2013年2月2日土曜日

気持ちとお財布の一致・営業力強化の処方箋

「でも・・・やっぱり、数字を作らなければいけないんですよね。」

ある、大手SI事業者の若手営業の研修で、こんな発言があったそうです。

この研修で、営業の責任者から、

「ビジネスを変えてゆかなくてはならない、もうSIに頼っていられる時代ではない、営業が自ら変わらなくちゃいけない・・・」というような話をされたそうです。

そんな話へのコメントだったそうです。

この会社は、クラウドやデータセンターなどのサービス・ビジネスで大きな成果をあげています。しかし、営業が与えられた予算を達成するには、受託、請負、派遣と言ったこれまでのSIビジネスに頼らなくてはなりません。この発言には、こんな背景があったようです。

営業研修やコンサルティングで、SI事業者の方とお目にかかると、誰もが危機感を口にします。特に、若手は今の現実を敏感に感じ取っています。会社の施策や経営に対して、しっかりとした意見を持っている人も少なくありません。

もちろん管理者や経営者もまた、この現実に目を背けている訳ではありません。自分たちのビジネスのポートフォリオを変えてゆかなければならないと認識しています。

しかし、現実には、若手は管理者や経営者の無策に疑心暗鬼となっています。一方で、管理者や経営者は、前線の営業が変わる事を求めるものの、その動きの鈍さに憂い、鼓舞し、尻を叩いているのです。

お互いに「なんとかしなきゃ」の気持ちは同じなのに、相互不信が広がっている。そんな現場を少なからず見ています。

気持ちとお財布が一致していない

問題の本質は、ここにあるように思います。

つまり営業の評価制度が、事業戦略や施策と一致していない、いや、まったく無関係に作られているからではないでしょうか。

多くの企業では、営業の予算は、売上と利益の金額です。それだけです。これでは、数字をあげやすい既存顧客からのリテンション・ビジネスや、やり方がわかっていて数字が読みやすい受託、請負、派遣に営業活動に傾注するのは当然の事です。

新規顧客開拓の目標が与えられている場合でも、実質的には努力目標の域を出ず、最終的には売上と利益の数字でしか評価されないケースも少なくありません。

毎年の人事考課の中で、事業戦略を個人目標に組み込んでいる場合もありますが、その評価は主観的で、数値として客観的に評価される場合は少なく、本人のモチベーションに大きな影響を与える事はありません。

少し古い話ですが、私がIBMで現役の営業をしていた頃、営業には金額としての「予算」はありませんでした。そのかわりノルマとしてポイント達成が求められました。

ポイントとは製品やサービスごとに設定されており、おおむね金額に連動していました。しかし、戦略的に販売しなければならないものは、金額以上に高いポイントが設定されます。

また、特に重点的に販売しなければならない商品カテゴリーについては、個別に特別なポイントが用意されていました。例えば、小型機種の販売を強化するためにSmall Business Unit (SBU)ポイントというものが設定され、販売金額とは関係なく、その台数を評価する仕組みになっていました。特に、重点的に販売しなくてはならない製品については、意図的に高いポイントが設定されていました。

営業は、夫々のカテゴリーでポイント達成目標が与えられていました。そして、それらが、コミッションに連動しており、すべてを達成できて初めて100%のコミッションが支払われます。また、100%クラブといって、優秀営業を表彰する制度があるのですが、すべてのカテゴリーで目標達成できなければ、表彰される事がありませんでした。

そして、このルールやポイント制度が、毎年変わるのです。つまり、その年の事業戦略に連動して、ポイントの重み付けやカテゴリーを組み替え、営業のお財布と会社の事業戦略を一致させていたのです。また、期中に新たな営業戦略を実行しなければならない場合は、特別ボーナスを設定し、あらたな目標を与えます。このように、事業戦略と営業のお財布が、常に一致するように常に配慮されていたのです。

営業は、会社が何を期待しているかを、このポイントで理解し、その達成を目指します。そして、もっとも効率よくすべてのポイントを達成できるように、自分の担当するお客様毎にアカウントプラン、つまり販売戦略を立てるのです。

このようなポイント制度を毎年改訂するには、相当な手間がかかります。会社全体の経営方針、事業部門毎の施策、それらをすべて勘案し、ポイントを設定しなければなりません。実際には、この制度を設計、維持するための専任組織を設置していました。それほど、大変な仕組みだったとも言えます。

ただ、ポイントという数字によって営業個々人の営業活動を事業戦略に一致させるべくコントロールする仕組みは、ほんとうによく考えられたものだと思います。

このようなシステムの伝統やコミッション文化のない日本企業が、そのまま真似する事は、現実的ではないと思っています。しかし、この考え方の本質は、「事業戦略とお財布を一致させる」ということを考える上で、参考になるのではないでしょう。

事業を意図する方向に向けるために人を動かそうとするとき、言葉で危機感をあおり、精神論を鼓舞したところで、自発的な行動を促す事はできません。

「全社一丸となって、事業の改革を図ろう」
「全員営業で、新規顧客を開拓しよう」
「全員で危機感を共有し、改革を進めてゆこう」
 ・・・

このようなお題目をいくら並べてみても、それが、わかりやすい形で、お財布に直結しなければ、営業は動きません。

「上の人は、言っている事と、やっている事が違う」

そういう疑問を現場に与えてしまえば、結果として士気は低下し、事業の改革も変革も「かけ声倒れ」で終わってしまいます。

では、どうすればいいのでしょうか。

例えば、事業戦略をバランススコア・カードを使い、個々人のKPIに落として、それを営業成績や人事考課に反映させるという方法があるかもしれません。一部の企業、特に外資系の企業などでは、そんなことをやっているところもあるようです。

あるいは、営業成績を会計上の売上や利益と切り離し、戦略的な商品やサービスの数字上の重み付けを変えて、成績評価することもひとつの方法かもしれません。

また、公平という名の下に、営業全員の成績評価を同じ売上や利益で縛るのをやめ、
  • 新規顧客開拓営業は、売上1000万円以上顧客を10件開拓する。
  • 戦略事業開拓営業は、新規事業に関するアライアンスを10件契約する。
  • 既存顧客担当営業は、対前年比10パーセント増の売上と利益を確保する。

というように、営業タイプを分けて、その評価をかえるという方法も有効かもしれません。そうすれば、自分のやるべき事とお財布は一致する訳で、現場に自発的行動を促す事ができるかもしれません。

このとき、一度決めたルールに固執する事なく、戦略の変更とルールの変更をセットで運用する事が大切です。

このような話をすると、必ずこんな反論が返ってきます。

「おっしゃることはごもっともだが、人事に手を付けるというのは、容易な事じゃありませんよ。なかなか、すぐにはできません。」

「じゃあ、いつやるんですか?」と、のどの奥に引っかかってしまうのは、大人気ないでしょうか()

また、「お財布なんかじゃなくて、自分たちの会社の事として、自分の問題として考えるべきじゃないのかなぁ」というご意見も聞こえてきそうです。特に、オーナー企業の社長などにありがちな発言です。

しかし、だからこそ、あなたは経営者であり、他の人が社員なのだという現実を無視しています。雇われの身であろうと、愛社精神はあります。自分たちの会社をなんとかしたいと思っています。しかし、それは見返りを伴う事が前提です。最初はそういう気持ちに頼る事はできても、経営者が無策のままでいれば、いずれは気持ちも離れてしまうでしょう。

ところで、このような制度を考える上で、欠かせない事があります。それは、戦略策定とマーケティングの能力を強化することです。

ビジネスのトレンドを的確に把握し、それをどのように事業化してゆくのか。経営者はしっかりとしたビジョンを持ち、マーケティングはその戦略を組み立てます。

しかし、未だ多くのSI事業者は、お客様のご依頼をしっかりとこなす能力には長けていても、その能力を使って、お客様からの新たなご依頼を引き出す武器に仕立て上げる能力に欠如しています。

大手SI事業者でさえ、コーポレート・マーケティング機能を持っていないところがあります。これでは、事業戦略とマーケティングの一致、それに基づく戦略的営業施策を組み立てる事はできません。当然、営業の評価制度も、中途半端なものになるでしょう。

すべてを一度に実現する事は困難であるにしても、営業に変革を求めるのなら、経営が率先して、この現実を直視し対策を始めるべきでしょう。営業研修だけで、営業の行動を変えさせる事などできません。

