2008年9月14日日曜日

回答:ケース・スタディ 2 /契約直前 どうすれば・・・

 さて、それでは回答を考えてみましょう。

■ 問題1:あなたならこの状況にどのように対応しますか?

 まず、確認すべきは、竹田執行役の本心です。彼は、財務の担当であり予算の執行に責任があります。立場上、少しでも出費を抑えようとすることは、彼の責務です。そう考えると、費用の削減と予算執行時期の延期は、会社としてどうしてもそうしなければならない差し迫った状況があるのではなく、彼の通常の反応のパターンであるかもしれません。
 既に何度かの取引があれば、それは予測できるでしょうし、大崎本部長に確認できることでしょう(ただし、大崎本部長も竹田執行役と同じ立場を取るならば、その判断も容易ではないかもしれません)。

 どちらにしても、竹田執行役の本心を見極めることです。もし、会社として出費を抑えなくてはならない絶対的理由があるならば、この要求に対処することはかなり難しいと考えるべきでしょう。
 しかし、そうでないとすれば、これは、対応のしようがあります。その場合のポイントは、「竹田執行役の顔を立てること」です。単なるお願いだけでは、彼の顔が立ちません。竹田執行役の意向に沿って対応に“努力”したこと、しかも、それが“大崎本部長に厳しく求められた”結果であることを伝えることが大切です。

 なぜここで「大崎本部長」のことを出さなければならないか。これは、大崎本部長の立場への気遣いです。彼は竹田執行役の指示に従わざるを得ない立場にあります。彼は、竹田執行役の指示を忠実に実行したとなれば、彼は評価されるでしょう。そのような気遣いがあればこそ、大崎本部長は、あなたを支援してくれるのです。

 さて、対応の方法ですが、以下の方法が考えられます。

1.導入によってもたらされる価値を再度確認する
 誰が竹田執行役に説明するにしろ、今回の取り組みが会社にとって大きな価値があることを自信を持って説明できるようにしっかりと論理武装することです。

2.一部仕様を削り、機器構成を見直して、何とかコストを下げること
 要求され、直ぐ応えて値引きで対応する。相手から見れば、値引きの糊代を含んだ見積もりと見なされ、以降も値引き要求は、当たり前の儀式となってしまいます。安易な値引きは、ビジネスの健全性を損ねることになります。妥当な見積もりを出すことが大切です。

 妥当な見積もりであれば、費用を削ることは容易ではありませんが、改めて以下のことを考えるべきです。

 ◎ 不要不急:優先的に必要なものに絞り込む。
 ◎ 要求仕様の見直し:購入基準を下げる。

 上記視点で見直すことで、ある程度の費用の削減あるいは、支払時期の延期は可能となるでしょう。しかし、一方ではお客様自身にも影響が及ぶことを明確にし、こちらから「こうします」ではなく、対応することでお客様のメリットも変化することを具体的に示し、どうすべきかの判断をお客様自身にしてもらうことが大切です。

3.契約を機器(物品とその据え付け)+役務(運用環境構築)に分けて、一括で受領すること
 機器と役務は、一般的にタイミングが異なります。これがひとつの契約となっていると、役務が終わるまで請求ができないという場合があります。これを分けておくことです。その上で、一括受注し、お客様に予算を確定して頂き、それ以上変更しにくい状況を創り出すことです。

4.機器やネットワークなどのインフラのみまずは売上計上すること。
 2の段階で納得頂けないとすれば、売上計上を分けることも考えなくてはなりません。その場合でも、3を押さえておけば、とりあえず機器の導入で売上を計上することは可能です。役務については工事進行基準なので、売上計上は時期ずれ込むことはある程度しかたがないかもしれません。しかし、結果として、お客様がメリットを享受できる時期も遅れることをご理解いだき、その合意の元で進めるべきでしょう。

 融通を利かせるとこととごまかして対処することとは、まったく別物です。正しい、主張をしっかりと示すこと。それも、お客様の視点で伝えることが大切です。費用を抑えること、時期をずらすことによって、お客様の享受できるメリットも変わってくること。それをご理解頂いた上で、お客様に判断をゆだねる。そんな姿勢が大切ではないかと思います。

■ 問題2:もし過去に戻って対応できることがあったとすれば、どういうことができたでしょうか?

 会社の状況や竹田執行役の行動パターンを事前に把握しておくことです。今回のような反応が彼にとっては、通常のものならば、あらかじめそれを織り込んだ提案を考えておくことができたかもしれません。
 しかし、それよりも大切なことは、竹田執行役が予算の執行に関与してくることは当然予測できたわけですから、提案活動の段階で事前に説明に伺い、彼の了解を取り付けておくべきでしょう。
 容易なことではないかもしれませんが、パワーストラクチャーを把握し、事前に押さえるべきところに根回しをしておけば、契約直前で大騒ぎをすることもなかったかもしれません。

 如何でしょう。みなさんならどう対処されますか?

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