2008年7月29日火曜日

間違え探し(その4) 問題

 ついつい文章が長くなってしまいます。研修では、「お客様に伝えたいことではなく、お客様が聞きたいことを伝えなさい!」、「簡潔明瞭、体言止め、箇条書き」などと講釈しているのですが、ブログとなるととどまるところを知りません。まずいなぁと思いながらも、反省はほどほどに、やっぱり書かずにはいられません。ストレス発散です。おつきあいください(笑)。

 さて、今回は、ご好評の間違え探しの第4弾。さて、ご回答はコメントにてお寄せください!

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 この当たりでは最大手である「東洋テクノ工業」。あなたは、なんとか新規顧客としてこの会社にアプローチできないものかときっかけを探していました。そんなことを既に取引のある「アジア技研」の吉田システム部長に話したところ、東洋テクノ工業のIT担当役員の山田執行役員とは学生時代の同級生なので紹介してあげてもいいという話になりました。アジア技研は、規模は小さいながらその技術力が買われ東洋テクノ工業の下請けもしており、仕事の上でも密接な関係がありました。

 あなたにとっては、願ってもないチャンスです。直ぐ紹介を依頼しました。

 しばらくして、吉田部長から連絡がありました。山田執行役員より会ってもいいとの連絡です。あなたは、早速、吉田部長の了解を得て、山田執行役員の秘書に連絡を取り、アポイントを取ることができました。既に吉田部長からの連絡が通っていたので、直ぐに時間調整してくれました。

 あなたは、直ぐに東洋テクノ工業のホームページや業界紙などを調べ、できる限り情報を収集。この会社の状況や問題がどこにあるだろうかと想像を巡らし、自社の取り扱うERPシステムの適用の可能性について考えました。そして、きっと興味を持って頂けるだろうと思われるポイントを箇条書きにして、簡単な説明資料を用意し、準備万端面会に臨みました。

 山田執行役員は、とても気さくな方で、吉田部長との学生時代の思い出ばなしや会社の紹介などをいろいろと教えて頂きました。
  あなたは、そんな山田執行役員の話をひとしきり伺い、よし、次はいよいよ話を切り出そうと準備をしてきた資料を取り出しました。

 「山田様、実は御社の業務でもお役に立ちそうなシステムを弊社では力を入れています。吉田部長のアジア技研様でもお使い頂いており、大変ご評価頂いております。ぜひご紹介させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか。」

 あなたは、山田執行役員の了解を得て、自分がいろいろと調べてきた東洋テクノ工業の情報を駆使して、「いま御社では、XXXという問題を抱えていらっしゃるようです。このような問題は、御社の経営にとって、大変憂慮すべき問題ではないかと思います。我が社のシステムは、まさにこの問題の解決にお役に立てるものと考えております。と申しますのは、・・・」

 調べてきただけのことはありました。問題の核心は突いていたようです。山田執行役員の顔が少し厳しくなったようです。

 あなたが話し終えると、山田執行役員は、「大変貴重なご意見を頂きました。本当に有り難うございます。担当のものに相談し、連絡させましょう。」とのこと。あなたは、まずは成功と晴れやかな気持ちで役員室を後にしました。

 しかし、その後いっこうにお客様からの連絡がありません。これはいったいどうしたことなのでしょうか。

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 さて、おわかりになりましたか。ご回答は、コメントへお願いします。

新規顧客開拓は、売り込まないことからはじめよ!

 「大変魅力的なシステムですね。ぜひ検討させて頂きます。あらためて御連絡を差し上げます。今日は、暑い中有り難うございました。」

 このような社交辞令は、明らかに興味がないとのメッセージだ。

 あるベンチャー企業をお手伝いしていた頃のはなしである。同行したその会社の営業担当者は、「感触良かったですね!」と大喜び。そうじゃないんだよと教えてあげるのだが、いまひとつ納得いかないようだ。しかし、こんなお客様に限って、連絡をもらうことはない。こちらから連絡しても、今検討中である、まだ尚早であるからと、先へ進まない。彼も何度か同じ体験をするうちに、そういうモノかと分かってきたようだ。

 新規顧客の開拓は、労多くして実り少ない仕事である。それでも営業にとっては、大切な仕事であり、時に会社の存亡を左右する。さて、どうすれば売れるようになるのだろうかと悩み模索している営業関係者も少ないだろう。

 そこで、ちょっと提案をしたいのが、「売り込まない」営業である。

 お客様にしてみれば、何か買わされるのではないかという恐怖感に満ちあふれている。興味があってアポイントを受け入れたにせよ、そう簡単に騙されないぞというフィルターがかかっているのが普通だ。ましてや、真剣に何らかのシステムを検討しているのなら、あらかじめいろいろと調べ、冷静に判断しようと身構えているだろう。

 そんなところに「我が社のXXXは、既に多くのお客様にご導入頂いているもので、数々の優れた機能を実装しています。まず、・・・」となると、ほら来たぞと、お客様の防衛システムにスイッチが入る。

 お客様の防衛システムもいろいろだ。いろいろな質問を駆使して打ち落とせるかどうかを試みる攻撃型、だまって質問もせずだた聞き流し、後でネットや競合他社から話を聞いて調べてやろういうステルス型。「ほんとうにいいお話を聞かせていだきました」といかにも満足という顔をし、当たり障りのない質問をして、まずは情報だけ引き出してお引き取りを頂こうとする欺瞞工作型である。

 どちらにしても、このような防衛システムにスイッチを入れないことが、最初の訪問では肝要である。そのためには、まずは「売り込まない」ことをこころがけよう。最初の訪問で見極めようとはせず、二回目以降の訪問とセットで考えて見るといいだろう。