営業研修を生業にしている私が、自分で自分の首を絞めるような発言ですが、これは真実だと思っています。

「気持ちとお財布を一致させる」

本気で営業力を強化したいのなら、この大変な課題にも立ち向かわなければならないことを自覚しておくべきだと思います。

■ Facebookページに、皆さんのご意見やご感想を頂ける場所を用意いたしました。よろしければ、お立ち寄りください。

満席御礼■ 第12期 ITソリューション塾 ■2月6日スタート■

今回は、44名の皆様のお申し込みをいだきました。本当にありがとうございました。

精一杯取り組ませていただきます m(_ _)m

2013年1月27日日曜日

SIビジネスはなくなります

「これからのSIビジネスは、どうなると思いますか?」。

先日、あるセミナーでこんな質問を投げかけました。

「厳しくなると思います。」、「ますます儲からなくなるでしょうね。」などのご意見をいただきました。

昨日、ある大手SIerさんで研修がありました。そこで、「どうすれば、自社のクラウド・ビジネスを拡大できるか」をテーマに議論をしました。

「うちはSIerなんだから、クラウド・ビジネスを拡大するではなく、SIビジネスを拡大することが目的。クラウドは、それなりの機能があって安けりゃいいんじゃないですか。それを目指すべきであって、クラウド・ビジネスをどうするかという議論は、そもそも本末が転倒していると思います。」

こんな発言がありました。

このような話を聞き、どちらの場合も「SIビジネスありき」の発想から抜け出していないことがわかります。

ユーザー企業の情報システム戦略策定に関わりながら、お客様自身が内製化を志向し、クラウド・ファーストを模索し始めていることを肌で感じています。多分、この感覚は、多くのSIerの皆さんも同様ではないでしょうか。

それにもかかわらず、何もしない人がいるとすれば、現実逃避か、余命幾ばくもない自らの死を受け入れた解脱者かのいずれか、ということなのでしょう。

今年は何とかなるでしょう。じゃあ3年後はどうでしょうか、5年後はどうでしょうか、10年後はどうでしょう・・・いつかとは明言できませんが、私は「SIビジネスはなくなる」と考えています。

SIerの方にお話を伺うと、だれもが、このままではいけない、なんとかしなければならないとおっしゃいます。じゃあ、どんな取り組みをされているのですかと聞けば、「いろいろと考えているところなんですよ」と、去年と同じ発言を繰り返されます。結局は、なにも考えていないのです。

こんなIT企業のマネージメントや経営者に出会う事があります。

「スマホなんて、なくても困らないよ。スマホに換えれば、通話料金は高くなるし、アプリだって使う事もあまりないしねぇ。セキュリティも問題あるらしいし・・・メリットないからなぁ」と言訳けし、いまだカラケーしかもっていません。それにもかかわらず、お客様に「我が社もモバイルを推進しています」と話をしています。根っこにある感性は、同じところにあるように思います。

これまでSIerは、お客様からの依頼に誠実にお応えすることをモットーとしてきました。お客様からのご依頼が潤沢にあり、それを確実にこなしていれば、リピートが期待できました。お客様が成長し、仕事もそれに伴い増えている間は、SIerも成長することができたのです。

しかし、リーマンショックを境として、このビジネス・サイクルは壊れてしまいました。お客様の成長の勢いは衰え、事業の主体は海外へとシフト、国内での需要の伸びは頭打ちです。

これまで、お客様が供給を確保するためにおこなってきた「棲み分け」という構図は崩れ、コスト削減のための「競合」はもはや当たり前です。そして、その競合相手は、国内企業とは限りません。

景気が回復しても、お客様のクラウドや内製化への志向は、「受託、請負、派遣」を生業とするSIerにとっては、新たな競合として立ちはだかります。

もちろんシステムの需要がなくなることはありません。しかし、その手段が、変わろうとしています。手段が変われば、必要とされるスキルは変わります。そして、収益確保の仕組みも変わります。この変化の流れをとどめる事はできないのです。その変化に対応できなければ、いずれは淘汰される運命です。

じゃあ、どう変わらなければならないのでしょうか。次のチャートをご覧ください。


従来のオンプレミス、国内対応、SIer依存を前提としたビジネス構造は、長続きはしないでしょう。時代は、ノンコアITO、グローバル対応、コア内製へと向かっています。

そうなると、これまでの情報システムの構築を前提としたSI = System Integrator では、成長を期待する事はできません。ITサービスを自ら提供し、あるいは、世の中の様々なITサービスを熟知し、お客様に最適な組み合わせを提供するSI = Service Integratorへの期待と需要が高まるのではないでしょうか。

しかし、このビジネスもコモディティ化が進行し、新たな競争へと発展してゆくでしょう。そうなれば、新たな差別化の方策を見いださなくてはなりません。

それは、「ITを活用して既存の組織、経営や業務のあり方といった構造に変化を生じさせる」役割を担う事ではないでしょうか。私は、これをSI = Solution Initiatorと名付けてみました。

Initiatorとは、起爆剤、創始者、変化を引き起こすものという意味があります。つまり、ITをお客様の経営や事業の変革の起爆剤として提供できる存在。そんな役割を担う事ではないでしょうか。

System IntegratorからService Integratorへの変化は、商材と収益構造の変化です。そして次のSolution Initiatorへの変化は、役割と提供価値の変化となります。

ITを使って経営課題を解決したい。このニーズは変わらずとも、その手段は変わり、役割が変われば、自ずと必要なスキルと収益構造が変わります。この変化に対応してゆくことが、生き残りのすべではないかと思うのです。

Solution Initiatorは、大きなビジネス規模を期待することはできないでしょう。だから、どうしても規模のビジネスを追求し、旧来のSIビジネスを捨てられないのです。しかし、労働力の提供を生業としている旧態依然としたSIerでは競合優位を見いだす事はできません。従って、Solution Initiatorとして、自らの存在価値を高めてゆくことが、必然の流れのように思います。

規模の拡大を志向するためには、自らサービスを構築するか、他社のサービス基盤を仕入れ付加価値を高め、自らのサービスとして提供することで、Solution Initiatorからの需要を取り込むことが必要です。そして、自らの特徴を先鋭化して、「この領域では一番」を目指し、他社を排除して、お客様を囲い込むとことや、顧客数を桁違いに拡大する事ではないかと考えています。

たとえば、iTunes ストアは、そこに登録さえできれば、お客様は一気に世界です。たとえ単価は安くても顧客数を桁違いに増やす事ができるはずです。この流れは、コンシュマー領域からビジネス領域へと拡大してゆくでしょう。

このような考えは、非常識でしょうか。

イノベーションは、非常識が常識に変わることです。そこには、必ず「創造的破壊」が伴います。その痛みを恐れ、何もしないでいれば、痛みを感じる事ないかもしれませんが、いずれ水も空気も食料も断たれ、静かに息絶えてゆく事になるのでしょう。

SIビジネスはなくなります」

この非常識な発言は、きっと常識になっているでしょう。ITのトレンドの流れを知るほどにその確信を深めています。

後進にツケを残さないでください。日本をこの停滞のままで放置しないでください。

何かを始めようとすれば、何もしない奴らが、必ず邪魔をする。

NHKの大河ドラマ「八重の桜」でこんな台詞が出てきます。

経営者やマネージメントの皆さん。せめて、そんな事だけはしないようにしてください。

そして、若い人たちは、それに続く言葉を実践してほしいものです。

(そんなやつらを) 蹴散らして、前へ進め」と・・・


残席わずか■ 第12期 ITソリューション塾 ■2月6日スタート■

塾で話そうと思っている内容の一部です。よろしければご参考まで・・・




定員が少し広がりましたので、まだまだ追加でのお申し込み可能です。

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自社製品の知識はありますが、世の中の常識となると、うまく説明できません。
  • クラウドと仮想化の違いが説明できません
  • ERPは知ってるけれど、BPR,BPM,SOAとの関係は説明できません
  • HTML5とスマホやクラウドの関係は説明できません
こんなコトでは、「何をすべきか」を考えることができません。

2013年2月6日から4月17日までの全10回、毎週水曜日の夜に開催します。

詳しくは、こちらをご覧ください。

なお、残席が少なくなってきました、もし未決定でもご意向がある方は、至急お知らせください

2013年1月20日日曜日

いったい、だれのための提案なんですか?


いったい、だれのための提案なんですか?

