2013年3月8日金曜日

ポストSI時代のITビジネス

「これからのSIビジネスはどうなるのでしょうか?」

ここ最近、こんな質問を頂く機会が増えたように思います。まあ、私がそんなことをよく言っているからかもしれませんが、これまでにも増して危機感をもたれている方が増えてきたことは確かです。

こういうご質問には、開口一番・・・「なくなると思いますよ。」などと言うものですから、最近は夜道を一人で歩くときには、後ろに気をつけるようにしています(笑)

さて、無責任な話ばかりしていても顰蹙を買うばかりです。そこで、これからのSIビジネスについてどうなるのか、そして、どう対処してゆくべきかをプレゼンテーションにまとめてみました。よろしければご覧ください。


「ポストSI時代」、私はこれからの時代をそう位置づけて考えてみてはどうかと思っています。

これまでの、SI=(受託+請負+派遣)ビジネスは、ますます厳しいものになるでしょう。グローバル化や市場環境の変化の速さに対応し、これまで以上に経営スピードの加速が求められています。情報システムはこの課題に応えなくてはなりません。それは、「コア内製」と「ノンコア・アウトソーシング」という二つの軸で考えてゆくとわかり易いと思っています。そして、クラウドは、この動きを支え、加速する役割を果たすことになるでしょう。

クラウドは、ユーザーによる「セルフサービス」を支え、情報システムに「アジャイル(俊敏さ)」と「スケーラビリティ(資源の増減に対する柔軟性と自由度)」を与えることになります。つまり、SIerに仕事を頼まなくても、ユーザー自身が容易にシステム資源の調達や変更、アプリケーションの構築や利用ができる手段なのです。また、「IT資産の呪縛からの解放」でもあります。

この革命的出来事は、モノありきを前提としたこれまでのSIビジネスを不要にする流れでもあります。また、情報システム部門にとっては、自らリスクをとりシステムの構築や運用に責任を持つことが求められます。これは、大きな負担の増大です。これまではSIerに任せていたことを自分たちでやらなくてはなりません。スキルや意識の大きな変革を求められることになります。その意味では、両者の利害は、今のところ一致しているといえるでしょう。

しかし、経営者の目線で見れば、これは、なれ合いの上に築かれた不合理であって、時代の流れに逆らうものと映るでしょう。情報システム部門が自ら変わることができないのであれば、その権限を剥奪するしかありません。情報システム部門の権威の低下、そこに連なるSIerは、一蓮托生に退けられることになるはずです。

このプレゼンテーションにも掲載しましたが、米ガートナーの予測によると、2017年には、CIOよりもCMOが費やすIT投資の方が多くなるとし、2019年には、IT関連予算の9割は、IT部門以外が持つことになるだろうと予測しています。

つまり、ビジネスのあらゆるセグメントがデジタル化され、ITは情報システム部門だけのものではなくなるとしています。ますますもって、従来のアタマしかない情報システム部門、そしてSIerにとっては、つらい時代がやってくることになります。

このような変化は、これまでの延長線上で捉えることはできません。位相が変わるパラダイム・シフトの到来です。

これまでの常識が非常識となり、非常識が常識となる時代、当然、これまで稼げてきた仕事のやり方やスキルが、使えなくなる時代なのです。

しかし、その一方で、ITはこれまで以上に事業戦略を体現する手段としてその重要性を増すことになります。新たなビジネス・チャンスの到来です。

このチャンスを活かしてゆくための戦略や施策を組み立てなくてはなりません。ただ、何が正解かは、だれもよくわかりません。経営者にそれを求めたとしても、無理な話です。

私は、この事態に対処するためには、変革を進める若い人たちによる小集団をいくつも作り、彼らの自律を促し、自己組織化によって解決策を出させてゆくことが賢明な策ではないかと思ています。つまり、事業改革にアジャイル手法を適用してはどうかという提案です。

