2010年12月27日月曜日

ああ・・・またも残念なこの一年

 年の瀬にまず思うことは、今年の残念である。もちろん、あんなコトができたと、数えることもできる。しかし、それよりもまず思い浮かべるのが、残念の数々だ。
 年初に書き出した今年の目標を改めて見返してみると、道半ば、あるいは、まったく手をつけていないことも少なからずある。ああ、なんと自分は残念な一年を送ってしまったのかと、反省しきりだ。
 
 今年の最大の反省は、なんと言っても「マラソン」である。2年前に3時間24分を達成して以来、その更新を悲願と考えていた。しかし、足の故障などあって休みを取っていたが、それがもはや常態と化し、最近はろくに練習もしていない。おかげで、タイムではなく、体重の記録更新を続けている。
 
 こんな残念を繰り返さないためには、きちんと「目標」を設定することだと聞かされてきた。ただ「目標」だけを掲げ、「ことしは、こんな目標を立てた」と自分に言い聞かせ、それでもうなんだか、達成を約束されたかのように安心してしまう。これでは、また残念を繰り返してしまう。それが、自分のよくないところだろう。
 自分をその気にさせるための目標。人に説明するための、その場しのぎをするための目標。どうもそんな目標の建て方に問題があるのかもしれない。
 
 これは、なにも一年の計ばかりではない。営業に関わるものとして、目標のない仕事は、ありえない。目標もなく、とにかく走り回っていれば、それなりの数字がついてくる時代は、これでもよかったが、最近はどうも、これではうまくゆかないようだ。まず目標を立てる。それも実現可能な目標でなくてはならない。説明や自己満足のための目標ではなく、実行可能な目標を立てる。それができなければ、もはや仕事が成り立たない時代となってしまった。
 
 しかし、いくら立派な「目標」を掲げても実行できなければ意味がない。実行し、達成するための方策、つまり「戦略」を立て、これを遂行する。「戦略」無くして、「目標」の達成は、ありえない。今日は、このあたりを考えてみよう。
 
 まず、「戦略」とは何かである。次のように考えてみてはいかがだろうか。

 1.まず、達成できた状態(あるべき姿/To Be)を明らかにする。
 2.次に、現状(As Is)を明らかにする。
 3.続いて、あるべき姿と現状とのギャップを明確にする。このギャップを「課題」ともいう。
 4.「課題」を解決するための方法と手順を考える。
 5.手順に従い方法を実行する。
 
 この一連のプロセスが「戦略」である。
 
 ビジネスにおいて「戦略」というと、情報を収集し、これを整理し、方向を示すまでという考え方もある。しかし、それは、「戦略」の一部にすぎないと私は考えている。本来「戦略」とは行くべき場所と、そこに到達する路の両方を決定することである。従って、行き先を決めただけでは、「戦略」としては不十分である。
 
 「戦略」とは、「あるべき姿」を起点にして、これをどうすれば達成できるかを考えることである。「現状」を起点にして、現状の問題にどう対応するかを考えることを「戦略」とは言わない。
 未来のこと、つまり、未知の状態を作り出そうとするわけである。当然、可能な限り情報を収集し、「あるべき姿」の具体性と精度を高める必要がある。それがなければ、向かうべき場所が曖昧となり、適切な方法と手段を選択することができなくなる。また、「現状」についての正確な理解がなければ、やはり同じことになってしまう。だから、徹底した情報収集は、「戦略」を立てる上で、欠くべからざる活動である。
 
 さて、改めて「戦略」を整理してみると。
 ・「戦略」とは、「課題」を解決するための方法と手順である。
 ・「課題」とは、「あるべき姿」と「現状」とのギャップである。
 ・「戦略」の実行は、「課題解決」に取り組むことである。
 
