2008年11月20日木曜日

ケーススタディ:部下の転職相談 さあ!どうします?

 久し振りにケース・スタディを掲載させて頂きます。対象は、営業マネージャーのあなたです。ちょっとヘビーな内容ですが、営業現場では良くある話です。

 さて、あなたならどう対処されますか。是非コメントにて、皆さんなりの考えをお聞かせ頂けませんか?グループ・ディスカッションみたいに、みなさんのお考えをコメントのやり取りで共有できればいいですね

 長文ですが、是非トライしてみて下さい。!

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1.ケース分析の目的
 営業マネージャーの役割は、自身の組織目標を、組織メンバーを使って達成することにあります。ここが、個人目標達成だけを考えればいい担当営業と大きく異なるところです。

 ここに設定されたケースは、そのようなマネージャーの役割を改めて考える機会を提供することを目的としています。

 組織の長であるあなたは、この事態をご自身の組織で起こっていることとして受け止めて下さい。そして、どう対処すべきかを自分の問題として、考えて下さい。

 ご自身がこのケースをどのように受け止め、どう対応するかについては、下記の設問に従い、考えて下さい。

 絶対的な正解はありません。是非コメントにてお考えをお聞かせ下さい。

 自分の考えを他人に伝えること。他者の意見を読むこと。その意見に自分の意見をぶつけてみること。その過程を通じて、自らの考えを整理し、新たな視点に気付いて頂くことが、このケース分析の目的です。

 コメント投稿で、そんなディスカッションができればと願っています

2.ケースの概要
 あなたは、営業マネージャー(あなたが、SEマネージャーや営業リーダーなら、置き換えて考えてみて下さい。)です。あなたが期待している有能な部下であるA氏が、転職について相談に来ました。彼は、まだ結論を出しているわけではありません。かれは、自分の現状や会社の状況を冷静に整理し、どのような結論を出すべきか、真剣に悩んでいます。

3.ケース分析の進め方
(1)「4.ケースの詳細」をよく読んで下さい。あなたは、A氏の上司になりきり、感情移入してください。この状況が現実であり、自分の問題であるかのように、イメージをふくらまして下さい。

(2)設問に回答するカタチでコメントして下さい。文章でも箇条書きでも、かまいません。とにかく、自分の考えを何らかの方法で、そこに書き出して下さい。完全な文章になっている必要はありません。論理的に矛盾していても、思いついたことのメモ書きでもかまいません。とにかく、考えたことを書き出してみることが大切です。真剣に考えることが大切です。

(3)この設問について、自分だけではなく、他人の意見を読むこと、自分の考えたことをどんどん発言して下さい。正解はありません。自分中の矛盾や葛藤も意見として述べて下さい。その過程を通じて、自分の考えを整理し、新たな気づきを見つけて下さい。

4.ケースの詳細
 お客様を担当する現場の営業やSEからは、「今までのお客様に加えて、担当するお客様が増え、ますます忙しくなった」とか、「お客様の状況が十分に引き継がれないまま担当が変更となることで、お客様への信頼関係を損ない、ビジネス継続を難しくしている」などのネガティブな話を聞くことが多いようです。同じ業界と比べて、どうかという議論も気になるところではあるのですが、明らかに営業活動に支障をきたしていることは事実です。

 このような状況の中、営業A氏が、個人的に相談したいことがあるとのことで、あなたの所に来ました。
 彼は、転職3年目の31才、まだライン職ではありませんが、若手の中では、リーダー的な役割を担っています。
 仕事の緻密さには欠けますが、何事にも積極的で、人当たりも良く、社内外を問わず、人間関係をうまくこなしてゆく才能があります。また、他人の考えと自分の意見を切り分けることもでき、他人の意見に迎合することなく自分の考えをはっきりと主張できます。ただ、思いこみが強く、容易に自分の意見を曲げない頑固なところもあります。ただ、頑迷で融通が利かないというほどではありません。

 彼の相談とは、転職のことでした。まだ決心をしたわけではないが、以前働いていた会社の元上司から、「別の会社に移ったのだが、新しい会社で営業として一緒に働いてくれないか」と相談を受けているとのことです。

 A氏が働いていた以前の会社は、外資系ネットワーク機器の日本子会社。販売する商品は限られ、お客様もSIerやNIerなどのシステム・ベンダーに限られていました。また、設定された数字目標も相当高く、現実的ではないと感じていました。また、目標達成に対するプレッシャーもきつく、ストレスを強く感じ、仕事への意欲を失っていたそうです。

 仕事の範囲は狭く、面白味に欠ける、ノルマも厳しく、いくら忙しく働いても目標達成は困難。このような状況では、自分の才能をのばすことはできないと感じるようになっていたそうです。そこで、転職を決意したとのことです。このときは、まだ20代ということもあり、あまり後先を考えていなかったそうです。とにかくこの現状から脱したいという気持ちが優先していたそうです。早速、人材会社に登録をしたところ、この会社を紹介され、面接を受けて入社することになりました。

 それから3年がたち、営業として、ビジネスを自らマネージできるまでになっています。また、昨年結婚し、今年夏には、最初の子供が生まれる予定です。

 そんなA氏に話を聞きました。

 「今までの会社と違い、ネットワーク全般にわたるビジネスに関われること、ブランド力もあり、今までのネットワーク・ビジネスについての経験を生かしながら、より広い範囲での仕事に携われること、そして、中間の販売会社ではなく、実際にシステムを使うお客様と直接関われる職場であることなどが、入社の決め手となりました。

 入社間もない頃は、何事も新しいことが多く、新鮮な驚きと勉強しなければならないことも多く、忙しくも楽しく仕事をしていました。ユーザーであるお客様に直接接することができることも、今までにない楽しみとなっていました。