そのために、経営者は、これからを見据えた明確なビジョンとミッションを示すことが必要です。そして、ミドル・マネージメントは、過去の栄光を棚上げし、彼らに答えをゆだねることです。そして、失敗してもその屍を拾うことを約束し、チャレンジを促すことに徹するべきだと思います。かつての成功の法則は通用しません。それを受け入れることには、抵抗があるでしょう。でも、それが時代を担う若者を育てることなのです。

このプレゼンテーションには、イノベーションとは何か、モバイルとクラウドがもたらす本当の変化、日米のビジネス文化の違いなどについても触れています。

それらについては、これまでもこのブログで書いてきましたので、あわせてご覧頂ければおわかりいただけると思います。

「イノベーションは創造的破壊をもたらす」

近代イノベーション論のきっかけを作った経済学者・シュンペーターの言葉です。クラウドやモバイルは、まさに、情報システムのこれまでの常識を破壊するイノベーションといえるでしょう。そして、それは、新しい常識の創造でもあります。

その推進者にならなくてはなりません。それができないのであれば、せめて、その担い手の足かせにはならないことです。

関連投稿 ---

 ■ SIビジネスはなくなります
 ■ モバイルという非常識、いま何が変わろうとしているのか

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2013年3月2日土曜日

失敗を繰り返しなさい、若気の至りが許されるうちに


「お客様と話をしていても、なかなか理解できないし、うまく質問もできません。自分の知識不足をつくづく思い知らされます。」

先日、あるSI事業者の新入営業14名を相手とした最後の講義を終えることができました。彼らは入社後の3ヶ月間、社会人としての基礎的な研修を受けたあと、営業部門への配属に先立ち「営業基礎研修」を受講、そのときからおつきあいをしています。

なんとも頼りのなかった連中が現場に配属されて半年、成長したなぁ、とうれしく思いつつ、かつての自分を重ね合わせていました。

彼らは、自らの未熟を素直に受け入れています。そして、それをなんとかしたいと、必死にもがき苦しんでいます。すてきなことだと思いました。こういう気持ちを、いつまでも持ち続けたいものだと思いました。


「素直さ」とは成長の原動力だと思っています。それは、決して相手の言葉を鵜呑みにするのではなく、相手の言葉に真剣に向き合い、自分にとって、どういうことかと考えてみることなのでしょう。

彼らには、自らの未熟を受け入れ、先輩諸氏の言葉に真摯に向き合う「素直さ」があります。だから、こんなにも目覚ましく、成長できるのです。そして、この気持ちを失ったとき、人の成長は止まります。

この真実を忘れないようにしたいものです。

ただ、なかには、よく見られようと腐心し、うまくできないことを恥じている人もいます。そして目標を引き下げ、できる範囲におさめようとしています。失敗を恐れ、失敗しないように、しないようにと、注意深く行動している人もいます。

「若気の至りで許されるうちに、若気の至りをうまく使わなくちゃいけない。28歳も過ぎれば、そろそろ通用しなくなる。だから、お客様のためと思うなら、自分の考えで突き進めばいいんです。それで失敗しても、今なら上司が尻拭いしてくれるから、今のうちに大いに恥をかきなさい。怒られることはあっても、殺されることはないから・・・」

こういう言葉を素直に聞いてもらえることは、本当に幸せなことです。年を重ねても、その素直さを失わないでほしいと思います。

そんな、思いを込めて、彼ら14人に送った言葉を紹介させていだきます。なお、苗字は仮称とさせていだきました。

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佐藤さん
上に向かってゆく人に人は嫉妬するか、敬意を持つかのいずれかです。嫉妬する人はほっておけばいいです。そうすれば、いずはあなたの周りにすばらしい人たちが集まってきます。それが、人脈です。こちらから何かを求めれば、去ってゆきます。前に進めば、自然と周りから集まってきます。誰かと比べて、できていないことはたいしたことではありません。昨日の自分と比べて、ひとつでもできるようになれば、それでいいのです。そういう人が魅力的なんです。

