この記事に書かれていることは、既に以前より言われ続けられてきたことであり、特に目新しいことではありません。しかし、「2012年は4月までに88件となり、過去最悪となった2009年を大きく上回る勢いで推移している。」という事実は、「もう時間がありませんよ」と言う、市場からの最後通牒と受け取るべきでしょう。
この業界に長くいますが、これほどまでに変化の大きさを強く感じたことはありません。
変化のない時代など、これまでもありませんでした。だから「世の中が変わったから、うまく行かない」という言い訳はしたくはありません。変わることが前提であり、それに対処することが人生であり、ビジネスであると私は思っています。ただ、その加速度がこれまでの比ではないのです。
確かに、リーマン・ショックの時は、本当に厳しかった。ほんとうにこのままやっていけるのだろうかという絶望感さえ感じていました。また、3.11の時も、大変なことになった、日本はどうなってしまうのだろうかという大きな不安を感じていました。
しかし、本当の変化は、今まさに爆発的な勢いで始まったという気がしています。
今、私は、大手建築業のお客様で「情報システム戦略の再構築」をお手伝いしていす。
「経営者から自分たちの存在意義を強く問われている。」と話される情報システム本部長。彼は、これまでのやり方の延長線上では、解決策は見いだせないという強い危機感を抱かれています。そしてその一方で、このようなお客様の悩みに相談に乗ることすらできないソリューション・ベンダーの存在意義にも疑問を持たれているようです。
経営環境は、リーマン・ショック、3.11、ユーロ危機と歴史的円高と続く積み上げられたプレッシャーにより、これまでのやり方にこだわっていては、この変化を乗り切れないという機運を一気に高めています。まさにカタストロフィカルな意識の変化が、今起きているとみるべきでしょう。
IT業界に目を向ければ、この変化を加速している要因は、ITテクノロジーのイノベーションにあると私は考えています。
近代イノベーション理論を提唱したシュンペーターによれは、「イノベーションは創造的破壊をもたらす」と説いています。
これまで成り立っていたビジネス・モデルが破壊され、コモディティ化したテクノロジーと労働集約的人月単価モデル、請負と称する受託・派遣ビジネス・・・そろそろ限界が来たと言うことでしょうか。今まさに新旧の入れ替わりが始まっているというのが、この倒産件数増加の理由だと考えられます。
旧態依然の受託思想・仕事をもらうばかりの下請体質、さらにSESというインチキ派遣を誤魔化した言葉でシステム屋と言ってきかない人売り体質が通用しなくなるほど、ITインフラ整備の敷居が低くなったということだと解釈しています。
友人が、facebookの私の問題提起に、このようなコメントを寄せてくれました。全く同感です。
私は、クラウド、オフショア、高速開発が、この変化を加速している大きな要因だと感じています。特にクラウドは、大手、中小を問わず、ITインフラの敷居を大きく引き下げ、それぞれの得意分野に集中できる環境を整えつつあります。
これまでは、「総合力」が競合優位の重要な源泉でした。従って、大手ということが、お客様の意志決定の根拠でもあったのです。しかし、高度な運用技術と安価で膨大なシステム・リソースを必要なときにすぐに調達できるクラウド・サービスは、大手しか持ち得なかった競争力の源泉を中小でも同様に手に入れることができるようにしたのです。
つまり、それぞれの専門分野で、高い技術やアイデア、ノウハウを持ってさえいれば、それを武器にして大手、中小を問わず対等に戦える時代になったのです。
お客様は、これまでの常識を疑いはじめています。その一方で、旧態依然とした常識にこだわり、イノベーションを示せないSIerやITソリューション・ベンダーに、お客様の信頼は遠のくばかりです。
シュンペーターは、こうも述べています。「イノベーションとは新結合である。」これまで誰も試みたことのない組み合わせを創り出すこと。それは必ずしも新しいテクノロジーばかりでなく、従来のテクノロジーと新しいテクノロジーの組み合わせ、あるいは、従来のテクノロジーの新たな組み合わせが、お客様の課題解決のショートカットになるとすれば、それもまたイノベーションなのです。
イノベーションをもたらす人を彼は「アントレプレナー」と呼んでいます。そう考えれば、SIerやITソリューション・ベンダーは、様々なテクロジーを使い、お客様の課題解決に最適となる組み合わせを提供するアントレプレナーということになります。
ジョブスばかりがイノベーションを起こすアントレプレナーではありません。もっと身近なところでイノベーションを起こすことは可能です。
この大きな変化の波は、新旧の入れ替えを加速する波です。それをチャンスととらえるか、危機と捉えるか・・・もう時間はあまりないように思います。
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