動きを加速するだろう。そうなると、インフラ構築や運用などのビジネスは、減少する。

 下の図をご覧いただきたい。


 この図が示すとおり、大手元請企業は、自分達で上流を押さえ、開発や運用は、クラウドやオフショアに任せることになるから、下請による開発や運用の受託業務の仕事量は、構造的に減少することになるだろう。

■ SIビジネスの3つの構造変化にどう対応するか

 クラウドの普及は、SIビジネスに、次のような構造変化をもたらすことが、予想される。

1.利益率の低下
  SIのプラットフォームとして、クラウド(この場合は、PaaSやIaaS)の利用が拡大すると、従来、受注に含まれていたハードウェアやミドルウェアの プロダクト購入費用、導入や設定、冗長化構成のため作業費用など、確実な利益を期待できる部分が、なくなる。その結果、開発費用のみが丸裸になり、利益を 織り込む余地が少なくなる。その結果、利益率が低下する。

2.案件単価の低下
 クラウド、特にSaaSの普及は、 まったくの新規開発を減らすことになるだろう。SaaSを利用しながら、複数のサービスを連携させたり、ユーザー・インターフェイスを開発したりといっ た、単純で、高度な専門技術を必要とせず、しかも短期間で工数の稼げないものとなる。そのため、案件ひとつひとつの単価は、低下する。

3.システム技術力の価値の低減とコンサルティング能力の需要拡大
 高度なデータベース設計や冗長化構成、最適化のための特殊ノウハウといった高いシステム技術を要求するエンジニアの活躍できる機会が少なくなるだろう。むしろ、お客様のニーズを的確に把握し、それを纏め上げて、企画提案に結びつける能力が重視される。

 以上のような、SIビジネスの構造変化に対応することは、容易なことではない。それは、いままでの長い歴史の中で築き上げた、ユーザー企業や元請会社との関係を再構築することになるからである。

 しかし、以上のような変化は、時間の問題であり、その時間もそれほど残されていない。

 ノークリサーチのレポートによれば、クラウド・サービスへの支出は、2012年には、2009年8.2倍に、また、矢野経済研究所のレポートでは、クラウド関連のビジネス規模が、2015年に2009年の約5.2倍に拡大すると予測している。

  ユーザー企業の情報システム予算が、この間に5倍や8倍に伸びることはない。とすれば、クラウドへの取り組みを誤れば、大きなビジネス基盤を失うことにな る。しかし、その一方で、大きな成長を示すクラウドを味方につければ、今まで以上の事業の拡大を果たすことができるともいえるだろう。

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2010年1月15日金曜日

ソリューションと昇進が、会社を弱体化させ、人を潰している

 『「プレーイング・マネージャー」という言い訳』に、通常の倍を超えるアクセスをいただきました。それだけ、このキーワードに矛盾や悩みを抱えている人が、多いのかもしれません。

 ある方から、次のようなメールを頂戴しました。

「 前略 --- これは営業職に限った話ではありませんね。弊社でも、優秀な技術者ほどライン管理職に登用されてしまい、その結果、現場に優秀な技術者がいなくなるという問題が起きており、どうすれば、それを是正できるかを検討しようとしています。

 優秀な技術者が優秀な管理職になれるかという問題もあるかと思いますし、これはその会社のもつ評価制度、給与制度、人事制度にも関わってくる、一筋縄ではいかない、とても重大で重要な問題だと思います。 --- 後略 」

 必ずしも、プレーイング・マネージャーに言及したものではありませんが、マネージャーに登用するということは、プレーヤーとしての現場力を一時的にでも弱体化させることでもあることは、事実だと思います。

 それが分っている上位の管理者や経営者は、新任のマネージャーに、継続してプレーヤーとしての働きを期待します。それを「プレーイング・マネージャー」と称し、本人をどっちつかずの状況に押し込めてしまっているのかもしれません。

 もちろん過渡期は、それも仕方がないことだと思います。また、マネージャーに任ぜられた本人も張り切っているから、多少のオーバー・ワークもいとわない でしょう。しかも、なれない新任のマネージャーですから、周りの目も寛容です。ただ、そんな幸運は、長続きするものではありません。

 いずれは、自分の立場を明確にしなければなりません。自分の力ではなく、組織の力として、ビジネスをひっぱっり、一人の時よりも、より大きな力を発揮できるように働くことが、マネージャーの仕事です。