鈴木さん
すべてを正確にこなすことなど無理な話です。どれかひとつでも自信を持ってできるようにすればいい。それ以外は、まだ勉強中なんで、ごめんなさいと、開き直っていればいいのです。自信を持ってできるものが少しずつ増えていっても、完璧にすべてこなせるようになんかなれません。いつもできないことであふれているのです。だから、なんとなしたいと思う。それが、生きている証しです。

井上さん
人の話を聞くとはどういうことでしょうか。まずは、自分はどう思うかといった、明確な自分の考えを持つことです。そして、それを相手に主張し反応を見ることです。そして、その言葉を素直に理解しようと努力し、自分の主張と何が同じで、何が違うかを見極め、必要とあれば訂正し、再び自分の主張をしっかりと持つことです。その繰り返しが、人の話を聞くということです。

山本さん
顧客の視点に立つとはどういうことでしょう。それは、どうすればお客様が一番幸せになれるかを考えることです。それは、話を聞いただけではわかりません。想像を働かせることです。そして、自分なりの結論を持つことです。そして、それをお客様に聞いてみるのです。もし、その想像が間違っていれば教えてもらえるはずです。正しければ、「わかりました」と、笑顔で応えればいいのです。そして、それを実現するために全力を尽くす。お客様の視点に立つとはそういうことです。

中村さん
失敗をしてください。それもたくさん。このままでは、クビになるのではないかと心配するくらいに。それには、いい方法があります。自分の考えたことで、やってみることです。相談なんかせず、自分で考えて行動してみることです。これが、成長の早道です。ただし、それは入社三年間しか使えない期間限定のテクニックです。その期間がすぎれば本当にクビになるかもしれません。でも、そのときは、クビを覚悟で大きなことにチャレンジできる人間になっていることでしょう。

加藤さん
情報を手に入れるもっともいい方法は、足を使うのではなく、頭と口と手を使うことです。まずは、考えるのです。きっとこんなことになっているはずだ、きっとこんなことに困っているはずだ、きっと自分たちについてこう思ってくれているはずだ。想像力たくましく、自分なりの仮説をたてることです。そして、その仮説を自分の口で訊いてみることです。それが正しいかどうかが、確認できます。また、間違いがわかるでしょう。そして、思わぬ情報がそんな会話から手に入ります。そして、それを整理するのです。自分なりに手を使ってまとめてみる。そして、自分の結論を書き出してみるのです。情報は、こちらから仕掛けてこそ手に入るものです。情報とは、自分の手で整理してみてこそ、役に立つものになるのです。ただ、足を動かし、人に会うだけでは、情報は手に入りません。

林さん
大切な話は、本人が話したいと思わなければ、話してはくれません。どうすれば、話したいと思うようになるでしょうか。それは、あなたが相手の幸せを願い、なんとかしたいと心から思って会話をしているときです。何かを聞き出そうとして、あるいは、差し障りのない話をして、その雰囲気を演出したからといって、本当に大切な話など聞き出すことはできません。怒りをあらわにし、なぜやらないんですかと、食って掛かってもいいじゃないですか。相手に反論してもいいと思います。もし、それが、相手の幸せになると思うのなら。たとえ、その場の雰囲気がささくれ立っても、それは心のヤスリです。やがては角が削れ、しっくりと考えが一致するでしょう。そういう、対話こそが必要なのです。

渡辺さん
朝の30分、早く出社して自分のための勉強をするという目標が達成できないなら、それを何分に変えても、きっと続きません。毎日はできないけど、一週間で何分以上と変更し、自分につじつま合わせをしても、それは逃避でしかないのです。ならば目標なんか決めずに、成り行きに任せた方が、精神衛生上、ずっと健全です。できない自分を蔑んでください。そして、悔しいと思ってください。その気持ちから逃れてはいけないのです。できない自分を恥ずかしいと思うべきです。そんなできない自分を避けずに受け止めてください。そして、涙を流しながらも、なんとかしようとがんばるしかないのです。ひとは、そんなあなたをすてきだと思うでしょう。

