2012年3月3日土曜日

営業力とは競合を作らない力


「営業力の強化が、なんとしても必要なんです。」

このようなご相談を頂くことがあります。しかし、この「営業力」と言う言葉の解釈は、人それぞれです。「売上を増やす力」、「新規の顧客を獲得する力」、「案件を確実に受注する力」・・・おおよそ、そんな意味で使われているように感じています。中には、プレゼンテーションやドキュメンテーション、交渉力などのスキルを「営業力」と解釈されている場合も少なくはありません。

これらが間違っていると言うつもりはありません。ただ、いまひとつ腑に落ちないというのが正直な感想です。

私は、こう考えています。「営業力とは競合を作らない力」だと。

営業の責任は、数字に責任を持つことです。つまり、担当とするお客さまやテリトリーにおいて、会社と約束した売上と利益を期限内で達成することです。この責任を果たす能力が、「営業力」ということになるのでしょう。この責任を確実に、そして効率よく達成するためには、競合と戦っている暇などないのです。

お客さまに「課題」があればまずはあなたに相談する。そういう存在になれば、競合はありません。もちろんなんでも受けられるわけではありませんが、自分たちにできることなら、まずは自分たちの仕事になります。そういうお客さまとの関係を作る力こそ、私は「営業力」ではないかと思っています。

IT業界で考えてみましょう。私達が取り扱っている商品やサービスの多くはコモディティ化しています。HPのサーバーもDellのサーバーもIBMのサーバーも全て中身はIntelのXeonであり、Windowsです。それぞれ特徴あるサービスやプロダクトを生み出そうという各社の努力は、結果として決定的な違いを見出しにくくしています。お客様の立場で見れば、それは一長一短であり、絶対的な優位を明確にすることは容易なことではありません。

このような環境に私たちは置かれているわけです。

また、ITはかつてに比べてとても複雑になりました。私が現役のころ、ITはメインフレームでした。すべてがこのインフレームという太陽を中心に回っていたのです。しかし、今そのような絶対的な中心はなく、大小さまざまな太陽が明滅を繰り返し、その組み合わせは多様です。

これだ!という最適解は用意されていません。しかし、お客様は最適解を必要としているのです。

このようなお客様の相談に乗り、一緒になって、お客様個別の最適解を描くことができればどうでしょうか。

お客様の課題を整理し、あるべき姿を明らかにする。そしてその手段を描き、お客様と合意する。あとはあなたにお任せです。

あなたは、お客様と描いた最適解を実現する組み合わせを提供する。もちろん自社だけですべてをまかなうことはできないかもしれません。それはしかたのないことですが、まずはあなたの会社にできることを優先させることに、お客様は何の異議もはさまれることはないでしょう。

このような関係を築く力こそ、私は「営業力」だと思っています。

君子務本、本立而道生

人格者は、物事の本質や根本のために努力する。物事の本質や根本を成り立たせようとすれば、おのずとそこへ至る道は明らかになる。

論語にこのような言葉があります。

営業の仕事とは、お客様の本質や根本、つまりお客様のあるべき姿を明らかにし、それをお客様と合意することから始まります。まずは方法にとらわれるべきではありません。お客様の課題とは何かを見極め、整理し、それが解決された後に、お客様にどのような幸せが、あるいは成功があるのかをお客さと一緒に描くことです。そこが合意できれば、そこへ至る方法をあなたが提案すればいいのです。この順番を入れ替えてはいけません。

このような役割を果たせる営業になる。素晴らしいことですが、容易なことではありません。しかし、「君子務本、本立而道生」です。営業力の根本を追求すれば、おのずとそこへ至る道は見えてくるのです。


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