2010年8月1日日曜日

「営業なんだから、しっかりやってくれよ!」という責任放棄

 「営業なんだから、しっかりやってくれよ!」
 
 あるSIerの営業会議で、そんな声が響く。大丈夫と踏んでいた案件失注の報告を担当営業より受けて、怒り心頭に発した営業部長の声は、抑え気味ながらも、ドスが効いていた。
 
 私は、この案件について、以前より担当営業から話を聞いていた。そして、きっとだめだろうなぁと思っていた。その理由はいろいろある。担当者の言われるがままに、資料や見積もりを出しているだけ。意思決定者に行き着いていない。競合の有無もわからない・・・にも関わらず、「頑張ります!」と言ってしまった手前、引っ込みがつかなくなり、営業部長に無用な期待を持たせてしまったようだ。
 
 私は、彼にまずは、フォーキャストの確度を下げることと、以下の3つの点を確認するようにアドバイスした。
 
 ・いつまでに意思決定するつもりなのか
 ・意思決定の基準は、価格なのか、内容なのか、何をクリアすれば、採用されるのかを確認する
 ・よりよい提案をさせていだくためにユーザー部門の責任者に合わせてほしいと依頼する 
 
 ・意思決定の期日については、すんなりと教えてもらえたようだ。しかし、これだけの案件にしては、期間が短すぎる。
 ・意思決定の基準については、価格も内容も両方という、あいまいな回答。
 ・ユーザー部門の責任者に合わせてほしいというと、自分にまかされているから、その必要はないと断られた。
 
 その報告を受けて、これは当て馬ですよと、お伝えした。この会社から購入する意思はない。しかし、手続き上、あるいは、本命との駆け引きの材料として使われているだけだろうと合点がいった。
 
 とにかく、その窓口の人だけではなく、他の人にそれとなく聞いて御覧なさいと促したところ、予想通りだったとの報告。先に勧めたフォーキャストの確度を下げるとについては、頑張るといってしまった手前切り出せないまま確認を先行することにしたそうだが、結果はこのとおり。結局、部長の期待を大きる裏切ることになって、怒りが倍加してしまったようだ。
 
 営業の現場にいると、このような状況は、日常茶飯事だ。なぜ、おかしいぞ、何か裏にありそうだと、感じないのだろうか。彼なりに言い訳もある。それは、エンジニアから営業になって間がないからスキルがないというもの。しかし、そんなことは、営業職であろうが、エンジニアであろうが、お客様を相手にする仕事である以上、基本として持つべき感性ではないかと思う。
 
 営業部長にしても、なぜこの状況を見抜けなかったのかと思う。あたりまえの確認を怠り、部下の報告を自分の都合のいいように解釈し、あるべき論と精神論を語るだけである。そして、部下を指導し、励ましたつもりになっている。部下を叱るのは、お門違いだ。自分の無能を嘆くのが先ではないか。
 
 営業力を強化しなければならないというSIerの経営者は多い。そして、その施策の多くは、エンジニアを配置転換し、営業の肩書を与えることだ。そして、「きょうから、あなたは営業だから頑張ってくれ、期待しているよ」と言う。以上である。これで営業力を強化したことになるのだろうか。
 
 営業力というと、多くの人は、「営業職の人の能力」をイメージするだろう。しかし、わが国のSIerの現実を見ると、実際に営業が案件を取ってくるというより、お客様を担当するエンジニアが、仕事を取ってきて、その後始末の事務処理を担当するのが、営業である場合も多い。
 営業は新規顧客の獲得を期待される場合も多い。これは相当に大変なことで、経験やスキルだけではなく、何を売るか、そして、魅力的な提案なくして、きっかけさえつかめない。それを「営業だから」という理由だけで、期待され、任され、自分もそう思って戦いに挑むが、見事に撃沈する。営業は、なかなか成功体験を得られず、モチベーションを下げ、売り上げに直結する既存案件の事務処理に時間を割くようになる。そして、そちらが忙しいからと言い訳し、新規顧客開拓への機会を作ろうとしない。そんな悪循環が生まれている。
 
 このような状況の中で、いくら営業職を鍛え、鼓舞しても、ビジネスを拡大することはできないだろう。営業職の人間を増やすだけでは、営業力の強化などできるはずないのだ。
 
 私は、「営業の仕事」と「営業職の仕事」を分けるべきと考えている。「営業の仕事」は、全社を挙げて取り組むべきものである。特に、わが国のSIerは、エンジニアがその役割の多くを担っている。それが、良い悪いという議論ではなく、この現実をうまく活かしてゆく道を探るべきではないのか。
 
