2008年8月8日金曜日

増えている 営業の心の病

 仕事柄、ITベンダーやSIerの営業マネージメントと話す機会が多のですが、そんな折りによく耳にするのが心の病で会社を休んでいる営業のことです。

 担当営業に限らず、営業課長クラスにもそのような心の病に苦しんでいる人が少なくないようです。満員電車が怖くて電車に乗れず、自腹でタクシー通勤をしているという人。電話がかかってくると固まってしまい動けなくなる人、会議に出ると緊張して大汗をかき何も発言できなくなるという人など、その症状も様々なようです。そして、そのうち会社を休みがちになり、いずれやめてしまう人もいます。

 営業が100人ほどのある中堅ITベンダーの方に伺ったところ、今2人が休んでいるとのことでした。

 もう10年以上前になりますが、私の現役時代にも同じように心の病で苦しんでいる人はいました。しかし、その数は決して多くはなかったように思います。

 私は、このような心の病の原因を個人の適性の問題や努力不足として、短絡的に片付けるべきではないと思っています。私は、経営者や営業マネージメントのありかたも重要な原因のひとつではないかと考えています。

 以前にもブログで紹介させて頂きましたが、昨今のIT業界は、プロダクトで勝負することは困難です。加えて、インターネットのおかげで、「商品の情報を持っている営業と情報を持たないお客様」という構図は崩れ、お客様の選択の目は厳しいものになっています。そのような状況の中で、営業は競合他社に打ち勝ち、お客様にご購入頂かなければなりません。差別化が必要です。しかし、どこでも同じ商材をを扱っているわけですから、価格での差別化も難しく、安易な値引きは利益を圧迫してうまみがありません。信頼関係を基盤とした「お願い営業」にも限界があります。

 結局は、「ソリューション」という「お客様のニーズにあった最適な組み合わせやそれに伴う仕事の改革」を提案する営業がもとめられるようになりました。

 しかし、「ソリューション」という商品は、既に「あるもの」を売るのではなく、まだ「ないもの」をお客様のニーズに合わせてお客様個別の商品を創り出してゆくもものです。

 当然時間もかかれば、組み合わせる商材も多様化し、関わる人や組織、会社も増えます。ひとつのものを売るときとは比べものにならないほど複雑になるのです。当然、営業ひとりが抱えるには限界があります。単品を売ることとは、まったく異なる能力や仕事のしかたがもとめられるのです。

 「ソリューション」を売るという仕事は、ひとつの商品を売ることとこんなにも違うのに、そのマネージメント・スタイルが同じでいいはずがありません。それにもかかわらず、「これからはソリューションを売る」と経営者や営業幹部が旗をふるものの、営業管理の手法や評価報酬制度が従来のやり方と何も変わりがなければ、営業の仕事がうまく行くはずがありません。

 ひとが心を病むもっとも大きな原因は、不満ではなく不安です。不満は、反発や意欲の低下にはなっても、心の病の原因にはなりにくいものです。

 私は、営業の心の病の原因を次のように考えています。

 “ソリューション営業がもとめられ、ひとりの営業の業務に関わる負担が著しく増大しています。つまり、自分でコントロールできる範囲を超えてしまっているのです。つまり、情報が多すぎて自分だけで整理できず、判断や見通しが立たない状態か放置されている。そのために不安が募り、心の病につながっている。”

 これは、単にマネージャーの自助努力だけで解決できる問題ではないように思います。ソリューション・ビジネスを展開すると言うことは、どのような商材を集めればいいかということではありません。ソリューションというお客様個別の商品を創り出す営業スキルの育成とそれを支えるマネージメント・システムを造ることだと考えています

 私は、このマネージメント・スタイルを「スポンサー型マネージメント」と呼んでいます。「ソリューション」営業を行うにあたり、ひとりの営業が全てを任されるには限界があります。そこで、営業チームとしてビジネスを支え、一連の業務プロセスで、責任を分担し、負担を分散していくことが必要です。そのためのマネージメントの仕組みや手法が「スポンサー型マネージメント」です。

 「スポンサー型マネージメント」の詳細は、研修でも紹介しています。結果を評価し、成果をもとめ、仕事のやり方は自分で判断しなさいと言う「チェック&レビュー型マネージメント」とは対をなす方法です。

 従来のプロダクト・ビジネスでは、これも有効なスタイルでした。しかし、営業に「ソリューション・ビジスネス」を求めながら、「チェック&レビュー型マネージメント」のままでは、営業はどのように仕事を進めればいいのか不安が募るばかりです。そのような、アンバランスが、営業の心の病の大きな原因となっているように思えてしかたがありません

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