 もし、「あるべき姿」と「現状」にギャップが無ければ、「課題」は存在しない。例えば、「1千億円の売り上げを達成する」という「あるべき姿」に対して、「現状」が「8百億円の売り上げ」であれば、「2百億円」というギャップが存在する。これが「課題」となる。もし、既に「1千億円の売り上げ」を達成しているのなら、ギャップを埋める必要はない。つまり、「課題」は存在しないことになる。
 
 「戦略」とは、この「ギャップを埋める=課題を解決する」ための計画でもある。表現を変えれば、「課題を解決する=Solution(ソリューション)」ための実行計画ということになるだろう。つまり、私たちが、普段使っている「ソリューション」とは、「有るべき姿」と「現状」のギャップ=課題を解決するための取り組みということになる。
 「戦略」とは、このソリューションを実行可能な方法と手順に分解して、考えることである。
 
 私たちは、「ソリューション」という言葉を、普段何気なく使っている。しかし、その本来の意味を考えると・・・
 1.お客さまの「あるべき姿」と「現状」を明らかにし、そこから「ギャップ=課題」を抽出する。
 2.この「課題」を解決するための具体的な方法と手順を決定する。
 3.これを実行し、お客さまの「あるべき姿」を実現する。
 
 と整理できるだろう。
 
 話が理屈っぽくなってしまったことをご容赦いただきたい。ただ、自分の仕事をこのように突き詰め、分解してこそ、自分自身の過不足を具体的に示すことができる。いわば、自分の仕事の健康診断である。それができて、初めて何を改め、何を伸ばすべきかが見えてくる。ただ漠然と自分の仕事をとらえているだけでは、成長は運任せである。「目標」の立てようもない。
 
 さて、改めて自分の来年の「目標」を考えてみる。まてまて、まずは、その前に徹底した情報収集が必要のようだ。自分の残念にも冷静に向き合う必要がありそうだ。その上で一年の計=来年の「戦略」を組み立てる必要がありそうだ。言うは易く、行なうは、難しである。ただ、また同じ残念を繰り返さないという「目標」だけは、今年もまた掲げておこうかと思う。
 
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2010年12月18日土曜日

お客さまの困ったをメニューにする

 「斎藤さん、うちの連中には、危機感が無くてねぇ。どうしたものかと思っているんですよ。」

 ある中堅SI事業者の社長が、ため息をつきながら、こんな話をしてくれました。

 「確かに、売り上げは上向いている。でも、結局安い見積もりで受注を支えているにすぎないんですよ。利益なんか、ほとんどでていない。このままでは、いずれは、オフショアに飲み込まれて、ぎりぎりでも受注がとれないかもしれない。現場の連中が、そのことを分かってない訳じゃないと思うが・・・」
 
 現場の営業担当者と話してみると、彼らなりに「危機感」は持っている。しかし、方策が見いだせない。とはいうものの何もしないわけにもゆかず、がむしゃらに仕事をこなしている。サボっているわけでもなく、これでいいと思っているわけでもないのです。
 
 経営者も、現場も、共にこのままではいけないと考えています。しかし、どうもその思いが、お互いに通じ合っていないように思います。
 
 経営者は、何もしない現場を危機感がないと嘆いています。現場は、有効な方策を打ち出せない経営者に不満をいだいています。思いは同じであるにもかかわらず、お互いにそれぞれの対応を期待しているにすぎません。そんな閉塞感が、あるようです。
 
 では、この閉塞感をどうすれば、打開できるのでしょうか。私は、自分たちの強みを改めて、棚卸しし、再認識してみることだろうと思っています。つまり、自分たちの強みを整理整頓し、しっかりとこれを自覚し、自信を持つ。そして、それを新たな武器にする方策を考えてゆく。そんな取り組みをしてみるべきではないかと思っています。
 
 いま、いくつかの中堅SI事業者の営業現場で、アカウント・プラン作りのお手伝いをしています。これら企業に共通することは、自分たちには、「これといった強みがない」という思い込みです。
 
