2012年6月16日土曜日

「安心な存在」と「信頼される存在」

「あなたがいうのなら大丈夫でしょう。お任せします。」

お客様にそういわれることこそ、営業の醍醐味だと私は思っています。

「安心な存在」と「信頼される存在」。前者は、「この人なら自分に不利益をもたらすことはないだろう」と思わせる存在です。後者は、さらに積極的に「この人なら自分たちに利益をもたらしてくれるだろう」と期待させる存在です。

お客様と誠実に向き合うことは、営業の基本動作です。それは、自然とお客様に伝わるでしょうし、良い人、すなわち「安心な存在」として認めてもらえるはずです。しかし、どんなに良い人であっても数字をあげられなければ、営業としては意味がありません。

かつて、私が現役の頃、上司によくいわれた言葉があります。「営業の人格は数字だ」。人間としてどんなに良い人であっても数字をあげられなければ、「営業としての人格は劣る」ということです。つまり、お客様にとって、安心な存在であるだけでは、営業としては、失格なのだということです。

だからといって、お客様の利益ではなく、自分の数字というこちらの利益だけを追い求めても、お客様に受け入れられるものではありません。お客様の利益を追い求めてこそ、結果としての数字がついてくるのだと思います。

今、あるユーザー企業の情報システム戦略の再構築をお手伝いしています。そのことで、いろいろなソリューション・ベンダーにご提案をいただく機会があります。

先日、そのうちの一社が提案してくれました。しかし、本当にがっかりしました。一見よくまとまった提案書ではありましたが、お客様の期待に応えるものではなかったのです。一言でいえば、トンチンカンな内容だったのです。

お客様の困ったを解決するのではなく、「自分たちにはこんなことができます。こんな製品があります。こんなにすごいんです」。まあ、自慢話というか、世の中の常識はこういうもので、きっと知らないから教えてあげましょう。そんな、高飛車な印象も受けました。

それに対して、お客様は、大人でした。「確かにこの製品がいいことはわかったけれでも、これでは運用の負担は軽減するどころか、増えるんじゃないでしょうか。」

「確かにそうですが、御社が優先すべきは運用負担の軽減よりも、セキュリティの強化だと考え、この提案をお持ちしました。」

こちらを慮り、期待以上のものを持ってきてくれた・・・と思いたいところですが、結局は自社に適切な解決策がなく、なんとか手持ちの製品を無理に押し込んできた。残念ながら、そんな印象を受けてしまいました。

「お客様の利益ではなく、自分たちの利益を優先しているのですか?」 
申し訳ないのですが、そんな印象を受けたのは、私だけではなかったようです。

もし、適切な解決策がないのなら、それを正直に伝え、考えうる次善の策か、他社の提供する手段を提示すべきです。お客様の立場でお客様の利益を追求する人、つまり、信頼される存在とは、そういうことができる人なのだろうと思います。

確かにこれでは数字にならないでしょう。しかし、それは一時的なことであり、信頼できる存在と認められれば、お客様はきっとまた相談してくれるはずです。そういう関係を多くのお客様で築くことができれば、結果として数字はついてくるものだと思います。

安心(assurance)とは、自分に不利益をもたらさないであろうという自分自身の評価です。それに対して、信頼(trust)とは、自分に利益をもたらしてくれるであろうという相手の能力や人格についての評価です。

「安心な存在」となることは、日常のお客様との関わりの中で、自然と築き上げられることでしょう。しかし、「信頼される存在」になるためには、「決心」と「努力」と「意思」が必要です。そのためには、相手に成功してほしい、幸せになってもらいたい。そういう愛情としての強さがなければ、できないことだろうと思います。

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2012年6月9日土曜日

「情報」の意味を知らない非常識営業とならないために

「なるほど、そういう考え方がありましたね。これはいいですね。」

あなたは、お客様にそう言わせるだけの情報を提供しているでしょうか。私は、営業の存在価値は、そこにあると思っています。

お客様の知っていること、興味のない製品情報を届けたところで、お客様にとってはなんのメリットもありません。「ちょっと、ご紹介したい製品があるんですけど、お時間頂けないでしょうか。」とお願いしても、「ああ、それならホームページのURLをメールで送っといてくれればいいから・・・」と返されるだけです。

お客様に伺い、自社の商品やサービスの説明をすることはできても、お客様に「ハッと思わせる情報」を提供できないようであれば、あなたは「歩くカタログ・スタンド」程度の存在でしかないのです。それでは、営業であることの意味はありません。