 営業の仕事は、精神論や感性だけでこなせるものではない。営業活動はエンジニアリングできるものであり、プロセスとして整理できる。これは、むしろエンジニアの感性に受け入れられやすい。また、お客様の課題を発掘し、案件に結びつけるには、技能と知識が大いに助けになる。それは、営業職だけが必要なものではなく、エンジアも含め、会社全体として、その能力を高めてゆくことこそ、営業力の強化なのではないかと思う。
 
 会社として、この能力を育てることもせず、営業職という肩書を与え、あとは本人の自助努力に任せるだけでは、営業力の強化などできるわけがない。これでは、まるで、「営業職への配置転換」という体のいいエンジニアのリストラではないか。
 
 「営業職の仕事」ではなく「営業という仕事」ととらえ、営業もエンジアも含めた、会社としての総合力としての営業力をどのように高めてゆくのか。そんな視点での取り組みを始めてみてはいかがだろう。

 
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2010年7月25日日曜日

あなたの常識は、もはや非常識です!

 前回紹介させていだいた第二の変化の本質は、「開発や運用にかかわる常識の崩壊」といえるだろう。開発や調達のコストを20パーセント削減するの類ではない。期間もコストも、何分の一となる手段が、手の届くところにある。SIerは、そんな新しい常識とうまく付き合わなくてはならない。
 では、どのような付き合い方があのだろうか。次の3つの方法があるように思う。

1.クラウド・ブローカー
 この言葉は、昨年7月、ガートナーのレポートで紹介された。

 「クラウド・サービスを組み合わせ、お客様の目的とする機能を実現するインテグレーター」といったところだろうか。多様化、細分化するクラウドのサービスを、お客様が自分で選択し組み合わせることは容易ではない。そこを代ってやってあげますよというサービスである。
 また、それらをお客様のオンプレミス・システムと連携させる開発も含まれる場合もあるだろう。つまり、クラウド・サービスを素材にシステム・インテグレーション・サービスを提供するようなものだ。
 このようなサービスを提供するには、クラウド・サービスについての目利き力、SOAやESB(Enterprise Service Bus)などのノウハウ、そして、業務についての知識や業務プロセスを整理し、抽象化できる能力やUMLなどのスキルが必要になるだろう。


2.ビジネス・コンサルティング
 クラウド・ブローカーの上流工程を切り出したものといえるかもしれない。お客様の業務プロセスや仕事の仕組みについてのコンサルティングとその最適化、また、BPOとして受託するサービスである。
 現在、この部分は大手SIerやコンサルティング会社が、握っている。ただ、特定の業務分野や中堅中小の企業に向けて、パッケージ化したり、テンプレート化することで、コストの低減が図れるのではないだろうか。特に中堅中小の企業にとって、大手企業以上にコスト削減にはセンシティブであるし、業務プロセスを改革するにしても人材がいない。クラウドやオフショア・サービスを前提として、業務プロセスの改革を支援できれば、その価値は大きいはずである。
 このようなサービスを提供するには、業務ついての知識やBABOKに代表されるような業務分析能力、業務プロセスを整理し、抽象化できる能力、UMLスキルなどが必要になるだろう。


3.クラウド・サービス活用型ベンダー
 Googleは、300万台を超えるサーバーを所有しているという。また、年間サーバー出荷台数が1000万台といわれる中、Google,Salesforce,Amazon,Microsoftの4社で200万台近くのサーバーを購入しているらしい。この圧倒的な物量に対抗することは、もはや容易なことでない。また、その技術革新のスピードやサービス・メニューの充実も、豊富な資金に支えられている。これに対抗するサービスを独自に構築し、提供できるだろうか。
 しかし、その一方で、クラウドならでは課題も抱えている。国をまたがることで生じる法規制やコンプライアンスの問題。払しょくできないセキュリティへの不信。インターネットを介することによるQOSへの不安などである。このようなクラウドの抱える課題を克服することができれば、お客様に大きなメリットを提供できるだろう。
 また、ユーザー・インターフェイスや日本固有の業務にかかわるオペレーションに近い部分は、クラウドやオフショアで対応することは困難である。
 クラウドの提供する圧倒的なスケール・メリットを利用しつつ、クラウドの使い勝手を向上できるサービスやパッケージを提供ることができれば、それは大きなビジネス・チャンスになる。
 例えば、アプレッソのDataSpider Servista。各社のクラウド・サービスが提供するデータ形式に対応し、オンプレミスのデータベースなどと連携するアダプタ群、サービスの高速実行を可能にする実行環境などを提供するデータ統合化ツールなどは、その一例である。
 また、インターナショナルシステムリサーチのCloud Gateは、GoogleのGmailが抱えるセキュリティ上の不安を解消してくれるパッケージ・ソフトウェアである。
 このように、クラウドの良さをうまく利用し、課題を克服したり、使い勝手を向上できるソフトウェアやサービスを提供するというビジネスは、十分にチャンスがあるだろう。
 