小野さん
自力でなんとかしようとがんばっている自分。あなたはそんな自分をほめてあげたいかもしれませんね。しごとをしている気がするでしょう。でも、冷静に考えてください。周りから見ればいい迷惑かもしれませんよ。たとえ自分はがんばったと満足しても、結果は不完全であり、相手にとっては不満が残ることかもしれません。相手を満足させるということは、ただがむしゃらに一生懸命やればいいということではないのです。自分が未熟であることをさらけ出し、相手にそういう自分を指摘してもらい、どうすればいいのか、なにをすれば満足してもらえるのか、心から尋ねることです。相手は、満足したいのです。だから、こうしてくれというでしょう。そして、それに素直に応えることしかできないのです。それでいいのです。そうすれば、どうすれば成功できるかだんだんわかってきます。自分を成長させたいと思うのなら、自分のわからないことや無能をさらけ出すことです。ひとは、そういうあなたに惹かれてゆくでしょう。

吉田さん
あなたは誰と比べて自分の成長を推し量ろうとしていますか。他人ですか、それとも過去の自分ですか。他人は、才能も知識もあなたとは全く違う存在です。しかし、自分という存在は、まったく同じ相手です。こんなにわかり易い比較はないでしょう。誰かと比べて優れていると満足してみても、劣っていると憂いてみても、それは所詮基準が違うのです。それよりも、過去の自分より、今はできることが多くなった、完成度があがっている。それを見つめることが、大切なのです。成長とは、他人より優れた存在になることではありません。過去の自分より、優れた存在になることです。

石川さん
仕事のゴールとはなんでしょうか。それは、お客様に最大の満足を与えるコト以外にありません。自分がどう考えるか。そんなものは、独りよがりです。お客様がどう考えるかです。あなたにはそれが見えますか。それが見えないとすれば、それがあなたの実力です。残念ながら、それが今の自分です。仕事の優先順位は、何が重要かで決めるという話をしました。これが、肝心なことなのです。その重要を成し遂げるために、あなたは何をしてきたでしょうか。優先順位の付け方を間違ってはいませんか。一番大切なことは、いつもわからないものです。年を重ねても、答えが見つかりません。だから、いつも勉強しなきゃいけない。仕事をするとは、そういうことだと思います。

遠藤さん
説得力や交渉力とは想像力で、相手がどこで合意してくれるかを予測する力です。会話をスムースに進める力は想像力で、相手の関心のある話題は何かを予測し、それにあわせることです。話を聞き出すこつは想像力を働かせて適切な質問を繰り出すことです。スケジューリングは、想像力で、仕事の流れを予測することです。知識や経験がないことは仕方ありません。それは、いつになってもないのです。年を重ねれば、その年相応の知識や経験が求められます。でも、いつも足りないのです。だから、想像力でそれを埋めるしかないのです。相手は何を幸せと感じるでしょうか。それを想像し、先手を打つことです。それを思いやりと言います。あるいは愛情と言います。そうなんです。仕事は想像力という愛情なくしてできないことなのだということ。あなたに足りないのは、想像力かもしれませんよ。

原田さん
慎重とはどういうことでしよう。少しずつ実行し、確認し、仕事を前に進めることではないでしょうか。考えて、考えて、失敗してはいけないと思案して、それでも不安だからまわりに相談して、絶対失敗しない確信を持ってから行動に移すことではありません。失敗はつきものです。人生とは、失敗を繰り返し、そしてなんとか最後のつじつまを合わすことかもしれません。だから、早いうちに実行して、小さな失敗を積み重ね、修正を繰り返し、ゴールを目指せばいいのです。ドカンと大きな失敗をするよりも、被害は少ないはずです。恐れるべき失敗があるとすれば、それは命を失うことです。それ以外は、みんな小さな失敗です。あなたは仕事で命を取られる心配はありませんよ。