 経営者は、その当たり前を本人の自助努力に任せるのではなく、はっきりとした目標と、その目標を達成するための手立てを用意してあげる必要があるはずです。

 それを失敗すると、どういうことになるのか・・・

 社員500人ほどのソリューション・ベンダー。その内60人ほどが、営業職です。その中の一人の営業課長が、暫くお休みすることになりました。

 この営業課長氏は、新年度の春、課長に昇進し部下を持つようになりました。彼は、所属する営業課の半分以上を稼ぐ実力者であり、営業の中でもリーダー的存在でした。

 人当たりも良く、誠実なタイプでもあります。お客様にも信頼され、だれからも「優秀な営業」と評価されていました。

 そんな優秀な営業マンでしたから、本人も回りも、彼が昇進して課長になることは、当然といった空気はありました。

 課長に昇進し、彼も大いに張り切っていました。今までの自分が担当していたお客様は、引き続き自分が担当し、加えて、部下の営業マンの担当するお客様にも出向き、話しをすることもいといませんでした。

 そんな彼が、変わり始めたのは、秋ごろからです。

 最初の変化は、会議に出て、発言を求められると話しが詰まり、何も話せなくなったそうです。発言しなければならないことは良く分っているし、何を話すべ きかも了解しています。しかし、どうしても声が出ない。普段の会話には、なんの支障もないのに、会議では、声が出ない。あせればあせるほど、苦しくなり、 脂汗が出てきたそうです。

 次に電話が怖くなりました。電話がなると、固まってしまって電話を取ることができない。

 次第に遅刻がちになり、そのうち昼前に出社するようになりました。満員電車が、怖くて通勤時間帯に電車に乗れない。とにかく、電車の中で、見ず知らずの 人と接することが、耐えられなくなったそうです。どうしても、朝会社に出なくてはならないときは、自腹でタクシーを使っていました。

 暫くは、そんなことをしながら、なんとか会社に来る努力はしてしいたのですが、ついに会社に出てくることさえ難しくなってしまいました。

 結局は、暫くお休みをとるということになりました。

 私は、医者ではありませんから、その原因について、診断を下すことはできません。ただ、このケースから伺えるいくつかの特徴や背景についてご紹介することは、皆さんにとっても意味のあることだと思うので、紹介させていただくことにします。

 まず、第一に、「まじめで、誠実な人柄」であること。彼は、プレーヤーとマネージャーの仕事を両方誠実にこなそうとしていたようです。当然、彼の上司もそれを期待したし、彼ならできると考えていたようです。彼は、毎日深夜まで働き、休日も仕事をしていました。

 次は、会社の方針転換。この会社は、今までサーバーやネットワーク機器の販売など、プロダクト中心の商売をしてきました。しかし、社長は、それではこれ からの将来はないということで、「ソリューション・ビジネスを強化する」と宣言し、モノからサービスへのシフトを加速するよう現場に求めていたのです。

 しかし、社内にそれに対応するスキルもなければ、デリバリーの要員もいませんから、結局は、外部から調達するしかないわけです。

 多くの営業は、「冗談じゃない。外部のリソースなど、そう簡単に集められるものでもないし、売り上げ目標を達成するには、効率が悪い。」ということで、相変わらずモノ売りをしていた訳ですが、彼はまじめですから、その方針に従って、奔走していたようです。

 モノ売りは、調達も販売も、関わる人や手順が、比較的シンプルですが、SIなどのサービスとなると、お客様ごとに異なる仕様に、個別に対応しなくてはな りません。そのため、関わる人や企業、プロダクトの種類なども増えてしまい、複雑で多様な組み合わせをプロデュースしなければならないわけです。

 それを支える仕組みが、いまだ未整備なこの会社では、それは、すべて現場の営業の仕事です。これは、相当の負担になったのではないでしょうか。

 人は、「不満」で、心を病むことはありません。ほとんどの場合、「不安」であることが原因です

 しょいきれない荷物を、一身に背負い、自分で抱え込んでしまう。できないことは、自分の努力不足であると考え、「がんばる」ことで、対処しようとする。と同時に、「これで、本当にうまくゆくのだろうか?」という不安が、ますます膨らんでゆく。

 私のような、不真面目といい加減の代名詞のような人間は、適当に手を抜いてごまかすすべを心得ていますが、まじめな人は、そうはゆかないようです。

 彼が、お休みをすることになった本当の原因は、私にも分りません。ただ、もし、上記のような事実が関係しているというのなら、それは、彼の能力不足や資質の問題とは、いえないでしょう。

