2010年1月21日木曜日

クラウドがもたらすSIビジネスの3つの構造変化

 クラウドで、モノが売れなくなる理由については、以前のブログで紹介したが、では、開発請負業務や開発、運用、保守などの準委任業務などのヒト・ビジネスは、どのような影響を受けるのだろうか。今日は、この点について考えてみよう。

■ 大手元請企業は、中小の下請企業を使わなくなる


 不況の継続とニューノーマルの広がりにより、お客様のコスト削減への関心は、これからも続くことが予想される。これに応えるために、大手元請各社は、グループ内での内製化とオフショア利用の拡大を加速させ、独立系の下請企業は、仕事量が減るものと予想される。

  また、クラウド・システム(PaaSやIaaS)をプラットフォームとしたシステム開発や運用も広がるだろう。まもなくサービスを開始するWindows Azure Platformは、この動きを加速するだろう。そうなると、インフラ構築や運用などのビジネスは、減少する。

 下の図をご覧いただきたい。


 この図が示すとおり、大手元請企業は、自分達で上流を押さえ、開発や運用は、クラウドやオフショアに任せることになるから、下請による開発や運用の受託業務の仕事量は、構造的に減少することになるだろう。

■ SIビジネスの3つの構造変化にどう対応するか

 クラウドの普及は、SIビジネスに、次のような構造変化をもたらすことが、予想される。

1.利益率の低下
  SIのプラットフォームとして、クラウド(この場合は、PaaSやIaaS)の利用が拡大すると、従来、受注に含まれていたハードウェアやミドルウェアの プロダクト購入費用、導入や設定、冗長化構成のため作業費用など、確実な利益を期待できる部分が、なくなる。その結果、開発費用のみが丸裸になり、利益を 織り込む余地が少なくなる。その結果、利益率が低下する。

2.案件単価の低下
 クラウド、特にSaaSの普及は、 まったくの新規開発を減らすことになるだろう。SaaSを利用しながら、複数のサービスを連携させたり、ユーザー・インターフェイスを開発したりといっ た、単純で、高度な専門技術を必要とせず、しかも短期間で工数の稼げないものとなる。そのため、案件ひとつひとつの単価は、低下する。

3.システム技術力の価値の低減とコンサルティング能力の需要拡大
 高度なデータベース設計や冗長化構成、最適化のための特殊ノウハウといった高いシステム技術を要求するエンジニアの活躍できる機会が少なくなるだろう。むしろ、お客様のニーズを的確に把握し、それを纏め上げて、企画提案に結びつける能力が重視される。

 以上のような、SIビジネスの構造変化に対応することは、容易なことではない。それは、いままでの長い歴史の中で築き上げた、ユーザー企業や元請会社との関係を再構築することになるからである。

 しかし、以上のような変化は、時間の問題であり、その時間もそれほど残されていない。

 ノークリサーチのレポートによれば、クラウド・サービスへの支出は、2012年には、2009年8.2倍に、また、矢野経済研究所のレポートでは、クラウド関連のビジネス規模が、2015年に2009年の約5.2倍に拡大すると予測している。

  ユーザー企業の情報システム予算が、この間に5倍や8倍に伸びることはない。とすれば、クラウドへの取り組みを誤れば、大きなビジネス基盤を失うことにな る。しかし、その一方で、大きな成長を示すクラウドを味方につければ、今まで以上の事業の拡大を果たすことができるともいえるだろう。

■ ソリューション営業プロフェッショナル養成講座 

 士農工商“営業”という序列が、当たり前のIT業界。本当にこれでいいのでしょうか。社会が悪い、会社が悪いと、他人に責任を転嫁しても、なんの解決にもなりません。

 ならば、自分自身が、必要な存在となるしかないのです。

 「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」は、そのお手伝いをさせていただく講座です。

 営業の方もそうですが、売上げ責任を持つコンサルタントの皆さんや提案活動に関わるSEさんにも、大いにお役に立つものと考えています。

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詳しくは、こちらをご覧ください。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

リサーチ会社のデーターって信用出来ますか?私は信用しません。ある製品のマーケットリサーチを依頼したときの事です。その会社の営業マン曰く、「それでは、レポートの記述体裁は肯定形、否定形どちらが宜しいでしょうか?」一体何の話をしているのか直ぐには理解出来ませんでした。「いや、○○様が社内への報告の際にどちらが宜しいかということです。この製品に将来性を見いだしていらっしゃるなら、肯定形で、そうでないなら否定形でレポートします。」いや、こちらとしては、ありのままのデータを出してもらえれば良くて、マーケットがあるのか無いのかの判断はそのデータからこちらでするんだけど...。「データなんてどうにでもなりますよ。元々市場の実態を客観的に表す様なデータが手に入るなら我が社でも欲しいくらいです。」私はこのやり取りを報告書として作成しました。どちらの会社とは申しません。両方の会社ではないとも申しませんが。