酒井さん
お客様にかわいがられるとはどういうことでしょうか。ニコニコして、いいこぶって、できるふりしていればかわいがられるでしょうか。かわいがられるとは、真剣にお客様に向き合うことです。自分で考えて、お客様の為に何をすべきか、その答えをいつも問い続けることです。お客様と意見が異なるとすれば、お客様とけんかしてもいいです。ことなった主張があればはっきりと伝えるべきです。もちろん礼儀をわきまえて。その真剣さこそが、かわいがられる秘訣です。

2013年2月23日土曜日

モバイルという非常識、いま何が変わろうとしているのか


「AndroidとiOS、ビジネスではどちらが主流になるでしょうか?」

ITトレンドの講義をしていると、こんな質問を頂くことがあります。開発やサービスを提供する立場からすると、これは切実な問題だろうと思います。

しかし、こういう議論以前に、「モバイル」とは、どのような変化をもたらそうとしているのでしょうか。私は、その本質を問うことが、先ではないかと思っています。

確かに手段をどうするかは、考えなくてはならないことです。しかし、まずは、どのようなニーズが生まれようとしているかを知ることが先ではないでしょうか。その上で、求められる機能を明らかにし、実現する手段を選択する。それが、物事を考える道理です。

例えば、はさみの使い方を知っていても、切るものをしらなければ、何の役にも立ちません。あるいは、ただ言われるがままに、「これを切ってください」に応えるだけで、いいのでしょうか。これでは、自ら新しいビジネスを開拓してゆくことなどできないでしょう。

では、「モバイル」がもたらす変化とは、どういうものなのでしょうか。ITインフラの歴史を振り返りながら、今日は、このテーマについて考えてみました。

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『 Mobile First は Cloud First を意味する。』

これは、IBMのモバイル・ファースト宣言です。私は、この意味を理解することが、「モバイル」がもたらす変化の本質を理解することにつながるだろうと思っています。

下のチャートをご覧ください。これは、ITインフラの過去と未来を一枚のチャートにまとめたものです。



1964年、IBMがSystem/360という汎用コンピューター、すなわちメインフレームを世に出しました。この出来事が、コンピューターのビジネス利用を拡大させるきっかけとなりました。

System/360以前のコンピューターは、業務個別にコンピューターが用意されていました。しかも、仕様はバラバラで非公開、そのためプログラムにもデバイスにも、互換性はありません。また、マルチタスクでもなく、企業がコンピューターを使うためには、複数のコンピューターが必要でした。これは、使う側にとっては、大きな負担でした。また、同時にメーカー側のコストも高いものになっていました。そのため、コンピューターを使える企業はごく限られていたのです。

System/360は、このようなコンピューターが抱えていた課題を一気に解決するものだったのです。

一台のコンピューターで技術計算も事務計算もできます。そして、バッチもオンラインにも対応しました。そのため汎用機とも言われたのです。また、マルチタスクが可能でした。さらに、アーキテクチャーと言われる「標準化された技術仕様」を公開し、だれもがそれを見ることができるようにしたのです。

その結果、同じアーキテクチャーで作られたSystem/360ファミリーであれば、機種を問わず、ソフトウェアと接続できるデバイスの互換性を保証したのです。

これによって、多くの企業がプログラムを開発でき、やがてはパッケージ・プログラムへと発展してゆきました。また、System/360につながるデバイスをIBM以外の企業が作ることができるようになりました。また、このアーキテクチャーに準拠した互換コンピューターも出現しました。

このようなエコシステムが形成され、企業間の切磋琢磨が繰り広げられた結果、適用範囲が広がり、コストパフォーマンス大きく改善していったのです。それがまた、コンピューターの需要を拡大してゆきました。