 第二の変化を、避けることはできない。とすれば、その流れをうまく利用する道を探るべきである。
 「まだ時間がある。すぐには変わりませんよ。」と言い続けて、もう何年になるだろうか。現実を見ず、避けてきた人たちは、今自分が、崖っぷちに立っていることに気付いていない。

 そろそろ、自分の足元を見るべきだ。第二の変化は、あなたの常識を、もはや非常識なものにしてしまっているかもしれない

2010年7月17日土曜日

第二の変化:何もしないでいいのですか?

 我が国のSIビジネスは、リーマン・ショックをきっかけとして、需要の大きな落ち込みを経験した。しかし、多くの経済指標が、改善される中で、SIビジネスが、同様の軌跡をたどっているという話は、寡聞である。「SI需要の回復は、景気の回復から半年から1年くらいは、遅れるものですよ。」という、楽観論も聞かれるが、果たして、本当にそうなのだろうか。

 私は、この楽観論には、賛成できない。むしろ、リーマン・ショック以上の大きな構造的な変化が、新たに始まろうとしていると考えている。リーマン・ショックがもたらした第一の変化に続き、今私たちは、それ以上に大きな第二の変化に直面していると考えるべきだろう。
 
 我が国のSI産業の構造は、コンサルティングや企画、設計といった上流工程を、限られた大手ゼネコンSIerが握り、そこで受注した開発や運用を多数の中小SIerが、下請けとして受託する構造で成り立っている。第一の変化は、この産業構造を維持したまま、その規模が、縮小するという変化であった。それが、下の図である。
 

 この第一の変化は、「業務量の減少」と「単金相場の低下」をもたらし、生き残りが難しくなった中小のSIerは、大手ゼネコンSIerに買収されるという動きを加速した。本来ならば、景気の回復は、この産業構造を維持したままで、再び規模を拡大することになるが、3つの要因が、それに歯止めをかけているように見える。

 その第一は、「ニューノーマル」である。「単金相場の低下」は、ユーザー企業にとっては、もはや既得権益になり、「この金額で同じことができるではないか」という、新たな常識が、定着してしまった。また、SIer側も、仕事を受託し続けるためには、単金を上げてほしいとは言いにくい。この暗黙の了解が、SIerの利益拡大の頭を押さえている。

 第二の要因は、オフショア開発の使い勝手が向上したことにある。オフショア開発については、「まともに動かない」、「こちらの意図とは違うシステムができてしまった」などの失敗を重ね、どうすればうまくできるかのノウハウも蓄積されつつある。その結果、オフショア開発の使い勝手が向上し始めている。また、オフショア開発拠点の開発力や品質管理能力も著しく向上している。ちなみに、中国国内のCMMIレベル5の企業は、今年の3月時点で48社。日本の17社をはるかにしのいでいる。しかも、その伸び率は、前年対比65%増であり、わが国の15%を凌駕している。インドは、189社、そしてベトナムもすでに3社が、CMMIレベル5の認定を受けている。その伸び率は、日本以上であることは、言うまでもない。
 さらに、中国の一流大学院卒の初任給は、年額150万円程度であり、当然英語力に問題はない。また、ベテラン・クラスである30才でも、年収は300万円程度であるから、もはや人件費という観点だけから見れば、太刀打ちできない。オフショア開発環境の整備とももに、同一スキル=同一賃金の競争は、日本国内という縛りを越えて進行し始めており、この動きが止まることはないだろう。

 第三の要因は、クラウドの普及である。それも、PaaSの企業システムとしての使い勝手が、向上してきたことは、企業のシステム利用形態に大きな変化をもたらすものと考えられる。PaaSとは、ミドル・ウェアをネットを介して提供するサービスであるが、「企業システムとして使い勝手のいいPaaS」の先鞭を切ったのが、MicrosoftのWindows Azure Platformといえるだろう。なぜ、Azureかといえば、オンプレミス(企業が自社でシステムを所有し、自ら運用するシステム利用形態)とクラウドをシームレスなプラットフォームとして構築したからである。つまり、オンプレミスのWindowsサーバーで使われている.Netの開発運用が、何の変更もなく、そのままクラウド・プラットフォームで実行可能となる環境を作ったからである。つまり、企業は、今までのシステム資産やVisual Studio / .Netの開発スキルを、クラウド環境でも、そのまま継承できるわけであり、クラウド利用についての企業としての抵抗感を、大きく低減することになるだろう。