そうならないために、どうすればいいのでしょうか。

お客様にとって、魅力的な情報をお届けすることです。では一体どういう情報が魅力的なのでしょうか。まずはこの点について考えて見ましょう。

かけひきの科学(唐津一著)」に次のような記述があります。
「情報とは、それが到着、あるいはそれを入手したとたん、環境を一変させる力を持つ。もちろん到着しないかぎり、なんの力ももないのである。」
Wikipediaには、こんな記述があります。
「情報量は、情報理論の概念で、あるできごと(事象)が起きた際、それがどれほど起こりにくいかを表す尺度である。頻繁に起こるできごと(たとえば「犬が人を噛む」)が起こったことを知ってもそれはたいした「情報」にはならないが、逆に滅多に起こらないできごと(たとえば「人が犬を噛む」)が起これば、それはより多くの「情報」を含んでいると考えられる。情報量はそのできごとがどれだけの情報をもっているかの尺度であるともみなすことができる。」
例えば、提案書や製品説明のための資料についてが考えてみると、それが分厚ければ分厚いほど、情報量が多いと思いがちです。しかし、その中にお客様が知っていることばかり書いてあったとすれば、お客様の意識に何の変化も起きません。逆に薄い提案書であっても、その中にたった一枚のハッと思わせる図表が入っていたとしたら、お客様の意識は大きな影響を受けることになり、きっと真剣にあなたの話を聞いてくれることになるでしょう。

情報理論では、前者のような状態を「情報量はゼロに等しい」といいます。つまり、情報量とは、相手の行動に影響を与える度合いであり、量の問題ではないのです。

「情報量とは相手の行動に与える影響度」であると考えると、もうひとつ注意しなければならないことがあります。それは、相手の期待に対する適合度です。例えば、お客様への提案書にたとえお客様の知らないことが書いてあったとしても、それがお客様にとって関心のない内容であったならば、相手に影響を与えることはあません。こういう情報を世間では、「余計なお世話」や「トンチンカン」といいます(笑)。

では、それが、お客様の期待している情報であり、「ハッと思わせる」ものであったとして、その影響度の大きさは、どのように考えれば良いのでしょうか。

これは、お客様の期待とのギャップの大きさです。例えば、お客様が「このシステムを導入すると毎月100万円のコスト削減が期待できそうだ」と考えているとき、あなたの提案が110万円であれば、10万円分の影響度です。もし、200万円であれば100万円分の影響を与えることになるでしょう。逆に、90万円であれば、10万円分のがっかりです。30万円なら70万円分の失望になります。つまり、「こりゃだめだ、二度とこの営業の提案は聞かないぞ」というネガティブな影響を与えることになります。

つまり、お客様の期待する内容を理解し、それについての提案であったとしても、求めるレベルがどの程度かを把握できていなければ、たいへんなことになるかもしれないのです。

例えば、「経費処理伝票の入力負担を軽減したい」という期待に答える内容であっても、「お客様は紙の伝票を一切廃し、しかもスマホからインターネットを介して入力でき、そのまま会計システムへもデータを受け渡すことができるシステム」を期待しているにもかかわらず、「入力はPCだけで会計システムへは個別に手入力」ならば、お客様はがっかりし、あなたの話など二度と聞きたくないと思うでしょう。

「お客様の期待に応える」とは、よく聞かれる言葉です。しかし、期待に応えるためには、その期待の内容とレベルを知ることからはじめなくてはなりません。そこをおろそかにして、自分のできること、話したいことだけを伝えて、「さあ、どうだ!」とお客様の反応を待つ。これでは、お客様の期待に応えることなどできません。

情報システムに携わるものとして、「情報」の意味をしらないでは、非常識かもしれませんね。そんな非常識な営業とならないためにも、ご参考にしていだければ幸いです。


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2012年6月2日土曜日

負組それとも勝組? やってきた選別の時代

受託ソフト開発会社にとっての最大の問題は、IT投資に見合う効果が表れていないことにある。ユーザーのニーズを的確に把握できていないことを示している。しかも、将来の成長に向けた具体的な施策をまとめ上げられていない。長期ビジョンを描けていないのだ。」・・・ITpro 「受託ソフト開発会社は、もう終わり!」

この記事に書かれていることは、既に以前より言われ続けられてきたことであり、特に目新しいことではありません。しかし、2012年は4月までに88件となり、過去最悪となった2009年を大きく上回る勢いで推移している。」という事実は、「もう時間がありませんよ」と言う、市場からの最後通牒と受け取るべきでしょう。