コンピューターが普及する以前、業務は伝票の受け渡しによって、成り立っていました。これをプログラムに置き換え、情報システムとすることで、業務の生産性が大きく改善していったのです。結果として、メインフレームへの情報システムの集中化がすすみました。

情報システム化の需要はますます高まったのですが、今度は、開発できるエンジニアが需要に追いつきません。情報システム部門に要望が集中してしまい、バックログは溜まる一方です。そのため、ユーザー部門からの不満も高まり始めていました。

1978年、DEC社がVAX11/780というコンピューターを世に出しました。このコンピューターは処理能力あたりの価格が、メインフレームよりも遥かに安く、しかも小型でした。これが火付け役となって、小型・低価格な様々なコンピューターが出現したのです。

ユーザーは、情報システム部門に頼っていては、いつまでたってもこちらの需要を満たしてくれない不満から、独自に部門コンピューターを導入する選択をしました。これによって、コンピューターの分散化と部分最適なシステムが乱立することになったのです。

コンピューターの取得単価はどんどん安くなり、だれもが簡単に買える時代を迎えました。その結果、膨大な数のコンピューターが企業内に導入されるようになったのです。

しかし、その結果、大量のコンピューターの運用管理、保守やバージョンアップ、トラブル対応、セキュリティ、データ互換性の確保など、コンピューターを所有することに伴うコスト(TCO)が著しく上昇することになったのです。ついには、情報システム部門の予算の実に7割がTCO負担と言われるまでになってしまったのです。

そんな課題を解決できるのではという期待から、クラウドへの注目が集まっているのです。

ITインフラをクラウドに預けることで、リソースの調達や変更、運用管理の負担を減らしたい。また、企業を越えた共同利用により、一企業あたりの負担を減らしたい。また、企業の独自性が乏しい電子メールや経費精算などのアプリケーションも自ら導入するのではなくクラウドを利用して、運用管理の負担を減らしたい。そんなニーズの受け皿として、今クラウドの普及は急速に拡大しています。

また、以前は、コンピューター・リソースを使うには、そのための機器を購入し、そのためのエンジニアを雇用しなければなりませんでした。それがクラウドによって低料金で、しかも従量課金で利用できるようになりました。そのため、ITベンチャーのスタートアップ・コストが大幅に下がりました。そして、実に多くの実験的、そして、これまでの常識を覆すようなITビジネスが立ち上がり、イノベーションが加速されることになりました。

Apple社がiPhoneを出したのは、このようなクラウドへの関心が高まり始めた2007年です。iPhoneはこれまでの携帯電話とは異なり、インターネットと接続し、電子メールのやり取りやフル機能のWebブラウザーを利用することができました。つまりクラウド利用を日常化したのです。

iPhoneをきっかけに各社がスマートフォンを発売、市場が大きく拡大し始めたのです。その後、2010年に発売されたタブレット・デバイスiPadの成功を受けて、各社も同様の製品を発売し始めたのです。

その後、それらのデバイスは、3GやLTEなどの高速通信に対応し、インターネットとの親和性を高めていったのです。

IDCの予測では、2016年にはスマートフォンの出荷台数は14億台、タブレットは3億台となり、PCの4億台をはるかにしのぐ台数になろうとしています。

スマートフォンやタブレットなどの日常持ち歩くモバイル・デバイスは、常時接続でインターネットに接続しています。また、その上で動くアプリは、インターネットを介し、クラウド上のバックエンド・サービスと連携することで、様々な機能を提供しています。

つまり、モバイル・デバイスは、デバイス本体の機能や性能の限界を超え、クラウドが提供する膨大なバックグランド・リソースと一体となって、サービスを提供するように進化してきたのです。