 また、Java環境でも同様の動きが始まっている。そのひとつがsalesforce.comが始めた、vmforceだ。vmwareと組み、Javaの開発環境としては、多くのユーザーを抱えるSpring Frameworkを利用できるようにしたことだ。同様に、Googleも自社のPaaSサービスであるGoogle App Engineのビジネス版(Google App Engine for Business / GAE for Business)にSpring Frameworkを提供することを表明している。
 こうなると、インフラの構築を伴うSIビジネスや運用サービスは、このクラウド・サービスと競合することになる。
 また、第一の変化で大手ゼネコンSIerが取り込んだ中小のSIerをグループ企業として、グループ内製を優先させる動きと重なり、独立系の中小SIerの業務減少は、もはや構造的なものとなりつつある。これが、第二の変化である。
 
 第一の変化をなんとかやり過ごし、景気の回復を待ち焦がれていた多くのSIerにとって、次に立ちふさがる第二の変化は、もはや時間の問題で解決されるものではない。ビジネスのあり方、そして、人材のあり方を問い直される大きなパラダイムの変化である。
 
 では、どう対処すべきなのか。これについては、次回あらためて、解説させていただく。
 

 営業力は、営業職だけに求められるものではありません。エンジニアもまた、その能力が求められています。第二の変化に対応した営業力の獲得は、営業、エンジニアを問わず、求められています。
 
 よろしければ、ご参加ください。

7月21日(水) 最新ITトレンド
7月28日(水) 営業活動プロセスと実践ノウハウ
8月04日(水) マネージメント・スキル

詳しくは、こちらをご覧ください。
 

2010年7月10日土曜日

お客様の期待を裏切ることができますか?

 先々週、先週と一日の休みもなく研修や講演が続いた。ありがたいことだが、さすがに終日の立ち仕事は、体にこたえる。しかし、講義が終わり、「大変役に立ちました」とのお言葉をいただくと、そんな疲れも、吹き飛んでしまう。そして、よぉーしと再び元気をいただくことができる。これがあるから、やめられない。そして、ますます内容に磨きをかけなければと、その日の反省を書き留めている。

 昨日もいつものように講義が終了した。アンケートを書き終えた受講者のひとりが、私の前にやってきて、「今日が金曜日なのが残念です。」という。「どうしてですか?」と尋ねると、「ここのところ元気がなかったんです。でも、講義を聞いて、すぐにでもこのやり方で、お客さまに伺いたいと思っています。だから、明日が休みなのが、残念なんです。」。

 なんとも気恥ずかしいやら、しかし、最高のお褒めの言葉である。改めて、このような仕事ができることをありがたく思っている。

 私は、研修の中で、「営業活動の目的は、お客様の感謝とともに、対価をいただくことである。」と申し上げている。 

 ものを売って、お金をいただくだけなら、ある意味たやすいことである。しかし、ありがとうという言葉とともに、お支払いをいただくことは、容易なことではない。そのために、もっとも大切なことは、「お客様の期待をどうすれば裏切ることができるか」を追及することなのだろうと思っている。

 お客様は、「ここまではやってくれて当たり前」という基本的な期待を持っている。これを満たしたとしても「当然」であり、そこに感謝は生まれない。しかし、「ここまでやってくれたらいいなぁ」という、潜在的な期待は持っているものだ。

 例えば、お客様が、あなたに見積を依頼し、いつも通り、10%程度の割引で提出すれば、「当然」と感じるだろう。しかし、お客様は、もう少し安くしてくれたらいいなぁと、口には出さないが思っている。それが、お客様の潜在的な期待である。そこで、それを慮って15%の割引で見積もりをしたなら、お客様はどう感じるたろうか?きっと、「素晴らしい」と感じてくれるだろう。この時初めて、お客様は、「感謝」という気持ちを抱くことになる。

 「感謝」とは、お客様の潜在的な期待を超えて、初めて生じる気持ちということができるだろう。しかし、残念ながら、これは長続きしない。あなたのこの頑張りによって、お客様の基本的な期待は、もはや15%の割引となってしまっている。次は、それ以上のものを提供しなければ、お客様に感謝の気持ちは生まれないだろう。この繰り返しは、いずれ破たんすることになる。