 最初の訪問では、お客様の仕事の流れや抱えている課題を聞くことに徹し、一切自社の製品やサービスの話をしない。お客様がどのように在庫を管理しているのか、伝票処理の流れやアルバイト店員のタイムシフトの管理方法はどのように行っているのかなど、お客様の仕事やそこでの課題をできるだけ教えてもらうといいだろう。もし、お客様に課題があり解決したいという思いがあるならば、教えてくれる可能性は高い。このような話が引き出せないようならば、もう見込みがないとあきらめるべきだろう。

 商品の紹介をもとめられても、「まずはお客様のことについて教えて頂けないでしょうか。その上で、私どもの製品をどのように使えば、最も効果が出せるのか、改めて提案させてください。」といって、製品の説明や売り込みは一切行わないこと。

 また、自分の商品に関わりのない話でもとにかく聞くことで、お客様にも気付きがあり、みなさんの仕事のチャンスを広げることになる。

 そして、それを持ち帰り整理して、自分たちにできることできないことを明確にして、ドキュメントにまとめ上げ、改めてお客様を訪問する。

 きっとそのときには、お客様の「防衛モード」を「相談モード」に切り替わっているだろう。ビジネス・チャンスは確実に高まる。

 新規顧客開拓に取り組まれ、ご苦労されている営業のみなさん。騙されたと思って、試してみてください。きっと仕事の流れが変わりますよ。

2008年7月28日月曜日

奥武蔵45km ウルトラ練習に挑戦

 大阪での研修を終え、翌日の土曜日はお手伝いしているランニング・クラブのイベントのお手づたい。そして、日曜日は、奥武蔵の山中45Kmの練習を敢行しました。

 先週、先々週と忙しい毎日が続き、暑さもそれに追い打ちをかけ、それをいいことに練習をさぼっていました。若干増加気味の体重を何とかしなければと強硬手段に訴えることに・・・

 先週は、同じ奥武蔵を22Km走りました。今回は、その倍の距離に挑戦です。
 朝、5時30分に家を車で出発。途中コンビニでおにぎりやら豆乳を買い込み、埼玉県の鎌北湖に向かいました。

 鎌北湖の駐車場に7時過ぎに到着。おにぎりをひとつほおばり、サプリメントやパワージェルを流し込んでお腹を整えました。現地の気温は23度。自宅周辺よりも2~3度気温は低かったのですが、霧に包まれ、じめじめした空気が気になりました。

 ランニング用のザックに2リットルのウオーター・タンクを装着し、いざ出発です。

 このコースは、スタートから一気に急な登りが始まります。身体が温まらないうちにあまり飛ばしすぎると足に乳酸が溜まり、後半持たなくなるので、とにかくゆっくり慎重に登りました。
 山道と言っても、コースは舗装された林道です。木々に囲まれた奥武蔵の尾根道は、とても気持ちよく、都会では味わえない緑の癒しがあります。

 さて、そんなコースを30分も登ると今度は急な下りが続きます。ここまで登ったのに何でおりなきゃいけないんだと思っても、それが山道の宿命。重力に逆らわず重心を傾けて勢いに乗ります。今まで登ってきた貯金を一気に消費するもったいなさもあるのですが、下りの勢いに乗る快感は、たまりません。ついつい、足を酷使してしまいます。

 予想通り、湿った空気が呼吸を乱します。汗も半端じゃありません。あっという間にずぶぬれ。脱水にならないようにこまめに水分を補給しながら走り続けました。

 さて、そんな上り下りを繰り返しながら、まずは最初の休憩ポイントである「顔振峠(かあぶりとうげ)」の茶屋におよそ1時間ほどで到着。

 まだ、朝も早く店はしまったままです。せっかく冷たい飲み物などと思ったのですが、自動販売機もシャッターの内側。仕方なく、タンクの水をのみ、一息入れました。

 さらに30分ほど、今度は高山不動の茶屋に向かいます。ここには自動販売機はあるのですが、スポーツドリンクや冷たい水、コーラなどは全て売り切れ。ゴミ箱から空き缶があふれていました。それでも、冷たいモノが飲みたい。唯一の残っていたアイスティーを買いましたが、その冷たさに生き返る思いです。

 このころになると、そろそろ霧も晴れて薄い雲の合間から日差しが差し込むようになりました。木々の合間を越えてくる乾いた風が、一服の清涼を与えてくれます。

 高山不動を出発し、さらに45分。折り返し地点の「刈場坂峠(かばさかとうげ)」に到着しました。およそ23Km、よく走ってきたものだと思いながら、ベンチにすわりましたが、もう相当消耗しています。幸いにも冷たいスポーツドリンクを買うことができ、ほんとうに生き返りました。

 しかし、ここは道半ば。これから同じ道を帰らなければなりません。ちょっと無理をしすぎただろうかと思ったところで、もう後の祭りです。パワージェルとサプリメントをのどに流しこみ、再び駆け出しました。よくまだからだが動いてくれるものだと驚きつつ、沈みがちな身体を起こすように意識して走りました。
 木々が道に覆い被さり、日差しを遮ってくれます。大自然のサプリメントに満たされた空気は、なぜか美味しいですね。

 帰る途中、多くのランナーに遭遇。中には知り合いも何人かいました。かれらに挨拶をし、時にはお互いの馬鹿さ加減をなじりながら、笑顔で分かれてまた走り続けます。

 再び「顔振峠」の茶屋に到着。日差しも強くなり、体中の水分が全て汗で流れ出し、今残っている水分は途中で給水したものだけ。すっかり入れ替わったことは間違えないようです。
 ここで、冷え冷えのコーラを流し込みました。本当に美味しかった!