 明らかに、上席者、経営者の責任です。

 プロダクトからソリューションへの掛け声を否定する人はいないでしょう。しかし、それは、同時にビジネスの多様化、複雑化を意味しています

 それが、プレーヤーやマネージメントのあり方を大きく変える事となり、求められる役割や能力も変わってくるはずです。

 優秀だからに報いる手段が、管理職になることだけである今の人事制度は、もはや限界にきているのではないでしょうか。そろそろ、この常識を、うち捨てるべきかもしれません。

 そうでなければ、必要とされる、本当に優秀な人たちを殺してしまうかもしれません。それは、本人にとっても、会社にとっても、なんと不幸なことでしょうか。

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2010年1月9日土曜日

「プレーイング・マネージャー」という言い訳

 「あれだけ言っても、できないんですよ。だから、自分がやらなきゃならない。ほんとうに、どうしようもありません。」

 ある中堅ソリューション・ベンダーの営業課長の愚痴です。「ああ、またか・・・」と暗い気持ちになります。

 「自分がやらなければ、仕事が進まない。自分が、この会社を支えているんだ。俺がいなければ、取引はなくなる。だからプレーヤーとしてがんばらなきゃならないんです。」

 彼は、そういいたいのだと思います。

 しかし、彼の部下に言わせると、「私が担当なのに、なんでも自分で決めてきてしまって、事務処理やこまごまとした交渉ごとだけをやらせるんですよ。これじゃあ、やる気もおきませんよ。」

 そんな声も聞こえてきます。

 ひと昔前までは、「マネージャー」は、専業の管理職でよかったのです。しかし、バブルが崩壊し、リストラと称した人員整理と共に、管理職ポストも激減、 組織のフラット化がすすみました。「プレーイング・マネージャー」という言葉は、そんな時代背景の中から、生まれてきたように思います。

 一方、経営側にすれば、売上げに貢献しない専業の管理職よりも、売上を上げてくれるプレーヤーのほうがありがたいわけです。だから、「プレーイング・マ ネージャー」という、かっこいい名称を与え、プレーヤーとして活躍してもらい、同時に「あなたは、管理職なんですよ。」と、持ち上げておく。そのほうが、 都合がいいという思惑もありました。

 彼らは、営業担当者としての役割を担いつつ、管理職としての仕事も期待される。経営者にとっては、とても都合がいい。しかし、本人にとっては、実に複雑な立場に立たされているともいえるのかもしれません。 

 本来、「プレーイング・マネージャー」になるような人は、プレーヤーとして優秀だからこそ、その役を任せられるわけです。そんな彼らから部下を見ると、 「どうして、そんな簡単なことができないんだ」と思えてしまう。そして、「ああ、見ていられない・・・自分がやったほうが早い」と、部下を押しのけてプ レーヤーをやってしまう。そうなると、ますますプレーヤーとしての仕事が忙しくなって、部下のモチベーションを下げる。当然、部下の面倒を見る時間も、な くなってしまうのです。

 そんな悪循環を抱え込んでしまっているのが、プレーイング・マネージャーなのかもしれません。

 彼等の不幸は、マネージャーとは、何をすべきかを教えられていないことです。そもそも、マネージャーなのか、プレーヤーなのか、はっきりしないポジションですから、経営者もはっきりと、そのあたりを認識していないのかもしれません。

 確かにプレーヤーとしては、優秀だったかもしれません。しかし、マネージャーとして優秀になるための能力は、プレーヤーのそれとは違うのです。

 本人にしてみれば、マネージャーとして役割を果たしたい。それに反して、どうすればいいのか分らない。プレーイング・マネージャーは、そんなジレンマを抱えているように思います。

 「立場が、人を作る、能力を磨くものです。」。その会社の経営者は、そういうのですが、これは、しょせんきれいごとです。自分は何もせず、マネージメン トの能力は、自助努力で獲得しなさいといっているに過ぎません。その一方で、数字のノルマは、「もう、マネージャーなんだから」ということで、一層厳しく 求められます。

 しかし、これは、プレーイング・マネージャーにとっては、ある意味大きな救いでもあるのです。数字を達成するためには、部下に任せていられない。自分がやるしかないんですよ・・・と言い訳ができる。経営者も数字が大切ですから、それを受け入れざるを得ないのです。