 では、どうすればいいのだろうか。「期待を裏切ること」。それしか手はないだろう。

 「期待を裏切る」というべきか、「期待を超える」と言い換えてもいいかもしれない。お客様の期待していない、しかし、その期待以上の価値をお届けすることができれば、お客様は、驚くであろうが、同時に「すごい」と感動してくれるはずである。

 しかし、これはそうたやすいことではない。これを実現するためには、お客様の表向きの期待を知るだけでは不十分なのである。

 例えば、お客様から、PC100台の見積もりを依頼された。そして、基本的な期待以上の割引金額で見積書を提出しても、結局のところ、それは、PC100台というお客様の期待の範囲にとどまっているだけである。

 しかし、なぜPC100台かを聞いたとしよう。すると、新たなサービスを立ち上げるのに電話での受付要員を100人増やさなければならないので、そのためにPC100台が必要だとわかった。つまり、PC100台は、目的ではなく、手段だったわけである。つまり、お客様は、PC100台がほしいのではない。「増加する受注に対応したい」というのが本当の目的なのである。

 ならば、PC100台ではなく、WEBでオンライン受注システムを提案するという方法もあるはずだ。そうすれば、PC100台は不要になり、固定費となる人件費も削減できる。一時的なコストはかかるかもしれないが、中長期で見れば、お客様はより大きな価値を享受できるはずである。そんな提案をしてみてはいかがだろうか。、

 お客様、そんな提案を期待していなかった。しかし、改めて聞いてみると、はるかにそちらのほうが、メリットがありそうだ。そういう提案ができたなら、お客様は、あなたに感謝し、感動してくれるにちがいない。

 もちろん、ことがこのようにうまく運ぶ保証はないが、お客様の期待の延長に答えを探すのではなく、お客様の真の目的、つまり、あるべき姿に着目すれば、もっとお客様の価値を高めることができるきっかけが見いだせるかもしれない。このような「期待の裏切り」には、きっとお客様も感謝してくれるはずだ。

 私は、営業研修でこのような話をするが、これは、単にテクニックやスキルの問題ではないと念を押している。基本は、お客様を愛する気持ちなのだと。お客様を好きになり、愛する気持ちがあれば、お客様を成功させたい、もっともっと、大きな価値を享受してほしいと願うはずである。その思いがあるからこそ、調べ、考え、お客様の期待を裏切る知恵を生み出すことができる。

 講師をしていると、ひとりひとりの気持ちや状態が手に取るようにわかる。つかれてるなぁ、つまらなそうにしているなぁ・・・そんな受講者の顔を見ながら、どう伝えようかと考える。何かを受け取って返ってほしい、役に立つ気付きを手に入れてほしいと。力及ばず果たせないことも少なくない。しかし、彼らへの愛情を失うことはない、いや、そうありたいと言い聞かせながら、言葉を考えている。それは、自分の稚拙なテクニックを超えるものであるし、彼らの期待を裏切るための、原動力でもあると信じている。

■ 研修 「営業プロフエッショナル・スキル研修」 開催します

 セクシーな提案書の作り方、お客様の満足をどうすれば管理できるか、お客様に満足を与えながら説得する方法・・・などの営業プロフェッショナルに必要な実践スキルを学びます。

 7月14日(水)・九段下にて開催いたします。

 ご興味があれば、 こちらをご覧ください。

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2010年7月3日土曜日

究極の営業力

 「営業とは、どのような仕事だと思いますか?」

 ある新入社員研修の冒頭で、そんな質問を投げかけてみました。

 「営業の仕事は、エンジニアとお客様との仲介者です。」、「会社の顔となってお客様とかかわる仕事です。」、「お客様との信頼関係を築く仕事です。」という、まっとうな、そして、模範的な解答が返ってきました。

 そんな回答の中に「営業とは、商品を売って、お金をいただく仕事です。」という、元気な男子社員の発言。その発言に、私は、ちょっと申し訳ない気持ちはありましたが、異議を唱えました。「営業は、商品を売ってお金をいただく仕事ではありません。」と。

 彼らとしてみれば、とても意外だったようです。「えっ」という顔をして、一瞬、その場の空気が、固まってしまいました。

 「確かに、形だけ見れば、営業という仕事は、お客様に商品やサービスを売ることで、その対価をいただく仕事です。しかし、お客様は、その商品がほしいわけではありません。自分の課題を解決したいのです。お客様は、課題が解決できるという「価値」に対価を支払っているのです。商品やサービスは、その価値を手に入れる手段であり、対価の対象ではないのです。」