 さて、残りは11Km。しかし、消耗仕切った身体は、なかなか前へ行こうとはしてくれません。それでも、ここにとどまっているわけには行きません。再び重い足を繰り出しました。一直線の下りだけならばいいのですが、まだまだロングストロークの上り下りが続きます。しかも、最後は急な下りです。既に疲れ切った足で下りの軽快感を楽しむこともできず、ただひたすらゴールを目指すのみです。

 ついに、ゴールの駐車場に到着。足が棒とはまさにこのようなことを言うのでしょうか。血液が乳酸にすっかり入れ替わり、ほんとうに重たい足になっていました。

 靴を脱ぐと、右足親指に異変。なんと、爪の裏が内出血で黒ずんでいます。気にはなっていたのですが、途中で靴の紐を締め直すべきでした。

 まあ、しかたがありません。汗みどろのままで車に乗り込み、近くの温泉施設へ。やはりここにも何人かのランナーが汗を流していました。

 さて、これでどれほど身体が絞れたでしょうか。まあ、そう簡単には行きませんね。しかし、ほんとうにきつかった!

2008年7月26日土曜日

大阪の暑さと感謝

 「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」の講師として、大阪に行ってきました。大阪の暑さは格別です。これは、日差しの強さだけてはありません。驚いたのは、蝉の鳴き声。朝、研修会場へ向かう途中、新大阪駅の直ぐそばを通るのですが、駅前の公園に植えられた木々や街路樹に群がる数千、いや数万匹もいるかもしれないアブラゼミが一斉にジィー、ジィーと鳴いているのです。木のそばを通るときなど隣の人と会話ができないくらいです。暑いぞ、暑いぞ、ど~やねん!とたたみかけてくるようです。

 当然ですが、別にそんな木の下で講義をしたわけではありません。冷房の効いたビルの中で、気持ちよく仕事をさせて頂きました。

 今回は、15名にご参加頂きました。大阪だけではなく、和歌山、奈良、岡山、福岡など遠くからもご参加頂きました。ほんとうに有り難うございました。

 お話を伺うと、「上司に行ってこい」と言われ、いやいや(?)ご参加いだいた方もいらっしゃるようでした(笑)。さて、そんな方に「もうけもんや」と思って頂けたでしょうか。そんな裏切りもまた講師の楽しみのひとつです。

 ところで、IT系の企業を見ると、SE系の技術研修はきちんとやっていても、営業研修をやったことがないというところも少なからずあるようです。
 また、営業研修といっても「地獄の特訓」じゃないですが、モチベーションを上げることを目的としたものやプレゼンテーションや交渉術と言った「対人応対スキル」に重点を置いた研修なら参加したことがあるという方はいらっしゃるようです。

 営業は、人を相手にする仕事です。だから、生まれ持った才能やセンスがなければ、営業には向かないという誤った考えが未だにまことしやかに語られています。こういう話を聞く度に、わかっていないなぁと思います。

 確かにセンスは大切です。営業らしい雰囲気とか、好感が持てるといったことは、ないより有った方がいいとは思います。しかし、それは、せいぜい営業という仕事の味付けの部分であって、本質ではありません。
 
 「SE経験が長くて、営業センスがないんです。」、「CEを長くやっていました。仕事のしかたがよく分からなくて困っています。」と言っていた方が、今ではその会社のトップ営業としてなくてはならない存在になっています。

 「営業力」という言葉をよく耳にします。

「営業力」=「営業スキル」X「意欲(モチベーション)」X「経験」

これが私なりの定義です。また、

「営業スキル」=「対人対応スキル」+「営業プロセス・スキル」

と私は考えています。

 いくら意欲を高めても、いくら経験を積んでもスキルがなければ、営業力はつきません。また、スキルについても、とかく「顧客対応スキル」=コミュニケーションや交渉に関するスキルに注目されがちですが、それだけでは不十分です。「営業プロセス・スキル」=「営業という仕事をとのようにこなせばいいのかという基本的な知識や営業プロセスを自分でコントロールする能力」がなければ、営業力を高めることはできません。

 気合いと根性で試行錯誤型=行き当たりばったり型で仕事をしても、要領よく、効果的に、確実な目標達成できる=まともな営業の仕事はできません。

 私はSEさん同様、営業の仕事もエンジニアリングで考えられると思っています。営業の仕事は。決してKKD(経験と勘と度胸)ではありません。お客様が商品や提案内容に関心を持ち、検討し、稟議を起案し、決裁する。その一連の意志決定のプロセスに合わせる形で、営業がやるべき仕事の手順を定義することができます。これが営業活動プロセスです。

 「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」では、そのことを学んで頂きます。

 あらかじめ仕事の手順が分かり、どこにチェック・ポイントを置き、何を評価すればいいのかが分かれば、先読み、先回りして仕事もできるし、今自分が進捗過程のどこにいて次に何をしなければならないかが分かります。もし、今の居場所からなかなか前へ進めないなら、そこには何か事情があるはずです。そうやって課題を絞り込み問題解決のための方策を立てやすくなります。

 営業のマネージメントをされている方、そして、経営者はそのことをちゃんと理解して頂きたいと願っています。OJTで経験を積めば、いつか営業力が身に付くなんて、博打もいいところです。営業の仕事は、そんな単純なモノではありません。科学的に、合理的に仕事を進める方法が存在しているのです。「とにかく、経験だ!」「やれば分かる」。そうやって営業力が育つなんて、たまたまうまく行けばいいようなものの、確立は相当低いと言わざるを得ません。そんな不確実で効率の悪い投資をしてもいいのでしょうか?