 ここに両者の暗黙の了解が、出来上がります。

 人は、誰しも楽しいことをやっているほうが、気持ちがいいものです。私もそうですが、お客様と話しをし、商談を進めることは、楽しいものです。自分で、作戦を立て、提案し、交渉して契約を取る。そして、適度に息抜きもできます。

 優秀なプレーヤーであればあるほど、やり方は心得ているわけですから、マネージャーとしての仕事をするよりは、プレイヤーとして、動き回るほうが気持ちが楽なのです。
  
 一方、マネージャーは、部下が抱える案件の進捗把握、フォーキャスティング、組織としての予算達成、管理資料の作成や疲れる会議への出席、できない部下 の育成などなど、なれない仕事を任されます。その結果、自分の仕事(=プレーヤーとしての仕事?)ができないという気持ちになるのでしょう。

 ますます、マネージャーとしての仕事から、気持ちが遠のいていくのです。

 自分が、マネージャーとして、育成されてないのに、何が部下の育成かと思うのですが、こんな現実は多いようです。

 こういう会社の多くが、次のような問題を抱えています。

 ・若手が、なかなか育たない。
 ・大きな数字は、特定の個人(優秀といわれるベテラン営業)に依存している。
 ・社内のローテーションがうまく進まない。

 つまり、ひとりひとりの営業力の底上げや、組織として力を発揮することができないのです。
 
 プレーイング・マネージャーが、ダメだというつもりはありません。しかし、彼に何を期待し、何をしてもらいたいのでしょうか?

 プレーヤーが優先なのでしょうか、それともマネージャーとしての仕事を優先してほしいのでしょうか?そのことをはっきりしないまま、あるときは、プレーヤーを期待し、あるときは、マネージャーを期待する。これでは、自分はどうすればいいのか不安になるばかりです。

 このような状況では、まじめな人ほど、両方を何とかしなければとがんばる。その結果、どっちつかずになり、「自分は、なんてダメなんだ・・・マネージャーとしてやっていけるんだろうか?」という不安が募る。それが、きっかけとなって、心を病む人も多いように思います。

 これは、マネージャー本人の資質ややる気の問題ではありません。多くは、経営者の責任だと思うのです。

 ・マネージャーとしての役割や心構えを徹底できていない。
 ・マネージャーとして必要な能力の育成をないがしろにしている。
 ・マネージャーの評価基準が、プレーヤーの延長線上にしかない。

 まず、第一点目は、マネージャーのあるべき姿が、示されていない、共有できていないということです。これでは、何を目標にすればいいのかがわかりません。
 
 第二点目は、育成の仕組みです。エンジニアのための技術研修は、どこも熱心です。しかし、営業や営業マネージャーの研修というものは、意外とないがしろ にされている。営業マネージャーは、事務職や技術職とは、違う能力が求められます。それにもかかわらず、この点に関心を示さず、育成に関心を示さない経営 者も少なくありません。

 最後は、マネージャーの評価基準を予算の達成に重きをおいている企業が少なくないということです。もちろん、数字目標の達成は、不可避ではありますが、 それだけでは、不十分なのです。部下の育成や組織力の向上について、明確な達成目標を示し、それを昇進や昇給に連動させているでしょうか。

 マネージャーとして、やってもらいたいこと。例えば、数値目標が達成できる部下の能力育成。また、組織力としてチームを運営するためのプロデュース能 力、顧客トップとの良好な関係の維持、効率的なリソース運用・・・そういう、マネージャーに求められる能力とでも言うか、態度とでも言うか、そういうもの を明確に定義し、評価する仕組みを持つことは、とても大切なことだと思うのです。

 どうでしょうか、プレーイング・マネージャーという言葉の意味を真剣に考えてみては・・・。

 本当に力を発揮できるプレーイング・マネージャーとは、どのような人材なのでしょうか。彼らは、どんな能力を備え、コンピテンシーを持つべきなのか。

 IT業界が、大きな転換期を迎える中、マネージャーも売上げの貢献にがんばってもらいたいものです。しかし、その役割は、担当営業と同じでいいはずはありません。そこのところをちゃんと考え、彼らに示してあげることは、経営者の大切な役割だと思います。

 また、プレーイング・マネージャーも、自分の役割について考えなくてはいけません。マネージャーとして、自分は何ができて、何が足りないのか。不安を抱え込むのではなく、冷静に、客観的に自分を内省してみることが必要です。