この業界に長くいますが、これほどまでに変化の大きさを強く感じたことはありません。

変化のない時代など、これまでもありませんでした。だから「世の中が変わったから、うまく行かない」という言い訳はしたくはありません。変わることが前提であり、それに対処することが人生であり、ビジネスであると私は思っています。ただ、その加速度がこれまでの比ではないのです。

確かに、リーマン・ショックの時は、本当に厳しかった。ほんとうにこのままやっていけるのだろうかという絶望感さえ感じていました。また、3.11の時も、大変なことになった、日本はどうなってしまうのだろうかという大きな不安を感じていました。

しかし、本当の変化は、今まさに爆発的な勢いで始まったという気がしています。

今、私は、大手建築業のお客様で「情報システム戦略の再構築」をお手伝いしていす。

「経営者から自分たちの存在意義を強く問われている。」と話される情報システム本部長。彼は、これまでのやり方の延長線上では、解決策は見いだせないという強い危機感を抱かれています。そしてその一方で、このようなお客様の悩みに相談に乗ることすらできないソリューション・ベンダーの存在意義にも疑問を持たれているようです。

経営環境は、リーマン・ショック、3.11、ユーロ危機と歴史的円高と続く積み上げられたプレッシャーにより、これまでのやり方にこだわっていては、この変化を乗り切れないという機運を一気に高めています。まさにカタストロフィカルな意識の変化が、今起きているとみるべきでしょう。

IT業界に目を向ければ、この変化を加速している要因は、ITテクノロジーのイノベーションにあると私は考えています。

近代イノベーション理論を提唱したシュンペーターによれは、「イノベーションは創造的破壊をもたらす」と説いています。

これまで成り立っていたビジネス・モデルが破壊され、コモディティ化したテクノロジーと労働集約的人月単価モデル、請負と称する受託・派遣ビジネス・・・そろそろ限界が来たと言うことでしょうか。今まさに新旧の入れ替わりが始まっているというのが、この倒産件数増加の理由だと考えられます。
旧態依然の受託思想・仕事をもらうばかりの下請体質、さらにSESというインチキ派遣を誤魔化した言葉でシステム屋と言ってきかない人売り体質が通用しなくなるほど、ITインフラ整備の敷居が低くなったということだと解釈しています。
友人が、facebookの私の問題提起に、このようなコメントを寄せてくれました。全く同感です。

私は、クラウド、オフショア、高速開発が、この変化を加速している大きな要因だと感じています。特にクラウドは、大手、中小を問わず、ITインフラの敷居を大きく引き下げ、それぞれの得意分野に集中できる環境を整えつつあります。

これまでは、「総合力」が競合優位の重要な源泉でした。従って、大手ということが、お客様の意志決定の根拠でもあったのです。しかし、高度な運用技術と安価で膨大なシステム・リソースを必要なときにすぐに調達できるクラウド・サービスは、大手しか持ち得なかった競争力の源泉を中小でも同様に手に入れることができるようにしたのです。

つまり、それぞれの専門分野で、高い技術やアイデア、ノウハウを持ってさえいれば、それを武器にして大手、中小を問わず対等に戦える時代になったのです。

お客様は、これまでの常識を疑いはじめています。その一方で、旧態依然とした常識にこだわり、イノベーションを示せないSIerやITソリューション・ベンダーに、お客様の信頼は遠のくばかりです。

シュンペーターは、こうも述べています。「イノベーションとは新結合である。」これまで誰も試みたことのない組み合わせを創り出すこと。それは必ずしも新しいテクノロジーばかりでなく、従来のテクノロジーと新しいテクノロジーの組み合わせ、あるいは、従来のテクノロジーの新たな組み合わせが、お客様の課題解決のショートカットになるとすれば、それもまたイノベーションなのです。

イノベーションをもたらす人を彼は「アントレプレナー」と呼んでいます。そう考えれば、SIerやITソリューション・ベンダーは、様々なテクロジーを使い、お客様の課題解決に最適となる組み合わせを提供するアントレプレナーということになります。

