先月、マイクロソフトは、クラウド・コンピューティング(PaaS)のプラットフォームとして、Windows Azure Platformを発表した。このWindows Azure Platformの肝(きも)は、オンプレミスとクラウドをひとつのプラットフォームとて一体化することである。これについては、「Windows Azureに垣間見るマイクロソフトのしたたかな戦略」に書かせていただいたので、よろしければご覧いただきたい。
さて、このタイミングでもうひとつ、これからのマイクロソフトのクラウド戦略を読み解く上で、ひとつの重要な発表がなされている。それが、Silverlite 4である。
Silverliteが何かをご存じない方もいらっしゃるだろうから、簡単に解説しておこう。
これは、アドビの提供するFlushやAirに相当するもので、アニメーション、ベクターグラフィックスの表示や音声・動画再生などの機能を備える、いわゆるリッチインターネットアプリケーション (RIA) のプラットフォームである。
ちなみにアドビのFlushも、Silverliteも、ブラウザーのプラグインとして、ブラウザーに閉じ込められた形で動作する。
これに対して、Airは、Flushの技術をベースにブラウザー機能を内蔵している。つまり、ユーザーからは、ブラウザーを立ち上げたり、意識する必要がない。当然、ユーザーは、そのアプリケーションが、ネットのリソースを使っているのか、ローカルPCのリソースを使っているのかも意識することはない。
今回発表されたSilverlite 4は、このAirに相当する機能も取り込むことを表明した。
つまり、AirもSilverliteも、ともにユーザーから見れば、そのアプリケーションの動作をローカルなのか、クラウドなのかを意識させないクライアント環境の実現を狙っていることになる。
また、両者ともに、マルチプラットフォームで動作することを宣言している。つまり、Mac、Linux、Windows、iPhoneのOS上にリッチインターネットアプリケーション・プラットフォームのレイヤーがかぶさり、OSを隠蔽してしまう。
となると、AirやSilverliteで開発したアプリケーションは、OSの種類を意識することなく、共通のプログラム・コードを利用できるようになることも意味している。
このように、Silverliteは、Windows Azure Platformで、サーバー環境について、オンプレミスとクラウドをひとつのプラットフォームとして一体化したように、クライアント環境を一体化することを狙ったものと考えることができるだろう。
しかも、開発環境としては、ほぼデファクト化しているVisual Studio /.Net Frameworkがそのまま使える。となると、その潜在的な開発パワーは、相当強大といえるだろう。
Window7の評価が高い。また、chrome OSにも注目が浴びている。確かに、OSなくして、コンピューター・システムは、動かないわけで、なくなることはないだろう。しかし、クラウドが普及すれば、ハードウェア機能を効率よく、安全安心に動作させることのみを担うようになるのかもしれない。これは、chrome OSの狙いと一致している。
FireFoxの開発母体となっているMOZILAも同様のクライアントprismの開発を進めている。
このような各社の動きを見ていると、これからのクラウド・アプリケーションの姿が見えてくる。
つまり、クラウドというコンピューティング環境は、「どこか雲の上」のサーバーと、ローカルなサーバーやクライアントPCを別のものとして捉え、それを連携・組み合わせて利用するという考え方ではないということだ。
雲の上と下を大きな単一のプラットフォームと捉え、アプリケーションを構築するという考えたに行き着くのではないか。
クラウドとオンプレミスをシームレスなコンピューティング環境にする。これが、クラウド・コンピューティングが、目指している「あるべき姿」なのかもしれない。
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