 今回の大阪の研修で、こんなコメントを頂きました。

 受講前:営業職をやめたい、不安 
 受講後:営業は面白い、楽しみ

 「営業プロセス」の価値を分かって頂けたようです。
 講師冥利に尽きます。ほんとうにありがとう。

2008年7月25日金曜日

間違え探し(その3) 回答: 「先読み力」がポイント

 さて、いかがでしたか。ちょっと難しかったでしょうか。

 まずは、「問題」で紹介したあなたの対応と以下の対応と比べてみてください。

 ケース設定、つまり 屋留木主任より「3日後に開かれる経営会議で説明したい。ついては、至急スケジュールと開発体制を含む、具体的な提案書を提出して欲しい」との連絡を頂いたところまでは同じです。

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 あなたは、予め打ち合わせておいた体制とスケジュール案を見直し、資料を手直ししました。それを担当SEとパッケージ・ソフトウエアに詳しいエンジニアにメールで送り、明日の午前中までに修正やコメントを送って欲しい旨を依頼ししました。あなたは、彼らの連絡を受けて企画書を完成させ、お客様に提出しすることができました。

 お客様からは、急な依頼に確実に答えてくれたことへの感謝と「なんとしてでも経営会議で承認をもらうように頑張ってみます」というコメントを頂きました。
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 今までとちょっと視点変えた問題です。違いが分かりましたか?

 ポイントは、「先読み力」です。あなたは、しばらく前からお客様にアプローチをしていました。キーパーソンとも直接コンタクトをとり、確認をしていました。ならば、今後どのような展開になるのか、あるいはすべきなのか予測し、事前の対応=「前始末」ができたはずです。それを怠り、屋留木主任に依頼されて急いで対応=「後始末」したところに間違えがあります。

 ある意味で、このケースでのあなたの対応は、迅速かつ適切であり、優秀な営業として評価されると思います。すばらしい「対応力」を発揮したのです。
 しかし、後始末のための「対応力」は、予測できない事態の急変や突破的なトラブルに使うべきモノであり、あらかじめやるべきことが分かっているならば、事前に余裕を持って準備しておいたほうが、仕事の品質を上げられるはずです。何よりも、自分が楽できるし、回りにも無理を強いる必要はなかったわけです。そちらのほうが、ずっとスマートです。

 やらなくてもいい緊急対応をしておいて、「緊急事態に即応し、お客様にも感謝された。どうだい、オレはできるだろう・・・」という自己満足。仕事は、そんな自分の満足や回りに対する自己顕示欲を満たすためにやるモノではありません。
 できることを余裕を持って事前にやっておく。そのようにして、要領よく、確実に品質の高い仕事をすることこそ、プロフェッショナルの仕事です。

 しかし、何もないところで「先読みする」ことは容易でありません。経験の積み重ねがものを言うところです(まあ、ベテランの営業でも先読みのできない方は少なからずいらっしゃいますが・・・)。

 しかし、営業として経験を積まなければ先読みができないかというとそんなことはありません。研修で紹介した「営業活動プロセス」を利用してください。仕事を「先読み」するための指針を与えてくれます。 

 「営業活動プロセス」とは、仕事の進め方の脚本/シナリオです。これをうまく利用すれば、営業活動のプロセスの中で、今自分がどこにいるのか、次に何をしなければならないのかを示してくれます。

 「対応力」の優れた「優秀な営業」は、世の中にごまんといます。しかし、「先読み力」のある「プロフェッショナルな営業」は、そんなに何人もお会いしたことはありません。

 さて、あなたはどちらを目指しますか?

2008年7月23日水曜日

間違え探し(3) 問題

こんな問題は、いかがでしょうか?

さて、どこに間違えがあるのでしょう?

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 あなたは、しばらく前から販売管理システム「売上のび太くん」をベースとしたシステム構築をシステム部の担当者、屋留木主任(28才)に打診していました。何度か資料を提出し、打ち合わせを重ね、屋留木主任から、「上司や関係部門にも説明している。かなり乗り気だよ!」との情報を得ていました。

 あなたは、早速、屋留木主任にお願いし、システム部長や販売管理課長をご紹介頂き、具体的な検討を進めたいとの意向を本人より直接確認することができました。

 そんな折、屋留木主任より、「3日後に開かれる経営会議で説明したい。ついては、至急スケジュールと開発体制を含む、具体的な提案書を提出して欲しい」との連絡を頂きました。

 あなたは、すぐに担当SEとパッケージ・ソフトウエアに詳しいエンジニアに連絡し、緊急のミーティングを招集しました。

 そして提案書作成のため役割分担を確認し、早速作業に取りかかりました。またSE課長にも連絡して、開発体制を早急に確保して欲しい旨を依頼し、すぐに検討する旨の確約を取り付けました。

 関係者は、何とかお客様の期待に応えようと徹夜をして資料を作成しました。また、SE課長にも個別に時間を割いてもらい、なんとか提案書を完成させることができました。そして、あなたは屋留木主任を訪問するとともに、システム部長や販売管理課長にも面会の時間を頂き、内容の簡単な説明とお願いをすることができました。

 お客様からは、急な依頼に確実に答えてくれたことへの感謝と「なんとしてでも経営会議で承認をもらうように頑張ってみます」というコメントを頂きました。

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どうです、分かりましたか?間違えとまでは言わないまでも、どこに問題があるか分かりますか?

よろしければ、コメントに回答をお寄せ下さい。

2008年7月18日金曜日

間違え探し(その2) 正解

 以前のブログで「ソリューション営業にとって最も必要とされる能力は想像力です」と書きましたが、この問題もまさにその能力を必要としています。

 それでは、どこに間違えがあったのか、考えてゆきましょう。

■ 間違え(1) キーパーソン役割に応じた行動していない
 研修でもご紹介しましたが、キーパーソンには、情報提供者影響力保持者意思決定者承認権限者の4つの役割があります。この担当者Aさんは、どれに該当するのでしょうか?