ジョブスばかりがイノベーションを起こすアントレプレナーではありません。もっと身近なところでイノベーションを起こすことは可能です。

この大きな変化の波は、新旧の入れ替えを加速する波です。それをチャンスととらえるか、危機と捉えるか・・・もう時間はあまりないように思います。


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2012年5月26日土曜日

新入社員のみなさんへ 若気の至りという旅を楽しんでみてはどうでしょうか

新入社員研修に、あなたは何を期待しているでしょうか。

社会人としての常識や技能を高めたい。社会人として、早く一人前の仕事がしたい。そのために必要なことを学びたいと期待しているのでしょうか。

それとも、会社が用意した研修なので仕方なく参加しているだけですか? たとえ自分の本意ではなくても、参加することが「今の仕事」であり、会社の人たちに「いい新人が入ったなぁ」と思ってもらいたいから無理して頑張っているのですか。

たとえ志を持って研修に参加しも、自分の未熟を目の当たりにし、小さな挫折を味わうかもしれません。テストでの不本意な成績、知っていると思っていた常識が通用しない現実など、そんなはずはないと、がっかりしている人もいるのではないでしょうか。

講師の眠たい話しにも耐えなくてはなりません。そうしなければ、自分の評価が下がってしまいます。「あいつは使えないやつだなぁ」と周りから見られてしまうでしょう。

世の中は、なかなか自分の思い通りにはゆかないものですね。研修もまた、その「思い通りにゆかないもの」のひとつかもしれません。不本意の連続です。理不尽だと思うこともしばしばです。

しかし、社会はもっと不本意で理不尽です。それを自分で受け止めなくてはなりません。研修とは、そんな社会に独り立ちするみなさんが、より大きな現実に直面する前に、小さな社会の現実を体験するワクチンのようなものです。

このワクチンの効き目は、人によってだいぶ差があるようです。つらいけど、真剣に立ち向かえば、効き目は相当なものです。その一方で、時間の流れに身をゆだねているだけではワクチンはほとんど効きません。

「幸福論」の著者であるアランはこんなことを言っています。

「まったくいやな雨だ!」などと言ったところで、何の役に立とう。雨のしずくも、雲も、風も、どうなるわけでもない。
「ああ、結構なおしめりだ」と、なぜ言わないのか。もちろん、こうあなたがいうのをわたしが聞いたからといって、雨のしずくがどうなるわけでもない。それは事実だ。しかし、そのほうがあなたにとってよいことだろう。あなたのからだ全体がふるいたち、ほんとうに暖まることだろう。ほんのちょっとした喜びの衝動でもこんな効果があるのだ。
研修をこう考えてみてはどうだろうか・・・「結構なおしめり」だと。

少々、大げさですが、アランはこんなことも言っています。

思いつめた人は、ほとんどつねに、読みすぎる人である。しかし、人間の目は、そういう近距離のためにつくられていない。広々とした空間の中で憩うものだ。星や海の水平線を眺めていれば、目はすっかり安らいでいる。目が安らいでいれば、頭は自由になり、足どりもしっかりしてくる。からだ全体がくつろぎ、内臓までしなやかになる。
しかし、決して意志の力でしなやかになろうと試みてはいけない。自分の意志を自分の中にさしむけたのでは、なにもかもが上手くゆかなくなって、ついには自分の息の根をしめるようになる。自分のことを考えるな。「遠くを見よ」

自分の5年後、10年後はどうなっているのでしょうか。いや、どうなっていたいのでしょうか。自分の意志の力で今を何とかしようとしても、なかなか思うようにはゆかないものです。あなたの「遠く」を思い描いてみる。それだけで十分なのです。

研修にできることは、あなたの「遠く」、つまり何処へ向かうべきかを伝えることです。そして、その道をどのように歩くかの方法を教えることです。残念ながら、そこまでのことです。旅行のガイドブックのようなものです。

ただ、ガイドブックを眺めていめるだけでは、何も手に入りません。自分でそこに行き、体験しなければ、その楽しみも、感動もありません。失敗もあるでしょう、思い通りに行かないこともあるでしょう。あまりの慌ただしさとアクシデントに道に迷うこともあるでしょう。ガイドブックには書いていない場所や出来事に出会うこともあるでしょう。それが例え自分の意に反することであっても、自分の努力ではどうにもできないことがあります。

そんなときに、役にたつのがガイドブックです。何処が目的地だったのか、どれが正しい道だったのか、それを思い出させ、確認することができるでしょう。

研修は、あなたを一人前にはしてくれません。一人前になるかならないかは、このガイドブックを片手にあなた自身が旅に出るかどうかです。もし、その一歩を踏みださいのならば、あなたはいつまで経っても今のままです。