少々、声を荒げてしまいました。

「現場事務所にはシステムに詳しい人がいないんです。だから、現場での運用管理負担を少なくできる方法を提案して欲しいとお願いしたはずです。それなのにお持ちいただいた提案はエンド・ポイント・セキュリティの話じゃないですか。どういうことなんですか?」

すると相手は・・・

「確かに、そうなんですが、現場にはいろいろな会社の人が出入りされますので、まずはセキュリティを優先すべきと考えて提案させていだきました。御社ほどの会社では、まず対処しなければならないことだと思っています。」

わたしは、ますます腹立たしくなってきました。

「申し訳ありませんが、それは余計なお世話ですよ。そんな提案をこちらは望んでなんかいません。確かにセキュリティは重要です。しかし、まず解決したいことは現場のシステム運用負担の軽減です。それほどセキュリティが重要とおっしゃるならば、この両者を両立する提案をして頂くべきではありませんか。VDIやシンクライアントの組み合わせなら、それが可能じゃないんですか?そう申し上げたはずですよ。」

すると、ついに相手が本音を語り出した。

「確かにその話は伺いました。ただ、私どもにはVDIの実績がありません。だから、実績のあるこのセキュリティ製品の提案をさせて頂きました。まずはセキュリティが重要かと考えまして・・・」

こちらが何を重要と考えているかを斟酌せず、自分たちができること、売りたいものを優先し、そちらの方が大切だと持論を展開する。残念ながら、そのようにしか理解できませんでした。

別の会社の話ですが、情報システム部門の責任者の方から、こんな話を伺いました。

「ファイルサーバー用のストレージについて、3社に提案をお願いしたんです。必要な仕様や予算の目安も示しました。結局、一番金額が高いところにしたんですけどね・・・」

その方が言うには、2社はこちらが提示した予算を少し下回る金額で、仕様を満たす提案をしてきたそうです。ところが、残る1社は違ったそうです。まず金額は、提示した予算より3割ほど高めでした。しかし、こちらが提示した仕様から、どんな運用をしようとしているのか、ならばどんな機能や性能が必要かを考えて、構成に盛り込んできたそうです。

その提案を受けた方は、「なるほど、確かにこうでなきゃ困るな」と思ったそうです。そして、少し予算を上積みして、その提案を採用したとのことでした。

このふたつのケースから、「お客様のご要望に応える」とはどういうことかの教訓を得ることができます。

まず前者は、こちらが何に困っているかを訴えていたにもかかわらず、それを真剣に受け止め、どうすれば解決できるかを考えようとはしませんでした。自分たちができること、売りたいものを優先し、正論を展開して、「我々の方がものを知っているのだから、言うことを聞いておきなさい」というようにも聞こえました。

「がっかりしましたよ」。同席されていた情報システム部門長のつぶやきが耳に残りました。

後者は、全くの対極にあります。こちらが望んでいることだけではなく、こちらも気がつかなかった使い方まで考えて、あるべき姿を示してくれました。専門家としての経験と知識を活かし、期待以上のものを提供してくれました。言うまでも無く、その提案を受け取った方は、多いに感心し、何かあったらまた相談しようと思ったそうです。

お客様が求めていることは、製品やサービスの購入ではありません。自分たちの課題を解決することです。ならば、まずは、「何をすべきか」を考えるべきでしよう。自分たちに「何ができるか」は、後の話です。

  1. お客様は、何をめざされているのでしょうか。
  2. 結果として、どのような価値を手に入れようとしているのでしょうか。
  3. そのときには、どんな使い方をしているのでしょうか。


このような、お客様の望んでいる「あるべき姿 = To Be」を想像し、そのうえで、どういう「手段 = To Do」が最適かを考えます。

最後に、自分たちができることは何か、あるいは範囲を考えます。

あるべき姿とそれを実現する最適な手段の組み合わせ。これが「何をすべきか」に相当します。

自分たちが、「何をすべきか」を完全に満たすことができなくても、それを補完する方法を示すことができるかもしれません。あるいは、完全には満たせないが、安い金額でおおよそのところを満たせるかもしれません。自分たちにはできないことを率直に認めて、次のチャンスを期待すべきかもしれません。

お客様のあるべき姿を想像し、「何をすべきか」を考え、それをお客様に伝えます。その結果、「何ができるか」で百点満点を出せなくても、お客様はきっと信頼してくださるはずです。そして、その提案を真剣に考えてくださるでしょう。たとえ、今回は採用を逃しても、「また相談したい」という思いを残すことはできるはずです。

いったい、だれのための提案なんですか?

自分への問いかけとして、忘れないようにしたいものです。

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この塾で使用しているチャートの一部です。これらを全て、パワーポイントのソフトコピーで提供させていだきます。

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2013年1月13日日曜日

お客様はの期待は変わりました。ではあなたはどう変わりましたか?

  • SI事業者はお客様の内製化を支援する
  • 複合機メーカーはペーパーレス・ソリューションを提供する
  • アプリケーション・パッケージ・ベンダーはサービスを売る

一見すると自分で自分の首を絞めるようなビジネスにこそ、商機があると私は考えています。

SI事業者は、これまで品質やコスト効率を高めるためにシステム開発や構築のノウハウを蓄積してきました。それこそが、競争力の源泉となってきたはずです。そして、ユーザー企業は、これら業務をSI事業者に依存してきました。しかし、この状況が今大きく変わり始めています。

経営スピードへの迅速な対応、内部にだぶつきはじめた情報システム要員の再活用、一層のコスト削減は、開発の内製化を促しています。しかし、彼等にはそのスキルも要員も不足しています。

この状況を冷静に考えれば、SI事業者のノウハウこそ、是非とも手に入れたいはずです。プロジェクト管理、業務分析、プログラミングとテストなど、内製化に必要なノウハウを提供するためのビジネスを立ち上げるというのはどうでしょう。

開発の標準化やフレームワークの整備、業務分析やコンサルティング、開発スキルの研修などが考えられます。それをお客様の中で、あるいは、お客様を出向させるという形で社内に受け入れて、徹底的に業務ノウハウを定着させる。そういうビジネスを立ち上げてはどうでしょう。

SIビジネスが、無くなることはないと思います。しかし、オフショアや開発生産性の向上、SaaSの利用などが進めば、今後の利益率の向上は期待できません。また、SI事業者の淘汰も進むでしょう。

そういう来たるべき未来を考えたとき、どうすればお客様とより親密な関係を築くことができるのか、どうすれば他社を排除して自分たちは生き残ることができるのかを考えなければなりません。

以前、このブログでも紹介しましたが、ITエンジニアの75%SI事業者やITベンダー側にいます。例え内製化を支援してもお客様の需要を内製だけでまかなうことはできません。また、先週も書きましたが、ノンコアな領域については、これまで以上に徹底したアウトソーシング需要が高まると考えられます。その受け皿の提供と共に内製化を支援すれば、お客様の需要は取り込めるはずです。

これまで通りの受託・請負・派遣に頼るビジネスには、未来はありません。だからこそ、お客様が今必要としていることを冷静に受け止め、それに応えてゆくという、当たり前に立ち戻って考える。そんな時期が来ているように思います。

複合機メーカーによるペーパーレス・ソリューションもまた、常識的に考えれば、利益相反です。複合機メーカーの収益は、複合機の利用量に応じたトナーカートリッジの消費や保守に支えられています。ペーパーレスをすすめることは、この収益の柱を放棄することに他なりません。

しかし、現実を冷静に見つめれば、タブレットやスマートフォンの普及により、紙の需要は、これまでにも増して減ってゆくはずです。事実、打ち合わせ資料やカタログなどをタブレットに代替させることは難しくありません。そこに手書きで追記することも、その資料を共有することもできます。

また、経費精算などの伝票処理もタブレットやスマホで入力し領収書などの証憑はスマホのカメラで写真撮影して添付し、原本は経理部門に郵送すれば、事足りる時代になりました。

契約書を電子契約にすれば、印紙の貼付が不要になり、印紙税負担をなくすことができます。また、契約書類の膨大な紙の印刷や保管コストは不要となります。また、契約は電子的に管理されていますから検索も、監査も容易になります。

複合機メーカーはドキュメントの専門家です。だからこそ、ドキュメントのフローを理解し、それを処理するノウハウを蓄積しているはずです。その知識やノウハウを活かせば、どうすれば徹底したペーパーレスができるかを考えることができるはずです。

いつまでもオセロゲームのように、何年か毎にメーカー同士の競争が行われ、入れ替えたり、入れ替えられたりでいいのでしょうか。そのたびに、厳しい価格競争を強いられ、全体の需要も減少してゆくでしょう。体力勝負は、そう長続きするとは思えません。

ペーパーレス化を推し進めても完全に紙がなくなることはないでしょう。また、ペーパーレス化は、仕組みですから一回作ってしまえば、他社に入れ替えることは容易ではありません。結果として、お客様を囲い込み、長期安定的なストック・ビジネスを獲ることができるはずです。

パッケージ・ソフトウェアとは、お客様の業務プロセスで予想される課題を解決する手段をプログラムにしたものです。そこには、高い業務に対する見識や業務ノウハウが埋め込まれています。

しかし、そういうパッケージ・ソフトウェアを販売する営業は、お客様の課題をろくに聞くこともなく、いかに自社製品が機能豊富であり、実績があり、優れているかを説明してくれるに過ぎません。お客様の現状や業務課題を聞くことには消極的なようです。

お客様は製品が欲しいわけではありません。困っていることを解決したいのです。

製品を売るのではなく、業務改善やそのためのプロジェクト運営を支援するサービスを用意し、それを売るというのはどうでしょう。また、本番以降の業務改善や相談をサービスとしてメニュー化し、お客様の新しい業務を確実に定着させるお手伝いしてはどうでしょうか。このようなサービスが提供できれば、結果として、プロダクトは売れるはずです。