 大手システム・ベンダーのような競争力のある独自の製品を持っているわけでもなく、絶対的な技術力を持っているわけでもない。自分たちには、他社に勝てる武器がない。今までは、大手に比べて安いと言うことで仕事がとれていた。しかし、それとて大手のオフショア拡大で金額面での競争も厳しくなってきた。もはや自分たちには、何の強みもない。
 
 といった思い込みです。
 
 確かに、マクロにとらえれば、その通りと言えなくもありませんが、自分たちの担当するお客さまについて、ひとつひとつ見てゆくと、本当にそうだろうかとおもうことがあります。ミクロな目線でとらえてみると、決してそんなことはなのです。そのことに気付くと、「なるほどうちも捨てたものではないなぁ」と自信を持たれることも少なくありません。
 
 大手ベンダーの下請けとして仕事をしている企業の多くは、特定のシステムやサブシステムの開発、維持・メンテナンスに従事している場合も多いようです。このような場合、システムと人が相互依存の関係にあり、両者が一体として存在しています。従って、そのシステムの使用をやめたり、新しいシステムに統合されてしまうと、それに伴って、人もいらなくなり、仕事が無くなります。このジレンマを断ち切らない限り、お客さまの都合で需要は左右され、ビジネスのイニシアティブをとることはできません。
 
 そこで、こんな質問を投げかけてみました。

 「ところで、なぜ、みなさんが、このシステムの保守・運用を任されているんですが。なぜ、お客さまは、他社に変えずにみなさんに仕事をまかせているのでしょうか。」
 
 すると、「開発に関わったので、お客さま以上にシステムや業務をよく知っているから。」、「お客さまの担当者と一緒になって、現場でやっているから。」、「仕事を減らさないためにいろいろと工夫して、改善や効率化の工夫をしているから」・・・様々な答えが返ってきました。現場を支える力になっている自負ががみなぎっています。
 
 「それが強みじゃないですか。それこそが、みなさんの武器になるんじゃないですか。みなさんは、お客さまのシステムの現場を知っている。現場の困ったに誠実に応えようとしている。ならば、次のようなことをしてみてはどうでしょう。」と3つのステップの提案を投げかけてみました。
 
 「まず、自分たちに、どのような能力があり、何ができるかは、考えず。お客さまの「困った」、「こんなコトをしてくれたらほんとうに助かる。」を洗い出し、整理してみませんか。自分たちにできることなんか、お客さまは求めていませんよ。お客さまは、自分たちの困ったを解決してほしい。だから、その「困った」をメニューにしてみる。できるできないは、後で考える。まずは、その目線で考えてみてはどうでしょうか。」
 
 「次に、それをサービスとして整理してみましょう。自分たちができるかできないかは、考える必要はありません。まずは、お客さまの「困った」を解決するサービスはなにかを客観的に考えることです。」
 
 「最後に、それをわかりやすい図表に体系的に整理してみることです。何となく、当たり前にやってきたことです。これを体系的な整理整頓する。それは、そのお客さまがしてほしいことのサービス・メニューだから、必ず真剣に聞いてくれるはず。間違えなく、ビジネス・チャンスを見いだすきっかけになるはずです。」
 
 「こうやって整理してみると、改めて、自分たちのできることできないこと、強み弱みが整理できます。そのできないこと、弱みを補完する方策を考える。新たに人を採用するもよし、外部から調達するのもいい。仕事になるんですから、それが商品になるのですから、心配する必要はありません。大切なことは、お客さまがしてほしいことを整理し、その対応のリーダー・シップを握ることです。そうすれば、お客さまは、みなさんを必要な存在として認めてくれるでしょう。ビジネス・チャンスも広げることができるはずです。」
 