若気の至りという言葉があります。この言葉が使えるのは、せいぜい28歳まででしょう(笑)。その間に失敗を恐れず、思いっきり若気の至りをすることです。怒られるかもしれませんね。でも、許してもらえます。例え許してもらえなくても、殺されることはありません(笑)。先輩もお客様も、あなたの行いが「若気の至り」であることを知っています。よかれと思った「若気の至り」は、相手に伝わるものです。むしろ評価してくれるはずです。

旅に出るチャンスです。研修で手に入れたガイドブックを手にし、若気の至りという旅をおもいっきり楽しんでみてはどうでしょうか。


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2012年5月20日日曜日

OJTというの本人任せ・運任せ

研修だけでは新入社員を育てることはできません。

研修だけならプロの講師がそれなりの内容を提供できます。しかし、研修の成果が活かされるも活かされないも、先輩や上司が実務の中でどう関わるかによって決まってきます。なによりも、プロとしての意識は、実務を通してしか育まれることはありません。だからこそ、先輩や上司が育成のプロになるべきなのです。OJTは研修の内容を実務を通して定着させる取り組みです。新入社員の育成は、この両者のがっちりした組み合わせがあってこそ、成し遂げられるものだと思っています。

しかし、私が知る限り、新入社員研修とOJTをひとつの育成プログラムとして設計し、運営している企業は少ないように思います。研修はそれなりにお金をかけてしっかりやるが、OJTはほったらかしの現場任せ。OJTの達成目標や内容は曖昧なままに、おざなりの「OJTリーダーの心得」的な研修のみ。OJTのプロセスや実践スキルを教えることはありません。「君たちも新人の経験があるんだから、わかるだろ・・・」と暗黙の了解を前提としてOJTが走り出してしまいます。

しかし、引き受ける現場としては、日常の仕事に追われています。結局、何の思慮もなく若手にOJTのリーダーを任せ、「将来マネージャーになるための良い勉強だから頑張ってやってくれ!」と励ましの言葉だけ。任された方は、その方法もわからず、困惑してしまうだけです。

任された方も意欲がないわけではありません。なんとか役割を果たしたいと思うのです。しかし、ベテランほどに要領を心得ていない若手にとっては、毎日が戦いです。自分だけで精一杯です。「他人を育てる」という余裕はありません。営業であれば、ノルマもあります。自分のノルマに加え新人のノルマも自分で抱えなければいけない。ああ面倒だと思う人もいるでしょう。

結局は、方法もスキルも曖昧なままにOJTというほったらかしが進行します。結局は、新人たちが育つも育たないも、OJTリーダーや新入社員本人次第、運任せということなのでしょうか。ダメなら本人に適正がなかったと言訳すれば良いと言うことなのでしょうか。

せっかく高いコストをかけて優秀な人材を採用しても、これではその能力を最大限に引き出すことはできません。なんともったいないことかと思います。

現場のたたき上げをよしとする文化が未だ根強いことが背景にあるのかもしれません。仕事は、実務実践を通して学ぶものだという精神論です。そのこと自体を否定するつもりはありません。しかし、時代とともに価値観やビジネス環境も変遷しています。かつての成功体験は単なる過去の栄光であり、その方法論がそのまま通用するという保証はありません。これを塩漬けにしたままに、現場に任せてしまっていいのでしょうか。

ここ何年か、新入社員研修に係わりながら、彼等の価値観が、大きく変わってきていることを実感しています。その特徴は、強い仲間意識や同期意識、自分の発言がどう見られるかを意識し自分の考えや意志をはっきりと主張せず言葉尻を曖昧にしてしまう、周りとの関係にとても気を遣う、たとえば、先輩たちととうまくやるために積極的に飲みに行くことを目標に掲げるなどいうのは、意識して努力しなければできないし、意識しなければならない大切なことと考えているからでしょう。

まわりからよく評価されたいという意識の強さ、素直さを通り越した静かさ、競争心の低下、いや競争をよくないと考える意識と言うべきかもしれません。誰もがそうだと言うつもりはありませんが、総じてそんな傾向が強まっているようにも見受けられます。これを「自己肯定感の低下」とみる専門家もいるようですが、なるほどと思わずにはいられません。
自己肯定感:自分は大切な存在だ、自分には可能性がある、やればできる、やるしかないというように自分を肯定的に捉え、自発的な意欲を持ち、他人と自分との違いを意識し意欲的に人間関係を築こうとする心の有り様
また、ITビジネスに関して言えば、プロダクトだけで差別化が難しくなった現在、お客様の課題やニーズを起点として最適な組み合わせを創りあげ提供するソリューションへと軸足が遷りつつあります。