もちろんこれは手離れの悪いビジネスです。ならば、こういう業務にノウハウのあるSI事業者と組むのも一案です。ただし、彼等に営業チャネルを求めるのではなく、あくまで課題解決、業務改善サービスの実行部隊として、彼等をサービス商品の機能の一部に組み込むのです。

また、自らもこのようなサービスができる人材を育成し、利益を上げることができる事業として、体系化し、マニュアル化し、外部にもスキルトランスファーできる「サービス・プロダクト」を作り上げることが大切です。

将来を考えれば、パッケージ・ソフトウェアはSaaSに置き換えてゆくべきでしょう。そうなれば、一時的収益は望めません。しかし、サービスとしてお客様に受け入れられれば、長期安定的なストック・ビジネスとなるはずです。

以上いずれの場合も、既に抱えている事業資産を否定することでもあり、抵抗感をもたれるはずです。しかし、冷静にお客様のニーズを見据えれば、自ずと導かれる結論のようにも見えます。

チェコの経済学者、シュンペーターは、近代イノベーション観を確立した人物と言われています。彼は1912年の論文「経済発展の理論」で、イノベーションが経済を成長させる原動力であると説き、これを5つの類型に分けて整理しています。

また、彼は「イノベーションは創造的破壊をもたらす」とも述べています。つまり、イノベーションは、これまでの常識や既得権益を破壊し、経済の新陳代謝を促すと述べています。

産業革命は、生産手段のイノベーションです。職人の手作業から機械による生産に置き換わりました。また、輸送手段のイノベーションでもあり、馬車から鉄道に置き換わりました。つまり、機械生産や鉄道というイノベーションが、これまでの既得権益やビジネスの常識が大きく変えてしまったのです。その結果、既得権益を持った人たちが、機械や鉄道を焼き討ちした、という事件も起きています。

しかし、歴史は、イノベーションが勝利したことを物語っています。

ここに掲げた例は、そんな創造的破壊の一例に過ぎません。改めて冷静に足下を見据えれば、このようなイノベーションの可能性は、いくらでもあるように思います。
  • お客様の真のニーズはどこにあるのか
  • そのニーズに応えるために何をすべきか
  • それを行うために自分たちが提供できる価値は何か
昔のお客様のニーズが今のニーズであるとは限りません。当然お客様が求める期待も変わります。その変化に目をつむり、既得権益にあぐらをかいていては、お客様に見捨てられるだけのことです。

イノベーションとは、決して新しい技術を創造することではありません。これまでに無かった課題解決の方法を見つけ出すことです。シュンペーターはこれを「新結合」と呼んでいます。つまり、これまでの常識とはことなる課題解決のための新しい手段の組み合わせを見出すことだと説いています。

これまでの常識に疑問を持ち、どうすれば、これまでの仕事を創造的に破壊できるのかを考える。こういう考えの向こうに、これからのビジネスの可能性が見えてくるのではないでしょうか。


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参加者募集■ 2013年1月22日(火) 企業の変革をITで実現する大会議 ■

ユーザー企業の変革の流れを感じてどう動くか? 

そんなことを本気で考えたい。そんな皆さんのための大会議です。 

2012年7月5日。ユーザー企業、IT企業のビジネスパーソン 100名が集まって両者の接点である『IT』の活用を進めていくために、それぞれの立場でどのようにあるべきかを3時間議論し続けました。そして、参加者の課題が明確になりました。 

そして、2013年1月21日。ユーザー企業のCIO、情報システム部門の方々が集まって、「ユーザー」としてどのように取り組んでいくかを議論します。


■ ユーザー企業側の方はこちらからお申し込みください。

その成果を受けて、翌日のこの1月22日にその変革の意識にITを提供する側として、どのような姿勢で向き合っていくかを議論します。

IT企業の皆さん、是非ご参加ください m(_ _)m 

詳しくは、こちらをご覧ください。


■残席わずか■ 第12期 ITソリューション塾 ■2月6日スタート■

自社製品の知識はありますが、世の中の常識となると、うまく説明できません。
このようなことで、お客様の信頼を手にすることはできません。
  • クラウドと仮想化の違いが説明できません
  • ERPは知ってるけれど、BPR,BPR,SOAとの関係は説明できません
  • HTML5とスマホやクラウドの関係は説明できません
世の中の常識に自社の製品はどう位置付けられるのでしょうか、あなたの提案は、世の中の常識からから見て妥当なのでしょうか・・・

2013年2月6日から4月17日までの全10回、毎週水曜日の夜に開催します。

詳しくは、こちらをご覧ください。

なお、残席が少なくなってきました、もし未決定でもご意向がある方は、至急お知らせください

2013年1月5日土曜日

ITビジネスのキーワード 2013 : 今年は何で稼げばいいの?

「今年のITビジネスは何で稼げばいいのでしょうか?」

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしく御願いいたします。

年末は、反省で締めくくったこのブログですが、年初は、将来への展望ではじめさせていだきます。

まずは、今年のITビジネスのキーワードを整理し、どのような取り組みを進めてゆけばいいのかを考えることにします。次に、SIビジネスの進むべき方向についても私なりの思いを整理してみました。

1. ITビジネスのキーワード 2013

最初に、このチャートをご覧ください。



このチャートは、今年のITビジネスで取り組むべきキーワードを整理したものです。よくあるITテクノロジーのトレンドという視点ではなく、ITビジネスに関わる皆さん、すなわち売る側の視点から、どのようなキーワードをビジネスに組み込んでゆくべきかを考えてみたものです。

「偏りがあるのでは・・・」との印象を持たれる方もいらっしゃると思うのですが、あえてそのご批判を頂戴いたしたく、独断と偏見を交えてまとめてみました。

まず、全体を「アプリケーション」、「プラットフォーム」、「システム運用」の3つに区分しました。そして、それぞれの区分に対応して四隅にキーワードを配置しています。これが、ユーザー企業の情報システム部門が関心を持つであろうキーワードです。

もうひとつ、「アプリケーション」と「プラットフォーム」にまたがり、「オープン」というキーワードを配置しました。これもまた情報システム部門が関心を持つもうひとつの重要なキーワードです。

この5つのキーワードは、チャート中、白抜きで書かれている経営や業務のニーズから導かれるものです。

それぞれのニーズに応えるためのITテクノロジーのキーワードを青い長丸で、それに付随するテクノロジーを緑の長丸で配置しています。

それでは、ひとつひとつを説明してゆきます。

テクノロジーが大きく進化しているにもかかわらず、ITが経営に十分に貢献できていないとの批判は、日ましに高まっているように感じています。「毎年、これだけ予算を配分しているのに、その成果が今ひとつ見えない」、「もっと予算を抑えられるのではないか」、「情報システム部門から、経営戦略を推進するような積極的な提案がない」など、経営と情報システムとの意識の乖離が進んでいるようにも感じています。

「社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)」のレポートを見ても、IT予算は過去十年間で対売上比半減し、今後大きく伸びる見通しもありません。このような中で、情報システム部門はその存在意義を問われていると言っても過言ではないでしょう。

このような状況の中で、ITが果たすべき役割を改めて考えて見れば、経営や業務の生産性向上という視点だけではなく、経営や業務のニーズを先取りし、これを積極的に支援する戦略的な役割を担うことが求められるようになるでしょう。

「経営スピードへの対応」や「グローバル対応」はその大きな柱と言えます。そのためには、これまでのSIer丸投げの体質から脱却し、内製化をすすめることが必要です。また、「内製化」と「オープン」により、TCOの削減を両立することが必要になります。

超高速開発、Webアプリケーションは、アジャイルな開発を進める基盤となります。また、既に用意された開発・実行基盤であるPaaSを活用することで、プラットフォームに関わる負担を大幅に削減することが可能になります。

また、よりプリミティブなプラットフォームにおいても、これまでの仮想化の概念を包括したSoftware-Definedの考え方が広く定着してゆくことになるでしょう。つまり、サーバー、ストレージ、デスクトップ、ネットワークなど、様々なITの物理的リソース・プールから、必要なリソースだけをソフトウェア的に定義し、切り出してくるという考え方です。しかも、動的なリソースの変更がソフトウェア的に簡単にできてしまうのです。

これまでの仮想化では、ネットワークが、この対象から外れていました。それが、OpenFlowをはじめとしたSDN(Software-Defined Network)技術の進展で現実のものになろうとしています。そして、この技術が、IaaS構築の基盤であるOpen StackCloud Stackなどのオープン・クラウドのソフトウェア群に組み込まれようとしています。

現在広く普及しているVLANは、確かにネットワークを仮想化する技術ではありますが、様々な制約から柔軟性や自動化、大規模なノードへの対応などが困難でした。SDNはこのようなネットワーク仮想化の制約を超え、全てのITリソースをひとつのリソース・プールとして管理・運用できる道を切り開こうとしています。