 お客さまの「困った」を整理する。そうすると、特定のシステムに対してだけだと思っていた自分たちの価値が、それから切り離され、他でも使える価値として見えてきます。
 
 このような取り組みをいくつもの担当顧客について行なっていくと、多くのお客さまで共通した「困った」や「してほしい」が見えてくるものです。それを会社全体で改めて整理してみると、立派なサービス・メニューになるようです。
 
 これは、大手ベンダーにはできません。現場に入り、現場を知っているからこそ、できること。その現場力こそが、武器になるのです。
 
 こんな取り組みを続けていると、「そうか、自分たちにもこんな強みがあったんだ!」と気付くことになります。これを武器に、自信を持って、大手にはできない強みを発揮できるのではないかと思っています。
 
 漠然と「危機感」を意識しているだけでは、なんの進歩もありません。かといって、新たなスキルや製品で勝負をすることも容易なことではありません。大手ベンダーと同じものがないからと言って、自分たちに強みがないと考える必要はないように思います。
 
 どうでしょう。改めて、自分たちの足元をしっかり見つめ直してみては。つまり、自分たちの持っているスキルや製品を資産としてとらえるのではなく、長年、お客さまに関わってきた現場力と信頼関係を資産と考えてみるのです。これを改めて、掘り起こし、整理してみる。自分たちができることの目線ではなく、お客さまの「困った」の目線で考えてみる。思わぬ強みが見えてくるかもしれませんよ。

2010年12月10日金曜日

なんで、あいつが、俺の上司なんだよ!

 「課長は、分かってないよなぁ。あれで、課長なんだからねぇ。」
 「社長は、ぜんぜん先が見えてないよ。これじゃあだめだよね。」
 「部長の考えは、もう古いんだよ。できるわけないじゃないか。」
  ・・・

 できないことの言訳として、「ダメ上司」を引き合いに出してみたところで、いったい何の解決になるのでしょうか。
 ダメな人間をダメだと言ってみたところで、いったいどんな進歩が、そこにはあるというのでしょうか。

 このような人達に共通する特徴は、

 ■ 問題の原因が、常に自分以外にあると考える。
 ■ 想像力の欠如、つまり、相手の立場や視点でモノを考えることができない。
 ■ 自分のやり方や考え方、ライフスタイルを変えたがらない。

と言えそうです。

 「私は、自分の得にもならないこと、余計なことはしたくないんですよ。」という考えとも通じるものがあるように思います。謙虚さのない態度ともいえるでしょう。
 
 自分が課長だったら、自分が部長だったら、自分が社長だったら・・・そのとき自分は、どう考えるだろうかと考えてみてはいかがでしょうか。なぜ、彼は、こんなことを言うのだろうかを想像すれば、どこが同じで、何が自分と違っているかを冷静に、分析的にとらえることができるでしょう。
 
 なるほど、そういう前提に立てば、そんな考え方もあるなぁと考えてみる。そういうところに、新たな知恵や知識への気付があるかもしれません。

 相手のことを理解するとは、自分と同じところと違うところを見極めて、その違いの理由を知ることです。自分と対立することがあれば、それこそが、新しい発見です。その違いを克服することができれば、それは成長であり、進歩だと考えてみることはできないでしょうか。
 
 自分との違いを見極めずに、ちよっとした言葉の端を捕まえて、全てを否定し、相手の意見を一切受け付けないようでは、何の進歩もありません。
 
 まあ、これは、決して部下のことばかりではありません。上司もまた、部下の能力や状況について、想像することを放棄し、自分の基準に部下を当てはめて、「何で、あいつは、こんなコトが分からないんだ。」と嘆き、愚痴を言う。そして、理由や論理を説明して納得させようという努力を放棄し、「俺のいうとおりやっておけば間違えない。いずれわかるから、これでやりなさい!」と怒鳴ってみる。
 
 まあ、どっちもどっちという気がします。
 
 営業活動で、お客様との交渉は、大切な仕事のひとつです。交渉とは、次の3つのプロセスで行なわれます。
 
 まず、最初は、相手と自分の考えや要求の違いを明確にすることです。次に、その違いを埋める手段を洗い出すことです。最後に、手段の選択肢の中で、どれを採用するかを合意することです。この手順を踏んで、初めて交渉は成立するわけです。
 
