川上 暁生さんのブログに、「中小企業がITを活用しきれない理由」という記事があった。
「ITの活用度を高めることは、営業の仕事」と先日来述べている。しかし、このようなお客様の事情についての理解なくして、その役割を果たすことはできない。
これがわからなければ、「なんで、こんなことも分からないんだ。レベルが低い客だ!」と自身の至らなさを棚に上げ、お客様に責任を転嫁してしまうことにもなりかねない。
今、IT業界、特に開発受託や派遣に比重を置いてきた事業者にとっては、大変厳しい時期が続いている。確かに経済不況の影響であることは事実だが、その理由の一端は、IT事業者の側にもあるのではないか。
IT事業者の多くは、今までお客様の言いなりになり、開発や派遣業務を受託してきた。景気がよくて、お客様の業績が、右肩上がりのときには、予算も売上げに応じて増える傾向にあった。そんなときには、お客様も、要求仕様などまとめることなく、「この予算で、よろしく!」で済ませてきた。IT事業者は、それを無批判に受け入れきたのである。
この両者の馴れ合いの関係が、今の厳しい現実を招来しているともいえる。
経営トップやユーザー部門にとって見れば、ITは所詮道具に過ぎない。彼らは本業に忙しく、ITの戦略的な価値など、興味がないのである。というよりも、そこまで、気が回らないというべきかも知れない。
彼らから見たときのIT部門は、コスト・センターであって、少しでもお金を使わないで欲しいと願っている。そんな、無言の圧力の中で、なにごとも「安く仕上げること」が優先課題となってしまう。
不況となり、コスト削減への関心が一気に高まった。コストセンターであるIT部門もまた、コスト削減をいっそう求められるようになり、リストラの対象にさえなっている。
そんな自分たちの立場を守るために、行っていることは、開発事案を減らし、あるいは、仕事の内容はそのままに、月額の支払いを減額する。それが、そのままIT事業者に回ってきているだけのことである。「この予算で、よろしく!」のメンタリティは、好不況に関係なく、そのまま引き継がれている。
ITの活用度を高めるためには、経営トップ、あるいは、業務部門の責任者が、その戦略的価値を認めなければ始まらない。本来、その役割は、IT部門であり、その長であるCIOの役割であろう。しかし、彼らには、コストセンターであることの意識しかない。新たな価値を創造し、ITを戦略的に活用して、企業価値を高めようという意欲が無い。
このような企業とお付き合いしている限りは、いつまでたっても、「この予算で、よろしく!」関係のまま、景気の浮き沈みに翻弄され続けることになるだろう。
では、どうすればいいのか。私は、IT事業者の社長が、ITの戦略的活用について、伝道師としての役割を果たすべきであろうと思う。
最近は、この伝道師のことを「エバンジェリスト」というそうだが、新しい称号を与えられると、それはそれで、なんか立派になった気がして、気持ちが引き締まる。社長は、エバンジェリストの自覚を持つべきである。
いままでのように、お客様にこびへつらい、お客様の言うことをそのまま受け入れることで、仕事を取ることではなく、ITの戦略的価値を伝え、活用度を上げるための役割をもっと積極的に果たすべきではないだろうか。
このようなトップの動きなくして、現場の営業に「もっとお客様の需要を開拓してこい!」と発破をかけても、士気は上がらない。
需要とは、社長が創り、営業が育てる。そんな関係を社内に育ててこそ、新たな需要の創出は、図られることになるのではないだろうか。
自分の会社の社長が、ITの伝道師となり、積極的な役割を果たしてくれるのであれば、営業は、社長を武器にお客様にアプローチできるではないか。
「ハイ、仰せのとおり。」ではなく、積極的に質問し、もっとこうしたほうがいいのではないかと、お客様を混乱させる。こんなやり方もありますよと、お客様にぶつけてみる。お客様も考え、営業も考える。そして、その先にあるのは、お客様の企業価値の一層の向上でなくてはならない。
お客様のIT活用度を高めるために、社長自らが意識を高め、勉強すべきではないか。その気概なくして、今の時代を生き抜くことはできない。
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