2009年8月11日火曜日

「いまひとつ」の危険

「あいつは、なかなか優秀だが、いまひとつなんだよなぁ」
「だいぶ仕事の勘はつかめてきたが、どうもいまひとつがうまく行かないなぁ」
「おい、いいとこまで言ってるよ。いまひとつがんばりなさい。」

 しかし、なぜ「いまひとつ」なのかがわからない。そもそも、なにが、「いまひとつ」なのかがわからない。このような「わからないままの状態」のままでは、どうやったらこの「いまひとつ」を解消できるのだろうか、あるいは、どうすれば、この解消方法を指導できるのだろうか。そこが、わからない。

 「わからないままの状態」を放置しておくと、いずれ人は、こんなことを考えてしまう。

「自分には、センスがないから」
「会社のやり方が悪いから」
「経済情勢が悪いから」
「市場が無いから」
「世間や会社に自分を見る目が無いから」

 これら言葉に論理的な裏づけがあるのだろうか。けっしてそんなことは無い。考えることをあきらめ、自分以外に原因を求めることで、自分の心の整理をつけているに過ぎない。

 この「わからないままの状態」が放置されているのが、営業の現場だ。営業は、技術の世界と違い、成果や能力、進捗などの評価基準が実にあいまいである。そもそも、営業は何を学び、いかなるスキルを身につけるべきかの定義さえない

 プレゼンテーション能力、ドキュメンテーション能力、コミュニケーション能力など、一応は示されている。しかし、営業の本分は数字をあげること。しかし、これら能力が、どのように数字で結びつくのかあいまいなままであり、だれもそれを獲得できたからといって、営業としての能力が向上したとは認めない。

 つまり、営業のあるべき姿と能力の定義が一致していないところに、「わからないままの状態」を放置せざるを得ない原因があるように思う。

 営業に限った話ではないが、自分が今何をしているのか、次に何をしなければいけないのかを、客観視できなければ、具体的な対策を打つことはできない。

 営業という仕事で見れば、お客様の課題を見極め、案件を発掘し、提案活動を行い、受注、導入する。この一連の仕事のプロセスをだれもが、同じ基準で言葉にできる環境を用意することが、「わからないままの状態」を解消する唯一の方策といえるだろう。

 プレゼンテーション能力などのスキルは、このプロセスに定義された作業を行うための手段に過ぎない。

 「このプロセスをこなすためには、このスキルがないと、うまくできない。」という気持ち、つまり、プロセスを明らかにできれば、おのずといかなるスキルが必要かに気づき、自発的なスキル獲得の行動に結びつけることができるはずである。

 部下を指導するにしても、営業活動のプロセスを把握できていれば、彼は今どこにとどまり、どこでつまずいているのか。次に進捗を進めるためには、何をすればいいのかが、客観的に見えてくる。そのとき、リーダーやマネジャーは、自らの経験をこのプロセスに照らし合わせ、部下に語り、指導することができるようになる。

 近思録に「上を責め下を責め、而して中自ら己を恕する・・・」という言葉がある。

 「景気が悪い、会社がちゃんと対策をしない。だから売れないんだ。部下もオレのいうことを聞かず、やるべきことをやらない。お客様もあんなことしてるからだめなんだ。」

 続けて、「・・・あに職分に任うべけんや。」

 「では、自分はどうなのか。このような考えでは、絶対に自分の職分を果たせるはずが無い」と説いている。

 「いまひとつがわからない」を放置すれば、このような逃げ口上を語りたくなるのは、人の常。そんな人物に従うことは無いだろうし、いずれはお辞めいただくしかないだろう。

 営業活動プロセスを理解するとは、営業という仕事をこなして行く上での基本中の基本。是非、この研修で、これを手に入れていただければと願っている。

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日程:9月10日(木)-11日(金) 2日間

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