 営業の現場に立つと、ついこの本質を見失ってしまうことがあります。

 ソリューションとは、お客様の課題を解決することであることは、頭では分かっています。しかし、気が付くと自社の製品やサービスをソリューションと読み替えている。そして、自分たちのノルマ(予算)達成という課題解決の手段としてしまっては、いないでしょうか。

 また、お客様の話をろくに聞かず、自分たちの商品やサービスが、いかに優れているかを、お客様に滔々と語ってはいないでしょうか。

 お客様の業務の現状を理解する努力もせずに、聞きかじりの理想論をまくし立て、いかにお客様は、その理想からかけ離れているかを説教してはいないでしょうか。

 どれも、お客様の価値を高めるためではなく、自分たちの価値や自己満足のために営業をしてしまう。これでは、営業という仕事の本質から、どんどん離れてしまうことになります。

 このような発想の根底には、お客様への愛情の欠如があるのかもしれません。

 人が、人を心から愛するならば、その人のためにできることは何かを必死に考えるでしょう。そのために、一生懸命、相手を知ろうとするはずです。そして、相手の幸せを見て、こちらも同じ気持ちで喜びを感じることができるはずです。

 お客様を成功させたい、お客様の課題を解決したい。そのために、何をすればいいのかを考える。そのために必要な情報や知恵を集め、お客様とも語り合う。そして、彼らが成功することを心から喜ぶことができる。また相手も感謝し、その感謝とともに対価をお支払いいただく。

 そんな仕事ができれば、本当に幸せだと思うのです。

 なかなか、できることではないと思います。しかし、そんな理想を描き、努力することは、誰にでもできるはずです。

 これから営業の現場に出る新入社員。彼らだからこそ、理想を範としてほしいと思っています。現場に出て、それどころではない現実に直面することもあるでしょう。だからこそ、冷静になった時には、この理想をもう一度思い返してもらえればと願っています。

 営業力とは、スキルだけではありません。このような精神を持ち続けることが、もっとも大切なことなのだと思います。そうすれば、お客様にも愛してもらえます。決して、離れることはないでしょう。それこそが、究極の営業力といえるかもしれません。

■ 研修 「営業活動プロセスとその実践ノウハウ」 開催します

ソリューション営業の即戦力化と成約率を高める取り組みについての研修です。

7月7日(水)・九段下にて開催いたします。

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2010年6月26日土曜日

「営業力」と「人間力」

 先日、こんなメールをいただきました。

 「貴社のホームページを拝見した際に、ITソリューション塾を知りまして、途中からではありますが、ぜひ今週から参加させていただきたく、このたび、メールいたしました。」

 そして、そこには、「わたくし、社会人一年目でXXX(一部上場の大手システムベンダー)の情報・通信システム事業部門に勤務しております。」と書かれていました。つまり、今年入社したばかりの新入社員というわけです。

 私は、「まずは、見学にいらっしゃい」と彼をさそい、水曜日の夜に開催されている「ITソリューション塾」に彼はやってきたのです。

 講義が終わり、私は、「新人君には、ちょっと難しかったかなぁ」と思いつつ、どうだったかと尋ねてみると、「難しかったですが、なんんとかついてゆけるように頑張ります!」とのこと。なんとも、こちらが勇気づけられる思いでした。

 ノーベル文学賞受賞者でアイルランドの詩人であるウィリアム・バトラー・イェーツは「教育とは、バケツを水で一杯にすることではなく、火をつけて、燃やしてやることだ」と語っています。

 つまり、教育とは、知識を詰め込むことではなく、学びたいという意欲を持たせてあげることだ言うのです。蓋し、名言です。

 先日のソリューション営業モデル研究会でも、「営業力は、人間力」ということが、話題になりました。

 どんなに知識を学ぶ機会を与え、マナーを教えても、本人に探究心や向上心といった「人間力」が備わっていなければ、知識や能力は、営業力には、結びつかない。この人間力をどのように高め、引き出してゆくかが、営業力育成のカギを握っているという議論です。

 しかし、「人間力」なるものは、抽象的で、主観的なものであり、これを評価することは、容易なことではありません。しかし、評価のできないものは、コントロールできず、育成の方法論を議論することができません。このジレンマに議論も行き詰ってしまいました。

 まあ、簡単に出せる答えではありません。ただ、それを考えること、それ自体に、私たちは、改めて「人間力」の大切さに気付かされました。

 では、イェーツが語るように「火をつけて、燃やす」ために、いったい何ができるのでしょうか。それには、3つ原則があるように思います。

1.知らないこと、足りないことに気付かせる

 危機感や不足感を満たそうという欲求は、だれにもあります。自分に何が足りないのか、このままでは、自分は成長できない。その思いが強ければ強いほど、炎は大きく燃え上がるはずです。

