2010年5月29日土曜日

伝えたという自分の満足ではなく、伝わったという相手の真実が大切である

 「なぜ、そんなことがわからないんだ!」怒りと諦めがない交ぜになった大声が、朝の営業会議に響く。お客様への説明が、少し的を外れていたことで、再提出となった営業の報告に納得がいかなかったようだ。

 「オレが、あれほどポイントを説明したじゃないか。絶対にはずすなと言っただろぅ。彼らの課題についても、説明したはずだ。お前は、何を聞いていたんだ!」

 気の弱そうな営業氏は、絞り出すような声で、「はい、一応部長のおっしゃるように考えたつもりなんですが・・・」。

 「じゃあ、どうしてこんなことになるんだ!!!」とますます言葉を荒げている。

 こんなやり取りを傍から見ながら、この部長は、まったく自分が見えていないようだなと件の営業氏を気の毒に思った。明らかに、この部長の見識不足が招いた結果である。 

 伝えたという自分の満足ではなく、伝わったという相手の真実が大切である。 

 相手に何かを伝え、何を理解してもらいたいのか。それは、伝える側の目標であり、その目標達成は、伝えようとする本人の責任である。話を聞こうとする相手は、彼が何を伝え、なにを理解させようとしているのかが、分からないわけだから、「わからない」ということの責任を相手に押し付けるのは、本末転倒な話である。 

 その努力を怠り、「なぜ、そんなことが分からないんだ!」は、自分の無力を高々に宣言しているようなものだ。 

 「あのお客さんは、常識を全然わかっていない。だからだめなんですよ。」という、営業の言い訳を聞くたびに、なんと非常識な人間だろうと気が重くなる。 これもまた、同じ言い訳に過ぎない。

 先日、Twitterから、こんなお問い合わせをいただいた。情報システム部門の人らしい。 

 「毎日のように有名なソリューション・ベンダーの営業の方が、製品の紹介に来社されます。彼らは、自分たちの話はするのですが、私たちの会社のことを何も聴こうとしないんです。どう思います?」 

 どう思うも何もあったものじゃない。なんだか申し訳ない気持ちになってしまった。 

 こちらの伝えたいことを伝えるのではなく、相手の伝えてほしいことを伝える。

 この当たり前を実行することが、伝える側の責任ではないのか。

 私は、お問い合わせいただいた方にこのように答えた。

 「打ち合わせの冒頭、「まずはこちらの事情を聞いていただけませんか?その話を聴いた上で、ご説明いだけないでしょうか」と申し上げてください。」

 新入社員研修で、最新ITトレンドを解説している。クラウドや仮想化について、話をした。昨日は、メインフレームについて解説した。

 当初人事の研修担当者は、彼らがそんなことを理解できるかどうか、半信半疑だったようだ。しかし、たぶん、この二日間の講義で、確実に彼らの先輩の水準を超えただろうと思う。彼らは、キーワードを暗記したわけではない。その言葉の裏側にある構造や法則を学んだ。構造が分かれば、詳細は後でついてくる。法則が分かれば、未来が分かるのである。

 伝える側の責任は、以下の3つ。

■ 相手が知りたいこと、知るべきことを明確にしておくこと。

 分からない、曖昧であれば、まずは相手に教えてもらわなくてはならない。知ってるつもりは、所詮仮説であり、真実ではない。それを真実だと思っているとすれば、驕りである。知らないということを知っている。そんな謙虚さこそ、伝えることの出発点である。

■ 言葉を弄さないこと。

 何が幹であり、何が枝葉であるか。その幹を簡潔明瞭な自分の言葉で用意しておく。それ以外は、所詮補足に過ぎない。要点を箇条書きにしておくのもいいだろう。その作業に相当の時間を要するとすれば、それは、自分が枝と幹を分かっていないということ。そんな混乱状態を相手に押し付ける。そんな状態で、「なんでそんなことが分からないんだ!」とは、責任転嫁以外の何者でもない。これが、できれば、ミーティングは、実に短時間で終了する。

■ 相手の理解を確認する。

 「今日は、うまく説明できたぞ!」とほくそ笑む前に、本当に相手は理解してくれたかどうかを確認すべきだろう。自分のパフォーマンスに酔いしれて、こちらは、いい気持ちになっていても、相手は、うんざりしているかもしれない。人は、聞くことよりも話すことのほうが気持ちがいいものである。相手の顔を見れば、おおよその察しがつく。分からなければ、「この点は、どう思われますか?」と具体的な話の内容を引き合いに出して聞いてみるといいだろう。漠然と「いかがでしたか」では、相手は答えにくいものである。

 PDCAは、ビジネスにかかわる以上、基本原理である。伝えるということもまた同じである。 

 伝えたという自分の満足ではなく、伝わったという相手の真実が大切である。

 この当たり前を心がけることで、ビジネスは、もっと円滑に進み、お客様との信頼関係も深まるだろう。

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うちめしネット まいにちの食事を、もっとやさしく。

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1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

「PDCA」って間違いだと思いませんか?
CはCheckですから、Planどおりかどうかは判定しますが、そのプラン自身が正しいのかどうかはどこではんだんされるのでしょうか?
E(Evaluate)として、Pも含めた”評価”が必要なのではないでしょうか?