このSoftware-Defined Systemの考え方で、社内に分散、あるいは個別最適化されたシステムを統合しようという動きを加速するでしょう。もともと、分散・個別最適化されたシステムは、TCOやガバナンスの観点から、基盤統合したいという根強いニーズとして存在しており、このテクノロジーはこれを支える基盤となるはずです。

再びアプリケーションに目を向けると業種特化型SaaSが注目されることになるでしょう。製造業、流通業、サービス業などなど、それぞれの産業分野に特化したアプリケーションをサービスとして採用することで、開発そのものを無くしてしまうことへの期待は高まります。

これまでのように自前主義を貫くことは、予算的にもスピード的にも難しくなりつつあります。それに対する答えが業種特化型SaaSです。この領域であれば、ITベンダーは企業規模を問わず業務ノウハウさえあれば、大手に互する競争も可能です。プラットフォームはAmazonなどのクラウド・プロバイダーが提供するリソースを従量課金で利用できますから、初期投資リスクを気にする必要はありません。

そんな中で、グローバル化への対応とともに、ERPは有力なアプリケーションとして期待されます。ただ、従来、あるべき姿として求められていた「グローバル・シングル・インスタンス(GSI : Global Single Instance)」は、もはや幻想であるとの声も少なくありません。そこで、グループ各社には軽量なERPパッケージを導入し個別の現場オペレーションに対応させ、これを本社にあるERPのマスター・データベースとデータ的に整合性を持たせた二層構造のERPが現実解として注目されています。

しかし、パッケージを導入し自ら運用するほどの現地スタッフを抱えられない企業にとっては、これもまた容易なことではありません。そこで期待されるのが、海外現地法人のための軽量ERPの業種特化型SaaSです。既に日本と米国を除く多くの先進工業国はIFRSを適用しており、日本もIFRSへの対応は不可避です。こういう流れの中で、このアプリケーションへのニーズは高まってくるのではないでしょうか。

「モバイル・シフト」というべきか、「モバイル・ファースト」というべきか、時代は、「モバイルありき」が前提となりました。スマートフォンやタブレットなどのSMD(Smart Mobile Device)は、既に出荷台数ベースでは、PCを大きく上回っています。当然、情報システム部門もこれに対応できなければ、ユーザーの不評を買うことになるでしょう。

しかし、SMDの利用により、運用やセキュリティに関する課題は、これまでとは異なるものになります。

例えば、業務の機能を全てSMDのアプリとして構築するのではなく、ネットワークに接続されたバックエンド・サーバーに共通の機能を持たせ、これと連携する形で業務を処理するBaaS(Backend as a Sarvice)が、使われるようになるでしょう。現在、コンシュマー・アプリのためのBaaSはいろいろと出てきましたが、ビジネスに特化したものはこれからのようです。

また、セキュリティに関しては、個人のデバイスの利用を許容するBYOD(Bring Your Own Device)への取り組み、電子メールや経費精算などをパブリックなクラウド・サービスを使い、社内のネットワークにアクセスして基幹業務システムを利用するというような使い方に対応しなければなりません。そのためには、シングル・サインオンへの対応を可能とする統合認証基盤とそれを支えるMDM(Mobile Device Management)が、必要となります。

SMDの普及は、常時接続とセンサーや制御情報などのM2M(Machine to Machine)により膨大なデータを生成します。これらは、「人間のあらゆる行動をデータ化する」可能性を現実のものとするでしょう。また、世界人口で3番目の大国と言われるFacebookは、そのユーザー数が10億人を越えました。そこからもたらされるデータも膨大です。そこには、マーケティングや経営に関わる意志決定の精度を飛躍的に高める可能性があります。

これらBig Dataを戦略的に活用することは、ITの戦略的活用の新たな方向性を示すものと言えます。

再び、プラットフォームに目を移せば、Software-Defined systemの右に垂直統合システムがあります。物理リソースをひとつの筐体に納め、ソフトウェアも全てセットアップ済みで提供されるシステムです。IBMPure Systemsをはじめとして各社の発表が相次いでいます。

これらのシステムの価値は、ハードとソフトのチューニングが既に終わっているのですぐに利用できる、ということもさることながら、保守やサポートの窓口を一社に集約できることで、運用管理に伴う手間、つまり問い合わせや各社間の調整の手間を削減できることも大きな魅力です。これによって、システムの組み合わせに対する責任と負担からユーザーは解放されることになります。言葉を換えれば、「オープン・システムで作ったメインフレーム」ということになるのでしょう。

この垂直統合システムにはふたつのタイプがあります。ひとつは、スモール・コア/低消費電力のプロセッサーを大量にスケール・アウトして処理能力を高める「ハイパー・スケール・アウト」、ひとつは、プロセッサー単体の処理能力を極限まで高速化し処理能力を高める「ハイパー・スケール・アップ」です。

前者は、WebサーバーやHadoopMemcachedなどの分散処理に適し、ARMのプロセッサーやIntelAtomなどを搭載したマイクロ・サーバーを組み合わせて構成されています。後者は、RDBMSなどの処理に適し、IBMPower7OracleSPARCなどの高速プロセッサーにより構成されます。

また、インメモリーDBアプライアンスも注目すべきでしょう。これは、企業内に分散する多数のデータベース・サーバーの集約基盤としてTCOの削減が期待できるほか、ビッグデータやリアルタイムBIなどのアナリティック業務を支える基盤として普及が期待されます。

マネージドIaaSは、日本的かもしれません。本来IaaSはセルフ・サービス・ポータルとともに、ユーザー企業側の運用負担の軽減に貢献するものです。しかし、我が国の現状を見れば、ITエンジニアをベンダーに依存しており、ユーザー企業が自社で運用管理するには、スキルも要員も不足しています。それをITベンダーが変わって運用を代行するものです。

この場合、自社でIaaS基盤を提供する場合と、他社のIaaS基盤をユーザー企業に代わって運用する場合に分けられます。例えば、他社IaaSであるAmazon EC2を使用する場合、その設定や運用パターンは緻密に細分化され相当の運用スキルがなければ使いこなすことができません。また、従量課金での支払い、クレジットカード決済は、日本のビジネス習慣になじまず、それが足かせとなっているケースもあります。その当たりを代行するビジネスも広がるのではないでしょうか。

運用に関し、安全安心への関心は、3.11以降、東南海・南海地震、富士山の噴火の可能性も取りざたされ、ますます高まっています。また、ITガバナンスやセキュリティの向上への期待は、グローバル化、モバイル化の進展と共に、ますます高まりを見せています。そのための基盤として、耐災害強度やセキュリティをこれまで以上に高めると共に、高密度・低消費電力を売りとした次世代型データセンターへの関心も高まっています。

また、モバイル・シフトによる常時接続の常態化、グローバル化による時差を考慮した運用のため、24時間365日の運用管理とサポートのニーズはますます高まるものと考えられます。

そういう状況の中でも運用コストの低減は求められます。そこで、ルーチンワークの自動化や、これまで運用エンジニアの暗黙知に期待していた様々なインシデンデントへの対応もソフトウェアで行おうという自律化への取り組みが進むものと考えられます。

以上のようなトレンドを俯瞰すれば、戦略的システムは内製し、コモディティなIT基盤はITアウトソーシングされるというシナリオは自然なものとなります。

このようなキーワードを、どのように自社の事業戦略に織り込んでゆくかは、各社それぞれに得手不得手もあるでしょうから、これだと言いきれるものではありませんが、これまで、ITベンダーの事業戦略やユーザー企業の情報システム戦略の策定に係わり、その経験を踏まえ、抑えておくべきキーワードは配置したつもりです。

2. SIビジネスのトレンド・シフト 2013

ところで、このようなビジネス・トレンドを考えるとき、これからのSIビジネスは、どのような方向に向かうべきでしょうか。次のチャートをご覧ください。



オンプレミス、国内対応、SIer依存を前提としたビジネス構造は、もはや長続きはしないでしょう。時代は、ノンコアITO、グローバル対応、コア内製へと向かっています。

そうなると、これまでの情報システムの構築を前提としたSI = System Integrator は、ITサービスを自ら提供し、あるいは、世の中の様々なITサービスをお客まさに最適化して組み合わせ提供するSI = Service Integrator へと変化してゆかなければならないでしょう。

さらにインフラのコモディティ化が進み、既存の経営や業務の生産性を高めるだけでは、差別化が難しくなります。そこで、求められるのが、お客様の現状の課題を解決するだけではなく、将来を予見し内在する課題を解決すること。つまり、ITを活用して既存の組織、経営や業務のあり方といった構造に変化を生じさせるSI = Solution Initiatorとしての役割ではないでしょうか。

Solution Initiatorとしての役割は、ビジネス規模から見れば、大きなものを期待できません。しかし、ITのコモディティ化と処理能力の飛躍的、加速度的な向上は、ITマーケット規模の拡大を抑制する方向に働くでしょう。そうなれば、労働力の提供を生業としている旧態依然としたSIerは、その存在価値を失い、淘汰される運命にあることは明らかです。だからこそ、Solution Initiatorとして、お客様の戦略に深く食い込み、存在価値を高め、結果として、下流のふたつのSIもビジネスとして引き込んでくるシナリオを描く以外に道はないように思います。