 自分の能力を客観的な指標で評価し、他者と比較すること。仕事の手順や業績を見える化し、現状を客観視することなどは、気付きを与える一つの手段となるはずです。

 また、対話することも大切です。話し合う中で、自分が整理でき、客観視できることも少なくありません。

2.やらせてみて、体感させる

 「このままではまずいぞ」と気付いたとしても、それは、限られた知識や経験の中の「想像」でしかありません。本当にそうなのかを検証してみることが必要です。とにかくやってみる。体感し、「想像」を「実感」に変えることで、初めて人はその知識や能力を手に入れるのだろうと思います。当然失敗もあるはずです。その失敗から学ぶことも多いはずです。

3.セーフティ・ネットを用意する

 「失敗して当然」を前提としてチャレンジさせる。それが成長の原動力になるはずです。しかし、最近は、過剰なコンプライアンス意識の高まりの中で、「失敗は許されない。あってはいけない」を前提とした組織も多いようです。確かにコンプライアンスも大切ですが、過剰な抑制は、むしろ成長の芽を摘むことになるでしょう。それよりも、何かあったら誰かが助けてくれる、相談できる、そんな風通しの良い組織を作ることのほうが、はるかに有効だと思うのです。

 このセーフティネットがあれば、失敗も小さなうちに表に出てきます。そして、適切な指導をすれば、それもまた学びの機会になるはずです。

 私たちは、時にして知識やスキルを教え、学ぶことで個人の能力が高まると考えてしまいがちです。しかし、教え、学ぶことは、目的ではなく手段であるということを思い返す必要があります。

 教え、学ぶという手段を通し、自分に何が足りないのかに気付くこと。その不足感と危機感が、「火をつける」ことになるのでしよう。そして、学ぶことによって、成長できる実感を、よろこびとして感じることが、真の目的あることに気付かなければなりません。

 件の彼は、誰に言われたわけではなく、自分で自分に火をつけたのです。なかなかできることではありません。その炎を燃やし続け、さらに大きくしてゆくことをお手伝いすることが、私たち大人の役割なのだろうと思うのです。

■ 研修 「営業活動プロセスとその実践ノウハウ」 開催します

ソリューション営業の即戦力化と成約率を高める取り組みについての研修です。

7月7日(水)・九段下にて開催いたします。

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2010年6月19日土曜日

「ソリューション」という言葉に抵抗感を持つあなたへ

 ソリューションという言葉をつかうことに抵抗があるとか、あえて使わないようにしているという方が、いらっしゃるようです。先日も、Twitterで、「ソリューションという言葉を安易につかわないほうがいい」という呟きを見かけました。

 このような意識の背景には、「他人の課題を解決できるなどと偉そうなことを言うべきではない」という正義感とでもいうか、倫理観とでもいうか、そんな意識があるようです。また、「ソリューションという言葉の意味が、あいまいで、自分で自信を持って使えない」という方もいらっしゃるでしょう。

 どちらにしても、「ソリューション」という言葉を十分に納得できないままに、使うことに抵抗があるという、きわめて真摯な思いが、背景にはあります。

 確かに、IT業界では、この「ソリューション」という言葉が、安易に使われているようです。

 本来、「ソリューション」とは、「お客様の課題を解決すること、あるいは、その解決の手段」です。しかし、実態は、「わが社のソリューションは・・・」と称して、自社の商材を「ソリューション」という言葉に読み替えているだけの人も少なくありません。

 それでは、どう考えても、「お客様の課題」の解決ではなく、「自分たちのノルマを達成し、売り上げを上げる」ための「自分の課題」を解決する行為に過ぎません。「ソリューション」という言葉が、このような安易な使われ方をされることにも、抵抗感を感じる方は、いらっしゃると思います。

 では、IT業界の中で使われる「ソリューション」とは、いったいどういう意味なのか。歴史的な背景をも振り返りながら、私なりの解釈をご説明したいと思います。 

 「ソリューション」の字義は、「解決または、解決策」です。では、何を解決するかといえば、お客様の課題を解決することです。ならば、解決すべき対象である「課題」とは、なんでしょうか。

 「課題とは、お客様がこうありたいと"望んでいる姿(あるべき姿)"と"現状"との"ギャップ"」です。

 たとえば、"あるべき姿"が、「売上高を100億円にする」と考えているお客様がいらっしゃったとしましょう。しかし、このお客様の"現状"は、「売上高が80億円」です。とすると、「20億円足りない」という"キャップ"が存在します。すなわちこれが、「課題」となるわけです。もし、あるべき姿と現状が一致しており、ギャップがなければ、当然ながら、課題は存在しないことになります。

