2009年7月2日木曜日

コミットメントとサイエンス

  「平和と科学が進歩した今日、この記録がどれほどの価値があるのか、わかりませんが、あの時代の若者たちが、祖国を守るために示した精神力が、現代の日本人、特に今日の若い人たちの気迫の上に訴えるものがあれば幸いです。」

 第二次世界大戦中、零戦を駆って戦った撃墜王、坂井三郎の著「大空のサムライ」の冒頭の言葉だ。

 友人に進められ、読み始めたのだが、あまりの面白さに分厚い上下二冊の文庫本も、三日ほどで読みきってしまった。

 戦争を「面白い」とは、不謹慎かもしれない。しかし、フィクションではない、戦争を生き抜いた生々しい体験者の言葉、そして、冒頭にもある「気迫」が、その悲惨さを越えて、伝わってくる。そんな彼の生き様、そして、私の知らない戦争のおどろおどろしい現実。驕りもしなければ、美化もしない、平明達意な文章に引き込まれてしまった。

 コミットメントという言葉がある。必達目標と訳されるが、未達ならば、その責任を取るという含意もある。戦闘機乗りである坂井氏にとっての未達とは、即ち死を意味していた。

 「どんなに不利な状況にあっても、死力を尽くす覚悟」、「必勝の信念」を持つこと。そして、そのために、冷静に自分の行動を見つめなおし、まだできることがあるのではないかと徹底的に考え、工夫し、行動することの大切さを、彼は語っている。

 「生きるためではなく、戦いに勝つために全力を尽くした。死は、ひとつの結果に過ぎず、何よりも大切なことは、勝つことである」という彼の信念こそ、まさにコミットメントそのものであるように思う。

 そんな彼の信念があればこそ、戦死率が最も高い飛行機乗りにあっても、彼を生かし、敗戦を迎えさせたとも語っている。

 不況である、予算達成も容易ならざる状況だ。果たして、自分は、自分に対して、あるいは、部下に対して、言い訳はしていないだろうか。

 幸いにも、私たちは、未達でも死ぬことはない。上司にお叱りを受けるだけである。にもかかわらず、失敗を恐れ、これでもかという工夫を放棄してはいないだろうか。

 この著のもうひとつの魅力は、零戦のメカニズムと戦法について、きわめて冷静に、論理的に考証していることにもある。彼は、単に精神論だけで、戦い抜いたわけではない。

 彼は、続著「零戦の真実」の冒頭で、「われわれの愛機であった零戦についても、万能というには、程遠い欠陥を多く抱えた機であった」ことを認めている。それでも、「零戦に遭遇したならば、戦闘を回避し、逃げるべし」と戦闘マニュアルに記載されるほどに、敵国の戦闘機乗りを震撼させのである。

 「長所を活かし、短所を補う」、「長所と短所、その相反する因果関係にある愛機に折り合いをつけ、あるときはあきらめ、あるときはほれ込んで戦っていたのである」と彼は書いている。

 私たちの現実もまったく同様ではないかと思う。万能な武器などどこにもない。だからこそ、その短所、長所を見極め、戦法を工夫し、競合他社と戦っている。

 冷静な分析力、論理的方法論なくして、必勝の精神だけでは、戦に勝つことなどできないことを彼は、自らの戦いを通じて証明して見せたのである。

 私は、今、営業研修に取り組んでいる。まさに、その精神は共通している。がんばれば、不況を乗り切れるなど、ありえはしない。お客様に足しげく通えば、案件が見つかるなどは、「がんばればなんとかなる」の類であり、なんら根拠のないばくちである。

 営業という仕事の仕方、いうなれば戦法は、論理的で科学的でなければならない。それを伝えることにこそ、私の役割だと考えている。

 2000年9月、彼は鬼籍に入られた。しかし、数多く残された彼の至言は、時代を超えて、受け継がれてゆくのだろう。久々に「これぞ」という一冊にめぐり会わせてくれた友人に感謝したい。


営業という仕事を科学すること。不況を気合で乗り切ることはできません。


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