 実は、彼は窓口であり、強いて言えば情報提供者程度の役割しか担っていません。意思決定や決裁、あるいは、機器や技術の選択などへの影響力も持ち合わせていないようです。
 情報提供者であるAさんは、誰の意向で動いているのか、そして、導入の意思決定に誰が関わっているのかを見極めようともせず、だだAさんの言うとおりに行動していました。これでは、どのような意思決定に関わる動きが行われているか、全く情報が得られません。

 情報提供者であるAさんは、あくまできっかけです。彼をきっかけとして、影響力保持者や意思決定者彼である彼の上司、あるいはPCを業務で必要としている販売の現場責任者にアプローチし、彼らと直接的な関係を築くべきです。

■ 間違え(2) 真のニーズ/To Beに迫っていない
 Aさんによれば、PC導入の目的は、「営業担当者が商談の現場で見積金額を即座に確認できたり、在庫確認や注文処理をその場で行えるようにすること。」です。しかし、それが真のニーズ/To Beなのでしょうか?
 そもそも、なぜ営業担当者が商談の現場で見積金額を即座に確認したり、在庫確認や注文処理をその場で行えるようにする必要があるのでしょうか?インターネットの時代です。営業がお客様のところへ出向いて商談をしなくても、お客様が自分でWebから在庫を確認し、その場で注文する方法もあるはずです。あるいは、電話でのダイレクトマーケティングや注文受付の仕組みを導入すれば、営業や受注業務にかかるコストを大幅に低減できるかもしれません。

 なぜ「営業担当者が商談の現場で見積金額を即座に確認できたり、在庫確認や注文処理をその場で行えるようにすること」が必要なのかを一切問うことなく、担当者であるAさんの言うとおりに対応している。

 担当者のAさんにとっては、営業であるあなたはすぐに言うとおり対応してくれる“いい人”です。しかし、あなたの行動は、会社の真のニーズ/To Beに応えているとは言えず、意思決定や決裁に際しては、なんら影響はありません。

 間違え(1)でも申し上げましたが、より影響力の大きなキーパーソンに直接アプローチし、裏付けをとるとともに、真のニーズ/To Beを把握し、対応すべきであることは、言うまでもありません。

■ 間違え(3) キーパーソンにアクセスできるせっかくのチャンスを活かしていない
 単発の少額取引ならばともかく、将来大きな取引になる可能性があるわけです。そのような大切な案件で見積書の提出を宅配便だけですましてしまうという発想は、ことの重大さ、優先順位の付け方を間違っています。

 お客様に会ってくれとお願いしてもなかなか会えないことはよくあります。しかし、今回の見積書や注文書の提出は、お客様からのご要望です。このチャンスを活かさない手はありません。書類をAさんに持参すると同時に、「是非上司の方にご挨拶だけでもさせて欲しい」と言うべきです。それをきっかけに、上位のキーパーソンへのアクセス・チャネルを切り開くくらいの図々しさが必要です。

■ 間違え(4) ソリューションになっていない
 ソリューション・ビジネスとは、お客様の課題を解決するビジネスです。お客様にとって課題が解決できるならば、あなたの会社の製品である必要はありません。営業であるあなたとっては、自社の製品を何とか売らなければならないという課題に直面していますから、それさえ売れれば、“あなたの”ソリューションにはなるかもしれませんが、お客様のソリューションになるとは限りません。

 携帯電話は確かにあなたの会社の製品ではありません。しかし、どの機器がいいのかを推奨し、せめて業者を仲介するとか、手続き等は一括して引き受けるなどの、便宜も合わせて提案すべきでしょう。それができて、始めてお客さまが求めるソリューションという商品が完成します。

 些細なことですが、仮に物品の販売だけであっても、競合他社と価格競争になったとき、所詮製品価格で大きな差別化をすることはできません。従って、お客様にとっては、どちらでも良いわけで、少しでも楽できる、あるいは、融通が利くところに依頼したくなるのは心情です。そこまで、考えて行動すべきです。

■ 間違え(5) 営業活動プロセスに従った行動をとっていません
 「営業活動プロセス」とは、営業活動の手順です。その手順は、お客様の意思決定プロセスと密接に結びついています。

 お客様は、欲しいと思ってものをすぐに買うわけではありません。公式、非公式な手順や手続き経て、意思決定、稟議決裁、導入、支払となるのです。そのようなお客様の意思決定のプロセスを先回りして、必要な対策を事前に打っための指針が営業活動プロセスです。

 営業であるあなたは、担当者Aさんの連絡や情報だけをたよりに行動しています。なんら、彼の上司や業務部門などのキーパーソンに自らアプローチすることなく、待っていただけです。その間、お客様の中では、意思決定のためのいろいろなプロセスが進んでいるはずです。それを予測せず、且つまた確認もせず、先回りの行動もしていません。

 B社の動きも掴んでいませんでした。B社は、きっとあなたの情報を掴み、もっと有利な条件や便宜を図ったのかもしれません。しかし、もし営業であるあなたが要所要所のキーパーソンを先回りして押さえ、先手を打って彼らのニーズを聞き出して、適切な対応をしていたなら、B社に入り込まれる余地を与えなかったかもしれません。

 まだまだ、つっこみどころはありそうです。皆さんは、いかがでしたか?