3. 最後に

これまで何度もこのブログで書いたことですが、時代はスピードを上げたのではなく、パラダイムを変えたのだと言うこと。これまでのビジネスの延長線上には、次のビジネスは見えません。

以上のふたつのチャートは、そんなパラダイムの変化を理解する一助となればと願っています。

本プログは、先にお断りしましたように、私の独断と偏見の塊です。ぜひ、建設的なご批判を頂ければ願っています。そういう議論こそ、自分たちを、そして世の中をよくしてゆく原動力になると考えています。

■ Facebookページに、皆さんのご意見やご感想を頂ける場所を用意いたしました。よろしければ、お立ち寄りください。


■募集開始■ 第12期 ITソリューション塾 ■2月6日スタート■

このブログで紹介させていだいたようなITテクノロジーやビジネスのトレンドを体系的に、そして徹底的に理解するための取り組みです。今回で12期を迎え、これまで営業、SE、コンサル、ITベンダーの経営者やマネージメント、ユーザー企業の情報システム部門の皆さんが、呉越同舟でご参加頂いております。

自社製品の知識はありますが、世の中の常識となると、うまく説明できません。
このようなことで、お客様の信頼を手にすることはできません。
  • クラウドと仮想化の違いが説明できません
  • ERPは知ってるけれど、BPR,BPR,SOAとの関係は説明できません
  • HTML5とスマホやクラウドの関係は説明できません

世の中の常識に自社の製品はどう位置付けられるのでしょうか、あなたの提案は、世の中の常識からから見て妥当なのでしょうか・・・

2013年2月6日から4月17日までの全10回、毎週水曜日の夜に開催します。

詳しくは、こちらをご覧ください。

なお、会場の制約上すぐに満席となりますので、もし未決定ながらご意向がある方は、こちらにお知らせください

参加者募集■ 2013年1月22日(火) 企業の変革をITで実現する大会議 ■

ユーザー企業の変革の流れを感じて、どう動くか? 

そんなことを本気で考えるIT企業の「イノベーター」たちのための大会議です。 

2012年7月5日。ユーザー企業、IT企業のビジネスパーソン 100名が集まって両者の接点である『IT』の活用を進めていくために、それぞれの立場でどのようにあるべきかを3時間議論し続けました。そして、参加者の心の中で課題が明確になりました。 

そして、2013年1月21日。ユーザー企業のCIO、情報システム部門、その他ITユーザー部門の方々が集まって、「ユーザー」としてどのようにイノベーションに取り組んでいくかを大会議を開催します。

---> ユーザー企業側の方はこちらからお申し込みください。

その議論した結果を受けて、翌日のこの1月22日にその変革の意識にITを提供する側として、どのような姿勢で向き合っていくかを大会議で議論しています。

IT企業の皆さん、是非ご参加ください m(_ _)m 

詳しくは、こちらをご覧ください。


2012年12月29日土曜日

「つまらない講義」の作り方

「既に知っている話で新鮮みがなく、あまり参考にはなりませんでした。」

先日の講義の後のアンケートにこのようなコメントが書かれていました。これはかなりショックでした。主催者側とは事前の打ち合わせも重ね、それではこの内容で参りましょう、と合意し作り込んだものが、受講者の期待を裏切ってしまう結果となったわけです。

なんと言っても受講者にとっては、貴重な時間を無駄にしたわけですから、「金返せ!」という気持ちでしょう。一方私としても、受講者のプロファイルや研修の趣旨を斟酌し、準備に手間をかけています。それが報われないことへの無念さもさることながら、講義の評価が今後の御依頼の判断材料にもなるわけで、ビジネス・チャンス喪失の危機でもあるのです。

この様な評価を頂く理由は様々ですが、基本的には講師側の責任です。受講者のレベルがどうのとか、研修の趣旨を受講者に徹底できない主催者の責任であるとか、自分以外のところに責任を帰することは容易ですし、気持ちも楽です。しかし、だからといって、一旦下された評価を覆すことはできません。

お金を頂き引き受けさせて頂いた以上、言い訳をしていては、次の仕事はありません。また、改善の余地もありません。

このような事態にならないためには、どうすればいいのでしょうか。自戒を込めて、講師という立場から、できることについて整理してみました。

このブログをご覧の皆様の中には、講師をされる機会をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。そんな方々のご批判も期待しつつ、私なりの考えを紹介させて頂きます。

1.主催者ではなく受講者の立場で考える

研修やセミナーで講師の仕事は、その主催者から依頼されます。あるいは、主催者から依頼された研修会社などが仲介している場合もあります。どちらにしても、主催者と必ず直接面会し、会話をすることが最初です。

主催者は、講義や講演の趣旨について、説明をしてくれるわけですが、これが必ずしも受講者の立場や期待を反映しているという訳ではありません。

例えば、社内研修の場合、総務や人事の方が主催者となられている場合、受講者の現場と意識に隔たりがあることを覚悟すべきでしょう。そのような意識の隔たりを意識したならば、受講される方の部門責任者や受講予定者の代表者との面会をお願いすることにしています。

もちろん、総務や人事の方でもそのあたりを良く理解されている場合や、自分自身が現場経験を持たれている方も少なくありませんので、これは全てに当てはまるわけではありません。ただ、現場は日々刻々変化しています。ですから、主催者のお話をしっかりと伺い、それを仮説として、可能な限り受講者の現場に近い方と会話して検証することが理想だと思っています。

また、対外的なセミナーで講演をさせて頂く場合は、マーケティングや販促などのスタッフが主催者である場合があります。そういう場合も、その商品やサービスを販売されているお客様と会話している営業やパートナーの方と話をし、現場の感覚を身近で感じる機会を作るように努力しています。

主催者は、こちらを慮って、簡潔にわかりやすく整理して話をしようとしてくれます。それはありがたいことなのですが、それはその人の立場で解釈したフィルターがかかっています。実際に訊いていると、現場は全く違うところに問題意識を持っている場合があります。ここを理解し、感じ取り、そこに講義の焦点を合わせなければ、受講者を満足させることはできません。

常にこのような対応ができる訳ではありません。ただ、可能な限り、そのような機会を作って頂けるようにお願いをしています。もし、できない場合でも、私が経験的に感じ取った疑問や現場に確認して欲しいことなどを託すようにしています。

このようなことをして、実際に講義を受けられる皆さんのプロファイルを知り、目線に近づくことが大切だと思います。講義のテーマを考え、内容を作り込むときに最も大切な視点となるからです。

このような視点を持つことが、なぜ大切かと言えば、それは「相手の知りたいことを伝える」ことが、講義や講演の目的だからです。「自分の伝えたいことを伝えること」ではないからです。

「せっかく資料作ったので、とにかくそれを伝えたい」という独りよがりの講義は、講師としての自覚が足りません。講師は、受講者に喜んでもらえてこそ、お金を頂けるわけです。自分の知識をひけらかすだけなら、それはカラオケと同じであり、自分でお金を払うか、せめて無料でお引き受けすべきでしょう。

相手の知識のレベルを知り、相手の思考の動線を知り、相手が何を知りたいのかを知る。これらを知るためには、受講者に近づく以外方法はなのです。

2.美しい資料を作る

「内容さえしっかりとできていれば、資料の美しさは化粧であり、必ずしも追求する必要は無い。」

私はこの考えには反対です。徹底して美しさを追求する。それは、必ず内容を伴うからです。

そもそも「内容」とは何でしょうか。私は「物事の本質」であると思っています。講義や講演は限られた時間の中で完結させなくてはなりません。これは書籍とは大きく異なるところです。また、人間は同時に多くの情報を与えられると、どこが重要なのかを判断することができません。

よく見掛ける「ここに全部書いてあります」という資料は、講義や講演の資料では、最もレベルの低いものです。これでは、何が重要かの判断を受講者自身にゆだねているようなもので、講師の力量は何も発揮されていません。

あるいは、このような資料を使って、「ここが重要な点です」と語る人もいます。ならば、そこだけを描き出し、あとは参考資料にするということをなぜしないのでしょうか。これは、講師の手抜きです。

重要な点とは、「物事の本質」です。それが理解できているかいないかは、資料を見れば分かります。情報量が多く、整理されていないと感じる資料を使っている講師は、物事の本質が理解できていないのです。あるいは、理解していても、それを説明できる自分の言葉を持っていないというべきかもしれません。

自分では分かっている、その情報を使って様々な判断や仕事をこなしている。その分野で一流であっても、それを説明できないとなれば、それは講師としては失格です。講師の能力とは、その知識を使って仕事ができることの能力とは同じではないのです。