 相手の目線から、自分や周りを見る。相手を否定することから始めるのではなく、違いを見極めるコトから始める。それができなければ、交渉を始めることができません。
 
 お客様の目線に立って考えることをせず、「なんで、あいつが、俺の客なんだよ!」と文句を言っているようでは、営業活動はできませんから・・・
 
 他人は、常に異なる意見や考えを持っています。同じ考えの人など、あり得ません。だからこそ、お互いが相手の状況や立場、考えを理解しようと努力しなければ、進歩も幸せもないように思います。たとえ、あなたの上司が、自分と違う意見を述べたとしても、その背後にある彼の考えや立場を考えずに、頭から否定しては、何の解決策も見いだせません。
 
 たとえ、あなたの上司が、本物の「ダメ上司」であったとしても、まずは、自分について考えてみることです。「自分はダメ部下にはなっていないだろうか」と。そして、相手の立場になって、考えてみることです。
 
 「なんで、あいつが、俺の上司なんだよ!」と声を荒げてみても、「自分は、不遜な人間です。成長はあきらめました。自分の得にならないことは、何もやるつもりはありません。」と相手には伝わるだけではないでしょうか。

 そういう人は、きっと「なんで、あいつが、俺の部下なんだよ!」と、あなたの上司に思われているかもしれませんね。

2010年12月4日土曜日

間違っていますよ。そんなことで営業力の強化はできません。

 「営業力を強化したいんです。提案書の作成や交渉の進め方など、研修して頂けないでしょうか。」
 
 このようなご相談を頂くことがある。そのような方には、次のような意地悪な質問をすることにしている。
 
 「喜んで、お引き受けしたいところですが、ところで、提案書がうまく書けることや交渉の術に長けていることで、売り上げが伸びると本当にお考えでしょうか?」
 
 時々、こんな勘違いをしている人がいる。営業力とは、プレゼンテーションやドキュメンテーション、コミュニケーションなどのスキル(技能)であると。冷静に考えれば、このような能力は、営業力の本質ではない。どんなに、美しい提案書を書き、魅力的な説明ができたとしても、それでお客様は、システム購入の意思決定をしてくれることはない。
 
 露天でものを売る商売であれば、このようなスキルが、お客様の財布のひもを緩めてくれるだろう。しかし、何百万円、何千万円、あるいは、億の単位になるようなものを、このようなスキルで売ることなどできるはずがない。たとえ目の前にいる相手をその気にできたとしても、B2Bビジネスでは、かならず稟議があり、決定権限者の承認を必要とする。このような過程を考えれば、このスキルが、本質ではないことに気づかれるだろう。
 
 では、なにがB2Bビジネスにおける営業力の本質かと云えば、「営業活動プロセス」を遂行する能力である。
 
 営業活動は、お客様を開拓し、課題を探り、案件を明確にし、解決策を描き、意志決定プロセスを攻略し、受注を果たし、デリバリーを成功させ、お客様に満足を与え、感謝と共に代金を頂く一連のプロセスである。
 
 このプロセスを通して、営業はお客様の期待を知り、お客様の価値を高める手段を考える。そして、お客様の価値を高めた対価として、その一部を頂く仕事である。お客様は、決して、モノがほしいわけでもなければ、あなたの会社と仕事がしたいわけではない。自分の課題が解決されることであり、期待が満たされることを求め、その成果に対して対価を払うわけである。
 