 研修でお伝えしている「営業活動プロセス」とは、皆さんが営業活動をする上で、お客様の状況を予測するためのフレームワークであり、必要な対策を事前に打っための指針です。

 是非「営業活動プロセス」をうまく使って、お客様を先読みし、先回りできる営業活動をして頂ければと願っています。

2008年7月14日月曜日

間違え探し(その2) 問題 

Q: 営業であるあなたの対応として、どこに間違えがあるでしょう?
 (よろしければ、コメントにてご回答を頂けませんか。みなさんとお考えを共有するのも楽しいものです。)

 お客様である東西工業のシステム担当者Aさん(入社5年目の27歳)より、今度発売された12.5インチのノートPCを30台導入したいとの相談をいただきました。目的は、営業担当者が商談の現場で見積金額を即座に確認できたり、在庫確認や注文処理をその場で行えるようにすること。そのために、高速のインターネット接続ができる通信機能も合わせて購入したいとのことでした。

 あなたは、早速見積りを作って、Aさんに提示しました。ただし、高速で通信できる携帯電話については、あなたの会社で取り扱えないので、それについては、お客様側で探してほしい旨を伝えました。

 Aさんは、携帯電話については「しかたがない」と了承したのですが、その見積金額を見て、もう少し安くできないだろうかとの申し出がありました。

 あなたは、その点については抜かりはありません。値引きの要望が来るであろうことはある程度読み込み済みのこと。即座にその金額から5%を値引くことを伝え、見積書と注文書を直ぐに届けることを約束しました。

 あなたは、会社に戻り直ぐに見積書と注文書を作成しました。見積書は、その場でFAXで送り、オリジナルの見積書と注文書を直ぐに宅配便で送り出しました。

 Aさんにも電話を入れて、FAXでお送りしたこと、オリジナルは、宅配便で送り出したことを伝えました。Aさんは、あなたに対して迅速な対応に感謝の言葉を伝え、「稟議に若干時間かがかかるので1週間ほど待ってほしい。正式発注の際には直ぐに電話する」とのことでした。

 進捗を確認するのは営業の鉄則です。2、3日経って、Aさんに稟議の進捗はどうか、補足すべき資料の提出は必要ないかなどと尋ねたところ、ちょっと稟議に手間取っているのでもうしばらくかかるが問題ないとのこと。改めて連絡するから待っていてほしいとの話しでした。

 1週間ほど経ちました。まだ連絡がありません。心配になったので、もう一度電話をしてみたところ、Aさんは、主張のため不在とのこと。電話がほしい旨の伝言を残しました。しかし、2、3日経っても連絡はありません。

 PC30台は、そこそこの商談です。この後も、他の営業担当者への横展開もあり、最終的には200台ほどになる予定です。決して侮れないビジネス・チャンスです。

 あなたは、Aさんの会社を訪問することにしました。そして、Aさんに会って話を聞いたところ、B社に発注することに決まったこと。それは、システム部長の指示であり、自分にはどうしようもなかったことなどを聞かされました。

 あなたは、この商談を失注してしまったのです。

-> よろしければ、コメントにてご回答を頂ければ、幸いです。
-> 正解は、次回のブログにて・・・

2008年7月10日木曜日

369億円のコストパフォーマンス

 東京の街中から警察官とパトライトの明かりが消えました。オフィースが半蔵門にあるため皇居に近く、いったいどこから集まってきたんだと言うほどの警察官と警察車両が街を埋め尽くしていました。おかげで、治安状況は完璧でしたが・・・

 サミットも終わり、普通の日常に戻ったのはいいのですが、いったい何のための騒ぎだったのかと首をひねっているのは、私だけではないと思います。

 政治的なことをここで申し上げるつもりはありません。ただ、369億円という税金を使い、「地球温暖化ガス排出量を2050年に半減する目標を共有する」というなんとも曖昧な表現です。首脳宣言の要旨も読みましたが、ソリューション営業プロフェッショナル研修でもお伝えしているSMARTな表現とはほど遠い内容でした。

SMARTとは:Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Realistic:現実的、Time-bound:時間制限 の頭文字をつなげたもの。

 交渉は駆け引きです。国益を重視することは当然だとおもいます。しかし、地球温暖化の問題は、国益を越えた次元の話しではないかと思うのです。国益を優先して相手を打ち負かし、自国の立場を有利にする。そういう次元の話しではないはずです。国家を越えて、「地球温暖化」というひとつの敵を一緒になって打ち負かすことが、もとめられているのだと思うのですが、そんなことは夢物語なのでしょうか。

 営業での交渉事でも、同じです。お客様を打ち負かして受注し、結果としてお客様の課題を解決できなければ、お互いに不幸になるだけです。それよりも早い段階で、課題を共有しそれを打ち負かすという「同士の視点」を共有すれば、成功も失敗も、お客様と共有できますし、どっちが悪いなどと言うことにはなりません。

 もちろん、はじから失敗を想定して、そのクレーム回避の手段として行うべきことではありません。それでは、本末転倒です。

 残念ながら、今回のサミットは、課題があることを認め合ったという程度の成果はあったのかもしれません。しかし、その対価が369億円とは、コストパフォーマンスの悪い仕事ですね。

2008年7月8日火曜日

間違え探し(その1) 回答

 このケースをご覧になって、別におかしなところはないのではと思われたら、直ぐにでも「ソリューション営業プロフェッショナル養成講座」に申し込んでください(笑)