良くある話ですが、自分が知っていることは、他人も知っているという前提で話をする人がいます。あるいは、そういう前提知識を持たない人が悪いのであって、わからなければ分からないでしょうがない、と考えて話す人がいます。

確かに、そのような講義もあるわけで、この考えを一概に否定するつもりもありません。ただ、このような考えの持ち主は、往々にして前節で述べたように、「相手の知りたいことを伝える」という意識をもっておらず、「自分の知っていること、伝えたいことを伝えるだけ」になっていることがあります。そのような人の講義は、たとえ内容が網羅されていても、講義として高い評価をいだくことは難しいでしょう。

「美しい資料」とは、このページに込めるメッセージを絞り込み、何を伝えたいかをはっきりと意識して、それだけを描いた資料です。それぞれのページに込められたメッセージは、そのページで完結させることが理想です。一枚にたくさんのメッセージを詰め込もうとする一体そのページは何を伝えようとしているか訳が分からなくなります。例え、口頭で補っても、それは資料と一致しませんから受講者は混乱するだけです。

物事の本質を追究し、それをメッセージとする。それを修飾し、補完する最低限の情報を配置する。そのためには、図形の配置やフォント、色使い、全体のレイアウトなども大切な要素です。つまり、伝えたい中心となるメッセージを浮かび上がらせるように幾何学的、色彩学的に配置しなければなりません。

また、情報量が多く、引きつける美しさがなく、どこに目線を定めればいいのか分からないような幾何学的な構成を伴わない(簡単に言えば、ぐちゃぐちゃな)資料は、受講者の集中力を維持させることはできません。

細かいことを言えば、タイトルの形式や文字フォントが統一されていない、用意されているテンプレートをはみ出し、無視して内容が描かれている・・・など、表現に気配りのない「汚い」資料は、人を不快にさせます。

このようなことができるようになるには、それなりの経験を積む必要があります。ただ、学ぶ手立てはいくらでもあります。もっとも効果的な方法は、美しい、かっこいいと感じる他人の資料をまねることです。そのような資料は、ネットにいくらでもあります。そこから自分の感性に合うものを見つけては、まねしてみることです。それが最も手っ取り早い方法でしょう。

物事の本質を追求する。それをそのページのメッセージとする。それを浮かび上がらせる配置や構成を工夫する。資料は、自ずと「美しさ」を放つようになるはずです。

つまり、「美しい資料」とは、受講者に優しいのです。そこには、受講者への愛情があるのです。つまり、「汚い資料」は、受講者への愛情の欠如でもあるのです。自分たちに愛情を持たない講師から話を聞くことは、いやいや養子にされた継母から、説教を聞かされているようなものです。耐えるしかないのです。

3.講義をエンターテイメントにする

先日あるITベンダーの製品説明セミナーに出席しました。そこで、マーケティング部門の製品担当の女性が、製品の概要を説明してくれました。私は、そのひどさにあきれてしまいました。

何がひどかったかなんて、あげればキリがありません。まず、声が小さい、会場に目線を向けず演台の机の上をずっと見ている、抑揚がなく資料の棒読み、資料に書かれている以上の情報が無い、息継ぎのタイミングがおかしい・・・などなど、ほんとうに苦痛でした。

そのセミナーが有償であろうが無償であろうが、お客様に貴重な時間を使って頂いているということの自覚と責任感がないのです。

Presentationと言う言葉があります。pres præ=前にという接頭辞であり、presentとは現在という意味があります。また、en esse=be動詞のラテン語です。つまり、人々の「前に」「現在」「在る」から Presentation なのです。平たく言えば、「現在、そこにいることを示す」と解釈することができます。

残念ながら、彼女のPresentationに彼女の存在する意義は感じられませんでした。資料を見れば十分です。つまり、プレゼンテーションの目的を果たしていないのです。

プレゼンテーションも、講義も、これは双方向のエンターテイメントでなくてはなりません。もちろん、それは常に受講者と言葉を交わすという意味ではなく、相手の反応や様子を伺いながら、それにあわせて、話の内容やペース、声の強弱、質問やジョーク、話をする位置、沈黙・・・などを駆使する行為です。

例えば、うとうとしている人が居るとします。そういうときは、その人のそばに立って話をしてみるとか、その人の隣の人に質問します。

少し、難しい話をして、疲れたぁ、といった顔をしている人が多くなってくると、「疲れたでしょ、お気の毒さま」なんて、言ってみたりします。

また、質問を求めてもなかなか出てこない時は、「質問を聞けばその会社の実力が分かりますねぇ」などといい、「じゃあ、この会場で一番実力ある人って、どなたです?」などと会場に問いかけます。すると、特定の人に指先が集まります。そして、お名前を伺い、「じゃあ、吉田さん、あなたが会社の代表に選ばれましたので、会社の実力を証明してください」などといいます。すると、ええ・・・なんて顔をするのですが、案外まともな質問をしてくれるものです。

沈黙も時には必要です。例えば、こちらが調子よくしゃべっているとき、こちらもついつい周りを見失っていることがあります。そういうときは、必ずと言っていいほど、会場の集中力は低下しています。

あっ、いけないと気付くと、その流れを一旦壊さなくてはいけませんので、沈黙をはさむことがあります。すると、受講者は何事かとこちらを向き、一気に集中が戻ります。

特に強調したいメッセージを伝えるときは、その前後で声を小さくし、伝えたいメッセージを大きく、ゆっくりと語ります。そうすれば、何が重要であるかが、自然と相手に伝わります。

すこし、難しい話が続き、緊張感が張り詰めているとき、こんな質問でその空気を壊すことがあります。

「今どきスマホも持っていないなんて、銀座四丁目をスッポンポンで歩いているくらい恥ずかしいことですよ」と。そして、「ところで、この会場には、そんな人は居ないですよね・・・念のため、持っていない人、手を上げて頂けませんか?」なんて言ってみます。すると、何人か手を上げます。ワッと笑いが巻き起こります。

・・・などなど、あげればキリはありませんが、こういう双方向の関係を演出することこそ、講師の存在意義であり、受講者に時間の対価を頂くことへの責任であると思っています。

もちろん、このような行為は、前節で述べた内容があっての話です。それがなければ、講義の意味がありません。あくまで、これは演出であり、内容を理解して頂くための集中力の維持、心の抵抗の低減、共感の創出のための行為なのです。

「いい講義でした」とご評価頂くためには、内容と演出の相乗効果が必要です。内容だけであれば、だれがやっても一緒であれば、この世界でお金をもらうことはできません。

また、相手との対話を忘れなければ、「なんか違うぞ」という空気を感じ取ることもできます。その時には、講義の内容の力点を変えることや、時間配分を変える、あるいは、別の資料を使って別の話をする、などということも可能になります。

このような対話こそ、講演というパフォーマンスをエンターテイメントにするための基本と言えるでしょう。

「既に知っている話で新鮮みがなく、あまり参考にはなりませんでした。」という、冒頭のコメントは、現場を感じることを怠り、対話を怠った講師の責任です。また、作った資料も、こちらとしては、メッセージを絞ったものだと思っていたのですが、相手の知りたいことではなく、この程度で十分だろうという、自分の経験にあぐらをかいた独りよがりだったと言うべきでしょう。高慢なのです。


すみません、長い文章になってしまいました m(_ _)m 

正直に申し上げれば、こんなコメントを頂いたことは、私にはかなりショックでした。だから、あらためて原点に立ち返りたかった、というべきかもしれません。そんな私事にお付き合いさせてしまい、申し訳ありません。

いつも、ここに掲げたようにできているわけではありません。だからこそ、先の手厳しいコメントを頂戴したわけです。自戒を込めて、書かせて頂きました。

これを他山の石として、皆さんのお役に立てて頂ければと願っています。

それでは、皆様、良いお年をお迎えください。

■募集開始■ 第12期 ITソリューション塾 ■

「自社製品の知識はありますが、世の中の常識となると、うまく説明できません。」
このようなことで、お客様の信頼を手にすることはできません。
  • クラウドと仮想化の違いが説明できません
  • ERPは知ってるけれど、BPR,BPR,SOAとの関係は説明できません
  • HTML5とスマホやクラウドの関係は説明できません

世の中の常識に自社の製品はどう位置付けられるのでしょうか、あなたの提案は、世の中の常識からから見て妥当なのでしょうか・・・

プロとして自信を持つこと、そのための取り組みです。

2013年2月6日から4月17日までの全10回、毎週水曜日の夜に開催します。これまでも、多くのSIerやITベンダーの皆さんにご参加頂きました。また、ユーザー企業の情報システム部門からもご参加いただきました。

詳しくは、こちらをご覧ください。

なお、会場の制約上すぐに満席となりますので、もし未決定ながらご意向がある方は、こちらにお知らせください


参加者募集■ 2013年1月22日(火) 企業の変革をITで実現する大会議 ■

ユーザー企業の変革の流れを感じて、どう動くか? 

