社会人としての常識や技能を高めたい。社会人として、早く一人前の仕事がしたい。そのために必要なことを学びたいと期待しているのでしょうか。
それとも、会社が用意した研修なので仕方なく参加しているだけですか? たとえ自分の本意ではなくても、参加することが「今の仕事」であり、会社の人たちに「いい新人が入ったなぁ」と思ってもらいたいから無理して頑張っているのですか。
たとえ志を持って研修に参加しも、自分の未熟を目の当たりにし、小さな挫折を味わうかもしれません。テストでの不本意な成績、知っていると思っていた常識が通用しない現実など、そんなはずはないと、がっかりしている人もいるのではないでしょうか。
講師の眠たい話しにも耐えなくてはなりません。そうしなければ、自分の評価が下がってしまいます。「あいつは使えないやつだなぁ」と周りから見られてしまうでしょう。
世の中は、なかなか自分の思い通りにはゆかないものですね。研修もまた、その「思い通りにゆかないもの」のひとつかもしれません。不本意の連続です。理不尽だと思うこともしばしばです。
しかし、社会はもっと不本意で理不尽です。それを自分で受け止めなくてはなりません。研修とは、そんな社会に独り立ちするみなさんが、より大きな現実に直面する前に、小さな社会の現実を体験するワクチンのようなものです。
このワクチンの効き目は、人によってだいぶ差があるようです。つらいけど、真剣に立ち向かえば、効き目は相当なものです。その一方で、時間の流れに身をゆだねているだけではワクチンはほとんど効きません。
「幸福論」の著者であるアランはこんなことを言っています。
「まったくいやな雨だ!」などと言ったところで、何の役に立とう。雨のしずくも、雲も、風も、どうなるわけでもない。研修をこう考えてみてはどうだろうか・・・「結構なおしめり」だと。
「ああ、結構なおしめりだ」と、なぜ言わないのか。もちろん、こうあなたがいうのをわたしが聞いたからといって、雨のしずくがどうなるわけでもない。それは事実だ。しかし、そのほうがあなたにとってよいことだろう。あなたのからだ全体がふるいたち、ほんとうに暖まることだろう。ほんのちょっとした喜びの衝動でもこんな効果があるのだ。
少々、大げさですが、アランはこんなことも言っています。
思いつめた人は、ほとんどつねに、読みすぎる人である。しかし、人間の目は、そういう近距離のためにつくられていない。広々とした空間の中で憩うものだ。星や海の水平線を眺めていれば、目はすっかり安らいでいる。目が安らいでいれば、頭は自由になり、足どりもしっかりしてくる。からだ全体がくつろぎ、内臓までしなやかになる。
しかし、決して意志の力でしなやかになろうと試みてはいけない。自分の意志を自分の中にさしむけたのでは、なにもかもが上手くゆかなくなって、ついには自分の息の根をしめるようになる。自分のことを考えるな。「遠くを見よ」
自分の5年後、10年後はどうなっているのでしょうか。いや、どうなっていたいのでしょうか。自分の意志の力で今を何とかしようとしても、なかなか思うようにはゆかないものです。あなたの「遠く」を思い描いてみる。それだけで十分なのです。
研修にできることは、あなたの「遠く」、つまり何処へ向かうべきかを伝えることです。そして、その道をどのように歩くかの方法を教えることです。残念ながら、そこまでのことです。旅行のガイドブックのようなものです。
ただ、ガイドブックを眺めていめるだけでは、何も手に入りません。自分でそこに行き、体験しなければ、その楽しみも、感動もありません。失敗もあるでしょう、思い通りに行かないこともあるでしょう。あまりの慌ただしさとアクシデントに道に迷うこともあるでしょう。ガイドブックには書いていない場所や出来事に出会うこともあるでしょう。それが例え自分の意に反することであっても、自分の努力ではどうにもできないことがあります。
そんなときに、役にたつのがガイドブックです。何処が目的地だったのか、どれが正しい道だったのか、それを思い出させ、確認することができるでしょう。
研修は、あなたを一人前にはしてくれません。一人前になるかならないかは、このガイドブックを片手にあなた自身が旅に出るかどうかです。もし、その一歩を踏みださいのならば、あなたはいつまで経っても今のままです。
若気の至りという言葉があります。この言葉が使えるのは、せいぜい28歳まででしょう(笑)。その間に失敗を恐れず、思いっきり若気の至りをすることです。怒られるかもしれませんね。でも、許してもらえます。例え許してもらえなくても、殺されることはありません(笑)。先輩もお客様も、あなたの行いが「若気の至り」であることを知っています。よかれと思った「若気の至り」は、相手に伝わるものです。むしろ評価してくれるはずです。
旅に出るチャンスです。研修で手に入れたガイドブックを手にし、若気の至りという旅をおもいっきり楽しんでみてはどうでしょうか。
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