 まあ、ほとんどの方は、「これじゃあねぇ。お客様から連絡来なくて当然ですよ!」と思われたのではないでしょうか。

 では、ソリューション営業としての間違えを考えてゆきましょう。

■ 間違え(1)製品説明は提案ではありません
 ソリューション営業の提案とは、お客様の課題を解決するための手段を提示することです。このケースでは、「提案」したのではなく「製品説明」をしたに過ぎません。
 この程度の話しなら、お客様でもインターネットで検索して情報を手にすることができます。お客様にとっては、検索の手間を省くことはできたかもしれません。また、立派な製品説明資料ですから、プリンターで印刷するよりは、きれいでわかりやすいかもしれません。しかし、その程度の話しです。製品説明はしました。しかし、お客様のどのような課題に答え、その解決の筋道は、お客様に自分で考えてくださいとでも言うのでしょうか?これは、ソリューション営業では「提案」とはいいません。

■ 間違え(2)説明の場で自社の製品や会社について説明してはいけません
 お客様は、製品を買いたいわけではありません。自分の課題を解決したいのです。製品は手段であり、目的ではありません。
 このケースでは、営業担当者は、お客様がどんなことに問題を感じているのか、課題があるのかを何ら確認することなく、自分の売りたい製品について語っています。お客様が聞きたいことなど気にすることもなく、自分の伝えたいことだけを語っているにすぎません。これでは、お客様はうんざりです。 自分の製品や会社など、自分のことを語るのではなく、お客様の課題を確認したり、どう解決できるかという筋道を説明する。自分の会社や製品についての説明は、おまけみたいなのです。お客様が、あなたのソリューションになるほど関心を持たれたならば、ところで・・・とあなたの会社や商品について聞いて頂けるはずです。

■ 間違え(3)お客様の感謝の言葉は、もうお帰りくださいのメッセージ
 「いゃ~、本当にすばらしい製品ですね。いいお話を聞かせて頂きました。ぜひ検討させて頂きます。改めてこちらから連絡させて頂きます。今日は有り難うございました。」とは、「ぶぶづけ、いかがどす?(=お茶漬けでもいかがですか?)」と同じです。そろそろ時間です、お帰りくださいのメッセージです。それを真に受けているようでは、ソリューション営業は失格です。もし、お客様が興味を持たれ、真剣に検討したいのならば、価格や性能、あるいはサポートなどについて厳しい質問が飛んでくるはずです。自分たちが導入したときのことを想定した質問です。そのような質問など一切なかったわけですから、この時点で気が付くべきでしょう。

■ 間違え(4)プレゼンテーションはきっかけに過ぎません
 製品説明は、課題を確認したり製品に関心を持って頂くためのきっかけに過ぎません。お客様の「すばらしい製品ですね」を真に受けて、その後のフォローをせずにただ待っているだけでは問題です。説明をきっかけにお客様の関心や課題を探り、あるいは競合他社の動きを探る。基本中の基本です。

■ 間違え(5)だめだと言われたところからが営業活動の新たなスタート
 「今回はA社さんの製品を買うことに決めました。」と断られたのなら、なぜ断られたかを探るべきです。その理由が分かれば、次に同じ失敗を繰り返さなくてすみます。今回は、ダメでも次は成功させる。そんな意識がスキルアップにつながります。

 さて、あなたは、いくつの間違えを見つけることができましたか?

2008年7月7日月曜日

[号外] 24時間走 応援記

 友人であり、ランニング練習のサポートをしてくれているマック鈴木さん(名前はマックですが生粋の東北人です)が、7月5日の午前9時から翌6日の同じ時間にかけて神宮外苑で行われる「24時間走」に出場するというので応援に行ってきました。

 「24時間走」という競技は、その名前の通り、ひとりのランナーが延々と24時間走り続ける競技です。神宮外苑の一周1.3Kmをぐるぐると走り続けます。そして時間内に走りきった距離で勝敗がきまります。今年の優勝者は、250Kmほど走ったようです(正式の大会記録がまだでていません)。東京から浜松までの距離に匹敵します。
 まあ、非常識の極みとでも言える競技ですが、応援しているうちに走っている人たちの気迫に気圧され、気がつけば次の朝まで会場にとどまってしまいました。

 走っている人は、男女合わせて50人ほど。周回コースで応援し、何度も同じ顔を見ていると、はじめて顔を合わせた人の名前も覚え、いつの間にか仲間意識が生まれ、昔からの知り合いのような気持ちになるのは不思議です。

 彼ら彼女らのひたむきな姿、限界に挑む真摯な姿勢。普段見ることのない人間の極限に挑む姿に感動しないはずはありません。誰を勝たせたいとかを越えて、がんばれー!と声をかけていました。

 だいたい、陸上生物のなかで休まず24時間も移動するモノがいるでしょうか。生物学的な欲求ではなく、純粋に限界を極めたいという、ただそれだけのために彼らは走っているのです。そんな姿に、気高さと気品を見たのは、私だけではないと思います。

 左の写真は、サポートの梶さんとマック鈴木さんとの2ショット。24時間走り終えた瞬間の写真です。
 マック鈴木さんは、およそ220Kmを走りきりました。総合4位です。結果については、彼なりの思いがあるようですが、すばらしい結果です。お疲れ様、そして、ほんとうにありがとう!