そんなことを本気で考えるIT企業の「イノベーター」たちのための大会議です。 

2012年7月5日。ユーザー企業、IT企業のビジネスパーソン 100名が集まって両者の接点である『IT』の活用を進めていくために、それぞれの立場でどのようにあるべきかを3時間議論し続けました。そして、参加者の心の中で課題が明確になりました。 

そして、2013年1月21日。ユーザー企業のCIO、情報システム部門、その他ITユーザー部門の方々が集まって、「ユーザー」としてどのようにイノベーションに取り組んでいくかを大会議を開催します。

---> ユーザー企業側の方はこちらからお申し込みください。

その議論した結果を受けて、翌日のこの1月22日にその変革の意識にITを提供する側として、どのような姿勢で向き合っていくかを大会議で議論しています。

IT企業の皆さん、是非ご参加ください m(_ _)m 

詳しくは、こちらをご覧ください。

■ Facebookページに、皆さんのご意見やご感想を頂ける場所を用意いたしました。よろしければ、お立ち寄りください。

2012年12月22日土曜日

「全ての道はクラウドに通ず」それは、SIビジネス衰退への道?

「全ての道はローマに通ず」という言葉があります。たとえ手段は違っても、物事が中心に向かって集中することのたとえとして使われる言葉です。

古代ローマ帝国が全盛を極めた時代、世界各地から帝国の首都ローマに通じる道が整備されたことを誇り語られたものと言われています。

そして、今、「全ての道はクラウドに通ず」と言っても過言ではないほどに、クラウド・コンピューティングはITを語る上で大きな存在となっています。

しかし、クラウドが米国のビジネス文化や価値観のもとで生まれたこと、つまり、クラウドという帝国の首都が米国にあることを、私達は理解しておかなくてはなりません。つまり、米国におけるクラウドの価値は、日本における価値と同じではないのです。

SIビジネスを考える上で、この違いは大きな意味を持っています。そして、この違いを踏まえ、クラウドをSIビジネスの武器としてゆくためには、どのようなシナリオを描けばいいのでしょうか。今日はこの点について整理することにします。

1.クラウドのもたらす生産性の向上はSIと利益相反の関係にある
日本では、調達や構成変更・運用管理における作業の多くがITベンダーに任され、その都度見積もりをとり発注するという手続きがとられています。そのため、ものの調達や作業の開始が、数週間、あるいは数ヶ月先になることもあります。
一方、クラウド・コンピューティングでは、「セルフ・サービス・ポータル」と言われる構成や設定を行うメニュー画面から行うことができます。つまり、システムの利用者自身が、この画面を介して設定するだけで、必要とするリソースを即座に調達することや構成の変更ができるのです。この仕組みによりエンジニアの生産性は著しく向上します。
エンジニアの生産性向上は、米国においては、ユーザーに直接的な価値をもたらします。それは、ITエンジニアの72%がユーザー側に属しているからです。
一方、日本においては、ITエンジニアの75%ITベンダー側に属しています。そのため、このような仕組みはITベンダーの生産性向上になります。しかし、これは、ビジネス的に見れば案件規模の縮小です。また、米国のように、お客様自身がリスクテイクするのではなく、ベンダーにリスクを負わせる構図が定着している我が国においては、ベンダーから見れば利益相反の関係となります(詳しくは、こちらの記事をご参照ください)
また、ユーザーも自身のリスク負わずベンダーに任せることが、これまでは当たり前でした。結果としてユーザーとベンダーは相互に利害が一致しています。このような意識が、我が国におけるクラウドの普及の足かせとなっているのではないでしょうか。
2.「オープン」とは「プロプライエタリ」へのレジスタンス活動
エンジニアの多くがユーザー企業側に籍を置く米国において、オーブン・ソース・ソフトウエア(OSS)のコミュニティには、ユーザー企業のエンジニアが積極的に関与し、ユーザーの立場から影響力を行使しています。
このような取り組みは、プロプライエタリに握られた主導権を、ユーザー自身の手に取り戻そうとするレジスタンス活動ということができるのです。
ベンダー・ロックインを嫌い、真にユーザーにとって必要な仕組みを構築する自由を手に入れる。それが「オープン」の旗印なのです。
OpenStackCloudStackなどのオープン・クラウド基盤に関わる活動もまた、vmwareMicrosoftなどのビッグ・ベンダーにクラウドの主導権を握られることへのレジスタンスとして生まれた活動なのです。このような動機付けは、結果としてオープン・クラウドの普及を促す強い原動力となっています。
このような考えが広く受け入れられている米国においては、プロプライエタリ側も「オープン」を無視することができません。そのため、vmwareが自身の対抗としてはじめられたOpenStackコミュニティのスポンサーとして参加していることや、Microsoftが新しいWindows Azure Platformにおいて、Hyper-Vをサポートし、Linuxへの対応などオープンに積極的にコミットしていることをアピールしているのは、このような背景があるからです。
3.日本的SIerという業務形態の特殊性
我が国においては、システムのインテグレーションの実務をSIerが担っています。しかし、米国ではユーザー自身がその役割を担っています。これは先に述べたエンジニアの人数比率の違いもあるのですが、CIOITのスペシャリストであることも大きな理由としてあげられます(詳しくは、こちらの記事をご参照ください)
我が国の場合、CIOの多くが財務や経理、総務などの役員と兼務であり、ITについての経験がなく、ITに関する知識やスキルが乏しいということは珍しいことではありません。そのため、ITの実務は配下の情報システム部門に任せています。つまり、ITのイニシアティブを経営のトップラインが掌握しておらず、戦略的な活用を育む環境が整っていないのです。
そのためシステムの構築を自ら主導する力が乏しく、クラウドに限ったことではありませんが、ITを戦略的につかうというメカニズムが、ユーザー主導では起こりにくい構図ができあがってしまっています。
一方、米国におけるCIOは専任のITスペシャリストであり、経営のトップラインとしてIT活用のリーダーシップを発揮します。経営のトップラインに居ることは、組織の人事やルールにも関与できる立場にあり、ITと経営を融合した戦略的な情報とシステム活用の陣頭指揮に立てる立場にあるのです。従って、先に説明したクラウドのユーザーにとってのメリットについても良く理解しており、これを積極的に活用していこうというモチベーションも高く、それを主導する権限も持っています。
米国において、クラウドが積極的に活用される背景には、このようなCIOのイニシアティブがあるのです。

米国発クラウドが、どのような背景のもとに生まれ、それが、日米において異なる価値に結びついていることが、おわかり頂けたのではないでしょうか。

では、我が国のSIビジネスにおいて、どのようにクラウドを活用してゆけばいいのでしょうか。これは、上記のようなビジネス文化の違いを、むしろチャンスとして積極的に活用するという発想が必要であるように思います。



フローのSIをストックのITOに拡げるビジネス基盤」と捉えて見てはどうかと、私は考えています。

ITO(IT Outsourcing)基盤としてクラウドを考えると、オンプレミスにはない高い柔軟性と生産性が期待できます。また、初期投資コスト(CapEx)を抑えることができます。さらに、従量課金を前提にすれは、運用・維持に関わるコスト(OpEx)ITOサービスの利用料金の中に変動費として組み込むことができます。

つまり、構築だけのSIから本番実行のための基盤と運用管理業務を一体化したサービス提供が容易になるのです。

従来であれば、このようなサービスは、資金余力のある大手SIerが自ら設備を持って提供する以外、方法はありませんでした。しかし、クラウドを使えば、システム資源を初期投資リスクなしに、しかも従量課金で外部から調達することが可能となり、中小のSIerでも十分にサービス提供が可能になるのです。

ITエンジニアの構図が日米で大きく異なっていること、その前提の上で生みだされたクラウド・コンピューティング。この違いを今更変えられるものでありません。しかし、この違いは、正しく理解すれば、クラウドはSIerにとってビジネスの強力な武器になり得るのです。

SIビジネスの「全てはクラウドに通ず」る』と考えれば、逆転のシナリオを描くことが可能になるかもしれません。

参加者募集■ 2013年1月22日(火) 企業の変革をITで実現する大会議 ■

ユーザー企業の変革の流れを感じて、どう動くか? 

そんなことを本気で考えるIT企業の「イノベーター」たちのための大会議です。 

2012年7月5日。ユーザー企業、IT企業のビジネスパーソン 100名が集まって両者の接点である『IT』の活用を進めていくために、それぞれの立場でどのようにあるべきかを3時間議論し続けました。そして、参加者の心の中で課題が明確になりました。 

そして、2013年1月21日。ユーザー企業のCIO、情報システム部門、その他ITユーザー部門の方々が集まって、「ユーザー」としてどのようにイノベーションに取り組んでいくかを大会議で議論した結果を受けて、翌日のこの1月22日にその変革の意識にITを提供する側として、どのような姿勢で向き合っていくかを大会議で議論しています。

IT企業の皆さん、是非ご参加ください m(_ _)m 

詳しくは、こちらをご覧ください。


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