この会社は、東京大学 大学院情報理工学系研究科の篠田裕之 准教授の研究成果が元になっています。篠田先生は、ロボットにも人間と同じような感覚を持たせたいと考え、ロボット用の人工皮膚の研究をされていました。もう6年ほど前になるでしょうか。当時、ソニーのロボット犬「アイボ」が話題になっていた時代です。「この技術で起業したい」との御相談でした。
いろいろと話を伺っていると、どうもこの技術は、ロボットの人工皮膚という用途に限らず、「配線不要、伸び縮する配線基板」という、まったく新しいモノではないのかと言うことになりました。さらに議論を重ねてゆくと「光のスピードで動作する超高速コンピューターの基盤技術にもなりうるのではないか」という話しにまで広がりました。
この技術は、「二次元通信技術(PDF:1.4MB)」と言われるモノで、特殊な構造をした薄い通信シート(厚さ1~2ミリ程度)の中に電波を封じ込める技術です。電波は、本来どこへ飛んでゆくか分かりません。セキュリティ上のリスクがあります。しかも電磁波の健康への影響も懸念されます。一方ケーブルでの信号のやりとりは、配線が煩雑で沢山の機器をつなぐと大変なことになります。
この技術を使えば、大量の機器をシートに置くだけで、シートから僅かに染み出た微弱な電波を使い、通信ができます。
この技術を使った最初の製品が、「LANシート」です。机に置いたり、机の天板に埋め込まれた通信シート。その上に無線LAN対応のパソコンを置くだけでLANにつながります。そして机から離すと通信ができなくなってしまいます。
無線LANの利便性とケーブルLANのセキュリティを兼ね備えた、今までにない画期的な製品が、まさに世に出ようとしてます。
篠田先生が最初にこの話をお持ちになったとき、それは「ロボットの人工皮膚」という応用の一手段でした。以前このブログでもご紹介した「To Do」です。しかし、この技術の本質は何かと議論し、出てきた「To Be」は、「配線不要、伸び縮する配線基板」であり、「光のスピードで動作する超高速コンピューターの基盤技術」だったわけです。
もし、To Do =ロボットの人工皮膚にとどまっていたならば、たぶん今でも市場はなく、ビジネスにはならなかったと思います。
残念ながらこの2つの「To Be」は、まだ世の中に出るレベルには至っていません。しかし、その方向に向かって研究は続けられています。しかし、「To Do」をきっかけに「To Be」を明らかにできたからこそ「LANシート」が生まれたと言っても過言ではないでしょう。
高い次元に立つと、世の中を広く見渡すことができます。そして、可能性や選択肢が大きくなるのです。お客様が最初に期待していたことを越えることができるのです。
このLANシートは、オフィース・ワークやセキュリティの常識を変えてゆくかもしれません。お客様はそれに驚き、感動し、期待されるでしょう。そんな仕事に関われたことを誇りに思いますし、喜びでもあります。ソリューション営業とは、まさにそんな仕事なのだろうと思います。
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