また、モバイル・デバイスによって、位置情報や動作などの様々な情報を本人が意図しなくとも、インターネットを介してやり取りされるようになりました。これによって、膨大な行動データ=ビッグ・データがクラウドにもたらされるようになったのです。 

また、BaaS(Background as a Service)やMEAP(Mobile Enterprise Application Platform)といったサービスを利用することで、モバイルとクラウドとの連携アプリケーションの開発が容易になり、両者の一体化が、さらに進化しようとしています。

Facebookなどソーシャル・メディアの利用は、モバイル・デバイスの普及で一層拡大しています。その結果、これまでは、リアルは実名、ネットは匿名という常識が崩れはじめています。

Amazonや楽天など、ECサービスをモバイルで利用するシーンも拡大しています。例えば、テレビを見ながら、そこに映し出された商品をスマートフォンで即座に注文する。リアル店舗で商品を確認し、価格ドットコムで安いところを探しモバイル・デバイスから注文する。リアル店舗にとっては、迷惑な話ですが、そんなことも日常化しています。

このように、モバイル・デバイスなどのポストPCとクラウドとの連携は、いっそう加速してゆくことなります。これが、先に紹介したIBMのモバイル・ファースト宣言、『 Mobile First は Cloud First を意味する。』の意図するところなのです。

さらに、ポストPCの先には、IoT(Internet of Things)が控えています。PCやスマートフォン、タブレットだけではなく、多種多様なものがネットワーク化される世界の出現です。

つまり、自動車や家電製品が、インターネットにつながる世界です。特に、自動車は、スマートフォン、タブレットに続くモバイル・デバイスとして期待されているのです。

リアルとネットの融合、そして、情報システムの日常化は、今後ますます進化してゆくことになります。

このような世界は、もはやITインフラと呼ぶことはふさわしくないかもしれません。ITと日常の融合がいっそう進むことで、ITインフラは、ソーシャル・インフラへと進化を遂げることになるでしょう。

では、この進化は、どのような変化をもたらすことになるのでしょうか。下のチャートをご覧ください。


  • ネットにつながるデバイスの種類が増える、
  • 機能だけを充足したUIでは不十分で使いやすさや使うことが楽しいといった経験をも満たしてくれるUXへの対応が求められる
  • ネットワークへのアクセスの手段が多様化し高速化する


などの変化がおこることになるでしょう。しかし、これは表面的な変化にすぎません。むしろ、このような表面的な変化によってもたらされる本質的な変化に着目すべきです。すなわち、

  • 仕事の仕方やライフスタイルが変わる
  • ネットが実名となり、タイムラインで離れていてもその人の行動や考えがリアルタイムでわかるようになり人との関わり方が変わる
  • 結果として、様々な物事の判断基準や価値観が変わる


などの変化がおこることになります。私たちが、これからのビジネスを考えるときに、まず着目すべきはこの本質的変化です。

もちろん表面的な変化に対処することが、実務上求められることになるでしょう。しかし、それは、本質的な変化に対応するための手段にすぎません。つまり、ビジネスのデマンドは、この本質的な変化から生まれてくるのです。

ユーザーが何を求め、どうしたいのか、それはこの本質的変化を見極めることから始めなくてはなりません。新たなビジネスを開拓し、マーケットでのイニシアティブをとってゆくためには、この変化に対応したビジネスを見いだしてゆかなくてはなりません。

冒頭のAndroidかiOSかの議論は、表面的な変化についての議論です。確かに、委託や請負をこれからもビジネスの柱としてゆこうというのなら、確かに重要なことです。しかし、自らがビジネスを切り開き、新たなビジネスの柱を打ち立てようとするのならば、それ以前に議論すべきは、この本質的な変化への対応でしょう。

これまでの常識が変わろうとしています。つまり、これからのビジネスは、これまでの延長線上には存在しないのです。今まさにパラダイム・シフトがおころうとしているのです。

そんな視点で、モバイルとクラウドをとらえてみてはいかがでしょうか。


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