 しかし、ここ最近、そういう驚きや楽しみも時間とともに薄れ、日常のルーチン・ワークに埋没する忙しい毎日を送っています。会社を辞めたいという決定的な理由があるわけではありません。ただ、ほんとうにこのままでいいのだろうかと、漫然とした不安を感じています。忙しいことそのものは、そんなに気にはなりません。しかし、不安があります。

 自分の今やっている仕事の価値への疑問、不完全燃焼とでもいうような、もやもやとした不満があります。自分の仕事についての責任は自覚しているつもりです。職責を全うすべく、必死で働いていることには自信があります。目標達成についても、厳しいながら、周りに比べれば、それ以上はやっています。でも、一方では、忙しさで、自分をごまかしていることも事実です。よけいなことを考えずに済ませるために、忙しさを装っている面があるということです。自分に対して、「そんなこと考えても意味ないだろう」と言い聞かせているのかもしれません。また、他人に自分の不安を悟らせることは、周りの士気にも関わります。忙しく見せることで、自分には迷いなど無く、必死で働いていることをアピールしているのかもしれません。

 最近、営業本部長が、「新しい提案を仕掛けなさい!」と言われる機会が増えました。APSでもそのようなことが求められます。しかし、日常の仕事をこなすことに精一杯で、なかなか、そんな心の余裕が生まれません。決して、時間がないわけではありません。その必要性も十分に承知しています。しかし、現実には、なかなかそれもできず、少し焦りもあります。また、仮に新しい提案を仕掛けても、それを受けられる体力がこの会社にあるのかどうかという不安もあります。

 今の体制では、新しい提案をしても、結局は実現できず、お客様の信頼を裏切ることになるのではないか?そのことに、会社はどう対応しようとしてくれるのか不安です。自分がやらないことへの言い訳のようにもなってしまうのですが、上司の求めていることと会社の向かう方向のちぐはぐさを感じています。

 そうかといって、会社を辞めれば、このような不安を解消し、自分の実力を発揮できるかというと、その確信もありません。転職は、確かに状況を変え、気分を変え、新たなチャンスを与えてくれることも事実です。しかし、この会社に転職した経験から、限られた期間の中で、転職先の会社のすべてが分かるわけではなく、自分の才能や経験が、本当に新しい職場で発揮できるという保証はどこにもありません。それよりも、状況がよく分かっているこの会社で、仕事をしているほうが、とりあえずは確実です。自ら「会社を変革する」というほどの意気込みも、力もありませんが、会社がそのような方向に向かおうというのであれば、自分もその中で頑張りたいという思いもあります。

 ただ、自分の今後のキャリアについては不安です。自分が将来この会社にとって、どういう役割を果たし、処遇されるのか、まだ先のことですが、不安です。言い換えるなら、会社自身の将来の姿が、はっきり見えてこないのです。漠然とした言い方ですが、この会社の将来に不安を感じています。

 このような状況の中で、残るべきか、それとも、思い切って転職すべきか、判断できずにいます。」

 A氏は、決して会社を感情的に批判しているわけではありません。むしろ、自分が迷っている状況をなんとか冷静に伝えようと整理し、その中で、今の会社の現状に言及しています。もし会社を辞める気であれば、もっと感情的な表現や批判があってもいいものですが、そのようなことはなく、本当に、今の状況に迷っているようです。

 A氏は、転職の期限を決めているわけではありません。ただ、元上司の手前もあり、結論を先延ばしすることはできないとも考えています。また、今自分が辞めてしまったならば、他の営業や上司に相当の負担を強いることになることも承知しています。また、このような曖昧な気持ちのままで辞めてしまえば、現実から逃避するための手段にも思え、自分で自分を納得させられないようにも感じています。
 
5.設問(コメントに答えて下さい)

(1)あなたは、A氏に期待しています。100点満点とは言えませんが、部下としては優秀であり、若手のリーダー的存在として、組織の中核で仲間を引っ張って欲しいと考えています。彼との間には、個人的な信頼関係もあると感じています。かれは、今回の転職を考えるきっかけについて、あなた個人に、なんら責任や理由はないとはっきり言っています。あなたは、彼になんとか残ってもらいたいと考えています。あなたは、このようなA氏にどのようなアドバイスや提案ができるでしょうか?また、マネージャーとして、なにができるでしょうか?
 
(2) A氏のような会社への不安や不満は、彼だけではないようです。もし、あなたが、経営者ならば、あなたは、どのような施策を打ち出し、どのような行動を行うでしょうか?

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

久しぶりのケーススタディですね。。と思ったら、これはまた長くて重い話ですね。なかなか悩ましいです。

悩ましいながらに考えてみますと、

(1)今の悩みは、ルーチンワークに埋没してしまっていることに原因があるようです。
現在A氏が感じている問題は、会社や環境のせいではなく、仕事のやり方や、気の持ち方にあるのではないか、という理解を共有し、であれば、転職せずとも状況は変えられる、ということを一緒に考えるべきではないでしょうか。
具体的には、講座で習ったとおり、商品を売るのではなく、ソリューションを売るやり方に切り替える、そのためのアドバイスを行うことでしょう。マインドセットの切り替えもしなければなりません。

(2)経営者としては、(1)のマネージャの動きをサポートできる全社的な体制をとること、そして、マネージャでは対処できない、「今の体制では、新しい提案をしても、結局は実現できず、お客様の信頼を裏切ることになるのではないか?そのことに、会社はどう対応しようとしてくれるのか不安です。」といったような不安に、組織の裏付けて応えることではないでしょうか。