競争力の源泉が大きく変わってしまいました。ビジネスの本質が大きく変わってしまったのです。その変化について行けず、いやその変化を受け入れず、いまだ過去の成功体験と方法論が通用すると思い込んでしまっているベテランやマネージメントの存在は現場任せのOJTをますます難しいものにしています。

現場たたき上げの基盤が変わっているわけです。ならば、過去の価値観や方法論が、今に通用する能力を育てることができないという現実を直視すべきだと思うのです。

現場を知り、企業文化を身につけ、一人前の社員に育てる、その役割の最も多くの時間を費やすOJTにもっと真剣に向き合うべきではないでしょうか。時代は大きく変わっています。そのことを受け入れなければ、せっかくの優秀な人材もなかなか戦力になってくれません。いや、できる人材は、そのことに気付き早々と自分が活かせる職場に転職してしまいます。

OJTは研修と一体に設計し、運用する。そういう時代になったと考えるべきだと思っています。


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2012年5月12日土曜日

倒産件数の急増が教えてくれる「時代の変化」


「2012年は4月までに88件となり、過去最悪となった2009年を大きく上回る勢いで推移している。」

帝国データバンクが「システム・ソフトウエア開発業者の倒産動向調査」結果を発表しました。その理由として次のように述べています。

システム開発に対する投資が一巡したことや近年の世界的な経済不況などに伴い、2008年以降、特に2012年はこれまでに無く倒産が多発している。

マクロに見れば、こういう解釈もあるのでしょうが、このような事態に至った本質は、「ITビジネスのパラダイム・シフトが、昨今の社会・経済情勢の中で一気に進み始めたため」と見るべきではないかと考えています。

これを「オフショアへのシフト」、「高速開発へのシフト」、「テクノロジーのシフト」という3つの視点で整理してみました。

まず、第一のシフトは、オフショア利用の普及です。かつてオフショアは悪かろう安かろうの代名詞的な時期もありました。また、うまく現地との意思疎通が図れず、手戻りが多くて、結局は日本でそれなりの工数がかかってしまうことや管理の手間もバカにならないなど、あまりいい話を聞きませんでした。しかし、そのような苦労の中で、多くの企業が要領を掴んできたことも確かです。その結果、国内との棲み分けもうまくできるようになったことが、オフショア利用の拡大を促しています。

また、これまで中国沿岸部に限定されていたオフショア拠点も中国内陸部やベトナム、フィリピンのセブなど、より賃金の安いところへと拡大し始めています。この流れは、当面は続くとみられ、国内での開発需要を減らす要因になるものと考えられます。

第二のシフトは、高速開発へのシフトです。急速に進む円高や震災、原発事故に伴う事業環境の変化は、これまで以上に変化への迅速な対応を求めています。そうなりますと、これまで同様のウォーターフォール型の開発では、対処しきれません。

開発の生産性を高めることもそうですが、開発を必要としないクラウド・サービスの活用やカスタマイズせずにパッケージ・ソフトウェアを利用することにより対処しようという動きもこれまでになく活発です。また、開発生産性については、開発フレームワークの積極的な活用や例えばforce.comのような開発生産性の高いサービスの利用への感心が高まっています。また、BRMSやRADに代表される業務仕様を直接システム・ロジックに展開できるツールなども今後普及してくることが考えられます。

情報システムへの需要そのものがなくなるわけではありません。このような高速開発の様々な手段が普及し始めることで、同じことをやるために必要となる開発要員数が、減少しつつあるということなのではないでしょうか。

第三のシフトは、テクノロジー・トレンドのシフトです。WebアプリケーションとHTML5、ビッグデータとHadoopなどの新しいテクノロジー・トレンドへの需要が高まる一方で、従来型のテクノロジーは、コモディティ化が進み、オフショアへのシフトが加速しています。そのため、従来型のテクノロジーにしか対応できない企業が、結果として淘汰されつつあるということです。

これはあくまで私の感覚でしかないのですが、社員の平均年齢が比較的高い企業は、変化への動きが緩慢です。たとえ若い人たちが新しいことへ関心を持ち動こうとしても、経営層が稼働率を気にするあまりにそのような動きを支援せず、押さこんでしまう。その結果として、稼働率は上がるが、オフショアとの戦いで利益のでない仕事を引き受けてしまう。平均年齢が高い分、人件費も総じて高く企業の収益を圧迫してしまう。そんな悪循環が長く続くはずはありません。
その一方で、平均年齢の低い企業は、比較的人件費を安く押さえられます。また、進取の気概もあり、新しいことへの取り組みも積極的です。そういう企業の需要は、私の知る限りでは決して減少していません。

