2013年5月4日土曜日

不確実な時代に生き残る唯一の方策とは


「機能や性能がいいことは分かりました。でも、使いこなすには、それなりに手間もかかりますからね。それに、今でも何とかなっているし、高いお金を払ってまで導入する必要性は、あるんでしょうかねぇ。」

エンドユーザー部門にBISFAなどを提案すると、こんなネガティブな反応を返されることがあります。そこには、現場の動きが、経営者にあからさまになってしまうことへの抵抗感があるからかもしれません。

現場にしてみれば、日々の活動やデータを正直に報告しなければなりません。いい加減な報告は許されず、そのために手間もかかります。なによりも、見張られているような圧迫感に、現場はやりにくさを感じるはずです。

一方、経営者にしてみれば、月次や四半期毎の予実の精度をあげたいと思っているはずです。その目的が達成できるのであれば、投資をする価値があると感じるかもしれません。

クラウドの提案ではどうでしょうか。現場の運用管理負担は軽減され、システム資源の調達や構成の変更などを短時間に行えます。アプリケーションの開発や導入の生産性も改善され、TCO削減が期待できます。

しかし、情報システム部門にとってみれば、今までの自分たちが積み上げてきたスキルが必要ないと言われているように感じるかもしれません。そうなれば、自分たちの仕事は無くなってしまうかもしれません。システムを所有しないことを寂しいと感じ、自らの存在意義を失ってしまうと感じるかもしれません。

一方、経営者としては、資産を減らし経費化することができます。間接部門である情報システム部門の要員を減らし、直接部門に配置転換し本業の体制を強化できると考えるかもしれません。

ITの役割は、突き詰めれば売上や利益への貢献です。そのために、業務の生産性を高めることや、新たな事業の創出を支えることです。革新的なテクノロジーの採用や機能・性能の向上は、そのための手段であり目的にはなり得ません。

スマートフォンやタブレットでユーザーの利便性を向上させることも、ITの役割です。しかし、これも突き詰めれば、社員の働きやすさを向上させ、意欲を高めることで労働生産性を高め、売上や利益に貢献させることです。

しかし、売上や利益にどう貢献させるかは、自分で考えてくださいと言わんばかりに、自社の製品やサービスの優秀さばかりを説明し、お客様の業務や経営についての具体的な貢献を説明できていない提案も見受けられます。

だれがその価値を理解でき、社内で推進する意志や力を持っているのかを考えずにアプローチしても前には進みません。担当部門だからという理由だけで、そこに提案するという無駄な努力をしてはいないでしょうか。上記の例のように、それぞれの利害を考えることなく、「べき論」を振りかざしたところで、提案を受け入れて頂くことはできません。

ソリューションとは、お客様の課題を解決することです。しかし、お客様の課題は複雑です。立場によって利害は異なり、求めている価値にも違いがあります。経営状態や時期によっては、優先順位も違うはずです。このようなことも含めて、お客様の課題なのです。

あなたは、お客様についてどこまで関心を持っているでしょうか。そのための情報収集やお客様との議論を重ねているでしょうか。経営や業務の常識について、どれだけの知識を持っているでしょうか。その努力を怠ってはいないでしょうか。

私達の役割は、お客様の経営に貢献することです。自分たちの提案が、そこにどうつながるかを明確に示されなければなりません。また、その価値を理解し、自らが先導者となって動いてくれるスポンサーを見つけ出し、その人を支える取り組みをしているでしょうか。「ソリューション提案」とは、このような一連の活動を指す言葉です。

オフショアやクラウドの流れは、労働集約的なSIビジネスやモノを販売・導入することを生業にしているプロダクト・ベンダーに、これまでにない淘汰を強いることになるでしょう。では、この時代をどう生き抜くかです。

ありきたりの答えかもしれませんが、改めてビジネスの原点に立ち返ることです。自分たちは、ひとつひとつの提案で、お客様の経営への貢献を具体的に示せているだろうか。適切な人をスポンサーとして、巻き込んでいるでしょうか。そのことを問い直すことです。

一般論として、SIやプロダクトのビジネスが厳しくなるとは思いません。SIでもプロダクトでも、この筋道を具体的に、明確に示すことができるのであれば、お客様は受け入れてくれるはずです。それは、商品力以前の問題です。営業やエンジニアが、お客様の経営や業務、人に対する関心と理解を深められるかにかかっています。

革新的なテクノロジーを追い求め、道具立てを整えても、この取り組みを怠れば、長続きはしないでしょう。

経営への貢献、それを主導する人を支えることは、いつの時代にも通用するビジネスの原点です。この基本を怠っていないかどうかを改めて問い直し、不十分であれば、どうするかを考えること。そこには、革新的なテクノロジーは不要です。こういうことが、この時代を生き抜くためのひとつの方策となるかもしれません。



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