 このギャップを解消することが「課題を解決する」ことであり、その手段を「解決策=ソリューション」と考えれば、課題とソリューションの関係をすっきりとご理解いただけるのではないでしょうか。

 ですから、「ソリューション」を提供するためには、まずお客様の望んでいるあるべき姿と現状を明確にする必要があります。お客様とこれらについての話もせずに、冒頭「わが社のソリューションは・・・」と演説することが、いかにソリューションという言葉からは、程遠いものであるかは、いうまでもありません。

 プロダクトやサービスなどの商材は、「お客様の課題を解決(=ソリューション)するための手段であって、目的ではないのです。

 お客様は、プロダクトやサービスをほしいわけではありません。また、あなたの会社を採用したいわけではありません。自分たちの課題を解決したいのです。その課題を解決してくれる確実な手段を提供してくれるのであれば、結果として、あなたの会社を採用してくれるはずです。この順序がひっくり返っては、いないでしょうか。

 ところで、IT業界でソリューションという言葉が使われるようになったのは、1980年代頃ではないでしょうか。このころのソリューションは、プロダクトより上等なもの、あるいは、「わが社は、他社とは違いますよ」というキャッチフレーズとして、「ネットワーク・ソリューション・カンパニー」とか、「トータル・ソリューションをお届けします」というような使われ方をしていました。

 それ自体、何も間違えではありませんが、なんとなくあいまいなままに、使われていたように思います。そのひとつの転機になったのが、1990年代の半ば、IBMの定義したソリューションの意味です。

 ご存知のように、IBMは、メインフレームが事業の柱でした。しかし、ダウンサイジングが始まり、世の中が、メインフレームからミニコンやオフコンへと関心が移る中、IBMは、メインフレームのアーキテクチャの一貫性をウリに、プロセッサーから端末、ソフトウェアを含むすべてのコンポーネント、そして、開発、保守にいたるまで、IBM一社に任していれば、その組み合わせを一切保証し、安定的な運用をお約束しますといって、ダウンサイジングに対抗していました。

 確かに、デファクト・スタンダードやオフープン・スタンダードというものは、怪しいものでした。多くのベンダーが、わが社の製品は、これらにすべてに準拠して作られていますというのですが、いざ組み合わせてみると、うまくつながらないこともしばしばです。そんなことをクレームすると、「どうも、相性が悪いようです」となんだかよくわからない答えしか返ってきません。しかし、コストの安さと自由度の高さは如何ともしがたく、ダンサイジングは、ますます広がっていったのです。

 しかし、組み合わせの一切をメーカーに任せることができたメインフレームと違い、ミニコンやオフコンの組み合わせは、ユーザー自身が、責任を持たなければなりません。

 確かに、TCA(Total Cost of Acquisition = 取得のコスト)は、大幅に下がりました。そして、各部門の裁量で、部門マシンが増殖してゆきました。しかし、その結果として、組み合わせや運用にかかわるユーザーの負担やTCO(Total Cost of Ownership)は、むしろ増えてゆきました。

 そんなころ、IBMのCEOになったのが、ガースナーです。彼は、IBMとしては、初めての社外からのCEOで、コンピューターの常識を知らない人物だと、ささやかれたものです。

 そんな彼は、このお客様の現状をみて、「お客様の課題」を解決しないのは、おかしいと考え、「IBMだけではなく他社の製品も含め一切の組み合わせに責任を持つ」と宣言し、それをソリューションといい始めたのです。そして、このソリューションを実現するサービス事業を「システム・インテグレーション」と定義したのです。

 いま、IT業界で使われている「ソリューション」という言葉には、このような歴史的な背景もあるように思います。

 「ソリューション」という言葉をどう解釈するかは、人それぞれです。どれが、絶対的な正解であるとはいえません。ただ、「お客様の課題を解決する」という本質に変わりはありません。

 それは、単一の商品を意味するものでもなければ、プロダクトより上等なものというキャッチフレーズでもありません。

 「お客様毎の個別の課題を起点として、これを解決するための手段(プロダクトやサービス)の組み合わせを提供すること」となることだけは、間違えないように思います。

 どうでしょうか、このように考えてみると、プロダクトを売るにしても、SIを売るにしても、それは、ともにソリューションを実現するための取り組みであることが、お分かりいただけると思います。

 「ソリューション」という言葉に、抵抗を感じたり、拒否反応を示す必要は、どこにもありません。自信を持って、「ソリューション」を語ればいいのです。

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