 モノやサービスといった商品は、この成果を得るための手段であり、お金を頂くための方便に過ぎない。
 
 「我が社のソリューションは・・・」と自信たっぷりにプレゼンテーションし、美しい資料で機能や性能を説明してくれる営業がいる。なるほど、彼のスキルはたいしたものだと思うが、だからといって買おうとは思わない。よくよく聞いてみると、彼の言うソリューションとは、何もこちらの課題を解決することを目的とはしていないようだ。「自分の営業目標を達成するという課題」を解決するためのソリューションである。つまり、自分の売りたい商材つまりプロダクトをソリューションと言う言葉に置換えているに過ぎない。きっと彼は、「我が社のソリューション」を売ることはできないだろう。
 
 展示会で、すてきな女性が、商品についてすばらしいプレゼンテーションをしてくれた。とても魅力的である。ぜひもう少し詳しく話を聞きたい、相談に乗ってもらいたいと思う。だからといって、そのプレゼンテーションをしてくれた女性がこの期待に応えてくれるだろうか。プレゼンテーションのスキルはあるが、モノを売る能力が、彼女にあるとは限らない。
 
 お客様の課題とは何かを考える。お客様の経営環境、競合他社の動向、システムの運営や構築に関わるお客様の「困った」・・・そんなところにお客様の課題はある。その課題にお客様自身が気づいていないことあるだろう。
 
 お客様に課題に気づかせ、それを具体的なイメージとして整理し、解決したいという意欲を引き出さなくてはならない。これが、「課題を発掘する」と言うことである。営業である自分が、「お客様の課題に気づく」ことが、課題を発掘することではない。なぜなら、お客様が解決したいと思わない限り、検討さえもしてくれない。
 あなたの提案書やプレゼンテーションがどんなにすばらしいものであったとしても、「是非社内で検討させていだきます。後日連絡させていたきますね。」と言われ、やった!と握り拳を心に描いても、お客様からの連絡は、一週間たっても、二週間たってもくることはないだろう。
 
 たとえ、担当者がその気になってくれたとしても、意志決定をするのは、その上司であり、経営者である。彼らの関心や期待は、担当者のそれとは異なっている。

 もしかしたら、競合他社が、既に決定権限者にアプローチしているかもしれない。CFOが、「もう少し安くできないのか」と稟議起案者に要求するかもしれない。
 
 営業活動は、実に様々なプロセスによって組み立てられている。このプロセスをスパゲティ・ナポリタンのごとく、ごちゃまぜにして考えていては、優先順位もつけられないし、改善策を見いだすことも容易なことではないだろう。
 
 営業活動をひとつひとつのプロセスに分解し、整理して理解していること。そのプロセスの中で、自分は何ができていて、何を改善すべきかを知ること。そのひとつひとつを確実にこなすための術を身につけること。このような能力こそ、営業力の本質ではないかと考えている。
 
 もちろんプレゼンテーションやコミュニケーションといったスキルも、このようなプロセスを効率よくこなすためには、是非とも身につけたい能力である。また、クラウドや仮想化が、SOAやAjaxとどういう関係にあるのかと言った、体系的、構造的な知識も、お客様の話を理解し、整理し、戦略を立てる上では、大切な能力である。また、何よりも人に好かれ、向上心を持ち、積極的な気持ちを絶やさない人間力が無くては、お客様との良好な人間関係を築くことはできないだろう。
 
 言うなれば、営業力は、プロセス、スキル、知識とそれを支える人間力の総合力である。
 
 ただ、スキルや知識、人間力は、なにも営業だけに必要なことではない。ITビジネスに関わるプロフェッショナルとして、共通な能力である。従って、営業力の本質は何かと問われれば、このプロセスが、大きな位置を占めることになるだろう。
 
 「営業力を強化したいんです。提案書の作成や交渉の進め方など、研修して頂けないでしょうか。」という考えが、決して間違っているわけではない。しかし、営業力は、そのようなことだけでは強化することはできない。
 
 営業力を強化したいのなら、「営業活動プロセス」を整理し、その遂行能力を高めることである。そんな観点から、営業力強化の取り組みを考えてみるべきではないだろうか。