テクノロジー・シフトの要因は、様々ですが、そのひとつとして、スマートフォンやタブレットの普及は大きいと感じています。実際のビジネスでの利用という面では、まだまだこれからというところでしょう。しかし、それを前提としたUIやUX、プラットフォームや運用に関わる常識が大きく変わり始めています。そのことが、テクノロジー・シフトを加速してるのではないかと考えています。

昨今の社会・経済の情勢は、このような動きを加速する力として、大きく作用しています。それが、倒産件数という数字になって、現れているのではないでしょうか。

経済が右肩上がりの頃の成功体験は、もはや通用しません。大きなパラダイム・シフトが進んでいます。倒産件数の増大は、「不況」というような、表層的な現象と捉えるべきではありません。新旧の入れ替わりであり、ITビジネスの新たなスキームを産み出す「時代の変化」ととらえるほうが、自然ではないでしょうか。


■ 第10期・ITソリューション塾を開講します ■

第10期は、5月23日(水)からスタートします。毎週水曜日の夜、全10回で、最新のITテクノロジーやビジネスのトレンドを整理すると共に、お客様と関わるみなさんに必須の顧客応対スキルを学びます。

詳しくはこちらをご覧ください。

既に多くの皆様からお申し込みを頂いております。ありがとうございます。そんなご意向を踏まえ、今回は会場を大きくさせて頂きました。そのため、まだお申し込みいただけますので、是非、ご意向だけでも早々にお知らせください。

これまで同様、講義に使いましたITトレンドに関するプレゼンテーションはパワーポイントのソフトコピーで提供させて頂きます。是非、社内での勉強会やお客様の説明にご活用頂き、知識の定着を図って頂ければ思っています。

資料の一部は、Facebookページにも公開しています。

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2012年5月6日日曜日

営業のプロ意識とは何か

「営業力を強化するためには、営業にもっとプロ意識を持たせなきゃいけないと思っているんです。」

「なるほど、確かにそのようにも思いますが、でも営業のプロ意識って、どんな意識なんでしょうねぇ・・・」

ある、SIerの育成担当者と、こんな会話を交わしました。

営業に限らず、どんな職業にもプロ意識は必要です。イチローなんか見ていると、プロだなぁと自然と感じてしまう。ほかにも歌手や作家、役者などなど、その道のプロと言われる人たちはたくさんいますし、「なるほど」と感じさせてくれる人は少なくありません。

その「なるほど」とは何かです。私は「こだわり」ではないかと思っています。

自分の道を追求し、それを極めようとうとこだわり抜く。その「こだわり」の強さこそが、プロを感じさせるオーラになっているように思います。

さて、それでは、営業にとっての「こだわり」とは何かです。私は、「数字」だと思っています。何が何でも、この数字を達成する。その執着にも似た、徹底的なこだわりを持つこと。それが、営業のプロ意識ではないでしょうか。

売上、利益、新規顧客獲得数・・・営業にはそれぞれに様々な数字がノルマとして課せられます。それをなんとしてでも達成する。その必達の意識こそ、プロ意識と言うべきでしょう。

運もあるでしょう。担当するお客様の経営状況や社会状況にも左右されるかもしれません。それでも、なんとしてでも目標を達成する。環境が悪ければ、それを改善するなり、ほかの道を探る。言い訳をせず、いかなる状況にあっても「数字を作る」、その執着心こそ、営業のプロ意識ではないかと思うのです。

「お客様に嘘をついたり、だましたり、見栄えは良いがいい加減なものを提供し、何とか数字を作ることだってできるんじゃないですか?それでも、数字を作ればプロなんですか?」 

とんでもありません。そもそも、数字を作るとは、そんな簡単じゃありません。お客様も必死です。そう簡単に、受け入れて頂くなんてできるはずもありません。もし仮にそのときはごまかしがきいても、次はありません。「数字を継続して出し続ける」それもまた、プロのこだわりの大切な要素です。

