私は、司馬遼太郎の作品が、大好きで、大嫌いだ。
圧倒的なリアリティ、まるでその時代を生き、その場に居合わせたような生々しい臨場感。歴史学者の論文ではとうてい描けない小説としてのおもしろさが、そこにはある。また、なぜそんなことまで知っているんだと言いたくなるような緻密な時代考証は、知的好奇心を刺激する。ほんとうに面白い。
しかし、そこが困る。ついつい引き込まれ、時間を忘れてしまう。電車を乗り過ごす、早く仕事をはじめなければならないのに、なかなか本を閉じることができない。それを覚悟で本を開く勇気が必要だ。だから怖くて最初の1ページを開くことができない。そんなところが、彼の作品の大嫌いなところである。
そんな禁断の彼の作品に再び手を出してました。1989年に出版された「ロシアについて -北方の原型-」。そこに描かれたロシアという国の民族的思考方法や地政学上の行動原理は、今のグルジア問題、ロシアの外交や今の経済発展にぴったりと重なっている。改めて、彼の考察の深さに感動した。おかげで、またもやひと駅乗り過ごしてしまった。
この本に、心を引かれる一文を見つけた。
「謙虚というのはいい。うちに自己を知り、自分の中のなにがしかのよさに拠りどころをもちつつ、他者のよさや立場を大きく認めるという精神の一表現である。」(本文:254ページ)
「謙虚」は、営業である私たちにとって、とても大切な心構えだと思う。
自分の考えや行動について自信と確信をしっかりと持たなくてはならない。その上で、他人の考えや立場にも敬意を払い、一生懸命、相手を理解する。媚びへつらうことではなく、仰せの通りと従うことでもない。自分の意見や考えを持ち、相手の考えをそれにぶつけてみる。さて、一体何が違うのか、どこが同じなのか、冷静に考える。お互いの違いを自覚し、それを尊重する。そんな相手との関係を作ろうとすること。「謙虚」とは、こういうことなのだろう。
営業の仕事は、商品を売ることである。そのためには、自分が提供するものを十分に理解し、自信を持たなくては、迫力のある提案もお客様への説明もできない。同時に相手の立場や求めているもの理解する努力を怠ってはならない。
お客様の真のニーズを知ろうとする努力、言い換えるなら、お客様を成功させたいという愛情に裏打ちされた、お客様の話への傾聴や質問なくして、それを知ることはできない。そんな気持ちで相手に接するならば、彼らを知る努力が苦労ではなく喜びとなる。
「謙虚」を営業という仕事に重ね合わせるなら、そういうことになるのだと思う。
2 件のコメント:
はるか昔に読んだ誰か(アメリカ人)のインタビューだったか名言集だったかの言葉を思い出しました。
「私はMBAと呼ばれる人種が大嫌いだ。奴らには共通して、ある重要な資質が欠けている。それは、『謙虚さ』ってやつだ。」
全然うろ覚えですが、エッセンスはそんなところでした。
#私は、もちろんMBAではありません ^^;
身に染みます。
自信がついて来ただけに、あらためて「謙虚」な姿勢で営業を行わなければ・・・
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