 残念ながら、この真剣勝負は一切マスメディアに取り上げられることはありません。実は、日本は国際大会に出場しては、個人でも団体でも毎年優勝や入賞を果たしています。世界でもトップの実力を持っているのです。しかし、メディア的には儲からないのでしょうね。確かに、24時間テレビ放送し続けることはできませんし、派手なデッドヒートもありません。

 民放の「24時間テレビ」で、タレントが24時間走にチャレンジしています。私は、挑戦する個人の真摯な取り組みには、心から敬意を表します。しかし、残念ながら素人のチャレンジです。オリンピックのマラソン競技と私のフルマラソンへの挑戦ぐらいにまったく違う世界がそこにはあります。
 トッププランナーは、24時間、休憩することはありません。食事や給水も走りながらです。その迫力あるおもしろさは、テレビで取り上げてもきっと多くの人に感動を与えるはずです。ヨーロッパや台湾では国営放送の中継や新聞での結果発表は当たり前に行われており、一般の人たちの認知度も相当高いと聞いています。きっと私が感じたと同じように、一流選手のハイレベルな挑戦に本物の気迫と輝きを感じる、そんな精神の高さがあるのだと思います。

 日本のマスコミももうすこし本物を紹介する力を持ってもらいたいものです。

 このレースは、走っている選手だけではなくサポーターも真剣勝負です。周回毎に、水や食事、サプリメントなどを補給します。かれらが走りながらでも食べやすいように、そうめんを小さく切ったり、おかゆを作ったりと、真剣勝負です。また、消耗の具合を見ながら適宜補給するモノの内容を工夫してゆきます。選手とサポートの連携プレイがあってこその結果です。
  本当にすばらしい体験でした。感動しました。みなさんに「ありがとう」と申し上げたい気持ちでいっぱいです。 

2008年7月5日土曜日

間違え探し(その1) 問題

Q: 以下のアプローチのどこに間違えがあるのでしょうか?

 米国で最近評判のネットワーク製品をあなたの会社で販売することとなりました。仕様、特徴、機能についての解説、米国での導入事例などがわかりやすく説明されている日本語の資料を作りました。
 デザイナーにお願いして、写真も入りきれいなレイアウト、厚手のコート紙に美しい仕上がり、A3をふたつに折りたたんだA4見開き4ページの製品説明資料ができあがりました。

 「さあ、これでお客様にどんどん提案してください」、「ベンダーの営業さんにも渡して、売り込みをかけてもらいましょう」。マーケティングの責任者から、営業であるあなたに依頼がありました。

 あなたは、この資料を持って、ちょうどこのような製品の導入を検討しているというお客様に説明に行きました。
 そこであなたは、挨拶もそこそこに、次のように切り出しました。

 「この度、弊社では、米国で評判となっているXXXを販売することになりました。この製品の特徴は・・・」。

 あなたは、この製品に自信を持っています。なんと言っても他社にはない優れた性能と機能です。価格も決して高くはありません。他社の製品に負けるはずはありません。お客さも興味を示していただけるに違いありません。

 あなたの説明は熱を帯び、説明し終わったあなたは、ちょっとした満足感に浸っています。会心の説明です。
 お客様は、「いゃ~、本当にすばらしい製品ですね。いいお話を聞かせて頂きました。ぜひ検討させて頂きます。改めてこちらから連絡させて頂きます。今日は有り難うございました。」

 お客様の感謝の言葉にあなたは大満足です。直ぐにでも「見積もりを出してくれませんか?」という連絡がくるに違いありません。あなたは、今日の自分の仕事に充実感を感じています。

 それから2週間。いっこうにお客様から連絡がありません。気になって、お客様に電話をかけてみました。そうすると、「いゃあ、実は今回はA社さんの製品を買うことに決めました。また、いいものがあったら紹介してください。」

 あなたは、負けるはずがないと思っていました。単に検討が遅れているだけだと思っていました。どうしてこんなことになったのか、皆目見当がつきません。

・・・答えは、次回!

2008年7月1日火曜日

営業の夢

 高級なフレンチのレストランで食事をする。美味しい料理にビンテージのワイン、そして、雰囲気のいい装飾や内装に、こだわりの食器。非日常の演出でもてなしてくれます。お客様の期待を越えて、驚かせ楽しませ、そして満足してもらうためにはどうすればいいのかを考え抜いたモノです。自分で同じモノを作ることも、同じ演出をすることもできません。だからこそ、高くても、ありがとうと感謝を込めてお支払いできるのです。

 営業である私たちもお客様に対して、同じもてなしをしているでしょうか。お客様に「ありがとう」と言われてお支払いを頂いているでしょうか?そんな仕事をしたいものだと思います。

 フレンチのシェフが、私たちを楽しませ、驚かせてくれるのは、我々にはない豊富な料理の知識を持っているからだけではありません。それだけなら、我々もある程度は本やインターネットで手に入れて、まねをすることだってできます。しかし、彼はそれだけではなく、お客様の好みや季節に合わせて、豊富な知識を素材にして、なるほどと納得させる組み合わせを創り出し、素人にはまねのできない感動を与えてくれるのだと思います。

 ITビジネスの世界でも同じことです。知識に於いてお客様も我々も土俵は同じです。インターネットで検索すれば、あなたの製品に限らず、他社の製品や業界の動向など、相当の知識を手に入れることができます。

 かつては、製品や業界の知識は、営業の武器でした。営業は、お客様が知らない情報を携え、情報をコントロールすることで、お客様の優位に立つこともできました。しかし、今では価格でさえ、簡単に手にはいる時代です。

 提案と称して、パンフレットの内容を説明しても、インターネットで仕入れた情報で多少の化粧を施しても、それはお客様が自分で手に入れられる知識の範囲を超えることはできません。お客様もそんなモノは期待していないでしょうし、そもそも競合他社との差別化などできません。そこが苦しいところです。

 それらをどのように組み合わせるのか。お客様ごとに必要とするもの、課題は違います。加えて、時勢の変化、お客様の業績や事業戦略、業務上の問題・・・そういう個別の課題に合わせて、いろいろな素材を使って、お客様毎の最適な組み合わせを作り上げる。これがソリューション提案です。

 簡単なことではありませんが、もし、そんな提案ができれば、お客様に「ありがとう」と感謝され、喜んでお支払頂けるはずです。

 そんな仕事のスタイルを目指したいとは思いませんか。