私達の仕事は、お客様の価値を高め、その価値に対する対価を頂く仕事です。その価値を与えられなければ、数字もありません。

また、競合に勝つことへのこだわりも、大切な要素のひとつだと思います。

IT市場が成熟する中、競合のないビジネスはほとんどないでしょう。相手も必死です。その戦いに勝つことへのこだわりなくして、数字はありません。勝ち負けの世界です。それから逃れることはできないのです。そのためには、巧緻策略を巡らせることも必要でしょう。ただただ何も考えず、玉砕覚悟で、正々堂々と正面突破などと言う美談では、がんばったという自己満足は与えてくれるでしょうが、数字にできる保証などありません。それでは、プロの営業とは言えません。

数字への執着、それを継続する力、巧緻策略を駆使できる知性と実行力・・・プロの営業に求められる姿ではないかと思っています。

ところで、最近、営業新人の研修で、すこし困ったことがあります。それは、数字や競争へのこだわりを「よくないこと」と考える傾向が、見受けられるからです。

「成績より態度」を重視する教育がそんな若者たちを増やしてきたと指摘する人もいます。教育評論家の尾木直樹氏が次のよう指摘をしています。
「今、教育現場で重要視されているのは、得点力よりも『関心・意欲・態度』なんです。これを文部科学省は『新学力観』として指導してきましたが、その影響で教育現場はおかしなことになっている。80点と100点では、普通なら100点の方が学力が高いとされますよね。しかし、態度が悪ければ先生から低い評価をつけられてしまう。先生から見た"良い子"という主観的な点数です。この評価が各教科ごとに設けられ、高校・大学進学に影響します。つまり子どもたちは、基礎的な学力を身につけることよりも、先生にどう評価されるかが勝負となっています。」
そして、それは先生だけではなく、友達や親からどう見られるかを強く意識するようになったというのです。

人と争わず、うまくやっていくこと、人から嫌われることを避け、どう見られるかがとても気になる。仲間としてそのコミュニティに向かい入れられるためには、どうすれば良いかに関心がある。

そんな生き方を求められてきた若者にとっては、数字や競争にこだわると言うことは、これまで学んできたことと全く反対のことを求められる訳です。これは、少々、やっかいな問題であると思っています。

ビジネスは、競争による切磋琢磨であり、それが世の中の進歩を導いてきた側面があります。ビジネスがグローバル化するなか、ますますその競争に立ち向かわなければなりません。

少々、大仰な話しと受け取られるかもしれませんが、営業という仕事もまた、そういう社会のメカニズムの与された職業なのだろうと思います。

このような教育を受けてきた若者たちに、このビジネスの常識を頭ごなしに押しつけるとこは、彼等の価値観の否定であり、大きな心の負担になるのではないかと心配しています。

だからこそ、その理由やメカニズム、自分たちの役割をきちんと理解させることから始めなくてはならないのだろうと思っています。

また、日常の営業会議でも、数字を意識させる取り組みが必要です。その数字について会話し、どうすれば数字を作ることができるかを議論することでしょう。

数字へのこだわりの度合いを確かめる方法があります。それは、自分のノルマをすらすらと空で言えるかどうかです。数字をすぐに言えないようでは、数字へのこだわりが希薄であること示しています。

「プロ意識」だけで優秀な営業になれるわけではありません。お客様のこと、技術のこと、社会こと、自社製品のこと・・・様々な知識やスキルも身につけてゆかなければなりません。そういう総合力のプロフェッショナルこそ、営業なのだと思っています。

しかし、そのような能力を高めるためには、自発性が必要です。そして、それを生み出す根底には「プロ意識」があることは言うまでもありません。


■ 第10期・ITソリューション塾を開講します ■

第10期は、5月23日(水)からスタートします。毎週水曜日の夜、全10回で、最新のITテクノロジーやビジネスのトレンドを整理すると共に、お客様と関わるみなさんに必須の顧客応対スキルを学びます。

詳しくはこちらをご覧ください。

既に多くの皆様から参加のご意向を承っております。ありがとうございます。そんなご意向を踏まえ、今回は会場を大きくさせて頂きました。そのため、まだお申し込みいただけますので、是非、ご意向だけでも早々にお知らせください。

改めて、4年前の資料を振り返ると、時代の変化の大きさと共に、私達の考察の未熟に恥ずかしくなるところも少なくありません。今回は、そんな反省と共に、これまで以上に、ITビジネスのトレンドや戦略についても体系的に整理してみようと思っています。

なお、これまで同様、講義に使いましたITトレンドに関するプレゼンテーションはパワーポイントのソフトコピーで提供させて頂きます。是非、社内での勉強会やお客様の説明にご活用頂き、知識の定着を図って頂ければ思っています。

多くのみなさんのご参加をお待ち申し上げております。


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