2012年7月14日土曜日

消えるSIと運用にどう対処すべきか・自律化を前提としたクラウド・サービスのシナリオ

「クラウド・ビジネスなんて、うちの体力じゃ、到底できるものじゃないですよ」。

クラウド・ビジネスというと、Googlesalesforce.comなどの大手サービス・プロバイダーをイメージされる人も多いのではないでしょうか。確かに、彼等はクラウドというビジネスを主導し、そのトレンドを築いてきたプレーヤーであることに間違えありません。だからといって、彼等のように膨大な設備投資を行い、そのリソースを低コストで提供するというビジネスばかりが、クラウド・ビジネスではありません。

クラウド・ビジネスとは何か。以前のブログでも取り上げましたが、次の3つのビジネス・タイプに分類することができます(詳しくは、こちらをご覧ください)。



クラウド・プロバイダーばかりがクラウド・ビジネスではなく、アダプターやインテグレーターというビジネス形態を考えることができるはずです。自らの得意分野や体力を踏まえ、それぞれにふさわしいビジネス形態を選ぶべきでしょう。

ただ、このようなビジネス形態も、先週紹介致しましたが、自律化という時代の波に抗うことはできません。であれば、これを前提に考えるべきでしょう。以下にそれを整理してみました。



ITプラットフォームは、今後コモディティ化と自律化が進展すると考えられます。そう考えると、インフラに関わるシステムの構築や運用の「労働力供給ビジネス」は、その需要が低減するはずです。

このような状況に対処し、クラウド・ビジネスに収益の基盤を求めるとすれば、次のようなシナリオが考えられるます。

クラウド・プロバイダー
ふたつのケースが考えられます。まずひとつ目は、AWSのElastic Beans Talkのような自律化機能を実装したクラウド・サービスを自ら開発し、提供するものです。このようなビジネスを行うには、高度な技術力と資金力が必要になります。
もうひとつは、この自律化したクラウド・プラットフォームを利用し、これまで蓄積したアプリケーション・ノウハウを駆使してSaaSビジネスを展開するシナリオです。自律化したシステムですからプラットフォームに関わる運用管理負担は少なくて済みます。自らの強みであるアプリケーション・ノウハウを駆使してサービスの付加価値を高めて、差別化を図ることを目指します。
クラウド・アダプター
自律化は運用パターンによって実装されます。その運用パターンを作成し提供するシナリオです。
自ら提供するアダプター・サービスの運用経験とノウハウを標準化し運用パターンを作成、これを自らのサービスと共に自律化された垂直統合システムやクラウド・プロバイダーに提供するビジネスです。これによりアダプター・サービスの付加価値を高めることが可能になります。
クラウド・インテグレーター
自律化されたシステムやサービスを前提に、これらをインテグレーションするシナリオです。
さらに一歩押しすすめれば、構築したアプリケーションを自律化したクラウド・プロバイダーのサービス上で運用し、アプリケーションの構築、保守、運用を含む一括アウトソーシングとして提供することも考えられます。従量課金や定額課金であれば、それをサービス提供金額の原価に織り込み提供することは可能であり、しかも自律化機能を利用することで低料金でお客様にサービスが提供できるはずです。
先週から考えてきたように自律化は「専門家のノウハウや技術力をコモディティ化する」仕組みです。これは、これまでのSIや運用受託業務にとっては明らかに脅威です。しかし、それを脅威として怖がっても、退けても、いずれその時代が来ることは避けられません。ならばむしろ積極的にこの時代の流れに与し、いち早く自らの差別の武器として活用するシナリオを描くべきではないでしょうか。


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