 プレーイング・マネージャーという言い分けで、やるべきことをごまかさない。経営者も、自分自身も、その自覚を持つことが、大切ではないでしょうか。

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2010年1月5日火曜日

「幼稚な営業」になる方法

  「お客様に頼られる営業になりたいんです。」

 営業研修の冒頭で「理想の営業とは」という質問をすると、多くの方から、このような答えが返ってくる。

 そこで、「頼られる営業になるためには、どうすればいいのでしょうか?」と切り返すと、意外とその答えは、曖昧であったり、本人に確信がない場合も多い。

 「あるべき姿」のイメージはある。しかし、その手段が良く分らない。ただ、これに答えを出さない限り、「あるべき姿」は、いつまでもイメージのままである。

 では、真剣にこれを追求しているかというと、必ずしもそうではない。というか、「理想の営業とは」などという質問をされるまでは、そんなことを真剣に考 えてもみなかった。改めて質問されて考えてみると「お客様に頼られる営業」が、自分の理想の姿なのかなぁ・・・となんとなくそう思えてくる・・・というの が、本音であろう。

 新年というのは、自分の「あるべき姿」を確認するよい機会といえるかもしれない。不信心な私でさえも、元旦には近くの神社で手を合わす。そして、今年の 決意を新たにする。年に一回の信心にご利益があるとは到底思えないが、少なくとも自分の「あるべき姿」を思い描きながら、その方策について思い巡らす程度 のご利益は、あるようだ。

 さて、話を戻そう。「頼りにされる人」とは、どういう人なのだろう。「相談できる相手」といってもいいかもしれない。相談すれば、適時、的確に答えが返ってくる。そんな営業は、頼りになることは、間違えない。

 また、「頼りにされる人」とは、代替が利かない存在でもある。

 仕事に抜かりがない、仕事が速い・・といった人も便利で役には立つが、代替は他にもいる。

 こちらの要望どおり見積りを出し、納期を満たしてくれる人もありがたい。しかし、競合も虎視眈々とチャンスを狙っている。いくらでも置き換えはきくだろう。

 しかし、自分の悩みやこれからの方向について、その道筋を示してくれる。あるいは、そこまでゆかなくても、一緒になって真剣に考え、気付きを与えてくれるような存在は、得がたいものだ。頼りになることの条件のひとつとは、言えるだろう。

 昨日、産経新聞に掲載されたエッセイ「日本よ(石原慎太郎・著)」にこんな記述があったので引用させていただく。


 『幼稚な人間とは知能指数が低いとか、ものをよく知らないということではない。何が肝心かということがわからない、何が肝心かということを考えようとはしない者のことだ』。

 けだし、名言というべきだろう。

 たとえば、自社の製品については、よく知っていている。しかし、競合他社の製品や世の中の動向については、言葉を知っている程度である。自社の製品が、どのような位置づけにあるのか、客観的に評価することができない。

 また、クラウドや国際会計基準という言葉は知っている。しかし、それが、世の中の動きやお客様の業務にどのような影響を与えるかについては、考えたり、調べたりもしていない。

 このような「肝心」なことが分らない相手に、相談しようなどという気持ちが、起こるはずがない。

  話題の単語やフレーズは、ネットに氾濫している。しかし、そんな言葉の断片を、ディスプレイから脳みそにコピペするだけでは、本質は見えてはこない。言葉 の背景にある歴史や思想、目的をつなぎ合わせて体系化しない限り、「肝心なことが分らない」ままである。言葉を知っているということと、言葉の本質を理解 し、それがもたらす変化や価値といった「肝心なこと」をわかっているということは、まったく違う次元の話しである。


 「肝心」が分っていれは、もの事の道理が分り、筋道が見通せる。お客様は、そんな人を相談相手に選ぶのではないだろうか。大人が子供に相談しないように、お客様は、幼稚な営業を頼りには、しないだろう

 「頼りにされる営業」の条件とは、もちろんこれだけではないだろう。ただ、めまぐるしく変わる技術や製品の表面的な言葉に翻弄されるのではなく、その背後にある「本質」を理解することは、「頼られる営業になる」ためには、大変「肝心」なことだ。

 今年もまた、「クラウド」で年が明けたようだ。多くのソリューション・ベンダーの年頭の話などを拾い読みしてみるとそのことが良く分る。そして、また新しい言葉が、湧き出してくるだろう。

 しかし、言葉の読み方を知っただけで、知ったかぶりにならないようにしたいものだ。「何が肝心かということがわからない、何が肝心かということを考えようとはしない」幼稚な営業にだけは、なりたくないものだと思う

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